王都内の依頼
翌日、目を覚ますと筋肉痛はだいぶマシになっていたので今日からまたギルドの依頼を受けていくことにする。
ちなみに昨日は熟睡した後夕方過ぎに起きたが夜は特に何もなかった。
今日は町の中の依頼を受けてみようか。
身嗜みを整え朝食を済ませ受付へ向かう。
今日の受付はエルさんのようだ。受付は一日おきの交代制なのだろうか?
「おはようございます!エルさん」
「おはようございます。今日は体の調子は大丈夫ですか?」
リラさんに昨日のことは知らされているようで心配してくれていたみたいだ。
「はい。まだ少し筋肉痛が残ってますけど動けるくらいには回復しました」
「それはよかったです。では今日は依頼を受けられますか?」
「はい!でも外に出るのは不安なので王都内で受けられる依頼ってありますか?」
「ありますよ。そうですね…廃棄場の掃除や探し物、馬車なんかを引いている騎獣と呼ばれる魔物の世話やその小屋の掃除なんかがありますね。」
掃除に探し物に魔物の世話か…何でも屋って感じだなぁ。
「このような雑用みたいな依頼はまぁまぁ大変な割に貰えるお金が少なくてあんまり人気が無いんです。だから受けてくれる人があんまり居ないんですが、ここは王都なのでゴミは毎日たくさん出るわので処理しなければならない量は多いんです…なので掃除やごみ処理はほぼ常時依頼化してて常に受けてくれる人を探している状態ですね」
掃除かぁ。……もしかして酸が役に立ったりするのだろうか?
「掃除の依頼の内容はどんな物になっているんですか?」
「そうですね…」
そう言うとエルさんは受付の台の下から10枚以上はある紙の束を取り出した。
あれ全部掃除やごみ処理の依頼なのか…
「例えばこれとかですね」
紙の束の中から一枚取りだして見せてくれる。紙を見てみると
王都焼却処分場:火の魔法が使える、またはその他ゴミを処理できる手段がある人募集
と書いてある。
その他にもこの処分場ではない王都内の別の処分場からも依頼が来ていたり屋敷の掃除の手伝いの募集なんかもある。
「なるほど…確かに多いですね」
「そうなんです。掃除以外にもこういった「面倒だけど報酬が美味しくなくて人気がない依頼」が多くあるんです。もし受けていただけるのなら2割ほど報酬金を上乗せします」
2割も上乗せするのか…しかしギルドは仲介料で経営しているはず、支払うお金に足が出たら経営が成り立たなくはならないのだろうか。
「2割も上乗せして大丈夫なんですか?」
「それくらい切羽詰まっていると言うことです…預かった依頼があまりにも達成されないとギルドの沽券に関わりますので」
なるほど…多少赤字でも評判が落ちないよりは大分マシということか。
王都内なら余程のことが無ければ危険も少ないだろう。数回王都の外に出て気付いたが自分が思っていたよりこの世界の人の手が届いていない場所は王都近郊であっても危険だ。ウルフに襲われたときも変身が無ければ死んでいた可能性だってある。
正直なんとかなるだろうと舐めていたが実際戦ってみると身近に死を感じた。
せっかくヘルミネに(可愛がられるという代償を負ったが)剣を教えて貰えるのだ。剣を教えて強くなってから魔物を討伐をしても遅くは無いだろう。当分は王都内で剣術を習うなり魔法をもっと練習するなりしようと思う。
常時依頼と化した掃除やらの比較的安全な依頼があるんだ。食うには困らないだろう。
「それじゃ受けてみようと思います」
「助かります。あまりにも溜まりすぎると上がうるさいんですよ…」
エルさんが深い溜息をつく。
ここ数日の間多くを教えて貰ったし少しでもエルさんやリラさんの重荷を取り除くいい機会だと思う。
「そうなんですか…大変ですね…実は当分王都の中で鍛錬に励もうとと思いまして、だからそういう掃除の依頼とかを積極的に受けていこうと思います」
「本当ですか!それはありがたいです!」
エルさんが受付から体を乗り出しながら目を輝かせる。
か、顔が近い…
「あっすみません。つい…」
少し顔を赤くしながら受付の中に戻る。
「いえ、任せてください!と、とりあえずここから一番近い依頼は何ですか?」
内心ドキドキしたが顔には出さず平然を装って返事をする。
「そうですね…ここから一番近いのは…王都南焼却場ですね。ギルドから南の大門へ向かって主要道路を行く途中に少し大きな道路があってその道路を西に行くと王都南焼却場があります。おそらく20分ぐらい歩けば着くと思います」
「わかりました!そういえば報酬はいくらなんです?」
「5000イムですね。でも二割増しで6000イムです」
5000イムか…ウルフ4体かスライム7体も狩れば超える値段だな。ウルフに至っては死体を持ってこれればもっと金になる。
確かに割のいい仕事では無いな。人気じゃ無い理由も頷ける。
「では、行ってきます。」
「お気を付けて!」
エルさんの見送りを背に焼却場へ向かった。