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今朝、朝ご飯を食べながら携帯のメールをチェックしていたら、Tから、「ファイル名の暗号が解けた。昼休みに」と入っていた。


受信時間は午前3時を過ぎていた。

「夜中遅くまでやってくれてたんだ」


「了解。昼休み、いつもの場所で」と返信した。


午前の授業中は、暗号が解けたことに少し興奮して、集中できなかった。

「どういった意味があったんだろうか……」


ここところちょっとした探偵気分になっていたのだが、逆に「こんな些細なことに心揺り動かされるなんて、子供じゃないんだから。全く」と以前の自分がたしなめる。


午前の授業の終わりのチャイムが鳴ると、足早に昼食を買い、集合場所に向かった。


今日は自分が1番で、Y、最後にTが来た。


はやる心を抑えつつも、まずは昼食を皆でとり、ペットボトルの緑茶を一口飲んだ。

3人であまり会話はなかった。


「暗号って?」自分はというと、

Tは、まあ焦んなという感じで話し始めた。


「暗号解読法は〜。とりあえず、これは省略する」


「これにより解読した結果、ファイル名は、N(数字)E(数字)日時(数字)に変換される」

「多分ピンとくると思うが、地球の北緯、東経、日時を表し、おそらく日本のある場所の日時となるだろう」

Tが少しだけ得意気に見える。


Yと自分はその意味に納得し、それならその場所を突き止めようということになった。

ネット検索が早いということで、放課後、PC室で再集合となった。


今度はファイル名の地点がどこなのか。気になって仕方がない。授業が終わるのが待ち遠しかった。

午後の授業が終わるチャイムが鳴ると、掃除当番もざっと済ませ、PC室に向かった。


3人、ほぼ同時にPC室に着いた。


揃って、1つの端末を囲み、ファイルの暗号のN(数字)E(数字)を入力し、地点を検索していく。


画面が出ると、Tの予想通り、全部日本だった。そして地方。当然、自然が多いことは頷ける。しかし、場所は知らないマイナーな所ばかりだった。

地図上は、山、林、畑、田んぼ、川、神社……が含まれていたり、街に近い所もあった。


「これだけだったら、音源の録音場所、日時を暗号にする必要はないのではないか?」

「ファイル名は、N(数字)E(数字)日時(数字)のままでいいのではないか?」と自分は口にする。


「でも、やはり秘密にしておきたい理由があるんじゃないか。わざわざ暗号にしているんだし」とYは言う。


一方、ファイル名の暗号は解けたものの、これからはファイル〜Iの“〜I”の部分やその音源作成の理由も明らかとはならない。


結局、暗号を解いて検索した各ファイルの地点周辺の地図を、3人分プリントアウトして持ち帰ることにした。PC室を出て、そこで解散した。


この日は、Tのファイル名の暗号解読のおかげで、ファイルの録音場所、日時が分かるという予想にもしない前進があった。


思えば、Oの4地域も、大まかではあるが見事に当たっており、「凄い」と関心した。

しかし、一方で録音場所、日時を隠す理由とその録音の意味、依然としてファイル〜I作成の意図など、謎めいたことが、また浮上してきた。


「単なる自然の音の録音ファイルとファイル〜Iではないこと。改めて思う」


後は、どうしてこの場所の自然の音を録音したか、それに対応していると考えられるファイル〜Iを作成したかということを何としてでも知りたくなる。その特別な意味について……


帰宅後もプリントアウトした地図を見る。

でも、何も分からなかった。

この時、凡庸な自分を、殊更ながら疎ましく思った。

これらのファイルに出会う数日前までは、「何事も程々でいい、適当に」と流してきた自分が、今は変わってきている。

こと、ファイルのことに関しては、少しながらも熱いものを感じている。


結局止めてしまい、1階に行き、テレビを見たりして過ごした。

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