箱推し少女の異世界譚 〜箱推し少女はヒロインに溺愛され、悪役令嬢と腹黒王子にペット認定される〜
パーティー会場は騒然としていた。
令嬢達は豪奢なドレスで着飾り、紳士達は礼服を纏う。
王立魔法学園、卒業パーティー。
誰もが予想外の展開に驚く中、最も困惑する私。
「どうしてこうなった!!!!!!!???」
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はいどうもこんにちは!
いつもニコニコ箱推し少女アリスです!
サクッとトラックに轢かれて転生! 気がついたら箱推ししていた乙女ゲームで農民をしていた私です!
記憶を思い出したのは5歳の頃。いつも仲良しだった幼なじみを見ていて、突然『ゲームのヒロインじゃん!』と記憶が爆発。自分が箱推ししていたゲームに転生したと自覚しました!
そこで私は推しに会うために行動を始めた!
まず推したちに出会うためには、ゲームの舞台となる王立魔法学園に入学する必要があった。
まあ本来は農民には入る事は不可能だよね!
そんな不可能を可能にしちゃうのが我らのエリーゼちゃんだ!
魔法学園の入学の条件である魔法適性はぶっちぎりの最高値を叩き出し、しかも全7属性の才能もあるまさにチートガール!(さすが主人公)
そんな主人公補性バリバリのエリーゼちゃんについて行くために、私もゲーム知識をフル活用した!
『アリス。そんな所でなにしてるの?』
『もちろん魔法の練習だよ!』
『……裸で川の中にいることが?』
『そうよ! 私は水と一体になってるのよ!!』
そう! 魔法適性とは7歳までにある程度鍛えられるのだ!魔法の才能なんてこれっぽっちもない私は、ゲームではネタ設定と言われていたこの方法で魔法適性を得るのだ!
水属性だったら一定時間水の中にいる事で最低限の適性は身につくし、風属性も風になれば万事OK!(意味深)
そんなこんなで、私は魔法適性をどんどん身につけていった!
『アリス。一応聞くけど、なにしてるの?』
『ふふふ! よくぞ聴いてくれた! これは魔法の練習だよ!』
『……土に埋まることが?』
『もちろんよ! 私は土と一体になってるのよ!』(物理的に)
『アリス! 今度はなにをするつもりなの!?』
『当たり前だのクラッシャーだよエリーゼちゃん! 魔法の練習をするの!』
『外は嵐よ! 早く家に戻りなさい!』
『ふふふ! 雷に当たれば雷属性ゲット! 我はかみ、なり!』(エ○ルさんリスペクト)
『いい加減にしなさい!!!』
『ごふっ!!』
エリーゼちゃんの説得もあり、全7属性を身につける事はできなかったけど、水・土・風・氷の4属性を身につけた私! 10歳の時に行われた検査で無事に魔法適性が認められ、エリーゼちゃんと一緒に学園に行けることが決まった。
ちなみにエリーゼちゃんは、ゲーム通り7属性の適性を持った神童として認められました!やったね!
「エリーゼちゃん! やったね! 学園に行けるんだよ!」
「アリス。不安じゃないの? 学園には貴族の方ばかりで、平民なんてほとんどいないのよ」
「楽しみでしかないよ! 早く行きたくて行きたくてもう──堪らないよねぇ!!」
「本当に能天気よね……」
私は推しに会いに行けるからボルテージが最高潮だが、どうやらエリーゼちゃんはご不満の様子。不安な表情もベリーグッド! 最高に可愛いぜ!
「確かにエリーゼちゃんの不安もわかるよ! 平民のくせに超絶かわいくて、才能も貴族以上! 成績も抜群だからいじめられる要素しかないよね!」
「笑顔で言うなこのバカ!」
「──でもね。エリーゼちゃんは絶対に大丈夫だよ。なぜなら──守ってくれる人がいるからさ!」
「……アリス!」
そう! エリーゼちゃんの前にはイケメン王子様や、俺様貴公子。異国の美少年に、色気ムンムンの年上お兄様が現れるのだ! それに悪役になり切れない悪役令嬢とか、私の推しが勢揃い! こんな最高の環境はないよね。
まあ、どのルートに入ってもイケメンがエリーゼちゃんを守ってくれるし、何より私が守り抜くぜ!
「アリスと一緒なら、どこへ行ってもやって行けそうだわ」
「でしょ! せっかくの王都なんだし、全力で楽しもうよ!」
ああ。待ってて私の推したち! 草葉の陰から全力で見守るから通報とかしないでね!!!!!!
そんなこんなで、大慌てする親達を尻目に私たちの入学が決まった。そして激動の準備期間が始まったのだ。
学園から送りつけられた大量の課題に、タウンワークより分厚いマナー指南書。予備知識なしに私達を学園に放り込むほど無慈悲ではないようだが、学園の教授達はなかなかスパルタだ。
だってそうでしょう。10歳の学校にも通っていない少女に、文字から自分で覚えろって言ってるんだからさ。
まあ、そこは私がなんとかするんだけどね!
伊達に前世で大学まで通ってわけじゃないし、何よりやりこみまくったゲームに転生してるんだぜ!
試験イベントを全て満点で突破するまで設定を読み込んだ私に、死角など存在しないのだ!!
……それになぜか、全部日本語表記だったしね。
予告なしに始まった怒涛の勉強会。普通の10歳児なら逃げ出す内容に、我らが天使エリーゼちゃんは必死に食らいついた!
「問題! 前国王の名前は!」
「タケール・タナーカ・シゲール・(中略)・フォン・マクファーレン!」
「正解! さすがエリーゼちゃん! マジ天使!」
「問題! 先代ヤマーダ公爵が不倫した回数は!」
「121回!」
「イグザクトリィ!! ついでに奥さんに刺された回数は!」
「49回!!」
「マーベラス!!! 完璧だぜぇ!!」
製作陣が悪ふざけで作った問題集を次々に撃破し、凄まじい成績を残すエリーゼちゃん。真剣に取り組む姿はマジ天使! 何時間眺めても飽きない最高の時間でした。
悪ふざけの問題から一般的な数学の問題まで、エリーゼちゃんは完璧にマスターした。
絶対にIQ200超えてるよね? 超絶天才だよね? 超絶美少女だよね??!(震え)
しかもエリーゼちゃん、マナーまで完璧にマスターしちゃったんだよね。その成長ぶりは、簡素な服がドレスに見えるレベルだ。誰も平民出身だなんて信じないと思う!
それに加えて魔法の技能も、えげつない速度で上達するんだよ!私が土に埋まっている隣で、炎のドラゴンとかカメ○メ波を習得するんだよ。
ゲームの主人公のスペックの高さを知った2年間でした(笑)
エリーゼちゃんの修行編を終えた後は、馬車でドナドナ〜っと王都まで運ばれ即試験! 怖〜い先生方に見守られ試験をこなし、無事に満点合格することができました!
……もちろんエリーゼちゃんが。
ちなみに私も特待生の枠は取れたけどケアレスミスが結構あって、そこそこの点数で合格しましたとさ。ちゃんちゃん。
「エリーゼちゃんおめでとう! 首席合格だよ!!」
「ありがと。でも、アリスのおかげで合格できたのよ」
「そんな事ないよ! エリーゼちゃんが頑張ったから結果がついてきたんだよ!!!」
「またそうやって言うのね……」
おや?私の押しがちょっと拗ねてるぞ? カメラはどこに行った!!?
「はぁ……。アリスは自分の評価に無頓着よね」
あかん。アンニュイな表情も可愛すぎる。そろそろ写真集とか作りません? 私が買い占めます。ついでに握手会もプリーズ!!
というか、私の自己評価? そんなの全力のモブに決まってるじゃん! 最近の少女漫画の自称平凡な主人公と違って、ガチのモブなんです!
身長も平均的だしスタイルも、ストーン! ストーン! がっしり! って感じで全身スリムボディだ。
顔もそばかすだらけだし、村を見回しても中間くらいだったと思う。
しか〜し! 我らがエリーゼちゃんは格が違うぞ!
艶々の金髪は頬擦りしたくなるほど綺麗だし、真っ白なお肌はプルプルだ! 何度抱きついたか思い出せないぜ!
碧眼は透き通るように綺麗だし、ぷっくりした唇は子供と思えないほどエロい。これは王子さまも惚れるよね(確信)
「アリス。またバカなことを考えているでしょ」
「そんなことないよ! この世界の奇跡に感謝していたのさ!」
「そう。いつも通りってことね」
呆れたようにため息をつくエリーぜちゃん。うん。愛しいぜ! さすが私の推しだ!!
いつも通りエリーゼちゃんの尊さを確認した後は、学園が用意してくれた宿舎に向かった。学園に通う子供は等しく寮に入るんだけど、やっぱり貴族と平民の子供を同じ空間んで生活させるわけにはいかないんだって。
そんな悲しい事情のため、私たちの部屋は学園の隅っこにある一軒家だ。私の今世の実家の3倍、前世の実家の2倍ある大きさの建物で、学園の財力の凄さが滲み出てる。マジで半端ないっす。
ちなみに学費・生活費は学園持ちで、お小遣いまでくれるのだ! 特待生万歳!!
「エリーゼちゃん! この家地下室があるよ!!」
「こっちにはお風呂までついてるわ」
「おお! ベッドだ! ふかふかのベッドがある!!」
「……石窯までついてるのね。実家に帰れなくなりそう」
私たちの愛の巣(!?)はめっちゃ豪華だった。普通の平民でもこんな家に住んでないと思います。
「しっかしすごいね〜。掃除まで完璧だからすぐに住めそうだね!」
「ええ。もっとひどい扱いを想像していたのだけど、想像以上に居心地が良さそうだわ」
部屋割りをサクッと決め、荷物を運び込む。入学式まで1ヶ月あるんだけど、今日から住んでいいそうだ。
入学式までの1ヶ月は内職したり、勉強したりとやる事も多い。もちろん王都を観光がてらエリーゼちゃんとデートもするが、この期間にやっておきたいことは多い。
それは──資金集めだ。
学園から支給されるお金で最低限の生活はできる。ゲームではもらったお金を自分磨きに使ったり、体力の回復に使っていた。
ゲーム通りエリーゼちゃんのためにお金を使いたいのだが、現実では生活費も必要になってしまう。
……だって、食べなきゃ死んじゃうんだもん。
そんなこんなで、今もらったお金だけじゃエリーゼちゃんの魅力アップまでお金を使うことができないのだ。
早急にお金を稼ぐために、プランYを発動したいと思います。
「エリーゼちゃん! ちょっと出かけてくるね!!!」
「ちょ、アリス?!」
「夕飯までには帰るから安心してね! ──あ! 夕飯は何がいい?」
「シチューでお願いします」
「りょ〜かい! とびっきりのシチュー作るから待っててね〜!」
「……うん♪ ──じゃなくて! どこに行くつもりなのよーー!!!!!!!」
弾丸のように飛び出し街中をダッシュする。夕飯のメニューを聞いたのは、私が料理担当だからだ。パラメーターをあげればエリーゼちゃんも家事万能になるが、幼い頃から私が甘やかしたせいかエリーゼちゃんは家事が苦手だ。
別にできないわけじゃないんだけど、なぜか家事をやりたがらないんだよね。私としても推しの世話をできるのはご褒美なんで大歓迎なんだけどね!
だってお腹を抑えて『お腹すいたぁ』って、いつもクールなエリーゼちゃんが上目遣いでお願いしてくれるんだよ! なんてご褒美だ!! そもそもエリーゼちゃんの可愛さは──
……閑話休題。
ともかく私は走った。かの暴虐無人な王は倒さないけど、金策のために全力で走った。
ゲームでは学園祭で出店を出す練習という名目で、生徒は街中で屋台を出す許可をもらっている。事前に役所に話を通す必要があるが、学園生なら屋台・材料まで貸し出してくれる親切設計。使わない手はないよね。
元手が必要ないから今すぐ始められるし、売り上げから材料費を返済すれば残りは私の物になるんだだ!全力で稼いでやりましょう!
「──へい! そこのイカス冒険者のお兄さん! キンキンに冷えたエールと揚げたての唐揚げはいかがですかぁ!!」
王都中央通り、中央広場。陽が傾き始めて仕事帰りの人がごった返す王都の中心で、私は屋台を構えて叫んでいた。
こんな一等地に出店するのは本来不可能なんだけど、学園生ってことでゴリ押ししてしもらった。役所の皆さん! 後で差し入れ持って行きますからね!!
「お嬢ちゃん一人でやってるのか〜?」
「はい! ちょっくら生活費稼ぐためにやってます! 一杯どうですか!!」
「えらいなぁ!なら唐揚げ串ってのを一本と、エールを一杯くれ!」
「まいどぉ! 熱いから気をつけてねぇっ!」(居酒屋風の掛け声)
少女一人でやっているせいか、珍しさに声を欠けてくれる人が多い。今も使い込まれた大剣を背負った、スキンヘッドのおじさんが唐揚げ串とエールを買ってくれた。
額にでっかい傷があるし、きっと『向こう疵の巨人』とかって呼ばれてそうだ。
「うお! この肉うまいなぁ! 油で揚げるとこんなにうまいんか!!」
「でしょっ! 特製のタレに漬け込んでる自慢の唐揚げだよ!」
「っていうかこのエールうますぎないか!! なんで冷たいだけでここまで味が変わるんだ!!」
「そりゃあ、熱々の唐揚げとキンキンに冷えたエールがゴールデンコンビだからだよ!」
揚げ物とビールが合うのは世界の心理だよね!(元アラ○ーの本音)
それに冷蔵庫なんてない世界だと、常温でエールを飲むのが常識だ。そこにキンキンに冷えたビールを飲まされたら堪んないでしょ! もっとお代わりしていいんだよ!
ちなみに氷属性の魔法が使える私は、ただでエールを冷やすことができるので、付加価値もりもりってことで通常の3倍の値段で売ってます。悪徳商法じゃないよ、合法だよ!(焦り)
「お嬢ちゃんお代わり! こっちの串も追加だぁ!!」
「あいよぉ! 惚れ惚れする飲みっぷりだよねぇ! おっちゃんかっこいい!!」
マジでかっこいいよおっちゃん! おっちゃんが騒げば騒ぐほど人が集まるのだ〜! もっと宣伝してくれ!(ゲス顔)
『お嬢ちゃん! 俺にも一杯くれ!』
『こっちもちょうだい〜!』
おっちゃん効果でバリバリお客さんがやってきた。作戦通りだぜ!
今回は前世で聞きかじった、香りのマーケティングってやつを実践したのだ。人は美味しそうな匂いや、リラックスする匂いを嗅ぐと、自然と財布の紐が緩くなるのだ。
風の魔法で唐揚げの揚げてる音と匂いを拡散し、ついでにおっちゃんの声を増幅させて中央通りに流す。
そうすると仕事帰りの皆々様が釣れるって寸法よ! 実家の定食屋の常套手段です! 犯罪ではありません!
「ありがとうございます! すぐお渡しするので並んでくださいね〜!」
渾身の営業スマイルで唐揚げを渡していく。顔面偏差値に関係なく、笑顔は接客の鍵なのだ! 偉い人にはそれが分からんのですよ!!!!!!
おっちゃん効果のおかげもあって、たった1時間で完売してしまった。並んでくれたお客様には申し訳ないけど丁重にお帰りいただいて、ごねたお客様は、
『アァっン??!!!!!!』
という、おっちゃんの一声で解散した。さすが向こう疵の巨人。いや、本名は別に知らんけども。
「おっちゃん! ありがとうございました! いっぱい買ってくれて、販売まで手伝ってもらっちゃて……」
「俺が勝手にやっただけだから気にすんな」
おおう。このおっちゃんイケメンや。
最初のお客となってくれたおっちゃんは、売り切れまで何度も並び直し、何回も買ってくれたのだ。しかもイチャモンつけてくる人を追い払い、列の整理までやってくれる親切っぷり。頭が上がんないっす。
「いえいえ! お礼と言ってはなんですが、これを食べてください!」
「……これ、腐ってない?」
「おいおっさん失礼なこと言うなやぁ!! …………腐ってないですよぉぉぉ!」
「嬢ちゃん。全く取り繕えてないぞ」
このおっさん! 私謹製の煮卵を腐ってるって言いやがったなぁ! おつまみにぴったり! エリーゼちゃんおやつお気に入りランキング13位の煮卵なのにぃ……!
「悪かったって。一つもらうから許してくれよ」
そう言って、大きな口に煮卵を放り込むおっさん。
「…………っ!!」
信じられないってう表情で振り返ったおっちゃんに、静かに頷いて答える。どうだ! うまいだろぉ!!(ドヤ)
「……私にも一ついただけませんか」
「ぴっ!」
聞き覚えのある声に振り返ったら、視覚の暴力にあった。顔面偏差値はある一定値を超えると暴力となるのだ。
あかん。あまりの驚きに変な声が出ちゃったよ!
「坊ちゃんか! こんなところに珍しいですね?」
「ええ。学園に向かっている途中、幼い少女を脅しているバーンズを見かけたので声をかけたのです」
「違うからな! 脅してねぇからな!!」
必死な顔で振り返るおっちゃんだが、今はそれどころじゃない。私の目の前にいる美少年を私が見間違えるはずがない。私の推しの一人、第一王子のドミニク様だ。
なんで第一王子がこんなところにいるのぉ!! こんなイベントはなかったはずだよねぇ!!
「やはり怯えているように見えますが?」
「嬢ちゃん!? 頼むから否定してくれぇ!」
おっちゃんが騒がしいけど、私はそれどころじゃないんだ! 推しが目の前にいるんだよ! 尊すぎて死にそうです!
「バーンズ」
「違いますからそんなおっかない目で睨まんでください!」
ああ。声まで麗しいぃぃぃ! 生で聞くと威力が違うよね。声だけで死ねるよね!!
「失礼でなければ、バーンズに何をされたのかを教えていただけませんか? しかるべき処置を取るので」
「坊っチャァァん!!?」
「……バーンズ?」
推しの尊さに浸っていたら、聞き慣れない名前を連呼されてる。ん、もしかして……。
「おっちゃん、いつからバーンズになったの? さっきまで『向こう疵の巨人・ジャイアント』だったじゃん」
「生まれてこの方バーンズですけどぉ!! なんだその巨暴そうな名前はぁぁぁ!!」
「……くふっ……『向こう疵の巨人・ジャイアント』って……っ!」
「坊ちゃんも笑いすぎだ! 『……灼熱の暴君・オルテガ……』嬢ちゃんも新しいのを考えなくていい!!」
ふおお! 推しが笑ってる!! あのデレるまでに三回はディスプレイを叩き割りたくなる言われたドミニク様が笑ってるよ!!?
難攻不落の要塞と言われたドミニク様の攻略は、ゲーム内でトップクラスの難易度だった。
見た目は美少年。中身は腹黒。定番なキャラ設定だけど、その腹黒さが異常なことで有名だったのだ。
ヒロインが少しでも選択をミスすると、一瞬でバッドエンドに叩き落とす鬼畜ぶり。初見殺しの魔王とさえ言われたドミニク様に挑むエリーゼちゃんは、ドラ○エの勇者のようにレベル上げに勤しんだものだよ!
精神的に攻略する前に、物理的に講釈すると言う乙女ゲームにあるまじき設定だったけど、難易度が高すぎて逆に人気が出たキャラクターだった。
ちなみに私は30回目でクリアしました。……つまり29回デッドエンドを迎えたんだよね!(笑)。
「……ふぅ。久しぶりに笑いました。これは何かお礼をしなければ」
「ぴぃ!」
「どうか遠慮なさらずに、なんでもおっしゃてください」
「ピィぃぃぃ!」
「なるほど。それは大変でしたね。屋台の返却や精算は私の配下に任せましょう。ちょうどこれから学園に向かうところですし、送って行きますよ」
「ぴギャァ!」
「……なんで会話が成立してるんだよ」
推しに話しかけられた衝撃で、まともに喋れないぃぃぃ! でもなぜか伝わっている不思議! これは溢れる推しへの愛が為せる技か!!(錯乱)
恐らく屋台についてる許可証が学園のものだから学生だと判断し、屋台の申請をするのは殆ど平民の生徒だから、そこから私の状況を判断したんだと思う。
マジ天才! さすが魔王! 草葉の陰から見守らせてください!!
「では行きましょうか」
「こふっ」
お、お、お、推しが私の手を握ってるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!
「坊ちゃん。お嬢ちゃんがそろそろ限界そうだから許してやれ」
「おや。どうかしたのですか……!」
「…………(ビクン! ビクン!)」
「確信犯だろ! ほら! 必死に笑うのを堪えてるじゃねぇか!!」
「なんのことやら。紳士が女性に優しくするのは当然のことでしょう?」
「……我が人生にいっぺんの悔いなし……!(後光が指す)」
「じょ、嬢ちゃぁァァァァァァァァァァん!!!!!!」
推しの腕の中で見上げる空はとても青かった。
*
「あれ。ここは……」
推しの腕に抱かれていた気がしたけど、やっぱり夢だったんだよね。だって、気がついたらベッドの中にいる。
「アリス。目が覚めたのね」
「……エリーゼちゃん」
ふかふかのベッドの中からは、天使──じゃなくてエリーゼちゃんが出てきた。一体どんな状況なの!?
「まったく……本当にびっくりしたんだからね」
「えっと……何があったの?」
「覚えてないの? 働きすぎて倒れたアリスを、バーンズさんとドミニク様が送ってくれたのよ」
ああああああああああああ!!!!!! あれは夢じゃなかったのか!!!!!!
え! じゃあ、本当にドミニク様に触っちゃたの!! 大事件じゃん! 強火担にコロコロされちゃうよ!!?
「もう。また私に黙って無茶なことしたのね」
プリプリと怒るエリーゼちゃんも可愛いが、これはガチで怒っている時の表情だ。以前同じ状況になった時に巫山戯たら、思い出したくもないほどお説教されたのだ。しかも一週間エリーゼちゃんに『アリスさん』と呼ばれて発狂したのを覚えてる。
これは対応を誤ればまた悲劇が起こってしまう……!!
「え、えっとね、ちょっと想定外の出来事がありまして……」
「バーンズさんが言ってたの。アリスは生活費のために必死に働いってるって」
バーンズぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!おま、黙れよぉぉぉお!!!!!!!
「アリス。無茶はしないって約束したよね」
「はい」
「夕飯はシチューって言ったよね」
「はい」
「……私を守るって言ってくれたよね」
「もちろん! 私はエリーゼちゃんが大好きだからね!!!」
不安げな表情のエリーゼちゃんが可愛すぎて、心臓が破裂しそうでヤバイ!
マジ私の幼なじみが天使! 推しの間近にいるって天国だよね!!
エリーゼちゃんが心配してくれたのはもちろん嬉しいし、何よりここまで信頼してもらえてるのが予想外だ。
エリーゼちゃんとは家族以上の付き合いをしてきたし、どんなときも一緒にいたけど、ここまで心を許してくれるなんて嬉しすぎるよ!! とりあえず抱きしめていいですか?
「……なら心配させないでね。これからは、私も一緒に働くからね!」
「……え?」
「い・い・わ・よ・ね!」
「もちろんです! いや〜! 嬉しいなぁ〜!」
「白々しい。でも、次、勝手に私のそばから離れたら許さないからね……」
「ぴぃ!」
「ふぅ。分かってくれたならいいのよ♪」
今、エリーゼちゃんから冷たい波動を感じたけど気のせいだよね?
とりあえずエリーゼちゃんと仲直りできたし、オールOKだよね! 明日からもバリバリ働いて入学に備えなきゃ!!
エリーゼちゃんに叱られた翌日からは、二人で屋台を切り盛りした。超絶可愛いエリーゼちゃんが受け渡しとエールを担当し、唐揚げ揚げるマンとなった私が唐揚げを作り続けた。
お陰でかなりのお金が貯まったし、何より常連さんもできたことで知り合いも増えたのだ!
そこには学園に通う予定の商人の子もいて、順調な滑り出しだと思う。
それとなぜか、ドミニク様が頻繁にお店に来るようになったんだよね。にこやかにエリーゼちゃんと話す姿はマジ天使だし、動画に残したいくらいの尊さだった!!! スチルにないツーショットってご褒美だよね!
マジでありがとうぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
あ、後はバーンズさんもちょくちょく遊びに来てくれたんだ! 結局何をやっている人なのかは分からなかったけど、見た目は完全に堅気の人間じゃないよね。ドミニク様の知り合いだから、そこそこ地位はありそうなんだけど……。
充実した日はあっという間に過ぎ去り、気がつけば入学式が終わっていた。運よくエリーゼちゃんと同じクラス、しかも隣の席になれたので初日から最高の気分だった!
「んん〜! いよいよ学園生活の始まりだ〜!」
ああ……これからすべての推しを見守る日々を過ごせるのか……! 幸せすぎて溶けそうだよ!!
何より隣にいるエリーゼちゃんが可愛すぎるんだよぉ! 王都に来て栄養価が高いものを食べていたせいか肉付きも良くなったし、気持ち程度のメイクだけど、エリーゼちゃんの素材を生かしていてマジ天使! 美形が多い貴族の方々よりも輝くって……最高だよぉ!!
「全員揃っているようだな」
ざわついていた教室に、一人のイケメン……じゃなくて先生が入ってきた。あの先生はモブ扱いで名前が無かったんだけど、それでも顔面偏差値が高すぎてヤバイぃぃ!
どこを向いても推ししかいないって、どんな天国?
しかもエリーゼちゃんと同じクラスってことは、攻略対象が全員揃ってるんだよね。同じ空気吸っているって考えただけで死にそうなんだけどどうしよう!
「……アリス。大丈夫? 目がヤバイよ」
「大丈夫じゃないよエリーゼちゃん! 私、どうにかなっちゃいそう!!」
推し×推し=♾
これが世界の心理だと認識しました。世界って、広いんだね(遠い目)
「アホなこと言ってる暇はないわよ。自己紹介、次はアリスよ」
「……へ?」
エリーゼちゃんの言葉に目を丸くし、教室に意識を向けてみる。うん。確かに前の席の子が自己紹介してるね。
「──よろしくお願いいします」
前の席の子が礼儀正しくお辞儀して着席する。え? もう私の番ですか??!
助けを求めて隣のエリーゼちゃんを見ると、『早くしなさい』と口パクで教えてくれた。とっても可愛いかったです!
あかん! エリーゼちゃんを眺めてる場合じゃないんだ! 早く自己紹介せねば!!
「は、はじめまして! アリスと申します! 皆様と同じ空間で過ごせることが嬉しくて静かに見守っているので私のことは壁か空気と思ってそっとしておいてくださいよろしくお願いいたします!!!」
「…………」
「…………」
「………(くふっ!)」
あ、沈黙に耐えきれずにドミニク様が笑った。
「……………次の方。自己紹介をお願いします」
気を取り直した先生の言葉で固まった教室が動き出す。アホでごめんなさい! だって仕方がないじゃない!! 推しに囲まれて平然としていられる奴は箱推しじゃないよぉぉぉぉ!!!!!!
羞恥心が爆発してる私と違ってエリーゼちゃんは自己紹介を無難にこなし、他にトラブルもなく自己紹介は終わった。その後はゲームのチュートリアルで何度も聞いた説明が続き、今日は解散となった。
先生が立ち去った後の教室は、すでにいくつかのグループに分かれていた。
これは仲がいい子同士で集まっているんじゃなくて、貴族の派閥同士で固まっているのだ。一番大きな集団は、もちろんドミニクさまの派閥だ。他の攻略対象も何人もいて、大変目の保養になる空間である。
「……アリス。何してるの?」
「ん? 尊かったからとりあえず拝んでた!」
「………そう。幸せそうでよかったわ」
輝きすぎて目が眩んだので、手を合わせて拝んじゃった。だって、ご利益ありそうなんだもん。
「……何をしているのですか?」
「拝んでいるそうですよ。理由は私にもわかりません」
「……くふっ……! そうですか。エリーゼにわからないのであれば、私にも理解できませんね」
「……あげませんよ」
「おや? なんのことやら。貴女からいただくものはありませんよ?」
拝んでいたはずの押しの声が聞こえた気がしたんだけど、あら不思議。本当に目の前にいるんだけどぉ!!?
ていうか、エリーゼちゃんとドミニク様ってこんなに仲がよかったの!!? 確かに、ドミニク様とはちょくちょく会ってたんだよ。
屋台にやってる時はお客さんとしてきてくれたし、学園に来た時は私たちの寮にも寄ってくれた。その度に私は記憶を飛ばすほど混乱していたんだけど、その間に仲良くなったのかな?
「アリス。君はどう思いますか?」
「ぴぃ!」
「ああ、また緊張していたんですね。んー、なかなか慣れてもらえませんね」
「ぴぃ……!」
「そんなことはありません。学園では身分に関係なく、切磋琢磨することが奨励されています。貴女も気軽に声をかけてください」
「こふっ!!!」
お、推しの笑顔……プライスレス……!!!!!!
「あ、アリス! もう! ドミニク様は何度アリスを気絶させれば気が済むんですか!」
「私はただ話しかけているだけなんですが……」
「アリスには1日一度見にくるまでです! それ以上は過剰摂取になるんです!」
「お前らはなんの話をしているんだ……」
推しが一人……推しが二人……推しが三人……。ああ、桃源郷はここにあったんだね。もう、思い残すことはないよ……。
「え、エリーゼちゃん。今までありがとう……」
「ちょ、アリス! こんな事で死なないで!」
「エリーゼちゃん……」
「帰ったらアリスの好きなもつ煮を作ってあげるから!」
「なら私は膝枕でもしてあげましょうか?」
「くはぁ!! …………セカイヨ、アリガトゥ」
「アリスぅぅぅぅぅぅ!!!」
*
『ドミニク様! アリスで遊ぶのはやめてください!』
『くふっ! いえ、誤解ですよ……(プルプル)』
『もう! アリスは私のアリスなんですからね! ご飯を作ってもらうのも、一緒にいるのも、いじり倒すのも──私の特権です!』
『……本当に面白い方達ですね。いえ、本当に面白いです……くふ!』
『がるるるるっ!』
『そんなに警戒しないでください。ほら、アリスさんを保健室まで運びましょう』
『あ、ちょ、待っ──』
*
ああ……。幸せな夢を見ていた気がするよ。右を向いても左を向いても推しがいる空間。あれはファンをキュン死させるキリングゾーンだね。きっと生還率は1%を切るに違いない。
「ん、ここは……」
ようやくはっきりした頭で記憶を掘り起こす。
あ、さっき会ったことは夢じゃなくて現実だったんだ。そりゃ、気絶もするよね。むしろよく持ち堪えたと自分を褒めてあげたい。
見覚えもあるしここは保険室だと思うけど、エリーゼちゃんすらいないのはなんでだろう? ついに見放された?
「……推しに会うたびに気絶するのは問題だよね……」
入学前にドミニク様が遊びに来てくれたときも、私は2分の1の確率で気絶をしていた。だってしょうがないじゃん!! 推しが目の前にいたら呼吸を忘れるでしょ! ファンの常識だよ!(迷言)
でも、推したちが尊いのは変えられないし、私が耐性をつけないと日常生活すら送れないんじゃないだろうか……。
──バンっ!
「ぴぃ!」
いきなりドアが開けられたことにも驚いたけど、開けた人物を見た瞬間もっと驚いた。
え? あれ? クローネたんじゃん??!!
「貴女がアリスね」
「ぴぃ!」
「ふん! 何を言っているのかわからないわ!」
ですよねぇ!!
「まあ、いいわ。今日は忠告するために来たのよ」
そう言って、扇で口元を隠すクローネたん。マジ小悪魔っす!
そう! クローネたんとは、ドミニク様の婚約者でいわゆる悪役令嬢のポジションだ。エリーゼちゃんがドミニク様と仲良くなると、嫉妬して嫌がらせをしてくる典型的なライバルキャラなのだ!
ただその嫌がらせの仕方が可愛いんだよ! 勉強もできるし、何よりも頭の回転が早いクローネたん! 自分で商会を作って大儲けしたり、他の貴族の不正を摘発したりするスーパー才女なのだ!!!
……ドミニク様が絡んだ瞬間ポンコツになっちゃうから、結局エリーゼちゃんにドミニク様を取られちゃうんだけど、そこまで酷いバッドエンドは存在しないのだ!
pattern1 エリーゼちゃんと一緒にお嫁さんエンド! 個人的にはこれが一番好きなんだよね!
pattern2 婚約破棄されちゃうが、自分の作った商会で大儲け!世界を股にかける大商人へと駆け上がるルート!
こんな感じでクローネたんも、ほとんどバッドエンドがないんだよね〜。発売当初は処刑エンドとかあったけど、クローネたんの人気が高すぎて修正が入るという異常事態!! いや〜! 掲示板が荒れる荒れる(笑)
「──無視しないでくださる!!」
「ぴぃい!」
ヤバイ! 妄想に耽りすぎてクローネたんのことを忘れてた……!
怒った顔を激かわゆすです!!
「ドミニク様をたぶらかしただけでなく、その太々しい態度……万死に値しますわ!」
「ご、誤解です! ドミニク様をたぶらかしたりしていません!」
「潔く認めなさい! 近頃ドミニク様は会えば貴女の話ばかり……絶対に誘惑したのでしょう!」
WHAT's!! 私がドミニク様を誘惑?!?? 恐れ多くてできないですよ!!!
「待ってください! こんな貧相な体に、平凡な顔。ドミニク様が相手にするはずがありません!」
だってエリーゼちゃんなら惚れちゃうのもわかるよ! 美人だし、スタイル抜群だし、優秀だし、いい匂いがするし、柔らかいし……(自重)
「──ドミニク様が、私に、魅力を、感じる可能性は、ありません!!!!!!」
「……そこまで卑下しなくとも……」
あ、クローネたんがしょんぼりしちゃった。やっぱりこの子、優しいんだよね〜。
「だってこんなに素敵なクローネたんが婚約者なんだよ! 可愛いし、一途だし、健気だし、何より可愛いんだよ!!」
「えと、あの……」
「なんでこんなに髪が綺麗なの!!? 金髪碧眼ってもう暴力だよねぇ! 可愛さで人が殺せるよねぇ!!」
「ちょ、やめ……!!」
「んん〜! いい匂い! ほっぺもモチモチだ〜! 可愛いい〜!!!!!!」
「あううぅ……!!」
「──何をしているの?」
「くふっ! ……こふ、こふ……っ!」
あら不思議。クローネたんを無意識に愛でていたら、鬼神を背負ったエリーゼちゃんと、笑いすぎて涙を流しているドミニク様がいるよ〜?
………………あかん。やらかしたァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!
これ、不敬罪で首が飛ぶよねぇ!!! それよりもクローネたんに嫌われたよねぇ!!!
「アリス。家に帰ってからじっくりことこと話を聞くからね」
「え、エリーゼちゃん。わかったからおろしてくれないかなぁ〜? なんて……」
「…………」
「ごめんなさい! なんでもないです!!!」
エリーゼちゃんの後ろに見える鬼神様が怖すぎて反論ができない!! いつからそんな能力を身につけたの!!?
「失礼します」
ドミニク様に短く告げたエリーゼちゃんは、私を担いでさっさと救護室を出てしまう。
うう……。今日は1日お説教コースか〜。明日は無事に学校に来れるといいなぁ……。
*
『クローネ。彼女たちは面白いでしょう?』
『はい。普通でないことは確かですわ』
『くふっ! 顔がにやけていますよ』
『〜っ! こ、これは別に、照れているわけではありませんよ! ただ……もう! 笑わないでください!』
『申し訳ありません。ただ、久しぶりに素の表情を見れたので嬉しかったのです』
『〜〜〜〜っ!!!』
『……ふふ。彼女に出会ってからは退屈しませんね……!』
*
どうも! エリーゼちゃんの激おこ→拗ねる→甘やかすのお説教3コンボを喰らったアリスです!
いや〜! ほんと、いいもの見ましたよ! 人生で一番ときめいた日かもしれないね!!!
アリスちゃんのお説教を乗り越えた私だが、まだクローネちゃんの問題が残っている。残っている筈だったんだけど……『もう体は大丈夫なんですの?』と、怒られるどころか心配されてしまった。なんで?
そこからは怒涛の学園生活がスタートした! ドミニク様とクローネたんは、ゲームと違ってラブラブリア充生活しているし、なぜか私たちにめっちゃ絡んでくるのだ。ゲームであったような嫌がらせイベントも特にないし、他の推したちとも普通に仲良くしている。
一方エリーゼちゃんはというと、常にわたしと一緒に行動していた。特定の攻略対象と仲良くしているわけではなく、満遍なく好感度を稼いでる感じだ。これは逆ハーエンドに入ったのかな?
そんなこんなで月日は流れ、あっという間に最後のイベントの日を迎えた。年越しを祝うパーティーなんだけど、断罪イベントがある時はパーティー中に、フリーだった攻略対象と結ばれるときはパーティー後に告白イベントがあるのだ!
エリーゼちゃんはみんなと仲良くしていたし、逆ハーエンドだと思うんだけど、一向にイベントが起きる気配がない。今も嬉しそうに私と手を繋いでいるし。
「──皆さん。重大な発表があります」
お! ついに来たか〜!
ドミニク様が壇上に立って、エリーゼちゃんに向かって手招きをする。
うんうん。この時に笑顔ってことは、逆ハーエンドじゃなく、みんなお嫁さんルートだな! クローネたんもエリーゼちゃんも幸せになる最高のエンドだよね!
だから、エリーゼちゃん。ドミニク様のところには一人で行くんだよ? 私は関係ないよ?
「私。ドミニク・フォン・マクファーレンは、ここにいるエリーゼ。そして──アリスを側室として迎える!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………へ?」
今なんて言った? 側室? 私が? ドミニク様の?
「── ── ──かふっ!!(白目)」
「あ、アリス!! しっかりしてぇぇ!!」
アリスは当然のように気絶し、エリーゼは悔しそうにドミニクを睨みつける。ドミニクは笑い転げ、クローネはアリスを心配してオロオロする。
箱推し少女の前途多難な側室生活が幕を開けた──
*
登場人物の本音!
アリス:どうしてこうなった!!!!!!!
エリーゼちゃん:アリスは私のもの! クローネ様とドミニク様とは休戦協定を結んだ。
ドミニク様:クローネとの関係を改善するきっかけをくれたアリスに感謝している。ちなみに異性としてではなく、手のかかる妹のような認識。エリーゼも含めて、逃すつもりはない。
クローネたん:ドミニク様とラブラブになれてハッピー! エリーゼは友達として尊敬しているし、アリスは可愛い妹だと思っている。常に心配で、ついつい構ってしまう。
閲覧いただきありがとうございました!
ノリと勢いだけの作品でしたが、楽しんでもらえたら幸いです♪( ´▽`)
同時に『ツンデレ少年は天然少女と変態を連れて青春ラブコメをする』と『双子の妹が堪らんなく可愛いので全力で甘やかすために冒険者を目指します!!!』という作品を投稿しています!
暇つぶしに読んで頂けると、こた猫望外の喜びですヽ(;▽;)ノ