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魔力過多と道具屋番外編集  作者: 梅谷理花
魔力過多と道具屋完結記念
11/11

Happy Birthday to Me 2

ウォーレン歴10年 余寒の月19日 朝




 私とアレンさんが新しく旅に出てから、9ヶ月。私たちは王都から伸びる街道を行ったり来たりして、今回は王都から南東のイテアの町で宿をとっている。このへんは冬でも雪が降らないって、話で聞いてはいたけど、本当に雪の気配がまったくないのには驚いた。


「それどころか、冬でも畑に作物があるって言ってたなぁ……」


 ぼうっと窓の外を眺めながら、私がそんな独り言を言っていると、部屋の戸がノックされた音がする。アレンさんは朝からどこかへ出かけてたけど、やっと帰ってきたのかな?


「はーい?」


「ただいま戻りましたァ」


「おかえりなさーい」


 戸を開けると、そこに立っていたアレンさんの腕の中には、なにやら抱えるくらいの大きさの箱がみっつ。私がきょとんとそれを見つめると、アレンさんは唇に大きい弧を描いて、部屋に入ってきた。


「なんとか間に合いましたァ」


「なになに?」


「まだ秘密ですヨォ。……ちょっと外に出ていていただいてもォ?」


「……りょうかーい」


 普段ならもうちょっと食い下がるところ、ぐっとこらえて、私はいつものウエストポーチだけを持って部屋から出た。階段を下りて、宿を出る。


 ……だって今日は、私の誕生日だ。


 アレンさんは、ひとの誕生日を忘れないひとだっていうのは去年わかったし、今年は自分の誕生日だってそわそわしていた。これで私の誕生日を祝う気がなかったら、偽物だと思う。


 間に合ったっていうのも、たぶん私へのプレゼントのことだろう。ちょっと外に出ていてほしいっていうのは、あの箱の中身を加工とかするのを見られたくないから。


 という推測が立ったので、私はおとなしく外に出てきたわけだ。


 それにしても、いったい何をプレゼントしてくれるんだろう? 去年のブレスレットには、王都行きを見越して、【防壁】が仕込んであった。アレンさんはそういう実用的なのが好きなんだろう。あと魔術道具が。


 でも、もうそういう危険な旅はしばらくしないし、そうなってくると、普段魔術道具を作ってもらってるのと大差なくなってくる。


「なんだろう……?」


 近くの喫茶店に入って紅茶を飲みながら考えたけど、私にはさっぱり予想がつかなかったのだった。


~~~~~


 そろそろいいかな、と夕方に宿に戻ると、アレンさんがもじもじと戸を開けてくれた。準備は終わったらしい。


 私まで照れくさくなってきて、ふたりで橙色の部屋の中で向き合ってまごまごしていたけど、アレンさんが気を取り直したように顔を上げた。


「お誕生日おめでとうございますゥ!」


 アレンさんがこちらに差し出したのは、手のひらにすっぽり収まる、こじゃれた小箱。


 ……ん? 小箱?


「ありがとう……でも、あの大きな箱は?」


 小箱を受け取りながら思わず疑問が口をつく。アレンさんはそれはもう嬉しそうににぃっと笑った。


「箱を開けてのお楽しみですヨォ」


「……??」


 とりあえず、箱を開けてみる。そこに入っていたのは、金の鎖とロケットペンダントだった。


「……ロケット?」


「ただのロケットだと思いますかァ?」


「思わないけど……」


「開けてみてくださいィ」


「う、うん」


 箱から取り出して、ロケットを開ける。中にはリウユの花、このくらいの時期にニーグィ地方でよく咲いているいい香りの花、の絵が描かれた小さなカードが入っていた。


「わ、」


 可愛い! と言おうとした、そのとき。ぶわっとロケットから光があふれる。


『エスター』


「え……お母さん?」


 あふれた光が形をとって、お母さんの姿を浮かび上がらせている。前に「映像紙芝居」で見た感じの光景だ。


『お誕生日おめでとう。体に気をつけて。しっかり食べて、しっかり寝るのよ』


「お母さん……」


 ふっと光が一瞬消えたかと思ったら、次はお父さんの映像が現れた。


『エスター、誕生日おめでとう。どこに行っても、真面目さは武器だ。しっかりやれ』


 感動する私を置いて、次はなんと、高等学校の制服を着た弟のリッキーの映像まで出てくる。


『姉ちゃん、誕生日おめでと。俺は元気でやってっから、姉ちゃんも元気でな』


「みんな……」


 しゅるりと映像が切り替わって、アレンさんになる。……目の前にもいるんだけどな……。不思議な感じ。


『エスター、お誕生日おめでとうございますゥ。これからも楽しく旅を続けまショウ』


 ふわ、と余韻を残して音と映像が消える。私は言葉をなくして、楽しそうに揺れているアレンさんを見つめた。


「あ、アレンさん……」


「いやァ、録画用の『映像球』を送ったり届けていただいたりしていたらァ、あやうく間に合わないかと思いましたヨォ」


「…………」


「エスター?」


 気付いてなかったけど、思っていた以上に、住み慣れたケミスの町を離れている寂しさがあったらしい。久しぶりの家族の声で、実感した。


 アレンさんはそれを先回りして気付いてたってこと……?


 私は嬉しさのあまり、アレンさんに飛びついた。


「アレンさん、ありがとう!!」


~~~~~


「……ところで」


 しばらくはしゃいだあと、私はふと気付いてアレンさんの顔を見上げた。


「はいィ?」


「アレンさんって、アクセサリーをプレゼントするの、好きなの?」


 去年がブレスレット、今年がペンダント。この調子でいくと、私の身に着けるものがアレンさんからもらったものばかりになりそうだ。


「…………」


 私の疑問に、アレンさんはちょっと考えるようにあごに手をやったあと、こてんと首を傾けた。


「特にそういうわけでもありませんがァ、エスターになにをプレゼントしようかと思ったらァ……これでしたネェ」


「ふーん……?」


 深い意味は、ない、のかな? なにはともあれ、最高のプレゼントをもらえて、とっても嬉しい誕生日になった!

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