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第14話 ブリッドとルーナ・ルイス

 いきなりブリッドに声をかけられたルーナ・ルイスは、特に動揺する事なくブリッドと向き合っていたらしい。


「数十年前の手配書と一切容姿に変化が無いのはどういう理屈だ!」

「今は大人しくしているようだが、貴様が過去にどんな事をやってきたのかわかっているのか!」

「貴様のせいで、いったいどれだけの人が死んだと思っているんだ!!」


 ただただ、ブリッドが一方的にルーナ・ルイスに怒鳴りつけていただけだったという……





「それで?どうなったんだ?」


 オッサンからの状況説明を、坂上は続きを急かす。

 おっとりした口調のせいで、説明スピードが若干遅いとは思うけど、そんな急かすほどじゃないだろ坂上……別にこの後予定が詰まっているわけでもなく暇なんだから。

 その辺は性格なのかな?


「女の方は、そのセリフの後に、遠くからでもわかるほどの笑顔で『アナタは今まで食べたパンの枚数を覚えているのですか?』って言ってたかなぁ?」


 あ……ルーナ・ルイス転生者確定だ。

 リアルで言ってみたかったんだろうなぁ……そのセリフ。

 嬉しくて笑顔が隠し切れないほどだったのがよくわかるよ。


「あ……うん……それで?そう言われたブリッドはどうしたの?」


 土屋君も、元ネタがわかっているのだろう。

 若干呆れたような口調で続きを促す。


「凄い怒ってた感じにみえたなぁ……何を言ってるのかわからないくらい怒鳴ってたよ」


「そりゃ人の命をそこまで軽く見てたなんてわかったらブリッドじゃなくてもキレんだろ……しかも笑いながらだろ?会った事なくても印象最悪になったわ。やっぱ賞金首にまともな奴はいねぇな」


 おっと!ここに元ネタわかってない転生者いたぞ!?

 転生してきちゃったからもう無理かもしれないけど、名作は読んどけよ坂上。


「その後、女が『今の答えはお気に召しませんでしたか?この言葉を言うには絶好の機会だと思ったのですけどね』みたいに言ってたな」


 気持ちはわかる!気持ちはよ~~くわかるよルーナ・ルイス。

 でも元ネタわかってない人からしたら、それただの煽りだから……


「その言葉を聞いた男の方は、これ以上話しても無駄だと思ったのか、何も喋らずに大剣を振り上げて斬りかかってたよ」


「だろうな。俺でもそうする」


 いちいち相槌いれなくていいよ坂上……

 オッサンが喋ってる間は黙って聞いてろよ。


「驚いたのはその後だ。振り下ろされた大剣を、女は微動だにせずに片手で掴んじまったんだ。オラなんて、男の動きが早すぎて、いつ剣を振り下ろしたのかすら見えなかったのに」


「……なぁ土屋?ブリッドって超位職だよな?」


「そうだね。今のレベルがどれくらいかはわからないけど、少なくとも僕等と同程度の強さはあると思うよ」


 つまりルーナ・ルイスも、愛花と同じように、私達がどうこうできるようなレベルじゃないって事が確定したわけね。

 まぁ愛花と同じで、数十年容姿が変わってない……まったく老いていないって時点で、そんな気はしてたんだけどね。

 愛花が「私じゃ勝てない」って言ってた事の真実味が出て来た感じね。


「んで、女の方は何事もなかったかのように『私は無駄な殺生はしない事にしてますの。このまま引き下がって、他言無用でいて頂けるなら見逃してあげてもいいですよ』って、完全に強者の言葉を吐いてたよ」


「何様だよルーナ・ルイス!!んな言葉聞くな!やっちまえブリッド!!」


 だから、いちいちうるさいよ坂上。

 何で感情移入して盛り上がっちゃってんの?黙って聞いてろよ。


「オラも、話を聞いてると、女の方は好きになれなかったんで、男の方を若干応援してたんだよねぇ」


 いやオッサン。お前の感想なんてどうでもいいから、早く続き話せよ!?


「男の方は、その言葉を聞いて『貴様が俺を見逃そうと、俺は貴様を見逃すつもりはない!どんな手段を使ってでも、この場で貴様の息の根を止める!』って言うもんだから、オラ内心では『そうだ!やっちまえやっちまえ!』って思ってたんだよ」


「だよなぁ!!やっちまえブリッド!!」


 もうツッコむのも面倒臭くなってきた……勝手にやってろお前等。


「……それで?どうなったの?」


 再び呆れたような口調で土屋君が続きを促す。

 たぶん土屋君、私と同じ気持ちなんだろうな……


「その後は一瞬だったよ……女の方が『そうですか。それは残念』って言った後、何かをボソボソと呟いたと思ったら、突然男の方が倒れたんだ」


「はぁ?何だソレ!?魔法か?……それで?その後どうなった?屈強な事で有名なブリッドだ。不意打ちで一発魔法くらったくらいじゃ何ともないだろ!すぐに起き上がったんだろ?」


「いや、男の方はそれで事切れてたよ……」


 そんなバカな……人を即死させる魔法なんて聞いた事ないぞ。

 いや……ルーナ・ルイスが愛花と同類なんだったら、わけわからない魔法の1つや2つ使っても不思議じゃないのか。


「それでオッサンさん。アナタもルーナ・ルイスに顔を見られてるんでしょ?どうやって助かったの?」


 そうだった。

 ルーナ・ルイスと遭遇して、どうやって生き延びたっていうんだ?


「ええと……『私の事を黙っていてくれるなら見逃してあげますよ』って言われたから『絶対に喋りません!』って言って助けてもらったんだぁ」


 喋ってんじゃん!!?私達に速攻で!!大丈夫かこのオッサン!?


「あと『ついでに御遺体の処理もお願いしてもよろしいですか?この方、賞金首っぽいので役所に持って行ってもらえればお金もらえますから』って言われて……」


「……おい、まさかオッサン……言われた通りブリッドの遺体を役所に……」


「んだ!500万も臨時収入が入ったんだよ」


 駄目だこのオッサン……ルーナ・ルイス以上に人としてどうなんだ?


「約束破った事で、ルーナ・ルイスがオッサンさんを襲いに来ても、助けずに無視するかもしれない……僕」


 うん、さっきから土屋君と気が合うな、私。


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