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宇宙ゴミ箱「まるなげクン」  作者: 青海 嶺
3/8

3 無敵の「まるなげクン」

 市にとって二度目の転機は、電力会社から放射性廃棄物の処分を打診されたことだった。

「さすがに放射能のゴミはまずいっしょ?」バイトの中田くんも不安顔。

「わたしもそう思うけどなー」と木本。

 案の定、市議会は紛糾した。他県から核のゴミが搬入されることについて道知事も懸念を表明、道内の各自治体も反対声明を出した。

「みんなが押し付けあっている厄介モノを好きこのんで引き受ける馬鹿がどこにいる?」

「核廃棄物道内搬入断固阻止!」


 だが結局は、電力会社各社の提示した巨額の処理料が全てを解決した。

 なにしろ十数兆円とも言われる放射性廃棄物処理費用が掛からなくなる訳で、電力会社は、O市、道、関連市町村に対し、それに見合う金額を提示したのだった。

 厳重な安全対策をとり、道や各市町村には多額の協力金を支払うというスキームを作り、O市の放射性廃棄物受け入れ実験は始まった。輸送車の経路には1キロメートル毎にガイガーカウンタが設置され、O市の処理場とその付近でも放射能は厳密に計測された。最初は低線量の汚染土やゴミが処分され、実績を積み上げながら徐々に高線量のゴミが持ち込まれた。周囲の線量はまったく増えなかった。文科省の原子力行政担当者や各種の原子力関連団体から視察団が訪れ、「まるなげクン」のシステムを絶賛した。


 木本は市長選に出馬。現職を大差で破り当選。バイトだった中田君を秘書に抜擢した。

 市長になった木本は、どんどん放射性廃棄物を受け入れ、「まるなげ財団」と市は利益を上げ続けた。

 他の自治体や企業がこの莫大な金を、指をくわえて見ているわけがない。

 政府までもが産業スパイを送り込んでいるという噂だ。

 しかし、誰一人、「まるなげクン」の秘密を盗み出すことができなかった。

「ぶっちゃけ『まるなげ』って、どういう仕組?」

 市長秘書の中田くんが、夕食会の席で、ドクター丑松に尋ねてみた。

 市の先端技術開発支援特別顧問に就任していたドクター丑松は、笑ってこう答えた「まあ、アレですわ、超科学いうか、黒魔術っちゅうか」

「え? そんな怪しげなモン売りつけたの?」と木本。

「まあええやん、ちゃんと動いとるんやから」ドクター丑松は機嫌よく笑い、高価なワインをがぶ飲みするのだった。


 O市から技術を盗み出すことを断念したらしい政権は、今度は木本市長にすり寄ってきた。日本国として、諸外国から放射性廃棄物を受け入れ処分する事業を、国策として行いたいので、是非ともご協力を願いたい。

 世界中の核のゴミが減らせるのは悪い話ではない。O市長木本は、巨額の補助金を受け取ることを条件に、「まるなげクン」の国有化を受け入れた。

 そうしてO市は放射性廃棄物処分の世界的メッカとなった。


 数年後、世界中の放射性廃棄物は、ほぼほぼ消滅しつつあった。

 日本は巨額の外貨を獲得し、O市もまた市始まって以来の好景気に沸いていた。

 なにもかもが順調だった。


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