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20才の記憶

「アイクは20才だった時の事は憶えてる?」

「…?オレは7才だ、未来の記憶なんてないぞ?」

「そうなんだ…」


本当に7才に戻ってるんだ…。我が儘過ぎでしょ。


「今日はもう遅いから寝るぞ。」


遅いって…まだ20時…。子供時間に付き合うの?


「……どろしー」

「どうしたの?」


何だかもじもじしてるけど…


「おっ、おやすみのちゅーだ!」


私にチュッと小鳥みたい口づけして、勢いよくシーツにもぐってしまった。


…私の初めての口づけは、『おやすみのちゅー』で終わってしまった…。

我が儘で生意気だけど、何だか一生懸命で可愛い子だわ。


10分くらいするとアイクの寝息が聞こえてきた。シーツをアイクの顔までずらしてから、私は部屋を出た。

「あ…」

そこには私の宿敵『ノートン』がいた。

この男さえいなければ……。


「はぁ…アイクが『ドロシーは可愛い』って言うから、どんな女かと思ったが、普通…」


ふつー?

普通…私の見ため?

うん、それは認めよう。

身長158cm、黒の髪で茶色の目。細くも太くもない。スタイルも特に良くない、胸なんか特に。そして美人でもない。


けれどそんな事を言われる筋合いはない!


「そんな貴方は普通以下ね。」


面倒だから部屋に戻ろ。少しくらいの音で目覚める子じゃないしね。


「ちょっと待て…」

「いやよ。」

部屋に入ろうとすると、腕をグイっとつかまれた。

「っ!?」

「俺はアイクの護衛だ。何かあったら殺す。」

「…殺すならあの子でしょ。私は口づけされたのよ。『おやすみのちゅー』よ。20才なら大問題だわ。」

「まだ7才のガキのする事だろ。」

「そうね。貴方が彼を護れなかったから、靴を履いちゃったんだしね。私に偉そうにしないで。いつでも追い出してくれていいわよ。私は家に帰りたいんだしね。」


言い返す事が出来ないよね。私を連れつきたのは王子で、私を留めてるのは王様なんだから。


「では、失礼します。」


今度こそ私は部屋にはいった。


スヤスヤ眠る男の子。


何で呪いの7つ道具のような靴を履いたの…。姿絵を見せられたけど、本当にあれはこの子なの?私の夢を見たからって住んでる家までわからないよね?


魔法をとく方法、きっと靴を作る事。靴職人の私につくれと…。靴は作るけれど、そんな馬鹿みたいな魔術とか出来ないわ。

ここは絵本の中じゃないんだから…

「魔術だなんて本当に馬鹿みたいな話ね」


「そう、馬鹿みたいな話だ」

「…っ!?」



何?部屋にアイク以外誰もいないよね?そばにあるのは靴だけ。もしかして、この靴が魔術の靴?これが話してるの?


「靴職人のドロシー」

「…何かしら」

「怖がらないとは、さすがだな」

「さすがも何も、靴が喋ってるだけじゃない。くだらない。」


「そのくだらない靴に、アイザックは殺されるんだ。」

「…?ただ子供になっただけじゃない。」

「このまま小さくなり続ける。」

「…どういう事?」

王様はそんな事一言も言ってなかったのに…。

「7才から始まってる。今のアイザックがそうだ。今から6,5…と小さくなって、やがて死ぬ。」

「…っ!?」

「これはドロシー、お前にだけ言っておく。他言すればアイザックはその場で死ぬ。」


「ふざけないでよ…魔術だか何だかしらないけど、人を殺せるはずないじゃない。」


あまり大きな声は出せない。もしアイクが起きてしまったら、この会話を聞かれる。そうなれば死ぬかもしれない。


「子供になった、それで信じられないか?」


「……」


13年で20才になる…そう思ってるのはまわりだけで、あと7年しかないってこと?…7年で0才、その時はまだ生きてるの?

簡単に考え過ぎてた…。お金の問題じゃない!アイクの命がかかってる!


「靴を作れば何とかなるの…?」

「その為にお前を呼んだ。アイザックの夢でな。」


それも魔術の1つだったのね…。20才のアイクには好きだった子がいたかもしれないのよ。何だか腹が立ってきたわ。


「どんな靴を作ればいいわけ?」

「それは解らない」

「は?自分の事が解らないの?」

「履く馬鹿が今までいなかったからな。」

「………」

「別にアイザックを殺したくない訳でも、殺したい訳でもない。どうすれば元に戻るのか、興味があるだけだ。7つ道具(おれたち)で賭けてる。戻るか戻らないか。俺は戻るに賭けた。ドロシー頼んだぞ。」

「ちょっと持って…って……もう喋らないよね。」


賭け事のために来たの…?


アイク…死んじゃうんだ…。

ううん、死なせないわ!!

私がここに呼ばれたのは、可能性があるからなのよ!!


「…ん……?なんだ?もう朝なのか?」

「アイクっ!今の話、聞いてた!?」

「話?」

よかった…。聞かれてなかったのね。


「…どろしー…おはようのちゅーだ」

「……」

またしても…

2度目は『おはようのちゅー』


「アイク、まだ夜なの。まだ寝てていいよ。」

「そうなのか?……じゃぁ…ねる…」

私の手をギュッと握って、すぐに寝た。


20才のアイクがどんな子だったかは知らないけど、この子が死なないように明日から大量に靴を作るわ!!

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