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彼女は僕が見えない  作者: ろむろむ
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中学生。出会い。

初めての投稿で拙い文章ですけど許してください。誤字脱字もあるかと思われます。

「良かった…開いてる…っ!」


僕は図書室のドアを開ける。

真壁先生の車がなかったから今日は開いてないかもと思った…

真壁先生はこの中学校の図書の先生で図書室の鍵を持っている。平日は居るけども今日は学校が休みの土曜日。たまに居ないこともあるのだ。しかも図書室の鍵だけ開けて学校にいない時すらある。だから土曜日はドアに触るまで結果が分からないのだ…これが中々にスリルがある…

中に入るとやっぱり真壁先生は居なかった。開けっ放しで出掛けていいのかなあ…

ま、開けてくれるのは嬉しいけど!


頭に浮かぶ疑問を直ぐに追い出し、僕は本棚へ向かう。今日の本は『エリックの冒険2』だ!主人公のエリックは勇気があってヒーローみたいな男の子。読んでるうちにまるで僕も勇気が出てくるようなすごい物語だ。子供っぽいとは言われるけど好きな物は好きなのだ。


本を手に取り僕は窓際の席に向かう。窓から太陽の光が入って暖かくて気持ちが良い席。特等席に座り伸びをしてから本を開く…





物語は中盤。エリックがヒロインのエリーを救うためにドラゴンを倒しに行くところだ。ドラゴンの猛攻の中、剣一本を頼りに特攻を仕掛ける。身体のあちこちに炎のブレスで火傷を負い、ドラゴンの鋭い爪で切り傷を負いながらもトドメをさす。ボロボロの姿で目的をやり遂げて剣を高々に掲げるエリック…


「ふう…」


読み終えた僕は息を吐いて本を閉じる。やっぱりこの本は良い。まるで自分が冒険している気分になれる。


「今の僕ならドラゴンとでも闘えそうだ…」


馬鹿なことを呟きながら次の巻を手に取る。

その時窓の外から声が聞こえてきた。外を見るとグランドで同学年の人達がサッカーをしていた。あ、同じクラスの人もいる。



……楽しそうだな…

別にスポーツが好きって訳ではないけど皆んなでワイワイやるのは嫌いじゃない。一人で本ばかり読んでるけど本当は友達とだっていたい。でも、出来ない。声をかける事が出来ない。はじめの一歩が踏み出せない…

ドラゴンとすら闘えそうとか言いながら声すらかけられない…結局何も出来やしない…


「エリックにはなれないよ…僕なんか…」バァン!

はあ!?


呟いた時ドアが勢い良く開かれた。


「あいてたぁ!!」


一人の女子が駆け込むように入って来る。長い黒髪に整った容姿。小柄な体格。一言で言うなら美少女。確か同じ学年の白間 由梨さんだったような。学年が同じでも5組まであるから『確か』になってしまうのは仕方がない。それに喋ったこともない。そんな『確か白間さんは』上履きを鳴らしながら早歩きで歩いて来る…こちらに?


「君、黒井 英里くんよね?同じクラスの」


「…っはい、黒井ですが…っ?」


ズイっと身体を僕に寄せて問う『確か白間さん』に戸惑いながら答える。あと、学年どころかクラスまで一緒だったのに名前に自信がないのは僕が皆んなと関わりが少ないせいでした…すまん…


「その手に持ってる本ってアレよね?『エリックの冒険』よね?3巻よね?」


「そ…そうだけど?」


「今から読むの?」


「そのつもりだけど…」


「そう…」


その言葉の後まるで身体を密着させるように詰め寄ってきてた彼女が初めて身体を離す。残念とは思ってないよ?いい匂いでした。


「あのね?実は私もそれを読みたいの!だからね…」


あまりに一生懸命な彼女に人とのコミュニケーションに慣れない…ましてや女子との交流なんてもっと経験がない僕はタジタジになってしまう。


「一緒に読も!!」


え?




「…」

「…」


読み始めた時はドキドキして直ぐ横にいる白間さんに落ち着かなかったが流石は本の力。しばらく経つとあまり気にならなくなり、読書に没頭する。それは彼女も同じらしくどんどん身体をくっつけてくる。それすら気にせずどんどん読み続ける僕等。物語は終盤。敵の黒幕を倒し、ようやくヒロインと再会するエリック。涙を流しながら喜びを表し抱きしめ合う二人の姿はまさしくハッピーエンドとして文句の付けようのない締めくくりだった。


「ふう…」


物語の余韻を味わいつつ、ふと肩にかかる重さに視線を向けると白間さんが僕の肩に頭を乗せてうっとりとしていた。していた。し て い た。

!?!?!?わあい!?

本を読んでいた時気にならなかった事がどんどん気になって…


「…ふう…良いものだねー。やっぱ。これ。うん?なんで顔真っ赤っかなの?」


余韻から帰ってきた白間さんに首を傾げられてしまう。ほっときなさいよ…


「ま、いっか。それにしても君の肩って居心地いいね、」ぽ…


ぶり返してきたあ!しかも頰を赤らめて!小悪魔?小悪魔?


「読む速度だって私好みだし。横にいても気にならないし、寧ろ空気。酸素。むっちゃ便利な酸素。そんな感じ。」


「え?馬鹿にしてない?この無意識小悪魔?」


にししと悪戯っ子の如く笑う彼女に不思議と遠慮の無い態度をとってしまう。小悪魔って凄えわ…

「でもでもすごく居心地良かったよ!」とすぐにフォローをいれる小悪魔。


「僕も気にならないくらい居心地良かったよ。おまけに同じ物語を共有するのも悪くないね」


「そう!それえ!それいいの!だからね!感想交換!しよ!」


ズビシッと手をこちらに向ける白間さん。

勢いがすごい…


「さあ!しよ!ね?」


また、ズイっと身体を寄せてくる。キラキラとした瞳で見てくる彼女の頼みは断れるわけもなく…いや、断る理由もなく。

「うん。」と、僕は辛うじて返事をした。


この強引な出会いが僕と彼女の物語の始まりだった。


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