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探し物の依頼

焼却場からギルドに帰ってきた。

変わらずエルさんが受付をしていたので声をかける。


「エルさん!終わりましたよ!」


「早かったですね。大体の人が帰ってくるのは夕方なんですが」


「これ、証明書です。後この小さい紙も渡すように言われました」


紙を二枚とも渡す。すると小さい紙の方を見たエルさんが少し驚いた顔を見せた。


「素晴らしい働きだったので報酬を上乗せしたいそうです」


「本当ですか?やった!」


「では、上乗せされた報酬も合わせて9000イムです」


大銅貨9枚を貰った。元が6000だから…1.5倍にしてくれたみたいだ。頑張って結果が伴ったのでとてもいい気分だ。



報酬を貰い昼を食べる前にシャワーを浴び、黒猫の宿屋でウルフ肉のごろごろ焼きを食べた。

そして剣の修行で素振りを行なっていたら何事も無く夕方を過ぎ夜になっていたのでそのまま夕飯を食べ部屋に戻りその日は就寝した。



日の光が顔に当たって起きた。今日も昨日と同じような時間だ。今日も王都内の依頼を受けよう。

昨日のうちに考えておいたのだが探し物なら狼娘の嗅覚を持ってすれば簡単に依頼達成できると思う。

ということで今日は探し物の依頼を受けよう。

…やはりだんだん変身して異性の体になること対する忌避感が薄れている気がする。けど生きていくためだ…しょうがないだろう?と思い考えないようにする。

昨日と同じく準備を終え受付に向かう。今日はリラさんが受付のようだ。僕に気付いて笑顔を浮かべた。


「あ!フウガさん!今日は女の子じゃ無いんですね!…じゃなくて今日はどうしますか?」


本音が出てるんだよなぁ…今の僕の顔は若干引きつっているだろう。


「今日は探し物の依頼を受けてみようと思って」


「そうですか!なら数件来てますよ。」


リラさんは受付の下から書類を出してきて見せてくれた。


「指輪を無くしたっていうご婦人からの依頼なんかがありますね。場所は…黒猫の宿屋より奥の少し高級な住宅街です。他は形見の品を探してほしい…なんかもありますね」


とりあえず指輪の依頼を受けてみよう。


「指輪を無くしたって依頼にしようかな」


「わかりました!依頼主はハンナ・ホーンさん王都でも影響力があるホーン商会の商会長の奥様ですね。場所は…っとそういえばフウガさんって王都の見取り図って持ってましたっけ?」


王都の地図的な物ってあったのか…


「そういえば持ってないね」


「ごめんなさい!渡しそびれてました!今持ってきます!」


王都の大体の場所が分かる地図をくれた。


「地図を持ってないのによく今まで迷いませんでしたね!」


「まぁ大通りから外れた場所にはまだ行ったこと無いから」


「確かに、そうでしたね。でもこれからはこれがあるので大丈夫です!それで場所なんですけど、さっきも言ったように場所的には黒猫の宿屋の先なんですけど住宅街の方なので主要道路からは外れます。多少入り組んでたりするので迷わないよう気を付けてくださいね!」


そう言って場所を教えてくれた。


「了解。じゃあ行ってくる」


「お気を付けて~」



ギルドを出て目的地へ向かう。黒猫の宿屋を通り過ぎ、少し行った所で脇道に逸れる。そしてしばらくすると目的の家と思われる回りの家とは二回りくらい大きな家が見えてきた。地図を確認してみるとどうやらここで合っていそうだ。

インターホン……は無いので直接家に向けて声をかける。


「すみませーーん。冒険者ギルドから来た者なんですけどー!」


すると中から家政婦?らしきエプロンを着た30歳代後半くらいの女の人が出てきた。


「冒険者ギルドの方ですか。今日はどういったご用件で?」


「依頼を受けてきたんですけど…」


「承知しました。確認いたしますので少し待っていてください」


家政婦さんは中に入っていった。それにしても結構大きい家だ…もう屋敷って言った方がいいくらいだな。

少しして今度はさっきの家政婦さんより身なりの良い少し恰幅の良い40代くらいの女の人が出てきた。依頼者であるハンナさんだろうか?


「冒険者の御方、ようこそいらっしゃいました。お話は中でいたしますのでどうぞお入りになって」


屋敷の中に案内された。客間にたどり着く間に何回かエプロンをして家事をしている人を見かけた。もうここまで来ると家政婦というより使用人と言った方が良いかもしれない。

客間に着くとすぐにお茶を出された。これは…紅茶だろうか?と言うかその前に自己紹介はしないと…


「僕は楓翔といいます。冒険者になったのはつい最近ですが」


「あら、新人さんなのね。依頼書を見てるから分かっているだろうけど私はハンナ。あなたのこれからの活躍を応援しているわ」


「ありがとうございます。それで依頼の件なのですがーー」


「えぇ、えぇ、そうなのよ私指輪をなくしちゃったの。明日結婚記念日なのだけれど夫から貰った大切な指輪が無いのはとてもまずくて」


「明日ですか!?」


「そう、明日。依頼自体は数日前に出していたのけどなかなか受けてくれる人が居なくて。いや、こちらでも探しているのだけど見つからないのよ」


「もうここでのんびりしている場合じゃ無いですね。早く探さないと…その指輪は普段身につけているんですよね?」


「えぇ、そうよ」


なら「匂い」は付いていそうだ。


「では探すにあたってハンナさんの匂いが付いている物を貸していただきたいのです」


「匂い…?それは何故なのかしら」


あっ…貸して貰う理由か…考えてなかった。素直にそのまま言った方が早い気もするけどなるべく言いたくないしなぁ…そうだ!


「実は1人協力者がいまして、その人は鼻がとても効くのです。ですのでハンナさんの匂いで指輪を探せると思いまして」


咄嗟に繕った。こちらの言葉を聞くとハンナさんはこちらをじっと見た。


「あなた…嘘をついているわね?」


うっ…顔に出ていただろうか…


「だってあなた仮に協力者の嗅覚で探すというならなぜ一緒に来ないの?それに絶対探し出せると思っているのなら「探せると思う」なんて言わないもの」


完全にバレてら…これはまた説明をしないといけないのか。


「ばれてしまいましたか…」


「バレバレよ。このくらい見抜けなきゃ商会商会長の妻なんてやってられないわ?で、本当はどうやって探すつもりなの?探す算段が付いているから依頼を受けたのでしょう」


これは話すしか無さそうだ…昨日も話したのになぁ、どんどんこの[特技]を知っている人が増えて行ってしまう…


「えっと…匂いで探すというのは本当なんですが…協力者っていうのがいなくてですね…」


「もう、隠せないんだからグチグチ言ってないで早く言ってしまいなさい!ほら!」


急かされて軽くパニックに陥る。


「こ。こうやるんです!」


変身、狼娘!と念じる。体を魔力が包み込み白く発光する。


「え?なに!?」


ハンナさんの驚いた声と共に客間のドアがガチャッっと開く音がした。変身が終わり目の前を見るとハンナさんが驚いた顔が見え、頭の上から聞こえるようになった耳からはドアの方から息をのむ声が聞こえた。


「……こういうことです」


「こういうことって何!?あなたは一体!?そもそもどこから来たの!?そもそもフウガ君は!?」


あまりの事態に状況が飲み込めていないみたいだ。音がしたドアの方を見ると護衛だろうか?武器を持った男の人と女の人がこちらを見て固まっている。

冷静に考えるといきなり変身しなくても良かったんじゃ無いか?ちゃんと説明した後であれば護衛二人に見られることも無かったんじゃ……

あぁぁばかばかばか!自分で知っている人を増やしてどうするんだ!こんなにボクって焦りやすかったっけ!?

み、見せてしまったのはしょうがない…説明をしなければ。


「ボクが楓翔です…」


「えぇ!?だって今までそこにいたフウガ君は人間の男の子よ!?それがなんで狼の獣人の女の子になるの!」


…何も知らずに変身を見た人はみんな同じような反応をするなぁ。しかも何も知らない人から見てもやはりしっかりと女の子に見えるんだなぁ…


「こ、これがボクの[特技]なんです!条件はありますが、こんな感じに種族の違う女の子になれるっていう…」


「そんな…そんな特技聞いたこと無いわ…でも目の前で実際に起こってるし…」


ハンナさんは数秒考え込むと突然両頬へ同時に手のひらを打ち付けた。


「ようするに姿は変わってもあなたはフウガ君って事ね?」


「は、はい」


「そう…それなら…なるほどたしかに、あまり他人には話したくないわね。このことは不用意に広めたりしないわ。でも本当に必要だと思ったときはだけは話すわ。それでいい?」


「はい。不用意に広めないのであればそれでいいです」


「あなたたちもそうするように」


と護衛の二人に言ってくれた。


「「わかりました」」


護衛の人にも頷いて貰えたので一安心だ。


「急かすようなことをしてごめんなさいね?でも悪人かもしれない人には厳しくしないとだから…でもこんなことになるなんて夢にも思わなかったわ…」


「こちらこそごめんなさい…軽くパニックになっちゃいました」


「いいのよ。悪人じゃ無いみたいだし。それにしてもあなた随分変わったわねぇ。もうその姿のまま戻らなくても良いんじゃ無いかしら」


一概に全否定できない事に微妙な顔をする。


「なんてね。冗談よ。さて、狼の獣人って事はあなた自身が匂いを嗅ぐって事でいいのね?


「はい。そうです」


「じゃあそうねぇ…これとかどうかしら?」


ハンナさんはポケットからハンカチのような布を取り出した渡してきた。


「少し嗅がせて貰っても?」


「もちろんいいわよ」


布の匂いを嗅ぐ。布に付いていた匂いはどことなく上品そうな匂いだった。よし、これなら捜索できそうだ。


「ちゃんと香りがします!ではこの布を借りていっても?」


「えぇ、じゃあよろしくお願いね」


借りた布をポーチに入れホーン邸から駆け出した。

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