焼却場
ご指摘をいただいたので1話から全体的に読みやすくなるように編集しました。
これまで読み辛いと思った方々すみません!
これでもっと読んでくれる人が増えますように!
焼却場に着いた。エルさんの言っていたとおりだいたい20分くらいかかった。
焼却場の形は四階建てくらいとそこまで高くないが敷地が広い構造になっている鉄でできた建物だった。
道路に面してゴミを運び入れる場所があり、今も多数のゴミ運搬馬車がゴミを運び入れている。
側面には作業員などが入るドアがあるのでそっちに行ってみよう。
従業員・作業員出入り口と書かれたドアを三回ノックする。すると中から「どうぞ。」と明らかに疲弊した声が響いた。
ドアを開けるとそこはいかにも事務所といった場所で作業着を着た10人くらいの人が椅子に座って何やら作業をしたり休憩したりしていた。
そのうちの一人、50歳くらいのおじさんがこっちにやってきた。
「何か用ですかな?」
「えーっと、冒険者ギルドで依頼を受けて焼却場の手伝いをしに着たんですけど…」
用件を言うと事務所に居る人たちの顔がパッと明るくなった。
「おぉ!そうでしたか!さ、中に入ってくだされ!」
事務所の奥に案内された。
「すぐにでも作業をして貰いたいのですが何か質問はありますかな?」
…ギルドでは焼却場と聞いてやってきたが具体的にはどんな風にゴミを処分しているのだろうか。
「つい最近王都に来たばかりでして、どうやってゴミを焼却しているのかも知らずに来てしまったんです。火を扱う魔法は使えるんですけど具体的にはどう作業すればいいですかね?」
「最近王都に来られたのですな!それは失礼しました。では説明いたします。あぁ、申し遅れました私はリッツバーグ、ここの所長を務めております。この南焼却場は王都に3つある国営の焼却場の1つで、担当範囲は王都の東南から西南に渡る扇状の範囲。主なゴミの焼却方法は火を出す魔道具ですぞ。」
ゴミを燃やすことができる魔道具があるならなぜ冒険者ギルドに依頼を出す必要があるのだろうか?
「魔道具があるならなんで依頼を?」
「それはですな…魔道具があると言っても魔道具が消費するのは使用する人の魔力なので作業員が魔力を出し尽くしてしまうと燃やすことはできなくなってしまうのです。しかも引っ切り無しににゴミは湧いて出る物。連日魔力を使ってるせいで皆疲れ果てているのです。」
なるほど…だから皆疲れた顔をしているのか。
「しかも一日に出るゴミの量が多すぎて捌き切れていないというのが今の現状。生ゴミなど、時間が経つ前に処分しないといけない物から焼却をしているのですが一日はだいたい生ゴミなどを焼却すれば終わってしまう。なのでそれ以外のゴミが溜まっていく一方なのです。ですからあなたにはその生ゴミ以外の処理をお願いしたい。」
「わかりました。こっちも名乗っていませんでしたね。僕は楓翔と言います。では早速案内していただけますか?」
「フウガ殿ですな。しっかりと憶えましたぞ。では案内する前に焼却場に入るに当たって作業着と防煙防毒の魔道具もお貸しします」
作業着とマスク状の魔道具を渡された。
「その魔道具は口と鼻が外気に触れないように着用してくだされ。魔道具の効果としてはその名の通り焼却の際にでる煙などの有害な物から守ってくれる効果がありますぞ。」
「なるほど…では作業着に着替えてきますね」
「更衣室はこの事務所の奥にありますのでそこで」
リッツバーグさんが指し示す先にはドアがあるのでそこだろう。作業着を手に更衣室に向かった。
つなぎのような作業着に着替え、まんまマスクな魔道具を顔に付けリッツバーグさんの所に戻る。
「準備ができたようですな。では、案内いたします」
リッツバーグさんに続いて焼却場の中に入る。そこは大きい倉庫のような感じだった。所々に換気扇のような穴がある。
この穴の中には空気を清浄する魔道具があり、この魔道具によって外に出る空気は正常に保たれる。とさっき事務所に何故か張り紙がしてあった。
更に進むと一際ゴミが積み重なった場所に着いた。
「ここら辺一体が溜まりに溜まったゴミになっております。全部とは言わないのでできる限り減らしていただきたいのです」
「わかりました」
「それでは、私は事務所に居りますので終わったらお声がけを頼みますぞ」
そう言ってこちらに背を向け歩き出した。
手始めにファイヤーボールを投げ込んでみる。元の世界と違いプラスチックのような物が無いためよく燃えているのがわかる。
が、ゴミの量が多すぎて雀の涙程しか減っていない。
もっと一度に多く処理するには……手段を選ばないのなら酸を使えないだろうか?
魔法で酸を作り出してゴミの山にぶつける。すると紙の時と同じく黒ずみさらに体積が少し減った。火よりは減っている気がするがいまいちだなぁ。
…もしかしたらスライム状態の酸ならもっと一気に溶かしてゴミを大きく減らせるかもしれない。
ただ…スライムになるとするとリッツバーグさんには話しておかなければならないな…何も話さないで変身後のすがたを見られたら討伐されかねない。なにせ形以外は完全にスライムだし…
ということで少し遠くを歩くリッツバーグさんを呼び止める。
「すみませーーん!」
振り返ったので声は届いたようだ。
「なんですかなーーー?」
「少しお話ししたいことが!」
「了解しましたー!」
走って戻ってきてくれた。
「すみません。呼び止めた上に戻ってきて貰っちゃって」
「なに、問題はありませんぞ。で、お話とは何ですかな?」
「実はこのゴミの山を大幅に減らせるかもしれない案を思いつきまして…」
「ほうほう!ですが私を呼び止めたのは何の関係が?」
「それが…その案というのが僕の[特技]を使った方法なんですけど、ここからは極力他の人には言わないでほしい内容なんです」
「わかりました。これから聞くことは極力他の人に話さないことを約束しましょう」
「そう言ってくれて助かります。では…その方法というのはですね、僕がスライムに変身します。そしてその状態では強力な酸を出すことができて、その酸をゴミの山にかければゴミを大きく減らせるのでは無いかって言う…」
思った通り唖然としている。そりゃそうだろうな…
「……はい?酸とは確かスライムが出す物を溶かす性質がある液体ですよな?それを…スライムに変身して…ですか?そんなバカな…」
「残念ながら冗談でも嘘でも無いんですよ…でももしこれが成功したら大きくゴミを減らせるはずです」
「冗談では…無さそうですな。しかしなぜこれを私に言ったんですかな?それこそその変身?が解けた後に事務所に顔を出せばいいのでは」
「それが…スライムに変身した後の姿って喋れたり人型ではあるんですけど完全にその他の要素がスライムですし、更に不本位な事に喋り方や口調まで変わってしまうんです。そんなのを何も知らずに見たら大体の人は「うわぁぁスライムだぁぁぁ」ってなると思うんです。だから一人知っている人を作っておかないとと思った次第です」
「そういうことでしたか…わかりました」
了承を得たので変身を始めよう。エルさんやリラさんやヘルミネ、カインの4人以外に知られるの恥ずかしいが…しょうがない。
頭の中で変身、スライム!と念じる。するといつものように全身が光に包まれる。近くで「うおっ!?」とリッツバーグさんの驚いた声が聞こえた。
数秒で変身はおわったがやはり頭のふわふわ感がある。
「よし!変身かんりょー!」
「いやはや、本当に変身なさるとは…しかも性別まで変わっているとな…世界は広いですなぁ…」
リッツバーグさんが遠い目をしてる。こっちも遠い目をしたいがぐっとこらえた。
「じゃあ危ないから少し離れてて-」
「わ、わかりましたぞ」
離れたのをみて酸を出す準備をする。うーん前出したくらいの酸の量じゃ少ないよね?だから魔力をギリギリまでためてだそう。
大量の酸のイメージをする。するといつもと変わってお腹の方に液体がたまってる感じがする。それを一気に口から吐き出す!
「んーーーーーーーびゃーー」
酸は口からゴミの山の方にみずでっぽうで出した水のように飛んでいってゴミに降りかかった。
降りかかってすぐゴミの山から「ジュワッ」っと音がしてみるみる溶けて減っていく!
「やった!成功したよ!」
「おぉぉ!ゴミの山が凄まじい早さで減っていく!素晴らしいですぞ!フウガ殿!」
しばらく待つとゴミ山の一角が消えていた。ただ思ったより魔力をたくさん使うから…あと2回が限界かなぁ。
「ごめんねーでもあと2回くらいしか出せなさそうなんだー」
「そんな!十分すぎるほどですぞ!魔道具を使ったとて1人ではどれだけ頑張っても今フウガ殿が処理したくらいが関の山なのです。それを3人分やってくれるとは…ありがたい限りですぞ!」
そっかー魔道具使ってもこれからいしか燃やせないのかー
「じゃああと2回頑張っちゃうね!」
「はい!お願いしますぞ!」
そのあと2回同じぐらいのゴミを減らした。
「本日は誠に感謝しますぞ!これで皆の負担も少し減りましょう。あの…差し支えなければまた今度来ていただけると助かるのですが。」
「いいよー」
「おぉ!ありがたい!では今日はこれで終わりなのですが…その、いつ元に戻られるので?」
今変身して20分くらいかな?なら…
「あーあと10分後くらいかなぁ」
「では元に戻るまで雑談でもしながら待ちましょうぞ」
雑談をして10分ほど経ち、元に戻ったところで事務所に帰ってきた。
自分の服に着替えてリッツバーグさんの所に戻る。
「本日はありがとうございました!また依頼を受けてくださることを心から待っていますぞ!」
そう言ってデスクから紙を渡される。
「これが依頼達成の紙で、これを冒険者ギルドの受付に渡せば報酬が貰えるのです。後追加でこれもギルドの受付に一緒に出してください」
最初に貰った紙より小さな紙を貰った。
周りを見ると従業員の皆さんがみんな笑顔でこっちを向いていた。なんだか気恥ずかしくなりながら事務所を出てギルドに向かった。