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午前の授業も、Oから教えてもらった結果もあり、ファイルのことが気になっていたら、あっという間に終わってしまった。

また、ここんところ自分でもしつこいなと思いつつも、昼休みにTとYと話そうと、休み時間中に携帯でメールした。

2人とも了解とのことで、午前の授業が終わると、昼食を買って待ち合わせ場所に向かった。


Tにファイル名の解明状況を聞くと、「まだできていない」と言った。

プライベートでは結構忙しそうだし。


「昨日、Oからのサジェスチョンで、4個のファイルについて調べたみたら、大まかな地域は分かった」


「鳴く鳥の声から、録音された季節も分かる場合もありそうだし、また他の鳥がいるかどうかで録音された鳥の生態系も分かるかもしれないし、虫の鳴き声があればその切り口から……」と止まることなくYは言う。

多方面から分析的に推論を進めていく、さすがYだと思う。自分とは違う。

「しかし、これは時間がかかるよ。自然の音のソースをこのやり方で細かく追求することもいいけど、やはり限界はあるだろうから、違った面のアプローチも合わせて進めていった方がいいんじゃないか」


ファイルの意味、そんな些細な紐解きをどうすればできるかという、自分たちのやりとりの中で、自分は心の中で1人呟く。

「今までの自分だっら、とうに止めているだろうに」

「前の自分に戻って、終わりにしてしまえばいいじゃないか」


しかし、一方で、

「他人の何かの秘密に関わっているかも知れないという好奇心からだろうか……」

「それともこのファイルにまつわる問題に、もっと深いものがあると感じるからだろうか……」


「もう少し知りたい。率直な気持ちである」


そんな時に、「音のことは、良く触れている奴に聴いて見たらどうだ」とTが言った。

「そうだよな。音楽に詳しい奴にも聞くいてみよう。少しでも参考になるかもしれない」ということになり、TがDはどうかと言った。


Dは、小学時代はピアノをやっていたが、中学から一変してクラブ系音楽にはまってしまい、今も主にその系で創作、プレイをしている。しかし、そこにとどまらず、幅広くロック、オルタナやジャズを取り入れている。


3人でDのクラスに行った。

誰しも初対面だったが、ここはTの人なつっこさで、声をかけてもらった。


見かけは、自分らには縁のない人種である。髪は染められ、ロング、制服のネクタイはかなり緩く結び、ズボンは下げてはいている。声をかけた瞬間、向こうも何?と怪訝な表情を示したが、ファイルの話をしてみると、少しは興味があったのか、「いいよ」と快諾してくれた。


待ち合わせは放課後、16時に、学校近くの喫茶店にした。


喫茶店には自分ら3人が先に着いた。各々飲み物を頼んで、Dを待つ。

10分が過ぎ、Dがやってきた。

Dはアイスコーヒーを注文した。


初対面で、場にぎこちない空気が流れたので、「よろしく」と軽く挨拶を済ませ、本題に入った。


自分は、携帯オーディオプレイヤーを取り出し、「これから再生するファイルを聴いて」と言い、Dに順番に次々と聴かせていった。


全て聴き終わると、Dが口を開いて感想を言い始めた。


「自然音のファイルはそのまま、あるどこかの土地、自然の音をそのまま録りしたとしか思えないけど」


「うーん、自分らの第一印象と同じか……残念」


しかし、ファイル名〜Iについての感想は、今までの人とは違ったことを言い始めた。


「このファイル名〜I?には、同じ英数字が含まれている自然の音が録音されているファイルがあるよね。その録音された自然の音とは、全然違ったものだよ。でも、創った人の、創作の意図みたいのを感じるな。どうしてかって?、そう言われても困るんだけど」


「これ、どうしたの?」

と、Dが聞いて来たので、詳細を説明した。

「ふーん」とDは言ったが、それ以上は興味はわかなかったのか、何も聞いて来なかった。


そのまま、じゃサヨナラではと思い、Dの音楽の話を聞いた。

クラシック、そして編集的な手法を用いるクラブ系音楽、加えてロック系のパワーとジャズのスタイルなどをうまく合わせて、新しさのある、興味深い音楽を模索中だそうだ。

皆で感心した後、話も終ったので、Dは先に喫茶店を出て、帰っていった。


「音楽やってる奴は、自分らにない感覚で何か分かることがあるようだ」と喫茶店に残った自分ら3人は感心したものの、収穫は、音感的に「このファイル名〜Iには、創作の意図みたいのを感じるらしい」ということだった。


「ファイルに関して、簡単に、すぱっと、はっきり分かるとはいかない。とても遅々として、正直イラっとするな」、自分は

内心呟く。

「しかし、一般的に、事実の解明には、多くの人々がかなり多くの時間と手間をかけている。そういう努力が自然とできる人が才能がある人ということなのか」


そう思っていると、Yが口を開き、「知り合いの先輩に、大学で物理専攻の人がいる。ちょっと参考までに聞いて見るよ。家に帰ったら、ファイルを自宅のメールアドレスに送って」と言った。


「これは、別の観点から期待できるかも……」と内心思った。


「そして、自分らで調べられる範囲は、昼休みに話した点から調べを進めるということで。後は、Tに早くファイル名が暗号かどうか解読してもらうことだ」とYが言うと、Tは、おいおいと苦笑していた。


そして、3人で喫茶店を出て、最寄り駅から電車に乗り、乗り換え駅で別れ、帰宅した。


「何だか、良く分からないファイルに振り回されているな」

「自分でも何かに入れ込むことは、ここずっとなかったけど……」

「勝手に人のものを見たのがいけなかったのか……」

「たいしたことがないもの、と言っては落とし主には失礼だけど、自分の気持ちに、友達、みんなもよく付き合ってくれる。有り難いことだ」

と思いつつ、家に帰ってしまうと、「できることがない」となってしまい、結局テレビなどを見て過ごし、0時前には寝てしまった。

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