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第7話 魔物退治

「すまん!一匹そっち行った!」


「なに取りこぼしてんのよ坂上……『雷破』!」


 こちらにやってきた魔物を、ぼやきながらも雷系の打撃技で仕留める。

 雷系が弱点の魔物だったためか、2撃目を必要とせずに倒れてくれた。


「いやぁ悪かったな倉田。でもまぁソイツで最後だわ」


 坂上は坂上で、向こうにいた魔物は倒したらしく、気だるそうに歩きながらコチラに近づいてくる。

 私もそうかもしれないけれど、コイツもけっこうやる気なさそうだ。

 まぁそれも仕方がない事かもしれない……


 今やっているのはギルドの緊急クエスト。

 『このままだと町や村に被害が出る!』ってな状況になったら突発的に発令されるものだ。


 基本、魔物というのは、各自所定のエリアからはほぼ出てくる事はない。そう、()()だ。つまりは、稀に出てくる事があるのだ。

 それが初心者御用達みたいな雑魚モンスターしかいないエリアから出て来たようなヤツなら、特に気にする事はない。

 各拠点にギルドがあるため、誰だって対処可能なのだ。

 ただ、中級者以上のエリアから出て来た魔物というのは、そういうわけにはいかない。


 今回発生した魔物は『グレイル森』と呼ばれるエリアから出て来た魔物。

 1匹に対して超位職1人以上、もしくは高位職5人以上で対処するようマニュアルに書かれているような魔物だ。

 それが5匹ほどまとめて現れたのだった。


 超位職の人間の割合なんて滅茶苦茶低い。それこそ大きな町のギルドマスターくらいしかいないだろう。

 高位職は昔に比べれば増えたかもしれないが、それでもそんなに多いわけではない。

 基本この世界の人間はレベル上げには無頓着で、そこそこ頑張ってそこそこ美味しい思いができればいい、というような考えの人間が多い。


 ともかく『緊急』クエストなのだ。『基準の人数が集まるまで放っておく』というわけにはいかないので、とりあえず手の空いてるヤツには強制的にお声がかかったりする。

 ただ最低でも『高位職』だ。条件を満たすヤツが何人も都合よく暇してるなんてそうそう無い。


 どうやっても人数確保が難しい時。

 そういう時の最終防衛ラインとしてギルドマスターが存在するのだ。


 ギルドマスターは一般的なクエストを行う事はない。普段やっているのは事務方の仕事で、ギルド支部に常に常駐している。

 それは、こういった緊急クエストがあった時用だと言われていたりもする。


 こういった場合のギルドマスターの仕事は、何をおいても緊急クエストが優先される。

 というか、ギルドマスターになる時にそういった誓約書を書かされているので逆らう事はできない。


 まぁつまりはそういう事だ。

 今まさに、そんな感じで緊急クエストをクリアしたところだ。

 そりゃあ、やる気なんてあまり出ない。


 坂上もだろうけど、川田の件……『ローランド公爵・国家反逆罪事件』に私達も変に巻き込まれていないかと、モヤモヤ悩む暇が無くなるのは、ある意味健全なのかもしれないけど、それは問題を後回ししているってだけで、それはそれでモヤモヤするものだ。

 この歳にもなると、平和に余生を過ごしたいって想いが強くなっている。


「取りこぼした分の報酬は私に上乗せしなさいよ坂上」


「ふざけんなよ。そもそも、相手する人数が割り切れない数字だったからって、1匹しか倒さないで均等の報酬もらおうとしてた時点でおかしいからなオマエ」


 魔物の数は5匹。

 本来の規定通りなら、超位職5人が高位職25人で当たる仕事だ。

 しかし、何度も言うが、これは緊急クエストであって、そんな大所帯がポンっと用意できるわけもなく「お前等レベル高いんだから3人でもいけんじゃね?」ってなギルド本部判断がおりた。

 っていうか。魔物の数が多い場合、割とこのパターンになる。

 ……まぁ魔物自体は知能もそんなに高くなく、単独で動く事が多いので、今回みたいに、偶然同じような行動を取った魔物が複数対同時に行動エリア外に出てくる事は滅多にないんだけどね。

 数年に一回くらい?かな?


 ともかくそんなわけで、超位職ギルドマスターでも比較的レベルの高い私達3人へと白羽の矢がたったのである。


 ……そう、3人だ。

 私、坂上、そしてもう一人。


「まぁまぁ……無事倒せたんだからいいじゃん。そもそも、僕等が2匹づつで倉田さんは女性だからって1匹でいいって決めたのはケンゴだろ?」


「言ったかもしんねぇけどよ……後々考えてみたら、コイツ『女性』っていうかババァだろ?」


「殺すぞ坂上。お前だって立派なエロジジイだろうが」


「落ち着いてよ2人とも!学生時代そんなに仲悪かったっけ?」


「前世は関係ない。私は、欲望に忠実な歩くリビドーと化した、今のコイツをキモイと思ってるだけよ」


「当人を目の前にしてソレ言えるオマエも相当だろ倉田。その性格も、いっぺん死んで転生したくらいじゃ変わんねぇのな」


 そうなのだ……私達の会話を聞いててわかるだろうが、もう一人も元同級生の転生者なのだ。


 コイツの名前はジェス・ブランといい、地毛が白髪のため、この歳で白髪が目立たたないという便利な見た目をしている。

 そして前世の名前は土屋(つちや)(しげる)


 私がギルマスをしている町の近くの町でギルマスをしているので、2・3回程度こういった緊急クエストで一緒になった事があり、存在は何となくだけど認知してたんだけど……まさか転生者だったとは思わなかった。

 ホント、同窓会で顔見た時はビックリした。


 それを考えると、同窓会があったおかげで、こいうやって多少なりとも親交を深める事ができたのだから、少しくらいは主催者の愛花に感謝するべきなのだろうか?


 まぁその同窓会に参加しちゃったせいで、私達「同窓会参加ギルマス」が一国に目を付けられるハメになったんだけどね。

 そして、一番目を付けられてる主催者当人は何も知らないまま行方知らず……


「……愛花のヤツ、今どこにいるのよ……」


 うっかり考えている事が口から漏れる。


「考えないようにしてたのに……何で思い出させるかな?」

「空気読め倉田!何でいきなりそんな話題出した!?」


 怒られた。


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