表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

第8話 総合戦闘力

「対策を考えよう!」


 坂上と土屋君に緊急招集をかけ、私のギルドのギルドマスター室にてテーブルを囲んだ状態で話始める。


 というのも、考えないようにしてきたが、恐れていた事態になってしまったからである。

 ついにエルフ領の王都ヴェーヌからの動きがあったのだ。


「『勇者レイナ・ベレージナ討伐依頼』ね……こんな、はした金の依頼なんて誰が受けるんだよ?」


「つまりは『何か企んでた者同士で潰し合え』って事なのかな?」


 坂上の疑問に土屋君が答える……が、坂上の頭で、土屋君の回答の意味がわかるかな?


 ギルドに来る依頼というのは、場合によって『期限』という物が存在したりする。

 例えば「A町に移動したいから、〇日後までに護衛人数を集めてくれ」みたいなやつである。

 そういった期限付きの依頼というのは、その分の依頼料も含まれているため、意外と割りの良い依頼となっており、ギルド員達には人気だったりする。

 ただ、その時期は人手が足りてなくて、その依頼を受ける人が誰もいなかったとする。

 そういった場合は、緊急クエストと同じように、期限ギリギリになった時点でギルドマスター案件となるのだ。


 つまりは、土屋君が言ったのはそういう事である。


 期限付きの依頼が来たが、報酬が極端に少ない。

 となると、そんなクソみたいな依頼なんて受けるヤツは現れずに期限を迎える事になるだろう。

 そうなると、その依頼を受けざるを得ないのがギルドマスターである私達になる、という事だ。


「ウチ等の自腹で報酬に色を付けるってのはどうだ?懐は痛いが誰かが代わりに受けてくれるんじゃねぇか?」


「そして、僕等の代わりに依頼受けた誰かが死ぬ、って事?若いギルド員が死ぬくらいなら、僕が死ぬ事を選ぶよ」


「だから誰も死ななくて済む方法を探してるんじゃねぇか!」


 議論は白熱している。


 私も若いギルド員には死んでほしくはないが、私自身もまだ死にたくはない。死ぬときは老衰で穏やかに死にたい。


「そもそもで『勇者レイナ・ベレージナ』って飯島だろ?アイツ、俺達相手でも容赦なく攻撃してくんのか?」


「何も仕掛けなければ、何もしてこないだろうな。だけど愛花は、身に降る火の粉は躊躇なく払うタイプね」


 淡い期待を持っている坂上の希望を打ち砕く。

 たぶんだけど、愛花が倒したって事になってる『魔王』とかも、元同級生の誰かだったんだと思う。それを愛花は殺している……その結果が答えだろう。


「じゃあ、僕達3人で飯島さんを何とかできないかな?殺さない程度で拘束して、討伐した事にして後でこっそり逃がすとか?」


「成程!いくらアイツが『勇者』って言っても、かなり強くなった俺達3人がかりなら何とか……」

「ならないよ」


 坂上が恨めしそうな視線を向けてはくるが、期待はすぐに潰しておく。



 この世界には『総合戦闘力』ってのが個人のステータスに設定されている。

 レベルやスキル、装備品なんかを含めての、総合的な個人の強さを表した数値で、ステータス欄に記載されてるんで、自分でだけ確認ができる。


 昔は、相手の総合戦闘力を覗き見れる『鑑定』というスキルがあったのだが、十数年前から使用できなくなってしまっている。

 一応、スキル欄には載ってるので、昔は「あった」ではなく、今も「ある」ってのが正解なのかもしれないが、まったく発動しなくなってしまったので、無いに等しい。

 もちろん、私だけが使えなくなったわけではなく、人類全てが使用できなくなっている。

 まぁこんな風に語っているのでわかるだろうが、原因はまったく不明となっている。



 ともかく、そんな総合戦闘力。今の私は約15,000って感じだ。

 おそらく他2人も同じような数字なのだろう。


 私達がまだ若かった頃。高位職が主流だった昔は、この数字が4桁あればそれなりに尊敬されていた事を考えれば、私達の今の数値は高い方なのだろう。


 だけど……


「総合戦闘力が100万超えてるヤツを、3人で生け捕りにできるなら試してみてもいい作戦かもしれないわね」


「ひゃ、く……」


 坂上の表情が「何バカな事言ってんだ?」みたいな顔になっているが、無視しておく。


「倉田さん。その情報の正確性は?」


 そうだよね。数字が馬鹿げてるから、そりゃあ真偽を疑うよね。


「『鑑定』が機能していた頃に見た事がある。時期をズラして3・4回確認したけど、数値に変化は無かったから、たぶん自前の戦闘力だと思うわ」


「おかしいだろ!?転生してきた次期は俺達と一緒だろ?いくらなんでも、その数字の差はおかしすぎだろ!?」


 叫びだす坂上の気持ちはよくわかる。

 私も初めて愛花の総合戦闘力を見た時は同じ気持ちになった。


「諦めなさい坂上。『もうアイツはああいうモノ』って認識で行動しないと、精神が持たないわよ」


 愛花との付き合い方を坂上に教えておく。

 っていうか、同窓会の時、身に染みて理解してたんじゃないのか?


 まぁともかく、今は今後の事を考えなくては……

 まだ死にたくないから、愛花を敵に回す事は何とか避けられないものかなぁ……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ