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今朝、Yからメールが入っていた。
内容は頼んでおいた大学の先輩から返事が来て、電話で話をしたらしい。
「また、昼休みにいつものように」と書かれていた。
「了解」と返信する。
「もうここ1週間近く、いつもと違う、非日常的な日常となってしまった……。いつもTとYと一緒だし」苦笑する。
でも、この感覚は、少年時代に、意識で抑圧することなく、気持ちいっぱい熱くなり、素直に話し、遊び、過ごした時のものに近い。
歳を重ねるにつれて、そのようなことがなくなった。そして、高校時代を迎えた。
それが、今は……まだ、熱くなれるんだ。自分は。
既存のゲームには飽和してしまっていた。リアルな出来事だからそうなれるんだと思った。
午前の授業を受けながら、そんなことを考えていた。
昼休みを待ち、昼の食事を買って、校庭近くに向かった。
TとYがやってきた。先ずは早めに昼食を済ます。
そして、Yからの言葉を待つ。
「まず、自然の音の録音ファイルは、ざっと調べてみたが、そのまま、自然の音が複雑に足し合わさったもので、特に変わっていることはない」と先輩からの言葉。
「もう1つの、ファイル〜I」
「これは普通に聴いていてもどこか妙なところがある、特殊な音だと思う。それを踏まえて音の解析ソフトにかけて見ると、ある特徴的な音の振動数、位相が出てくるそうだ。それぞれのファイル〜Iごとに」
「ここに、もしかして、作成者が何らかを意図?し、何かを調べるために実験しているのかもしれない……」と先輩は話していたそうだ。
「しかし、それ以上は先輩の手間もかかることなので、一応作業を止めてもらった」
Yからの話は以上だった。
「音を意図して創る。ある特徴的な振動数、位相となるように……。何かを調べるために?実験のために?自然の音などに対応して…」
このYの先輩の助言は、非常に説得力があった。
「CDを落としていった人は一体何をやっているんだ?」
昨日、「記念じゃねえの」を答えとして思い込んでいたことが、Yの発言から、やはり疑問があるものとして、蒸し返えされ、謎めいてくる。
「毎回、少し分かっては、また分からないことが出てくる。進んでは後退の繰り返し」
「全ては分からないまま、終わるのか……」
その後もあれこれ意見を交わして見たが、何も進展せず、引っかかった、釈然としない感じを残して、昼休みは終った。
そして、それぞれの教室へ帰っていった。
帰宅後は、テレビを見て、見た目はいつものように過ごしてはいたが、心はうつろであった。
残されたしこりに対する欲求と不安があるまま寝た。
次回、最終話です。
ファイルにまつわる話の行方は……
よろしかったら、どうぞご覧下さい。