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朝、学校に着いてから、落とし物のCDのファイルについて、友人のTやYに聴いた感想でも聞いてみようかと思い立った。
友人のTとY、2人とは昨年は同じクラスで仲が良かった。
しかし、今年は別々のクラスになってしまった。
Tは、週末にはPCの部品や怪しげ(?)なソフト、フィギュアを求めて秋葉原へ繰り出す典型的なアキバ系だった。
PC、ネットのことは何でもお得意で、困った時はいつも世話になっている。
もう1人は、Yといい、こちらは自分の友人としては、似つかわしくないタイプだった。
数学、物理などを得意とする、学年の成績順位が一桁の超秀才。
将来は大学で物理学の研究者になりたいそうだ。
志望大学も難関国立大を目指している。
何で今でも、自分と友達付き合いしているのか分からないところもあるが、息抜きからかアホなタイプと付き合っていたいのかもしれない。
その2人とは、今年から別々のクラスになっても、昼や放課後など、たまに一緒に過ごす。
その2人に携帯メールで、「昨日、ちょっと変わったCD拾ったんだよ。聴いて見ないか?昼、一緒ににどう?」と送信した。
程なくして、2人から、「じゃ聞かせて」と返事が来たので、昼休みに校庭近くで落ち合うことにした。
午前の授業の最後のチャイムが鳴ると、自分は売店に向かいお昼のパンと牛乳を買って、待ち合わせ場所に向かった。
2人はもう来ていた。
まず食事をしながら、お互いの最近の出来事について、しがない雑談をした。そして自分から話を切り出した。
ポケットからCDと携帯オーディオプレイヤーを取り出して、「これが昨日、電車で落としいったCD、そのファイルの音はこれに入っている」と2人に言う。
オプションのスピーカーをとりつけて、とりあえず何も説明などせずに、次々再生していった。
2人に感想を聞いて見る。
「単純に、自然の音などを録ったものじゃないの?」自分が昨日思ったものと同じになった。
また、逆に「ファイル名〜Iが入ったものは何?」と聞かれ、
「同じファイル名で自然の音があるので、何らかの関係で、自分で演奏?合成?したものだと思うけど、音楽でもないし、信号音でもないし……どういうものかは分からない」と答える。
続いて「ファイル名は英数字ばらばらで不規則につけられていて、意味不明だ」
さらに、昨日落としていった人物の様子を言った。
そうすると、「暗号化されていて、一見、意味不明な英数字の羅列だったりしたりして……」携帯オーディオプレイヤーの画面に表示されるファイル名を眺めつつ、Tが呟く。
「まあ、録った場所とかが秘密だったりとか、ファイル〜Iの存在自体も、より秘密めいているし。“〜I”も分かんないね」
「俺、ちょっと調べて見るよ」Tが胸を張った。
そんなファンタジックなところがある奴だ。
昼休み終わりのチャイムが鳴り、3人は解散した。
午後の授業も淡々と進んで終わり、約束もなかったので、帰路へ向かった。
途中、一番近い遺失物センターを聞き、落し物のCDを届けた。
その際に、連絡先は記入しなくても良かったのだが、適当なハンドルネームと携帯のメアドを一応記入した。
帰宅後、TやYとの話を思い出し、「秘密めいたものに出くわした」と好奇心をくすぐられる感じがしたが、「自分からできることは……ないかと」なってしまい、一昨日までの生活と変わりなく、その日は終わった。