ミルキーと朝食
ダイニングルームに着くと、真っ白なワンピースを着た、妻の大天使美女女神が待ってくれていた。勿論大天使美女女神なんて名前は偽名である。本名をここに書いたのを本人にバレると死の危険を感じるが、しかし日記の性質上書かないと会話がおかしくなるので敢えて書く。本名はミルキーだ。
ミルキーは諸事情により本名を身内とごく親しい友人以外に知らせていない。かといってあの偽名はあんまりすぎると思うのだが何分彼女が幼少の頃につけた名前だし、口に出すとやはり身の危険が差し迫りそうなので何も言わないでいる。諸事情については流石に書かないでいようと思う。
ミルキーはいつも三つ編みのおさげで両目をとじ微笑んでいる。それは諸事情に絡むことなので詳しくは書かないが、魔眼がどうとかではない。
後ろには従者のスィルとスォルが控えていた。ミルキーとそっくりな見た目をしているが、ミルキーの姉妹という訳ではない。スィルとスォルは双子だが。それにミルキーには本当の妹がいる。しかし、スィルとスォルとは生まれた時から一緒に育ったそうだ。
とかいう僕も、ミルキーとは付き合いが長い。何せ人見知りが終わっていない頃からの付き合いだ。お互いが従者を除いて初めてできた友達だと思う。なんとなく運命とか感じているが、恥ずかしいので本人には言ったことはない。
後付け足しておくと、何故二人で一緒に寝てないかといと、単にお互い自室で寝たいからである。ミルキーはそこまで緑が好きという訳ではないので、緑だらけの部屋で寝たくはない。しかし僕は勿論緑に包まれて寝たい。他にも色々と理由はあるが、別に仲が悪いということではない。一緒に寝ることだってある(ちなみに、互いの自室ではなく二人で寝る為専用の寝室だ)。
「おはようございます、くりじい。今日は風と雷が来るので、早く公務を終わらせて下さいね」
「わかってるよ」
風と雷とも僕たちは幼い頃からの友達だった。だから風と雷はミルキーという本名を知っている。風と雷は今は結婚していて、子どももいる。天国に程近い仙界に住んでいて、今日は気まぐれに遊びにくる予定なのだ。二人とも仙人である為、例の門を気軽に通ることが出来る。
何故仙界に住んでいる、仙人である二人と出会ったのかは、現世でいう学校(一応天国にだってある)の頃に遡ることに為今日は書かないが、何はともあれ親友だ。
仕事を終わらせる為にも朝食を食べてしまおうと席に着いた。ダイニングルームの机と椅子は残念ながら瑞春石ではない。白を基調とし、金や銀の細やかな細工がしてある。
朝食はパンとサラダとコーンスープだった。僕はパンをコーンスープと一緒に口に入れるタイプだ。サラダには天国特製ドレッシングをかける。味は説明出来ない。
「僕たち以外はみんな朝食を食べ終わったのかな?」
「どうでしょう、起きたのは貴方よりも随分と早いですが、ここに来たのは貴方に合わせて少し前ですからね」
「そうか。それにしても二人きりというのは案外珍しいかもね」
「それもそうですね。大体いつも入れ替わりになることが多いとはいえ、誰かしらここで会うことが多いですから」
スィルとスォルは普段から余り会話に入らない。僕のことが嫌いとかではなく、単に寡黙な性格なのだ。ミルキーと三人のときは仲良く笑い合っているのをみかけるが、それ以外のときはほとんど喋らない。
二人とも、朝食は僕が来る前に食べていたようだ。天国なので、従者がご飯を好きな時に食べられないとかそういう理不尽はない。
天国特製ドレッシングが美味しくサラダをむしゃむしゃと食べ尽くした。