表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

孝義

作者: わをんわをーん

 孝義は、度胸がないくせに負けず嫌いな、そんな、いじめられやすい性格だった。


 だいたい小学校へ入ってからというもの友達ができずいつも一人で遊んでいたが、そのうち絵がうまいことがクラスで評判になり、人気が出た。天然で、なかなかおもしろいやつだったので、翔太と俺はいつも孝義をからかっていたのを覚えている。


 ある日、翔太が格闘技の技を孝義にかけて遊んでいた時のことだ。


 孝義が逆に技を翔太に掛けて苦しませていた。俺をふくむこの光景を見た全員が孝義をほめ、翔太を笑った。


 これにガキ大将だった翔太はプライドを傷つけられたんだろう、本気で孝義に怒って喧嘩になってしまい、また孝義は一人きりになってしまった。


 それで、二日くらいたった時翔太が、帰り道に孝義を待ち伏せようぜと言ってきたので、なぜかと尋ねたら、孝義に落とした鉛筆を拾ってくれと言っても無視して拾ってくれなかったり、授業中問題に間違えるとクスクス笑っていたりしてくるという。


 これは孝義なりのやり返しだったんだろうが、いかんせん陰湿すぎる。そうおもった俺は手を貸すことにした。


 その日の夕焼けに孝義の泣き声は響いた。


 次の日学校へ行ってみると、友達皆が孝義に向かってボールが投げている。


 孝義は反撃するのかと見ていたら何にもしてこない。俺の所にボールが転がったので、空気的なことから俺も投げた。


 それからというものいじめは始まった。


 孝義はというと、ずっといじめに抵抗し続けた。


 パシリに使ってやろうとも絶対聞かない、数人がかりでどんなに殴っても、必ず睨みつけてくる。


 何もできないくせに、やり返しもできないくせにそんな事するもんだから、俺ら皆の反感を、孝義は買い続けていた。


 そんな日が一年ばかり続いた。


 俺らが二年生に上がってしばらくたった時。あれはゴールデンウィーク前の事。孝義が翔太にいきなり後ろから襲い掛かかった。


 そして、仰向けに倒れた翔太にすばやく顔をめがけ、全力で殴り続ける。


 翔太からは血が、孝義からは涙が流れていた。


 皆や俺も、予想外の出来事と、あまりの迫力に唖然として誰も止められなかった。


 翔太も何とか逃げようとして体を動かしてはうつ伏せになって、頭を両手で守ったのだが、今度は、がら空きになった胴体を責めていく。


 その時、孝義はなぜか、不思議な事に主に臀部辺りを執拗に責め立てていた。興奮していたからかな?


 その後、騒ぎで駆け付けた先生が止めてくれたが、これ以来、翔太と目が合う度に襲い掛かったため、翔太はしばらく学校へ来なくなってしまった。


 まあ、これ以来いじめはなくなり、孝義の方も、しばらくして登校して来た翔太へのやり返しなどもしなくなり、この件は一件落着した。


 何でも孝義は、俺らにやり返すために空手をして鍛えていたらしく、俺と孝義が親友になった小四の頃、市大会で優勝したと喜んで伝えてきたのを覚えている。


 それから孝義とは高校で離ればなれになった。


 四十歳の今日、同窓会が開かれ、オカマになっていた孝義とぎこちなく話をしていた時。


 俺はこの出来事を、辛い時や挫けそうな時、なぜかいつもおもい出すんだ。何かさ、エネルギーが沸いてくるんだよ、と話したら、雌豹の眼でこちらを見つめてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の五行でがらりと変わる。 [一言] 空手やっているひとに狙われたら、もう無理だよね……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ