表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は僕が見えない  作者: ろむろむ
2/4

中学生。白間さんと言う人。

感想交換を終え、僕等は帰り支度をしていた。もう昼をとっくに過ぎていて流石にお腹がすいてきた…


「白間さんクラスで見る時と印象違うね」


今まで教室で見る彼女は誰にでも優しくお淑やかという印象だ。口調だって丁寧な感じ。今みたいな強引、天真爛漫な感じとは違ったと記憶してるけど。


「そりゃねー。ただのクラスメイトと友達じゃ態度も変わるよー」


「友達って?僕?」


驚いた。今まで誰とも打ち解けず友達ゼロの僕に対して彼女は友達と言ってくれている…


「君以外に誰がいるのさー?まさか友達じゃないとは言わないよね?」


「まさか…」


ムッとした顔…所謂ジト目で睨んでくる彼女になるべく平静を装い返す。返せてるよね?


「友達!いや寧ろ友達以上!」


機嫌を直した彼女は胸の前で手を合わせ情熱的に語り出す。なんか怖い…


「長時間肩をくっつけて同じ本を読んで仲じゃない!こんなの友達同士でも難しいよ!ね?親友!もうこれ親友じゃないかな!かな!」


その語尾をやめて!詰め寄るな怖い…目のハイライトを消すな怖い…


「お、おう親友…ところで何でこんなに僕を良く思ってくれてるの?話した事なんて今までに少ないと思うけど…」


「ないよ!」


「あ、はい。んで?どして?」


「んー。難しく考えなくて良いよ。ただ気が合ったってだけだよ!それに…」


「それに?」


「エリック好きに悪い奴はいないよ!もっと言うと好きな物を共有出来るって嬉しい!」


バッと腕を広げて嬉々と話す彼女はクラスで見るものとは違う…本物の表情を浮かべていた。


「その気持ちはすごくわかるよ」


僕等は帰り支度を終え、図書室を出た。





ー夜ー

僕は自分の部屋で本を読んでいた…

でも…


「集中できないなぁ…」


原因は学校の図書室での事。白間さんだ。ろくに女子と話した事もない僕にとって彼女の積極的な態度はとても刺激があった。ましてや白間さんである。皆に優しいその姿は男子からはとても人気があり一部の人からは女神とまで言われるほどだ。そんな彼女にあんな態度をとられると…


「勘違いしそうになるよなぁ」


そうなのだ。彼女は完璧なのだ。故に今回も人付き合いが苦手な僕の為に積極的に来てくれたのだ。流石だなぁ…白間さん。

でも、もしあの態度が本当だとしたら…



まさかね…







ー翌日ー



「黒井くん!黒井くん!この本なんだけどさ!」

朝、教室に入った瞬間こっちを見て詰め寄る白間さん。あれ?さっきまで他の女子と「白間さん髪さらさらー」「そうですか?ありがとうございます」「シャンプー何使ってるの?」※黒井妄想含む※的な会話をしていた雰囲気だったのに…


「女の子の心情の表し方が独特でさ!」


なおも話し続ける彼女。ほら!クラスの人がすっごい不思議そうな顔してるよ!あいつ何者だ?ってただのクラスメイトだよ!何者でもないよ!あの人誰?じゃねぇよ!前の席の佐々木ィ!


「白間さん白間さん…めっちゃ目立ってる…」


「ん?何が?そんなことよりさ!」


僕の縋るような目を無視して続ける白間さん。ちょ…多くの視線に慣れてないんだってば…

しかし、そのまま白間さんの情熱的な語りは

ホームルームが始まるまで続いたのだった。




ホームルームが始まるまで?誰がそういった?私だ。彼女のこの行動は放課後まで続いた…


「黒井くーん!一緒に帰ろー!」


帰りのホームルームが終わった直後白間さんは直ぐに僕の席へ駆けてきた。食い気味に来る白間さんの勢いに少し気圧される。


「白間さん早いね…」


「だって早く来ないと皆んなに捕まっちゃうもん」


チラリと視線を横に向ける白間さん。その視線の先では白間さんの席に行こうとするクラスメイトが固まっていた。

あー…成る程。今日1日を通し白間さんはずっとみんなから質問責めを受けていたから…

そう…僕への態度の変わりよう、やはりみんなの疑問は彼女にぶつけられた。なんで彼女に?彼女だけに?

理由は簡単。誰からも人気のある彼女には質問もし易いが……し易いが…誰とも交流もない僕のとこには質問すらもし難いのだ!のだ!のだ。のだ…はぁ…


「なんで黒井君と仲良くなってるの?なんてさ変な事いうよねー。そんなの別に私の勝手だしさー。何か特別な理由なんて必要ないよねー。何度も同じ事きいてくるしさー」


質問されまくった彼女は不満を周りの人にも聞こえるくらい堂々と話す。周りへの気遣いが出来ている彼女がこんな行動に出るという事はとても機嫌が悪いらしい。


だからこのタイミングは非常にまずかった…


「黒井なんかと帰らず俺らと帰ろうぜ?そいつずっと本読んでるからあんま楽しくないっしょ?」


クラスの男子が白間さんに声をかけた。まあ、僕としては彼のいう事も間違ってないしそこまでの悪意の無い軽く言ってしまった事と思っていた。でも、彼女はそう受け取らなかった。


バン!と強く机を叩きその男子を睨みつけたのだ。


「あのさ、黒井なんかってどういう事?朝から私言ってるよね?私は彼と親友になりましたってさ。それをさ…なんかってさ。喧嘩売ってるとしか思えないんだけど?楽しくない?はあ?ただのクラスメイトの君と帰るより数万倍黒井君と帰る方が楽しいっての…だからさ…」


バン!

ヒィッ!


「…あまり変な事言わないで」


シンと静まり返る教室。初めての白間さんの怒りようにクラスのみんなと言葉を失っている。


「もう帰ろ?黒井君。って何で君が怯えてるの?」


まるで君とはもう話すことが有りませんと言うように男子から顔を背け僕の方を向く白間さん。何で怯えている?あなたが私の机を叩くからその度にびびってたからですよ!


「あはは!黒井君は怖がりだねぇ。そんなんじゃエリックは程遠いゾ」


無邪気に笑う彼女からは先程の怒りはすっかりと消えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ