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思わぬ二人


 煙が晴れる。

 魔法使いたちや、お兄様、お父様もひどく動揺している様子だった。


「二人? 二人、だと?」

「二人も召喚に成功したというのか?」

「こんなことが……?」


 皆さんの呟きを聞き取る限り、本来【召喚】は一人だけしか召喚されないもののようだ。

 それが二人も召喚されてきたから、ざわざわしている。


「もしや、赤子とはいえ『天性スキル』の影響か?」

「だとしたら素晴らしい……!」

「リオハルト様、ありがとうございます!」

「ま、待てお前たち! まずは召喚されし勇者、または聖女をお迎えせよ!」

「ああ、そ、そうでした」


 近くにいた魔法使いさんたちに頭を下げられたが、陛下のお声で皆、中央にいる二人組に向き直り膝を折った。

 煙が完全に晴れて、そこにいた二人が姿を表す。


「えっ」


 私は思わず声をあげてしまう。

 男女が一人ずつ、そこには座り込んで混乱している様子だつた。

 だが、そのうちの一人——男の方にはとても見覚えがあったのだ。

 そう、とても。


「なんだなんだなんだ!? どうなってんだこれ!? え? え? ま、まさかこれって異世界召喚ってやつ!? 嘘だろー!? 漫画やアニメでよくやるあれじゃね!! なぁなぁ、千春ちゃん!」


 旦那だ。

 前世の旦那——吉名郁夫(よしないくお)

 私の一つ年上で、転職入社した時に教育係だった。

 そんな……どうして彼が!?


「えー! うそぉ〜! わたしたち、どーなっちゃうんですかぁー?」

「っ」


 女性の方も見覚えがあった。

 声——話し方を聞いて、思い出した!

 私と旦那の会社の後輩、近藤千春(こんどうちはる)

 若くて可愛くて、男性にすぐ頼るところが女子社員に妬まれて嫌われていた娘。

 え? ま、待って?

 どっちも私の前世の関係者?

 どういうことなの?


「ごほん! ……私はコバルト王国の国王! お主らはこの国に勇者と聖女として召喚されたのだ。混乱しているところ申し訳ないが、まずはお主らを[鑑定]させてほしい!」

「え! え? え!? お、おおお王様ぁ!? 嘘だろー!? マジで漫画やアニメみたいな異世界召喚!? ってことは、もしかして俺ってばチート能力とか持ってたりすんの!? うおー! マジかー!」


 え、うるさ……。

 あの人なんであんなにテンション高いの……?

 四十のおっさんが漫画やアニメみたいな異世界召喚に子どもみたいに大はしゃぎしてる……。

 き、気持ち悪う。


「では、まずは勇者様から」

「よろしくお願いします!」


 ノリノリ……。


「お名前はヨシナイクオ様。ありました! 『特異スキル』は[超身体強化]! どうやら通常の[身体強化]魔法の、強化版のようですね」

「えー? なんか思ったのと違うなぁ」

「聖女様はコンドウチハル様。こちらは……[略奪]……? ……え、ええと、こちらも初めて見ますが……『特異スキル』には間違いないようです」

「え、えぇ? わたし聖女なんですよねぇ? なんかこわ〜い」

「!」


 近藤さんはそう言って私の前世の旦那の腕にしがみつく。

 それを見て心の底から『なるほどなー』と思う。

 郁夫の鼻の下、とても伸びているもの。

 思わず頭を抱えてしまう。


「……なんというか、これまでの勇者殿や聖女殿とは……雰囲気が違う方々だな」

「【召喚】で二人もいらっしゃったのは初めてですからね……」

「二人召喚されると『特異スキル』もいささか変わったものになるのだろうか?」

「だ、だがまあ、しかし、勇者殿の[超身体強化]はなかなか強力そうではないか?」

「これなら前回の勇者の[経験値五倍]の方が……」

「おい、前回の勇者の話はやめろ」

「し、失礼しました」


 私の前にいる王宮魔法使いさんたちの不安そうな話し声に、なぜか私が申し訳なくなってしまう。

 とはいえ、郁夫は私の記憶より少し歳を感じる。

 前世で私が死んだあとの郁夫、なのだろうか?

 私が死んだ時、四十ちょうどだった。

 前世の世界とこの世界の時間の流れが同じなら、郁夫は今五十五歳のはずだけど……そんな感じはしないのよね。

 最期の方、ほとんど郁夫の顔が思い出せない。

 何日会っていなかったのか、会っていても顔を見たり会話をしたりしていなかったのだ。


「お兄様、勇者様はおいくつの方なのでしょうか?」

「見たところ若くても三十代に見えるな……」


 ですよねー。

 私の結婚前の彼?

 でも、彼とは会社にいた頃毎日顔を合わせていたし……。

 どうしよう、あの鼻の下の伸び切った顔を見ていると、私が前世の妻だと名乗り出たくない。

 それに、不思議なぐらい郁夫に興味が湧かないのよね。

 今世の私が歳若いせいかしら?

 気色の悪いおっさんにしか見えない。


「ともかく歓迎しよう。部屋を用意してある。まずは服を着替え、この世界について説明を」

「はっ」


 用意されていた兵が二人を奥の部屋へと連れていく。

 私はお兄様とお父様とダンスホールを出てから、帰りの馬車の準備を待つこととした。

 お父様は始終頭を抱え、「今回の勇者たちも失敗だ」とぼやく。

 ……お父様と意見が一緒になるのは初めてかもしれないわ。


「聖女のスキルが[略奪]とはどういうことなのか」

「確かに、歴代聖女で聞いたことのないスキルですね」


 お兄様ですら難しいお顔をされている。

 私には近藤さんのスキルが[略奪]だったのは、なんとなく納得なんだけれど。

 聖女らしいかと言われると……うん。


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― 新着の感想 ―
[一言]  どう考えても『聖女』とか呼称しちゃあかんだろ、略奪とか…。送り返せるなら、送り返した方がいい。
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