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チートはいらないって言わなかったか?  作者: 関谷 じん
第1章 変態王子、変態王になる
18/20

クラージュside part2

遅くなりました。最近、やる気が……

他の人はまだ王太子様からの恐怖にとらわれていたが、僕は部屋から逃げ出し、宿屋に戻った。

今日言われたことや見たことを忘れようと思い、軽く体を拭き食事をして、布団に入ろうと思った。しかし、今日王太子様が仰ったことやフレアリード様のことを思い出し、なかなか寝付けないでいると、トントンと扉が叩かれる音がした。

キャバズかと思い、何ですか?と尋ねた。


「クラージュ様。キャロット・オブ・アスタリア様が貴方にご用があると仰っております。今、下でお待たせしております」


キャロット・オブ・アスタリア様?ってそれ、アスタリア伯爵家の三女であり、1,000年に1人の天才と言われている人ではないか!?そんなお方がなぜ、僕を呼ぶ?

って、今下でお待ちしておられると言ってたな。やばい、早く行かないと!


大慌てで用意するが、今から上級貴族に会うため生半可な格好は出来ないと思い、予想以上に時間がかかってしまった。

準備ができると部屋を飛びだし、下品に音を立てて階段を降りる。ぼくがキョロキョロしていると、上品な男性に声をかけられた。


「もしもし。貴方がクラージュ・オブ・クラッキー様ですか?」


あまりにも美しい立ち姿にかしこまりつつ、答えた。


「はっ、はい。そうです」


「やはりそうですか。それではキャロット様がお待ちです。こちらに」


そう言い、歩き出す彼に何も言えない僕は大人しくついていくしかなかった。

彼が案内した馬車は馬車置き場ではなく、入り口の目の前に置かれていた。これが上級貴族の扱い方か。と思っていると、彼に中に入るようにすすめられた。

こんな立派な馬車に自分が乗ることへの忌避感を持ちながらも、断れないと思い、中に入る。

馬車は外観だけではなく内観も素晴らしかった。知識のない僕では素晴らしいとしか表現できなかった。

馬車には女性がいた。非常に美人で少し抜けてそうな顔をしているが目は僕を見定めるような鋭い目つきだった。


「さぁ、座ってください」


そういい、彼女の正面に座るように美しい仕草で手を指す。


「あっ、ありがとうございます」


といい、恐縮しながら座った。ぼくが座ったことを確認すると彼女は口を開いた。


「私はキャロット・オブ・アスタリアです。

私も詳しいことは知りませんが、王太子様のご命令で貴方を向かえにきました」


「僕はクラージュ・オブ・クラッキーと申します」


咄嗟に挨拶を返すが、俺の頭は疑問で一杯だった。そんな僕をつゆ知らず、キャロット様は御者に出発してください。と言い、馬車が動き始めた。

僕は口を開く勇気もなく、大人しく王太子様のところに連れて行かれるのだった。


――――――――――――――――――――――――


王太子様の部屋につき、キャロット様が扉をノックする。


「王太子様。連れて参りました」


「そうか。入れてくれ」


すぐに王太子様の声が聞こえ、キャロット様が扉を開ける。

スポーツができそうなほど大きく、僕が知ったら卒倒しそうな額のお金がかかった部屋だった。僕は入った瞬間、自分の場違い間を感じ取り、今にも気を失ってしまいそうだった。

今日はよく、気を失いそうになっているな……

そう思っていると、キャロット様が王太子様の正面に椅子を準備する。おそらくキャロット様が座る椅子だろう。そう思い、王太子様には近づくが立ったままの姿勢だった。突如、キャロット様が僕に尋ねる。


「お飲物はいかがしましょう?」


「紅茶をください」


そういうと、キャロット様が部屋から出て行く。

って、僕はいまキャロット様に紅茶をくださいって言ったのか!?僕みたいな下級貴族が?なんてことをしたんだ。


「座りなさい」


王太子様から凄く怖い声でそう言われた。いやいやいや、どんでもない。僕は立っています。と思っていると、苛ついたご様子でもう一度言った。


「いいから、座れ」


ここまで仰っられたなら仕方がないと思い、床に座った。そんな僕を見て一瞬、王太子様が面食らった顔をしたが、すぐに戻った。

多分気のせいだろうと思っていると、扉が開く音がした。キャロット様が飲み物を持って入ってきた。

一瞬、キャロット様も面食らった顔をしたがすぐに元に戻り、僕の近くにやって来て言った。


「クラージュ様。そこではなく、椅子にです」


さま?僕に?てか、椅子?僕に?

素直に思っていることを言った。


「いや、しかし。私のようなものが王太子様と肩を並べるのは、恐れ多いです」


その言葉でキャロット様と王太子様は目を合わせて


「よろしいですよね?王太子様?」


「あぁ、もちろんだ。元々そのつもりだ」


なっ、なんと、お優しいお方なんだ。

こんな僕に椅子に座らせてくださるとは……

感動に打ちのめされていると、キャロット様に立たせてもらい座らせてもらった。

慣れておられる。と感じていると、素早くキャロット様が飲み物を入れ、僕と王太子様の前に置く。王太子様はカフェオレを飲むようだ。カフェオレを飲みながら、非常怖い笑みを浮かべていた。僕はその姿を見て、この後自分がどうなるのかと不安になった。


「なあ、飲まないのか?キャロットが入れた紅茶は絶品だぞ?」


急に声をかけられて、少し体がびくっとなるが慌てず落ち着いて答える。


「あっ、はい。すみません。頂きます」


恐る恐る、紅茶に口をつける。程よく熱く、苦い紅茶だった。いつも飲んでいる紅茶がなんだったのかと思うほど美味しかった。王太子様が絶品ということも頷ける。

王太子様は何かを思い出した顔をすると、後ろにいるキャロット様の方を向き、話しかけた。


「なあ。キャロット。今からこいつとする話は秘密だ。それを守れないならこの部屋から出て行ってくれ」


え!?キャロット様でも秘密な話をぼくとする?どういうこと!?

僕は王太子様の言葉に慌てるが、キャロット様はそんな様子ではなく落ち着いた声で。


「王太子様は国や陛下に害の為す事をなさるおつもりですか?」


「いいや。そんなことしないよ。ただ、ばれないようにこの城を抜け出すだけだよ」


そう言い、2人は笑い始めた。

どういうこと?今って笑うタイミングですか?

キャロット様は笑いながら、イタズラ顔で言った。


「まだ、秘密を約束していない私に秘密を言ってもよろしいですか〜?」


「なんだ?キャロットはこのことを誰かに言うのか?」


「いいえ、言いませんよ〜」


「知ってるよ」


なんだ、今の会話は。

でも、分かったことはある。この2人は非常に信用し合っているということだ。キャロット様は王太子様の従者のようだが、2人はそんな関係以上に感じる。

それに、さっき王太子様が城を抜け出すって言ったよな?どういうこと?

僕が沢山の疑問があるような顔をしていると、王太子様が僕の方を向き直し口を開いた。


「俺はお前に訓練を行いたいと思う。戦闘訓練だ」


戦闘訓練?剣術スキルのレベルが1の僕に?


「お前にはごく稀に見る戦闘の才能がある。しかし今のままではそれが生かされない。だから俺と戦闘訓練をしてもらう」


戦闘の才能?そんな称号なかったはずだ。

もしあったら僕は体全身で喜びを表していたはずだ。

それに、王太子様は確か戦闘系スキルをお持ちではなかったはずだ。そんなお方が僕と戦闘訓練する理由がわからない。


「お話に割り込んで申し訳ありません。戦闘訓練と言いますが、王太子様は戦闘のご経験はあまりなかったと思いますが?」


僕はその言葉に激しくうん、うん。と頷き同意した。

そんな僕たちを見ながら、王太子様は何も問題がないような様子で言った。


「大丈夫だ。先生がいる。転移魔法すら操ることのできる素晴らしい先生だ」


転移魔法!?

転移魔法といえばごくごくごく一部の魔法師しか使えない魔法ではないか。もし、その魔法が使える人がいると国同士が戦争を起こすとも言われている魔法だ。

そんな魔法を使える方がいて、その方と王太子様がお知り合いだったとは。


「その先生の名は紫衣と言う」


紫衣様、ですか……

聞いたことのない名前だ。やはり王太子様の隠し玉ということか。なんて凄いお方なんだ、王太子様は。

キャロット様が怪訝な様子で王太子様に聞いた。


「王太子様はそんな方といつお知り合いになったのですか?」


「秘密だ」


キャロット様は少し不服そうな顔だった。

僕としてはそんなことはどうでもいい。1番の謎である僕を訓練する理由がいまだに分からないことだ。そんな顔をしていると、王太子様がどうした?と話を振ってくださった。

僕はすぐに自分の疑問をぶつけた。


「はっ、はい。フラムスティード様が僕のことを訓練したいことは理解しましたが、僕のステータスはご存知の通り普通以下です。到底、フラムスティード様が望むようなことにはならないと思いますが……」


今までずっと、王太子様とお呼びしていたが少しでも近づきたいと思い、フラムスティード様とお呼びしたのは内緒だ。


「大丈夫だ。俺の感は大抵当たる。お前は先ほど言ったが、稀に見る天才なんだ。俺の感がそう訴えている」


感!?それだけで僕をここまで呼んだの?

もし間違っていたら、信用を失うどころではないと思うのだけど……

てか、それ。僕の重要性ってすごく高いと思うんだけど……

最早一言、はあ。と言うしかなかった。

そんな僕に対して王太子様は一言。


「いずれか、その意味が分かるさ」


その後今日は一旦帰り、明日訓練のために呼びに来る。と言う話になった。

僕はキャロット様の案内で城の出口に向かった。馬車で送ってくれるというがそれは必至に固辞した。

いまは冷たい風にあたり頭を冷やしたかった。今日はいろいろなことが起こりすぎたのだ。その日なかなか寝付けないのは安易に想像できた。


――――――――――――――――――――――――


次の日の昼ごろ、昨日のようにキャロット様に案内され王太子様の部屋に通される。

キャロット様はそのまま、どこかに行ってしまった。


「来たな。もうすぐ紫衣が来る」


王太子様が昨日とは違い動きやすそうな服装で僕を迎え入れてくださった。

僕も一応、武器と防具をつけてきた。どこででも売ってそうな鉄製の片手剣に動物の皮で作られた防具だ。

王太子様は防具のようなものはつけていなく、運動がしやすそうなラフな格好だ。


「おはようございます。王太子様」


僕は典型の挨拶をして、所在に困っていると王太子様が来るぞ。といい、誰もいない場所を見つめる。その瞬間、何もなかった場所に突如人が現れた。

そこに現れたのは身長が低くて幼く見えるが、黒色の力強い瞳を持ち、今まで見たことのないほど可憐な顔の女の子だった。瞳と同じ色の髪の毛がくるぶしに届くほど伸ばしているが、その髪の毛は輝いて見えるほど美しいことに驚いていた。一体どのような手入れをしているのだろうか。


「私は紫衣です。へんた……。王太子様のご命令で貴方の戦闘訓練を行うことになりました」


お人形のような少女が口を開いたことに呆気にとられていたが、すぐに挨拶を返した。


「僕はクラージュ・オブ・クラッキーです。ご指南、よろしくお願いします」


初めて転移魔法をみたが、素晴らしいな。奇襲などが簡単にできるんじゃ……

でも、魔法と剣士では畑違いだけど大丈夫かな?


「あぁ、指南なんてことはしませんよ。ただ、レベルを上げるだけですよ」


レベルを上げるだけ?と疑問に思っていると、彼女はさて行きましょうか。と言い、僕たちを呼び寄せた。


「中距離転移」


そう言った瞬間、目の前がブラックアウトしていった。あたりが再び見え始めると、そこは鮮やかな緑に包まれた空間だった。見たことのある植物や見たことのない植物などが所狭しと生い茂っていた。

先程まで王太子様の部屋にいたのに、あたりは見たことのない幻想的な場所。

僕が戸惑っていると。


「今、私の転移魔法でダンジョンに飛びました。ここでレベル上げを行いましょう」


「ダンジョンですか!?王都のあたりにはなかったと思いますが?」


僕の言葉に王太子様が答える。威圧感のある様子で。


「余計な詮索はするなよ?お前はただレベルを上げれば良い」


その言葉にぶるりと震えた。僕は余計なことは言わず、ただこのお方たちの指示に従おうと思った。


「さて、まずはゴブリンでも倒してみましょうか。ほらあそこにいますよ」


そういい、100m先を指差す。僕は初めて見るゴブリンに呆気にとられた。顔は醜く、ここからでも顔をしかめる臭い匂い。

というか、今こいつと戦えって言わなかった?


「あっ、こっちきましたよ」


身長が1m60ぐらいのゴブリンが僕の方に向かって走ってきていた。僕は慌てて片手剣を出した。

しかし、ゴブリンの恐ろしさに足を震わしていた。


「なに、びびってんですか」


紫衣様が僕の背中を押した。急に押されたことで突如ゴブリンの顔が目の前に来る。僕はゴブリンを反射的に避けて、バランスを崩し仰向けに倒れてしまった。すぐにゴブリンは僕の方を向き上から目線で手にしていた棍棒を僕の方に振りかざす。

僕の頭は恐怖に支配されていたが、急にゴブリンの動きがゆっくりと見えるようになる。

ゆっくり、ゆっくり棍棒が僕に振りかざされるように見え、身体が勝手に動きゴブリンの手を蹴った。

急に僕が攻撃したことでなにも反応できず、手から棍棒を離した。

ゴブリンが慌てて棍棒を取りにいこうとするが、僕は咄嗟に近くに落ちていた片手剣をとり、後ろに周り首筋をおもいっきり切った。

首筋から血しぶきが吹き荒れ、次の瞬間身体が消えた。そこに残ったのは魔石だけだった。

僕は自分のしたことに呆然としていると、後ろから声がかかった。


「初戦にしては上等だな。さあ、次がきたぞ」


そう言われ、王太子様の方を遠くにゴブリンが2体いた。僕がすぐに剣を構えた。

すると、王太子様がこれを使え。といい片手剣を僕に渡す。それは一見ただの片手剣だが、直感的にこれはやばいと分かった。僕がぐずぐずしていると。


「すぐ近くに来てるぞ」


そう言い、僕の剣を取り上げ無理やり新たな剣を渡された。僕はその剣を持った瞬間、この剣が体の一部のように感じた。

すぐそこまでゴブリンが来ている。先ほどのような恐怖はない。ゴブリンたちが僕に向かって棍棒を振りかざす。1匹のゴブリンからの攻撃はかわして、もう1匹からの攻撃は片手剣で受け止める。受け止めた瞬間、剣を振りゴブリンを怯ませる。怯んだゴブリンの首に剣を刺す。絶命したことを確認すると、すぐに剣を抜いた。生き残ったゴブリンはもう一度僕に向かって攻撃して来たが、それもかわしてすぐに反撃した。そのゴブリンも絶命させた。

僕は自分の手を見て、今まで行って来た無駄だと思っていた剣の練習を思い出していた。さっきの戦闘はそんな練習のピースが合わさったような感覚だった。


「気づいたか?お前の可能性に。才能に」


王太子様の言葉に僕は魔石と血だまりが残った場所を見て、その言葉を実感させられた。

クラージュ君の話が長くなって飽きて来ました。

ここまで長くなる予定はなかった……


次、どうなるかは今のところ未定です。ですのでしばらく更新できかいかも。

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