表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力過多と道具屋番外編集  作者: 梅谷理花
Twitterフォロワー200人ありがとうございます
4/11

アレンの趣味(本編第28話後)

Twitterフォロワー200人を達成し、お願いをききますよ~と言っていたら、またアレンの道具作りが見たいとリクエストをいただきました。

霜秋の月だから昨年の11月のことですね。だいぶ遅くなって申し訳ありませんでした。

お楽しみいただけると嬉しいです。

ウォーレン歴8年 爽秋の月10日 昼




 今日は前日の依頼の疲れが残っているからということで、エスターとアレンはおのおの自室でゆっくり休むことにしていた。


 天頂に昇った陽の光が部屋に射しこむくらいになって、アレンは仮眠をとっていたところから起き上がった。


 少しぼんやりする頭で、自分の体調を確認する。けっこう疲れは取れてしまったらしい。


 朝から半日も経っていないが、まあ昨日の自分はエスターについていくだけで、今日に残るほどの疲れはさほどなかったのだろうと結論付ける。


 エスターはきっともう少し休息が必要だろう。ということはひとりで余った夜までの時間を過ごさないといけないわけだが……。


「魔術道具でも作りましょうかネェ」


 掛け布団をどけながら呟いて、アレンはベッドから下りる。結局のところ、アレンは仕事も趣味も魔術道具作りなのである。


 室内収納から、いつもの魔術道具関連の本や、こういうときのために買ってある無加工の小物たちを取り出して、アレンは部屋の床にそれらを広げた。


「さてェ、今日はどんな魔術道具を作りましょうかァ……」


 アレンの作る魔術道具として定番なのは、ガラス瓶を使った魔術道具だ。ポーションが湧く「魔力瓶」はエスターに何度も使ってもらっている。


 今も取り出してきた小物の中になにも加工していないガラス瓶がある。これをいじるのも楽しいかもしれない。


「そういえばエスターサンは紅茶がお好きでしたネェ」


 ふとアレンは呟く。ガラス瓶を持ったまま小首を傾げた。


 魔術道具の型からは外れるが、水もお湯もポーションも湧くのだから紅茶だって湧いていいはずだ。


 ただ、ガラス瓶だと熱いかもしれない。たしか陶器のポットもどこかに……。


「あァ、ありましたァ」


 ちょうどよくポットがあったことだし、今日は紅茶が湧くポットに挑戦してみよう。アレンはガラス瓶を置いて陶器のポットを手に取った。


 魔術道具の基本的な回路図がびっしり載っている本たちを小脇に抱えて、いつも作業スペースにしている場所に移動する。


「うーん、まずはァ、水とポーションの回路図を見比べてみましょうかネェ……」


 どの線がなにを意味しているのか、解読せねばならない。まあそれが楽しいのだけれども。


 本の該当のページから回路図を紙に写して、アレンはしげしげとそれらを見比べる。


 共通している図形を紙を重ねたりして探っていく。この二つの魔術道具の共通点は「魔力を込めると湧く」というところだ。


 おおよそつかめたところで、次は相違点を探っていく。水の回路は線一本だ。単純明快この上なくて、アレンは思わずクスッと笑ってしまった。


 ポーションの回路は複雑だがこの解読は一旦置いておいて、アレンは本をめくる。紅茶に繋がりそうな回路は転がっていないものか。


 普段あまり見ない方の本に手を伸ばしてめくっていくと、解毒薬の湧く瓶の回路図が出てきた。


 この本は古いから、解毒薬は薬草の煮詰めたのをベースにしているだろう。参考にできそうだ。


 アレンはまたしても回路図を紙に写し、ポーションの回路図と見比べる。


「なるほどこのあたりが回復や解毒の効果範囲ですかァ……」


 ぶつぶつ言いながら別の紙にメモを書き散らしていく。紅茶が湧くポット、試しにやってみることはできそうだ。成功するかはともかく。


 しばらくそうやって思考を整理していたアレンだったが、ひとつ頷いて新しい紙に慎重に回路図を描きだした。


 アレンなりに考えた「紅茶が湧くポット」の回路図だ。


「あとはここに魔力を込めてェ……」


 いつもの金属製の杖で回路図に魔力を込める。ポットに光が吸い込まれたのをしっかり見届けて、アレンはポットを持ち上げた。


 部屋備え付けのテーブルに移動して、室内収納からカップを取り出す。


 そして、ポットに魔力を込めた。


 しばらくそうしていると、ポットから湯気が出てきて、あまりいい香りとはいえないが紅茶のような香りが漂いだした。


 アレンは緊張しながらポットの中身をカップに注ぐ。


 ……あまり美味しそうに見えない濁った茶色の液体がどぼどぼ、とカップに満たされた。


「まァ一発ではうまくいきませんよネェ……」


 アレンは苦笑して肩を落とす。


 そうやって、アレンの昼過ぎは紅茶の湧くポット作りに溶けていったのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ