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筋肉痛と朝シャワーの葛藤

少しサブタイトルを変えました。

異世界に来て六日目、もはや見慣れた部屋の天井を見て目を覚ます。


「昨日は散々だったなぁ…」


と独りごちる。昨日は名前を決められた後まるですり込まれるようにトランと呼ばれながら撫でられぷにられて変身が解けるまでめちゃくちゃにされた。

その後は夕飯を食べ、二人と別れた後部屋に帰ってきた。凄まじく疲れたのでベッドに寝っ転がった途端に寝てしまった。

そのため昨日はシャワーを浴びていない。今日は先にシャワーを浴びよう。


「痛っ!」


体を動かそうとして気付いた。


「痛くて動かせない…」


…昨日剣の練習で激しく動きすぎたせいか首から上以外が筋肉痛が痛すぎて動けない。


「どうしたもんかな…腹も減るしエルさん達にも心配かけそうだし…」


ギルドの一室だからマスターキーはあるだろうがこのまま出て行かなかったら押しかけてきそうではある。

ただ押しかけて来られたとき動けない理由が筋肉痛ってのは…かっこ悪いな…


「何か手は…」


…変身でどうにかなったりして?そんなまさか。だがまぁやってみないよりはマシだろう。

スライムじゃギルドをうろつけないから数日ぶりの狼娘にしよう。

変身、狼!と念じ、狼娘に変身した。体は…少し痛いけど動かせそうだ。狼娘の時の方が身体能力が高いから筋肉痛の度合いも軽いとかあるのだろうか?

動けるようになったでとりあえずシャワーを浴びようと思い立ち上がり二つの問題点に気付いた。

一つ目、狼娘のままシャワー浴びるの…?でもシャワー浴びないと落ち着かないし…リラさんに洗い方教えて貰ったから…と考えてそもそもリラさんと一緒にシャワーを浴びたことと自分の体を全て見られた事を思い出し顔が赤くなるのを感じた。

そこまで考えて二つ目の問題が差し迫ってきた。


「トイレしたい…」


これまでトイレするときは元の姿だったが今は違う、女の子の体なのだ。


「どうしよう…女の子はトイレあんま我慢できないって聞いたことあるし…」


それに我慢しようにも変身が解けた途端に歩けなくなるほどの筋肉痛に襲われるだろう。

ならばもう一つしか手段は無い。諦めてこのままするしか…そう考えているうちにいよいよやばくなってきた。


「ええい!ままよ!」


トイレに駆け込んだものの一瞬戸惑う。ギルドのトイレは元の世界で言う洋式だ。どうやら転生者の先達がどうしてもと広めたらしい。なんならこの王都には上下水道も普通にある…と便座に座って現実逃避をするがとうとう本気で尿意が来た。……パンツに手をかけて下ろすのも恥ずかしいのにそんな、お、おしっこなんてーー


「ふわっ」


ジャーーー

「うぅぅ……」


初めての女の子としてのおしっこはもう、未知としか表わしようが無かった。

……また一つ男として大事な物を失った気がした。



男の時には無い”ソコ”を恐る恐る備え付けの紙で拭いてからトイレを出る。


「ふぅぅぅぅ」


ただトイレをしただけなのにどっと疲れた。

悩んでたけどやはりシャワーを浴びよう。

一昨日シャワーを浴びたときに使い、干してあったタオルを手に取りシャワールームに向かおうとしてほんの少し違和感を感じた。最初はその違和感について分からなかったが少しその場で考えてわかった。タオルから匂いがするのだ。自分の匂いが。それがなんとなく、少しだけ嫌な感じがして、ついリラさんに風呂に入れて貰ったときに使って干してそのままにしてあったタオルを手に持ったタオルと入れ替えで取った。


「こっち使おう」


何故こんなことをしたのかはわからない。けどなんとなくそうしたくなった。ただそれだけだ。

赤くなりながらも服を脱ぎシャワールームに入る。いつも変身したら着ているワンピースを脱ぐと目に入る肌色に、自分の体だけどなんだかいけないことの様な気がして鏡に映る肢体をなるべく見ないようにしながら鏡の前の椅子に座ったが、鏡に視線を吸い寄せられ、今日初めて”自分”を見た。

頭の上に狼耳を乗せた銀髪の少女が映っている。こうやって一人で鏡越しにまじまじと見るのは初めてな気がする。


「これがボク…かぁ」


ボクが瞬きするすると鏡の中少女も瞬きをし、軽く微笑んでみても鏡の中の少女も微笑む。鏡に向けて右手を伸ばす。

男の時に比べて数段細いその腕の手のひらが鏡にくっつく。鏡の中の少女の手もこちら側に向かい手が伸ばされ、鏡越しだが手のひらがくっついたようになる。

鏡だから当然のことなのだがあまりにも現実離れしすぎてある種神秘的に見えた。

ふと鏡の中に少女の少し膨らんだ胸が見え隠れしているのを見て一気に夢が覚めたかのように我に返った。

な、ななな何を考えてるんだボクは!もう一度鏡を見ると顔を真っ赤に染め、目の端に涙を溜めた少女が…


「あっ……かわいい…」


いやかわいいじゃなくて、これは自分だぞ!?それをかわいいだなんてそんな…

プシューと音を立てそうなくらい茹で上がったボクは、風呂に入ったわけでもないのにのぼせてしまった…


また真っ赤になりながら体を拭き、髪を乾かした後、ベッドに突っ伏した。

突っ伏しながら思い描くのはさっき鏡に映っていた狼娘の自分では無く、二日前、シャワーを浴びているときに一瞬映った(ように見えた)少女の姿だった。この世界の[特技]という能力は大抵は自分がやりたい、なりたいと思う[特技]になるらしい。まさか自分はあの少女のような「可憐で可愛くなりたい」なんて心の奥底では思っているのだろうか?


「いや…そんなはず、ない」


精一杯の否定をする。考えているうちにここ数日の疲れがぐっと出たのか自分では気付かないくらい自然に眠りに落ちた。

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