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初めての変身!

大きめのポーチがほとんど満杯になりそろそろ帰路に着こうとして気付いた。


「結構森の奥に来てしまった…」


周りを見渡すが夢中になって緑陽草を採取してきたためどっちが森の外かがわからない。

その時視界の端に橙色が映った。


「あれは、もしかして」


急いで駆け寄りその特徴的な橙色と図鑑に記載されている陽黄草の特徴を見比べる。


「やった!陽黄草だ!」


少し声を張り上げて喜び、ラッキー!と思いながら採取を開始する。

無事傷を付けず採取することができたので、さすがに森の外へ向かおうとしたとき、ガサッという音とともに肩に衝撃と痛みが走った。


「痛っ」


咄嗟に肩を見ると爪か何かで引っかかれたような傷が広がり血が出ている。

痛みをこらえながら後ろを見ると目を赤く光らせた狼のような存在が居た。


「…魔物かっ」


森の奥に入りすぎてしまったようだ。特徴からしてこれがウルフという魔物だろう。

慌てて剣を鞘から出そうと傷を受けた方では無い手で剣を触ろうとしたとき、体に肩に攻撃を受けた特とは全く違う衝動が襲った。

ウルフに傷つけられた肩を起点に、手、胸、腰、下半身の順に温かい何かに覆われて行き、ついには頭の先から足先まで温く白い何かに包まれてしまった。顔も覆われているため目を開けることができない。

そんな状態が体感十数秒続き、前進に温かさが広がったと感じた瞬間、パッと周りを見ることができるようになり、腰についていたポーチと剣が地面に落下する。

周りが見えるようになった瞬間感じたのは体全体の違和感だった。

まず全体的に視点が低い。下半身がすーすーする、なんか音が頭の上から聞こえる、そして下を向くと大きくないながらも慎ましやかに存在する胸が…


「胸ぇ!?あれっしかもなんか声高いしっ!」


ついさっきまで男性的な声でだったのに綺麗なソプラノボイスに変わってるし!


「ッ…!」


違和感もつかの間、獲物の突然の変化をいぶかしげに見ていたウルフがついにしびれを切らしたのか爪と牙を剥き出しにして襲いかかってきた。右前足を前に出し引っ掻こうとしてくるウルフを間一髪で右へ移動し回避する。


「体が、軽い…?」


この姿になってから動体視力と体の機敏さが上がっている気がする。今の前足を使った攻撃もこの姿でなければ避けられなかっただろう。自分の体の変化を今すぐにでも確認したいが今は目の前に居るウルフをなんとかしなければならない。

剣はこの姿になったときに落下したため手元に無い。落ちているのを拾いたいが、その隙をウルフは見逃してはくれないだろう。思考しているうちにこちらに向き合ったウルフと再び相対する。その時頭に一つのイメージが湧いた。

爪術とでも言えばいいのだろうか、今ウルフが爪で攻撃をしてきたようにこちらも爪で攻撃するイメージだ。

そんなことしたことも無いがこの姿になった今ならできる気がした。


「来るっ!」


動体視力をフルに使い、僅かな動作から攻撃を察知する。今度は左前足で飛びかかってきたので右側避けつつ一か八かすれ違いざまに胴体を左手の爪で引っ掻く。


「フッ!」


「ギャゥン!?」


ウルフの胴体を引っ掻いた左手は容易くウルフの皮膚を切り裂き、飛び散った血が姿が変わったときに一緒に変わった服を赤い斑模様に染める。負傷したウルフは手傷を負ってなおこちらに飛びかかってくる。今度は捨て身で両前足と牙を使ってきたので上がった身体能力をフル活用してその場でウルフより上に跳躍し、ウルフの首筋に両手の爪を突き立てる。

ウルフは爪を突き立てられた後、ピクリと痙攣した後動かなくなった。



その後ウルフはしばらくした後、小さな赤色の結晶を残し霧散した。

完全に消えたことを確認した後、魔石を回収し、改めて体を確認する。まず、胸が、ある。自分に膨らんだ胸がある感覚がなんとも違和感がある。

恐る恐る触れてみるとふにっとした柔らかい感触が…いや、怖いからもうやめておこう…

次は股だ。見事についていない。あるものが無く、無いものがある。この感覚に、避け続けていた一つの結論が導き出される。


「僕、女の子になっちゃってる…」


身長も男の時より15センチは縮んでいるだろう。手や足もそこそこ生えていた毛が全て消えており、色白でシュッとしたしなやかできれいな手足になっている。顔は鏡が無いため見れないが、細くしなやかな銀色の髪が肩の先まで伸びているあたり、変わり果てているのだろうとわかる。しかも音が頭の上から音が聞こえるので、触ってみると触られているという感覚と手にはふかふかな感覚が伝わってくる。それに、音がいつもは聞こえないであろう小さな音まではっきり聞こえる。あえて気にしないようにしていたが先ほど倒したウルフのような灰色の毛が生えた尻尾が尾てい骨のある場所の辺りから生えている。触ってみるとちゃんと感覚があり、耳とは感触が変わるもののふさふさだった。

どうやら普通の女の子でも無いらしい…肩に受けた傷も消えているし、そもそもどうして女の子になってしまったのだろう?と考えたその時先ほど爪術を使ったときと同じように頭の中にイメージが浮かんだ瞬間、全てを理解した。

まず、この[変身]が自分の[特技]なようだ。この[特技]の名前は変身[獣・魔]というようで、どうやら魔物から攻撃を受けたとき、その魔物の特徴を持った女の子の姿に変身できるようになる[特技]らしい。

一度変身できるようになった姿へは回数制限なしで変身でき、変身後の姿では先ほどの爪術のようにその変身元の魔物の特徴を使った特技を一つ使用できるようになる。身体能力や動体視力も変身した姿によって変わってくるようだ。変身できる姿はいろいろな魔物の攻撃を受けることによって、

攻撃を受けた魔物の種族の数だけ増え、変身後に獲得できる[特技]は各種類一個だけなようだ。さらに肩に受けた傷が消えていたように初めて攻撃を受けた種族の魔物からの傷は変身するときに消えるため初回に受けた傷と変身中に受けた傷は無かったことになるみたいだ。

だが、初めてでは無い魔物に攻撃を受けた後変身しても傷は治らないようで、傷を受けたら変身して傷を治すなんてことはできないようだ。

変身は時間経過で元の姿に戻れるらしい。元の姿に戻ったときは、変身中に受けた傷はがそのまま残るようだ。

…よかった。このまま戻れなかったらどうしようかと…いやそもそも変身するのが女の子なのだろうか。

男の姿で変身できれば良かったというのに。

今の姿はウルフの特徴を持った姿なので、差し詰め狼っ娘といった所だろうか。特徴としては、鼻と耳が発達し、俊敏性と動体視力が上がり爪術が使える。


「狼っ娘て…自分で言って恥ずかしくなってきた…」


着ている服も下着は着けているものの女の子用だしワンピースしか着ていないため尋常じゃ無いくらい恥ずかしい。

[特技]の詳細はこれぐらいだ。

ずっとこの森に居ればまたウルフなどの魔物に襲われるかもしれないので今日はもう王都のギルドに帰ることにする。

変身したままなので狼の発達した鼻で自分の匂いをたどれば森の外に出る事ができるだろう。

そう思い、森の外に向けて歩き出した。

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