訓練の成果 & 強欲な男
どうも、お久しぶりです。
タイトル名でわかると思いますが、途中で目線が変わります。
洗礼式から半年が経った。そう今日は父の前でクラージュの成果を見せる日だ。城内の近衛隊の訓練場に人が集まっている。近衛隊の訓練所は決闘などに使われることがあるので観客席もある。そのためここは成果を示すにはうってつけの場所だ。
成果を示すのは第一近衛隊長とクラージュが決闘することだ。そこでクラージュが善戦したら、認められるというわけだ。そんなめんどくさいことをせず、鑑定士を使えばいいと思うだろう。これは俺、王太子の顔に泥を塗るかもしれない事柄だ。そのためはっきりと証明するために大勢の貴族の前で決闘をするのだ。ちなみに第一近衛隊長のステータスはこうだ。あっ、ついでに初登場の防衛大臣も。
・レベル:99
・名前:キャラット・ファクト 35歳
・種族:人間 男
・地位:ポラリオン王国、第一近衛隊隊長
・称号:天才、武術の王、最後の要
・HP:2093
・MP:795
・SP:2104
・AP:1985
・DP:1964
・LP:40
・スキル
[ステータス微増化]、[火属性魔法LV7]、[水属性魔法LV6]、[剣術LV8]、[斧術LV7]、[格闘術LV7]、[物理耐性LV3]、[火属性耐性LV3]、[水属性耐性LV4]、[毒耐性LV3]、[石化耐性LV1]、[気絶耐性LV2]、[護衛術LV3]、[気配隠蔽LV3]、[気配察知LV4]、[魔力感知LV2]、[身体強化LV3]、[忠誠LV3]
・レベル:81
・名前:ヒスハリー・ポッター 41歳
・種族:人間 男
・地位:ポラリオン王国、防衛大臣
・称号:秀才、率いる者
・HP:1708/1708
・MP:34/34
・SP:1974
・AP:1506
・DP:1601
・LP:48
・スキル
[剣術LV7]、[格闘術LV5]、[指揮LV4]、[統率LV4]、[戦術LV3]、[思考加速LV2]、[物理耐性LV1]、[毒耐性LV1]
第一近衛隊隊長のキャラットさんはこの国の最後の要って呼ばれている存在で、近接や後衛どちらもできるオールマイティーな男だ。この国で1番強い人だ。
防衛大臣のヒスハリーさんは戦争時に軍の指揮をとったり、他国の脅威などから守るための役割だ。
まあ簡単に言うとキャラットさんが最強の矛で、ヒスハリーさんが最強の盾という感じかな。ここで少し不思議に思わないだろうか。守るための大臣がいるが攻めるための大臣がいないことに。そう、この国は原則他国を侵略することは禁じている。とはいえ、日本のように法で定められているわけではない。暗黙の了解のようなものだ。そんなものがある理由は侵略することで得るものはほとんどない。と初代国王が残したのだ。事実、近くの国はポラリオン王国と肩を並べるために他国に侵略したりしたが、結局戦争によって国内が乱れて侵略する前よりも国力が落ちていたりする。
貴族たちは観客席に座わり、僕と父は王族専用の席に座っている。僕の横に父が座っていて、父の少し後ろに防衛大臣が立っている。訓練所の舞台にはクラージュとキャラットが剣を持ちながら、向かい合っている。クラージュは俺が付与術と錬金術をスキルレベルをMAXにして作った、片手剣を持っている。この片手剣は使う人の強さに合わせて進化するようになっている。
弱かったクラージュに強すぎる武器を与えると武器に頼ってしまうと思った。でもクラージュが強くなるたびに武器を作るのもめんどくさいなぁと思っていたら、前世で見たアニメに主人公と共に強くなる武器というのを思い出し、クラージュにぴったりだろうと思い作った。
キャラットは両手剣を持っている。見るからに強そうだ。その両手剣はこの国一番の鍛治職人が作った一品らしい。
武器を持っている二人は獣のような野蛮な……違う。野生的な目つきでお互いを睨み合っている。そんなおっかない二人の間に可愛らしいけも耳を生やした女の子がいた。第二近衛隊隊長のメナーさんだ。この決闘は審判をするみたいだ。
こう高いところから見ると、随分とおおごとになったなーと思う。もし、認められなかったらやばいなーと思い、クラージュに心の中で応援する。そんなことをしていると、メナーさんが耳に残る通りのいい声で言った。
「これからクラージュ・オブ・クラッキーとキャラット・ファクターの決闘を行います。なお、戦闘は本気で構いませんが、あからさまに殺意のある攻撃は禁止とします。それ以外は何をしても構いません。この場には高位の回復魔法を使える魔法使いがいますので、少々の負傷は問題ありませんのでご心配なさらずに。どちらかが降参するか、戦闘不能になれば終わりです。なにかご質問はありますか?」
メナーさんはクラージュとキャラットさんを見た。クラージュは大丈夫です。と小さく答え、キャラットさんは首を振った。
「無いようですね。では両者、構え」
構えの声で二人の目つきはさらに鋭くなる。キャラットさんはクラージュのそんな目つきに少し満足そうに頬を上げた。クラージュはそんなキャラットさんの様子に答えるように少し微笑んだ。
「始め!!」
さっきまでの声とは比べ物にならないほど大きな声でメナーさんが言った。始めと言った瞬間、クラージュは前方へ大きく飛翔し、20mあった二人の距離を一瞬で縮めた。キャラットさんはクラージュの速さに度肝を抜かれていたが、クラージュの攻撃を見事に防ぎ少し後ろに飛び下がった。
一瞬の出来事に辺りはざわめき出す。この場にいた誰もがクラージュの能力を疑っていた。しかしいまの攻撃でそれが覆された。俺の近くにいる父は小さな声で、あのキャラットを後退されるとは。と唸っていた。俺は少し得意げになりながら決闘を見守った。
後ろに下がったキャラットさんはすぐに魔法を唱えた。10個の小さなファイヤーボールを出し、クラージュに放つ。この数のファイヤーボールを全て避け切るのは難しい。おそらくキャラットさんはクラージュを試しているのだろう。
しかし、魔法とは……。誰がクラージュを育てたと思っているのだ?俺だぞ?
(なに、自分の手柄みたいに言っているのですかこの阿呆は)
キャラットさんが放ったファイヤーボールをクラージュは片手剣で一つ一つ斬っていく。それはそれは簡単に。クラージュがダメージを受けていないことを確認すると、キャラットさんはさらにファイヤーボールを出した。さらにウォーターボールも出し、総数がわからないほどだした。あまりの数に周りが騒がしくなるが、審判が止まる気配はない。一つ一つはそこまでダメージが少ないから問題ないと判断したんだろう。
キャラットさんは一気にそれらを放った。周りはクラージュのことを哀れに思っている雰囲気だった。確かに、この魔法の数をノーダメージで切り抜ける人物は限られているだろう。しかしクラージュは俺が訓練したのだ、魔法の攻撃は慣れている。
(また、この阿呆は自分の手柄みたいに言ってやがる。訓練したのは私ですから)
キャラットの攻撃にクラージュは落ち着いて対処する。まず、大きく後ろに後退する。そして向かってくるウォーターボールにファイヤーボールをぶつけて、数を減らす。ウォーターボールが全て無くなり、ファイヤーボールだけになった後さっきとは比べ物にならない程の速度でファイヤーボールを斬っていく。あたりが水蒸気で見えなくなっていたがしだいにクリアになっていき、見えたのは無傷で立つクラージュの姿だった。クラージュとキャラットは見つめ合いながら頷きあった。
二人が走って、距離を縮めて行く。剣が届きそうなほど近づくと、キャラットさんはクラージュを飛び越え背後を取る。クラージュはすぐに回し蹴りをする。それを剣で受け止めて、押し返しクラージュのバランスを崩す。クラージュはバランスを崩したが片足で飛び体勢を整える。キャラットさんはバランスを崩した隙に上方から攻撃を仕掛けるが、クラージュはそれを上手に受け流す。受け流したことでキャラットさんの後ろをとることでき、その隙に攻撃しようとする。しかし、急にクラージュは股間を抑えてうずくまる。どうやら、股間を後ろ蹴りされたようだ。
「勝負あり!勝者、キャラット・ファクター!!」
クラージュの戦闘不能を確認し、メナーさんが叫ぶ。少しあっけなく、情けない負け方をしたがこの国最強に善戦したことは事実だ。観客席から大きな大きな称賛の声が聞こえる。称賛の声の中、俺は勝負がついた二人の会話に耳を傾ける。
キャラットさんがうずくまるクラージュに手を貸し、立ち上がらせて話し始めた。
「お前、本当に半年しか訓練していないのか?」
「はっ、はい。王太子様にお声をかけていただくまでは1人で剣を振ったりしていましたが、それは子供のお遊びのようなものでしたので……。本格的に訓練したのは半年ですね」
強くなっても、相変わらずにきょどりながら言った。お遊びという言葉に少し怪訝な表情をしながらもキャラットさんは言った。
「そうか。お前が後5年そんな訓練したら俺は勝つ自信がないな」
そういうと、キャラットさんは歩き出し王族専用の席の下に来る。クラージュはそんな訓練という言葉で、訓練の内容を思い出して吐きそうになっていたが、すぐにキャラットさんの後を追う。
下に来ると二人は跪く。その後、観客席にいる貴族たちも跪く。父は全員が跪いたこと確認すると、声を拡張できるマジックアイテムを使い話し始める。
「キャラット。聞く意味はないだろうが、一応聞こう。クラージュ・オブ・クラッキーの強さを認めるか?」
「はい。認めます。この者はすぐに私を抜くでしょう」
その言葉に場が大きく騒ぐ。父も面食らっている。
「ほう。そこまで言うか」
「はい。戦闘経験などは私より大きく劣っていますが、それ以外は近衛隊なみにあるでしょう」
さっきと桁違いに場が騒ぐ。
一度説明したが、近衛隊はこの国のエリートの中のエリートで構成されている。そんな近衛隊に7歳の少年が匹敵するのだ。信じられないと思う人がほとんどだろう。当の本人のクラージュは今にも気絶してしまいそうな表情だ。おそらく自分がそこまで強くなっているとは思っていなかったのだろう。まあ、訓練中はダンジョン内で紫衣や化け物みたいな魔物ばかりと戦っていたもんなー。多分、近衛隊の人でも3日も耐えることが出来ないほどきつい訓練だったと思う。訓練というより拷問だったかもしれない。
「なんと!それではすぐにでも近衛隊になることが出来るのか!?」
「はい。不可能ではないと思います」
その言葉を聞くと父は黙り、思案顔になる。この場にいる全員が黙り、静まり返る。
しばらくすると、異様に静まり返った場を父が壊す。
「クラージュ・オブ・クラッキー。お前を第三近衛隊隊長に任命する」
その言葉にクラージュは驚きを通り超えて呆けていた。それはなんとも、情けない顔だった。
………………………………………………………………………
「クソが!」
俺は近衛隊の訓練場から自室に入った瞬間怒鳴った。これで王太子の評判がうなぎのぼりに。そして王家がまた強力な駒を手に入れた。そう思うと、俺は怒りでどうにかなってしまいそうだった。俺はこの怒りを発散するためにあれを行うことにした。机に置いてあるベルを鳴らし、執事を呼ぶ。まるで呼ばれることが分かっていたかのように一瞬で来た、俺は一言あれを準備しろ。といった。
しばらくした後、執事が俺を呼びに来て隠し扉から地下に降りる。地下にはいくつかの部屋があり、俺は一番奥の部屋に行く。執事は部屋の手前で終わりましたらお声をおかけください。といった。俺は自分で扉を開ける。扉の先には壁に拘束された二十代くらいの女がいる。それをみると俺は自然と頬をあげる。部屋には見るだけでもおぞましい拷問器具がたくさんある。
ゆっくり、ゆっくりと女に近づく。女は絶望的な顔をしながら声をあげる。そうだ。俺はこんな顔を大好きなんだ。女の近くまで来た。いまだに大きな声を出している女をうざいと思い。黙らすために腹を一発殴る。
さあ、楽しい楽しい時間の始まりだ。と思ったが邪魔が入った。扉をたたく音がした。俺は血が沸騰しそうなほどイラついた。でもなにか急用があるのだろうと思い、その怒りをこらえる。そして、できるだけ落ち着いた声で
「なんだ?」
「お客様がお見えになっております」
「客、だと。誰だ?」
「アルベルト様です」
その人物の名前を聞き、納得する。
「そうか。ご苦労。すぐに行く」
そういうと執事は遠ざかっていく。俺は良い予感がしていた。あんな腹が立つ出来事があった日にアルベルトが来たのだ。とんでもない話をしにきたに違いない。
女をクスリを使い気を失わせて、客間に行く。客間に入ると一瞬甘い匂いがしたが、すぐに消えたため気のせいだと思い、ソファーに座る上品そうな男を見る。アルベルトだ。彼は立ち上がり、挨拶をする。それを適当に受け答えして話を進める。少し世間話をした後、ようやく興味の沸く話題を持ち出す。
「もしかしたら、貴方の望みが叶うかもしれませんよ」
俺はその言葉にやはりと思った。そして俺の望みが叶う一番手っ取り早い方法は弱みだ。
「ほう。それは王族の弱みを握ったということか?」
「はい。そうです」
自信ありげにそう言うアルベルトに期待する。
「それで何を望む?」
「お話が早くて助かります。皇帝陛下は王国との同盟を結びたいと望んでおります」
「内容は?」
「二国間での国境を開くことと軍事同盟を結ぶことを望んでおられます」
俺はその言葉に驚く。もっと無理難題を提示してくると思ったからだ。
「おぬしの主は無欲のようだな」
「いえいえ。王国の後ろ盾だけでも十分ですよ。では書面にサインください」
俺はあからさまに顔をしかめる。そして少しイラついたふりをして
「書面?俺のことを疑っているのか?」
「いえいえ、そういうわけではありませんよ。皇帝陛下にきちんとした書面で成果をお見せしたいのです」
「そうか。そういうことか、わかった。サインしよう。それで弱みというのはなんだ?」
アルベルトはアイテムボックスから丸めた書面を出し、私に差し出す。俺は簡単に目を通し、サインする。
「ありがとうございます。そして弱みというのはですね……」
ある程度これからの構成を練りました。
更新は遅いと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
それと今まで書いた話を少し編集しました。
ストーリー展開は変わっていませんが、少しはマシな文章になったと思います。思いたい……
4/7:ヒスハリーさんのステータスが抜けていたのを修正しました。