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まるで落ちて来てしまいそうなほど煌々と輝く星が広がる夜空の下、僕は小高い丘に立っている。
眼前には炎が広がる。
ただの炎じゃない、人々の大切なものを全て燃やしつくす様な地獄の業火。
風に乗って火の粉が飛んでくる。
悲鳴が聞こえる。
つい昨日までの平和では考えられない程の絶望に満ちた声。
…どうして僕は傍観している。
新たに学んだことがある。
それは実際に動いてみれば何事もなんとかなる、という事。
あんな火の海に対して人一人が出来る事は限られている。けれど何もしないよりは何倍もマシだ。
最近やたらと遠くまで見える様になった目が瓦礫の下で動けなくなっている少年を見つけた。
このままでは彼は炎に巻き込まれて死んでしまうだろう。
ここから王都までは距離にして5km。今の僕なら頑張れば間に合う距離だ。
そう!間に合う距離なのだ。今まで辛い事も沢山あったそれでも前を向き続けられたのは薄っすらだが自分が誰かの為になれているという事実が僕の心を支え続けたのだ。
現金な話だか今まさに彼は助けを求めてる。
彼を助ければ必然的に僕は必要とされた人になるだろう。
…それでも体は動かない。
だってこんな事になったのは全て………
気付けば顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
助けを求める様に天を仰ぐ。
「神よ…これが……これがあなたの望んだものなのですか……?」
炎は依然激しくあがっている。
少年が倒れていた場所は
火の海に変わっていた。