ちぃちゃんとお蕎麦
しいな ここみ様主催『麺類短編料理企画』参加作品です。
ちぃちゃんは、お蕎麦が大好き。
小さなお口で、麵をちゅるちゅるちゅると啜るのがとっても上手。
麵をどんぶりからすくうのも、お子様用の先割れスプーンなんて使いません。きちんとお箸ですくいます。
そこは麵食いの美学で、お箸で食べなければ美味しくないのです。
おとうさんやおかあさん、お蕎麦屋のおじさんからも
「上手にお蕎麦を食べるね」と褒められ、鼻高々。ますますお蕎麦が好きになりました。
お箸でお蕎麦をすくって、お口に持っていくと、
ちゅるるるる……と今日も吸い込みました。
それを見ていた知らないおばさんが、
「まあ、なんて上手! こんな小さい子が、こんな上手に麵を啜るのを初めて見たわ!」
とびっくりしたので、うれしくなったちぃちゃんは、もっと上手に啜ってみようと思ったのです。
いつもより多めにお箸でお蕎麦をすくって、
ちゅるるるる、ちゅる
と啜り上げました。
「本当に上手!」
と、その隣にいたお姉さんも褒めてくれたので、ちぃちゃんはもっと上手にお蕎麦を食べられるところを見せたくなりました。
お箸ですくって、思いっきり、
ちゅるる……るるるる……る
――げほっ
勢いよく吸い込み過ぎて、お口いっぱいに含んでいたお蕎麦をリバースしてしまいました。
げほっ、げほっ!
お蕎麦が気管に入ってしまったらしく、ちぃちゃんは激しくむせ続けました。
それまで褒めていた大人たちは、「あらあら」と残念顔をして視線を背けました。
「もう! 調子に乗るんだから。ゆっくりと食べなさい」
お母さんにも叱られてしまいました。
お蕎麦をカッコよく食べるのは難しい……と感じた、ちぃちゃん2歳の秋でした。
お越しいただきありがとうございます。
麺類大好き人間なので、滑り込みで参加させていただきました。締め切りギリギリ(←大抵いつもこうだけど)でしたので、内容のうっす~いお話ですみません。
娘が2歳くらいの時の思い出と、息子が早食いした時の思い出をミックスして作ってみました。(息子、失敗談公開してごめん)
大人になっても上手にお箸を持てなかったり、麺を啜るのが不得手な方もいらっしゃる中、食いしん坊の娘はたいして教えもしなかったのに、なぜか上手に箸を持つ・麵を啜る。
早くに亡くなったわたしの父が麵類大好きで、麵類を食べるのに「麵がのびる前にさっさと食え」とか「そばやラーメンはちゃんと啜って食え」とかうるさかった人なので乗り移っているのでは? と疑いの目を向けたくなるような食べっぷりでした。
息子も子供の頃からの麺好きで、祖母(←わたしの母)がレストランに連れて行こうとしたら、「お子様ランチより蕎麦がいい」と言ったというリッパな逸話の持ち主です。お粗末様でございました!