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チートはいらないって言わなかったか?  作者: 関谷 じん
第1章 変態王子、変態王になる
17/20

クラージュside part1

お待たせしました。

えっ?待っていないって?

そうですか。そうですよね。

こんな小説を読んでいただきありがとうございます。

早朝、いつも通りの時間に自然と目を覚ます。


僕は貴族だが、朝起こしてくれる従者はいない。なんていったて、下級貴族でも末端の男爵家だ。三男の僕に従者を雇う余裕がないのだ。

いや、正確にはなくはないのだが、無能な僕には付ける必要がないと父たちから言われていて、その分のお金を自分たちの贅沢品に使っている。

まだ、僕のステータスを見たことはないがおそらく普通以下だ。兄や同世代の子供たちと比べたらおおよそのステータスは分かる。その結果、普通以下というふうになった。

兄たちは優秀だ。長男は王都にある騎士学校に行っていて、次男はこの辺りでは一番強いと言われている。

そのため、兄たちには従者は付いている。

差別は感じるが仕方がないことだと思い、割り切っている。


起きた後、物置のような部屋でいつも通りに身支度を整える。

その後、朝ごはんを作るためにキッチンへ行く。貴族の僕が作っている理由は言うまでもないだろう。

無能な僕の唯一この家で役に立てることだ。

キッチンで家族と従者の朝ごはんを準備する。僕以外の家族は肉と野菜がいっぱい入ったスープに柔らかいパン、搾りたての牛乳が朝ごはんだ。

僕のご飯は従者たちと同じで、具が全く入っていない残り物のスープに硬い硬いパンと水だ。

平民ならこれが当たり前だが、貴族である僕も平民のような朝ごはんを食べている。

食事を作った後、ダイニングに配膳する。配膳していると、次男のガルバォンが入ってきた。


「よお。クラージュ。従者の仕事も大変だなー」


そう言い、下品にガハガハ笑うガルバォン。

いつもの台詞だ。

何がそんなに面白いのか。こんな奴、兄だと思いたくないな。


「おはようございます。ガルバォン様」


僕の些細な対抗心だ。僕は家族のことを父や兄とは呼ばない。ただ、名前に様をつけるだけだ。

そんな些細な対抗心を全く気にせず、ふん。と鼻で笑い、席に着いた。

俺は気にせず、準備を進めた。準備も終わろうとしていたところで父と母が入ってきた。僕に何も言わない。2人は僕が本当の従者のように扱う。無駄な口は聞かないし、口を開いたと思ったら仕事の指示。

この人たちを家族だと思うと、体の奥底から気持ち悪さがこみ上げてくる。


準備が終わり、失礼します。と言いこの部屋から出る。

部屋から出るとき、一家で囲む食卓を見ながら心が締め付けられた。あぁ、慣れたと思っていたのに。と思いながら、自分のご飯を準備する。

従者は各自自分で用意して、キッチンで立ちながら食べる。他の従者たちが談笑しながら、食事をしているがここにも僕の居場所はない。誰も僕と目を合わせようとはしない。直接的な嫌がらせはないが、俺と話そうとは全くしない。おそらく、父からの指示だろう。

父の意図は僕という共通ののけ者にする相手を作り、家族や従者たちに満足感を与え、不満感を無くそうとしているのだろう。

そう考えると、腹ただしく感じるが僕にできることなんてない。自分の無力さを絶望しつつも何もできないことに歯がゆく思いながら、いつもの場所で朝ごはんを食べる。


ご飯を食べ終えて、ダイニングの家族達が食べ散らかしを片付ける。もう春だが、水はまだ冷たい。と思いながら洗い物をする。

洗い物が終わり、僕の少しだけの自由時間ができる。この時やっているのが剣術の練習だ。練習はしているが、一向に強くはならない。僕に教えてくれる人がいないため何が悪いのかさえ分からない。でも、これを辞めてしまうと僕の全てを否定するように思い、辞められない。

昼前に練習を引き上げ、仕事だ。

お昼ご飯を作り、同じように配膳して同じように1人で食べる。その後、自分の部屋の掃除と服の洗濯。

家事を行なっていると自分が貴族であることも忘れてしまう。でも、見栄のための無駄に立派な服を見るたびに思い出す。あぁ、僕って貴族だったんだ。と。

それと同時に疑問に思う。

僕はどうして貴族なんだろ?

僕はどうして普通の家庭に生まれなかったんだろう?

僕はどうして温かい家族がいないだろう?

僕はどうして才能がないのだろう?

と思い、泣き出しそうになる。


――――――――――――――――――――――――


早朝、いつも通りに自然と朝は起きなかった。

今は馬車に乗ってがたがたと揺られている。

今は王都に向かっている。向かっている理由は洗礼式があるためだ。僕が住んでいる領地から王都まで5日はかかる。そのため洗礼式の1週間前に向かっているのだった。

洗礼式では平民は一番近くの教会で行うのだが、貴族の子供はそう言うわけにはいかない。貴族にとってこの式は政治的な意味合いが大きいため、一か所に集まって行ければならない。


外には冒険者達が護衛しているが、馬車の中には僕と御者しかいない。父や兄が僕の洗礼式についてくるはずがない。でも、一応僕のステータスを報告する人がいる。僕を王都に滞在している時だけ従者となる人だ。

これも優しさで従者を準備したわけではない。ただの見栄だ。沢山の貴族の目がある中、僕だけ従者がいないのはあまりにも情けなさすぎる。そのため付けたのだ。

道中は魔物や盗賊に襲われることはなく安全そのものだった。護衛の冒険者達が良い番人になったのだろう。

王都につき、入場料を払い中に入る。

来るのは初めてだが、僕の住んでいる田舎領地に比べてやはり活気が段違いだ。馬車の中から外を眺めるが、人が数えるのも馬鹿らしくなるほどいて、喧騒で自分の心臓の音が聞こえない。

これが都会か。と思いながら、目的地の宿屋に着くのを待つ。宿屋の馬車置き場に着き、馬車から出る。外にはなんとも頼りなさそうな細身の男がいた。


「クラージュ様。貴方の従者を命じられたキャバズと申します。短い間ですが、よろしくお願いいたします」


あからさまに慣れていない言葉遣いでぎこちなく挨拶を行なった。父が適当な人を見つけたのかな。と思い、相手に挨拶を返した。


「始めまして。クラッキー家三男のクラージュです。こちらこそ短い間ですが、よろしくお願いします」


僕の物腰の柔らかい様に安心したのか、少し頬が緩んだ。おそらく、あの父の子供ということでびびっていたんだと思う。自分で荷物を持ち、御者に一言お礼を言い宿屋に向かう。心の中で従者なら荷物持ってよ。と思いながらも口には出さなかった。どうせ数日の間だけだしね。


――――――――――――――――――――――――


早朝、いつも通りの時間に自然と目を覚ます。従者のキャバズがいるがあの男にはさせない。

あの男は

朝、起こすこともできない。

家事もできない。

僕に王都を案内もできない。

言葉はぎごちないし、礼儀はなっていない。

逆に従者として何ができるのだろう?と思ったほどだ。

こんな従者は必要ないなと思い、何もしなくてもいいです。と言った。そうしたら、本当に何もしなくなった時は笑いすら起こらなかった。ただ、父への怒りだけがひしひしと湧き上がってきたものだ。


王都につき、2日経った。今日は待ちに待っていない洗礼式の日だ。いつもとは比べ物にならない程の美しい服に着替えた。父は相変わらずの見栄っ張りだなと思った。こんな服を準備できるならもっとマシな従者を準備しろよとも思った。

着慣れない服を着てキャバズと共に馬車に乗る。

馬車はがたがたがたと激しく揺れている。この馬車、もうじき壊れるのではないかと思いながら教会に着くのを待った。教会につき、教会の人に案内されて控え室に通される。

控え室にはまだほとんど人はいなかった。当たり前だ。下級貴族は上級貴族より早く来なければならない。その下級貴族でも末端の僕は早くに付かなければならなかった。

ぼっーと、時間が経つのを待っていると、僕が嫌いな奴から話しかけられた。


「よお。なんちゃて貴族のクラージュ君」


7歳児とは思えない、卑しい顔でそう言ったのは僕の隣の領地を統治している領主の次男坊だ。僕の従者のような生活をしていることは有名なことだ。そのことを会うたびにわざわざ嫌味のように言ってくるのだ。


「なんちゃてではここには来られませんよ」


こいつ何言ってんの?みたいな雰囲気で言うと。舌打ちをして、どこかに行った。たったそれだけを言うためにここに来たのかよ。と思っていると、子爵家の子供が入って来るのが見えた。

子爵家には挨拶をしなくてはと思い、挨拶をしに行く。もちろん従者には何もしなくていいと言い。

子爵家の子供に挨拶していると、扉が開く音がして無意識に見てしまった。入ってきたのは女の子だった。

大人しそうで可愛くはないが、僕は一瞬太陽を見たかのように目が眩んだ。顔、表情、服、仕草。その全てが完成されているように見える。僕の心臓は喧騒の中だがはっきりと聞こえるほど激しく動いていた。こんな感情初めてだ。

どうしたらいいか分からないそんな感情に呆然としたがさっきまで話していた子爵家の子供に話しかけ、すぐに現実世界に戻ってくる。

さっきまでのように男爵家の子供と話すが、頭の中は彼女のことでいっぱいで、すぐにでも話を切り上げ彼女を見たいと言う感情に支配された。そんな様子の僕に嫌気がさしたのか、子爵家の子供はどこかに行ってしまった。

本来なら身分が上の人物を不快な思いにさせたことは深刻な状況だが、今の僕にはそんなことどうでもよかった。今はただ必至に彼女を頭に叩き込むことしか考えれない。この感情は叶うはずがないことは考えなくても分かる。でも、いま。この少しの間だけは彼女の姿を焼き付けようと思ったのだ。

一応、挨拶という名目で話しかけることはできるが、下級貴族の僕が上級貴族に不用意に話しかけるのはご法度だ。そのため、僕は彼女に話しかけることもできない。

彼女の仕草、声、顔、体型の全てを脳裏に焼き付けていると、僕の視界に見ることも失せるような汚い男が入った。

その男は金色を基調とした金のかかってそうな服を着て、腕や足、首には想像すらつかないような値段のアクセサリーを着けた子供だった。

あれがチャキセス侯爵家の次男か。

この家は鉱山を多数所持して、この辺りの貴金属の流通を支配している。そのため貴族の中で一番金を持っている。しかし、この家は黒い噂が絶え間なく聞こえてくる。帝国と裏で繋がっているとか違法な奴隷を売買しているとかだ。この男とは付き合いたくないなと思い、すぐに目をそらした。


その後しばらくして、また扉が開いた。入ってきた瞬間、この場の雰囲気が変わるのが分かった。さっきまでは少し和やかな雰囲気だったが、そのお方が入ってきた瞬間、ピリピリとした空気になった。すぐにその方を確認して、やはりと思いながら跪いた。

今入ってきたのは王太子様だ。将来のこの国のトップになる方。僕とは一生関わることがないだろう。

王太子様はずっと聞いていたくなるような声で楽にしなさい。と言い、ずっと空席だった王太子様専用の椅子に座った。

僕は立ち上がったが、しばらく王太子様に見惚れていた。もちろん、さっきの彼女へのような感情ではなく恐怖や敬愛などの感情だ。

敬愛なんて今日初めて会った人物に思う感情ではないのは分かっている。でも、頭がそう勝手に思うのだ。

王太子様に見惚れていると、彼女が視界に入ってきた。どうやら王太子様に話しかけるようだ。

2人が会話の中で笑いあっている様子を見ると、まるで手の届かない遠い遠い世界のように感じた。そんな2人を見ていると、心の中に黒い黒い感情が宿っていることに気がつき、あわてて目をそらす。


あぁ。こんな僕にあんな世界、見せて欲しくなかった。


――――――――――――――――――――――――


式が始まり、王太子様の素晴らしい挨拶が終わり。

次は鑑定だ。控え室で少し待った後、すぐに自分の番が来た。内心諦めながらも、心のどこかは諦めきれない自分を嘲笑しつつ、鑑定を受けた。

鑑定士が読み上げたステータスはこうだ。


・レベル:1

・名前:クラージュ・オブ・クラッキー 7歳

・種族:熊人族

・地位:クラッキー男爵家、三男

・称号:男爵家の息子


・HP:120/120

・MP:20/20

・SP:110

・AP:3

・DP:2

・LP:20


・スキル

[剣術LV1]


絶望感はなかった。あぁ、やっぱりと思うだけだった。でも、心の中にあった一滴のしずく程度の希望が蒸発した。

鑑定が終わり逆にスッキリした気持ちで舞台袖にはけて、同い年の子供たちのステータスを聞く。

同い年のステータスを聞いていると、やっぱり僕は普通以下なんだなー。と実感していると、ついに彼女の番が来た。僕は耳の穴かっぽじって、彼女のステータスを聞いた。


・レベル:1

・名前:フレアリード・オブ・ロリンズ 7歳

・種族:人間

・地位:ロリンズ伯爵家、次女

・称号:伯爵家の娘、天才


・HP:105/105

・MP:10/10

・SP:100

・AP:2

・DP:2

・LP:30


・スキル

[算術LV1]、[法学LV1]、[歴史学LV1]


はは、笑うことしかできない。

初めからこんな気持ちにはなっていけなかったんだ。

伯爵家で天才の称号、知識系スキルが3つもついているなんて。かたや僕は男爵家でスキルが剣術LV1のみ。

いや、逆に良かったのかもしれない。これでしっかりと諦めがつく。身分も違えば才能も違う。僕のこの気持ちは始まってもいなかったんだ。それが分かっただけでもいい。

僕が空虚な気持ちになっているとあの醜い男が現れた。堂々とした面持ちで自分のステータスは優れていると思っているようだった。

そして、鑑定士からステータスを聞いたとき腹を抱えて笑いそうになった。酷い。あまりにも酷い。僕と比べ物にならないくらい酷い。そんなステータスだった。

そんなステータスを聞き、さっきまでの空虚な気持ちが少し待たされたように感じた。しかし、そう思った瞬間、あぁ、これが家族やその従者たちが僕に対して感じている感情か。と思った瞬間、また空虚な気持ちになった。

醜い男が消えて、しばらくしてからまた場の空気が変わった。

あの方のご登場か。

そう思い、舞台の方に目をやる。そこには体が勝手に跪きたくなる王太子様がいた。僕の周りにいた男爵家の子供たちもその姿に魅せられていることがわかる。

早く早く早く、と鑑定士を心の中で急かし、王太子様のステータスを教えて欲しいと思った。そんな僕の心とは裏腹に鑑定士はぐずぐずして、なかなかステータスを読み上げない。そのことに周りが騒がしくなってから、ようやくステータスを読み上げていった。

僕はそれを聞いた瞬間、涙が出そうになった。僕が抱いた敬意の気持ちは間違いではなかった。そう実感したからだ。周りが悲鳴にも近いほど騒がしくなっているが僕の耳にはそんな声全く聞こえなかった。

ただ、僕はこのお方について行きたい。そう思うだけだった。


全員の鑑定が終わり、洗礼式が終わった後子供たちは控え室にいた。あちらこちらから王太子様のステータスの話題が出ている。僕はそれを聞くだけで鼻が高い気持ちになった。

とうの本人である王太子様はフレアリード様とお話ししていた。そんな2人を遠くから眺めていたら、胸が締め付けられてきて、ここから立ち去ろうと思い扉の方へ歩いていった。


「クラージュ!待ってくれ!」


はは、幻聴が聞こえるほど僕の心は病んでいたのか。と思っていたら、なんちゃて従者のキャバズが小さな声で呼ばれていますよ。と言われて、現実世界に引き戻される。

そんなバカなと思い、周りを見渡すとこの部屋にいる僕以外の人物が僕の方を見ていた。もちろん王太子様とフレアリード様もだ。周りの様子で僕が呼ばれたと実感することができた。と同時に顔が青ざめていく。

王太子様のお気に障ることをしたのか?と思ったからだ。

王太子様に話しかけられる色々な可能性を考えていると、王太子様がさらに言った。


「クラージュ。こっちに来てくれ。話がある。あっ、フレアもここに居てくれ」


咄嗟に人間違いではないかと思い、震えた唇を無理やり動かし、吐き出すように話した。


「僕ですか?人間違いでは?」


「なんだ?この俺が人間違いをしたと言うのか?」


すぐにそう返された。しかもさっきまでの雰囲気とは違う、殺気が溢れた声で。

僕は気絶しそうになったが、もしここで気絶してしまったら本当に失礼なことをすることになると思い必死に意識を失うことに抗った。そうしているとフレアリード様が僕の方に来るのが見えた。そして、僕に近づき背中をさすってくださった。

さっきまで気絶しそうになっていたことは一瞬で吹き飛び、今まで感じたことのない幸せな気持ちで一杯になった。

はっと今の自分の状況、大勢の人の前で好きだった人に背中をさすられていることを思い出した。その瞬間、このまま床に伏せて顔を隠したいと思うほど恥ずかしく感じた。

そんな僕の様子を見て、フレアリード様は少し落ち着いたかな。と思い、僕の腰を持ちながら王太子様の方に連れて行った。王太子様は女の子に介抱されながら側にきた僕を見ながら言った。


「そこからここに来るのにどんだけ時間をかけるのだ」


その言葉で僕がしでかしたことに気がついた。

雲の上のようなお方を僕はずっと、お待たせしたのだ。このことになんてお詫びをしたらいいかわからないが、とにかく謝罪の言葉は口にしなければならないと思った。それとなぜ僕がここに呼ばれたかも。


「も、申し訳ありません。僕がなにかフラムスティード様のお気になさることをしましたでしょうか?」


僕の震えた声とは違い堂々とした声で王太子様は言った。


「いいや、何もしていない。ただ、話があると言っただけだ」


「その話とやらは何でしょう?私も同席して良いという話ですが」


王太子様の言葉の後すぐにフレアリード様が俺と同じ疑問を王太子様に投げかけた。僕はこのお方たちの会話には入る隙がないと思い、口をパクパクさせていた。そんな僕には全く気にしないで王太子様は今まで見たことないイタズラ顔で言った。


「今後、俺と一緒にこの国を支える者の初めての顔合わせだぞ。フレアは大臣に。クラージュは英雄に。な」


えいゆう?ぼくが?

英雄って国が魔物などの脅威にさらされた時に国を守る存在のことだよね?そんな存在に僕がなる?あんなステータスの僕が?

何を言っているんだ、このお方は。やはり人間違いだったのか?そう結論づけて、自分を納得させていると王太子様がさらに言葉を続ける。


「クラージュよ。お前、しばらく王都にいろ。滞在費は俺が出す」


そう言い、何事もなかったようにこの場から立ち去っていった。このまま誰もなにも口に出さないまま王太子様がこの部屋から出ていくと思ったが、大馬鹿者がそんな王太子様を立ちふさいだ。


「おい!お前。あの男のステータスを見ていなかったのか!?お前の目は節穴か?」


その言葉を聞いた瞬間、あぁ、こいつ死んだな。と思った。大馬鹿者の従者が今にも死にそうな顔をしながら、土下座しそうな勢いで王太子様に謝罪した。


「誠に申し訳ございません。王太子様!坊っちゃまは先ほどのステータスで気が動転しておられますゆえお許しください」


今更謝っても遅いだろ。と思い、王太子様がどう対応するかを見守った。


「ほう。気が動転していると何をしてもいいのか?」


そう言い、さっきとは比べものにならない程の殺気を感じる。周りの僕でさえそんな殺気を感じるんだ。そんな殺気を直に受けている彼等は大丈夫だろうか?

王太子様はそんな彼等に追い打ちをかけるように顔を覗き込む。それでも、何も言わない2人。2人の反応に周りが焦り始める。しばらくして、呆れたように王太子様がその場から離れて行き、この部屋から出た。

この部屋にいるほとんど全員が緊張の糸が切れたように、地べたに座っていく。中には過呼吸になっている人もいた。

この部屋にいる誰もがあのお方には逆らわないと感じた瞬間だった。

ふと、鼻腔に尿臭がした。

まあ、漏らしても仕方ないよね。と思い、その臭いの発生源をかざしてみると、それはロメアリンスだった。

その臭いは不快なはずだが、少し清々しい気持ちになった。

予想以上に長くなったため、2つに分けます。

申し訳ありません。


ということで、次もクラージュ視点です。

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