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一章1 水鏡を渡る星々
その世界は透きとおった水で満たされていた。
その世界の陸地は、とめどなく動き続けていた。
常にどこかを目指して進みつづける石の箱舟が幾多、まるで星のよう。
唯一つ、例外は十三本の岩の柱を持つ名無しの大陸。古代の神の名を冠した柱はそれぞれ違う色に染まり、元来持ち合わせる神秘性をさらに高めている。
これは、そんな水の世界アルカトラズの、塵芥の星から始まる傲慢な物語。
たゆたい、流れ着き、ふいに一瞬の閃光を生み出す、そんな物語。
浅葱色に鈍く輝く星の上、今は見えない七等星の少年が口を開いた。
「お前ら全部、ここで全員、潰れて死んじまえ」
風に陽光が煌めいた。次の刹那は永遠のように。
蒼い光は崩れ、波にさらわれて消える。
はじまりはそれだけ。