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料理

正直言って、この魚…めちゃくちゃうまい。身が白身でもなく赤身でもなく紫ってところがまた毒毒しいけど、ほろほろしてたし脂も十分乗ってたしさすが高級魚様ですわ。


やはり俺の名前がつくだけのことはあるな。


「「「ごちそうさまでしたー!」」」


俺とエリカ、チコが満足そうに合唱をしたのを見て、兄さんは残骸である骨を燃やしはじめた。


「これ美味しいでしょ?僕が部隊で遠征に行った時に初めて食べた衝撃受けたんだよね。見た目こんなだけど、骨もこうして焼いて炭にすれば調味料としても使えるんだよ」


「すごく美味しかったです!ネオンのお兄さん、今度僕に料理教えてください!将来のために料理は必要不可欠なのです!」


「いやあ、これ料理って程のものじゃ…」


てれてれする兄さんに対し、エリカは


「そんなの料理じゃないでしょ」


ふんっと一喝。いや、料理できないお前がいうことじゃないだろ。確かにこれは魚焼いただけだけど、兄さんより魔法得意なくせして焼くのをまかせたか、長年連れ添った俺なら分かる。



こいつとんでもない料理音痴なのだ。



まず、当たり前に包丁はにぎらせられない。にぎらせたら最後…死人が出るだろう。そして魔法を使用した煮る、焼くなどの作業に至っては加減が分からないのか、ほぼ焦がす。そして目を話すと魔法同士が複合して食べ物じゃないものが出来上がるのだ。虹色の煙がもわもわしてた時は何ができたかと思ったわ。




だからもし、さっきの魚をエリカが焼いていたとしたら…あんなに美味しい魚が一瞬で凶器に変わっていただろう。本物の毒魚になっていたところだった…。



「エリカさんはお料理できるのですか?」


そこ触れたらいけないところだぞー!


「ま…まあね!できるし!この前、アルとネオンにクッキー作ってあげて美味しいって言ってくれたもん」


「へー!さすがですね!エリカさんにも習いたいなあ」


ああ、あの例の。クッキーだったんだな、あれ。拳分くらいの大きさで丸くて黒コゲてて…。黒ごませんべいかと思ったわ。めっちゃ硬かったしな。まあ、我慢すれば食べれるレベルだったからエリカにしては成功品。機嫌損ねるのもあれだし、兄さんと話し合わせてうまいって言ったんだっけ。


「じゃあ明日の朝ごはん!エリカさん一緒に作りましょう!いろいろ教えてください!」


「うん、そうね。たまには作ろうかな」


2人で意気込んでるところ悪いがそんなことさせららない。チコの腕は知らないが、頭がお花畑だしあてにならない。



「兄さん…。料理は全部頼んだ」


「うん、まかせて」




こっそり兄さんに耳打ちしてこれからの危機を回避する。エリカに作らせたら魔獣と戦う前にお陀仏だ。



味方の料理で死ぬなんて不名誉すぎる死に方、俺は絶対嫌だからな。








次の日…


エリカとチコが食べられるものを狩りに行っている間に兄さんが近場にあるキノコや薬草類でスープを作ってくれた。昨日の骨の調味料で味付けをしてみたらしい。




あとは家から持ってきた即席のパンで朝ごはんは十分だろう。



問題はあいつらの料理をどうするかだ。


おっーと手が滑ったあ!はさすがに通用しないよなあ。


狩ってきたものも俺たちが料理するのが1番いいんだろうけど納得しないだろう。


うーむ…





「ただいま〜!」


「ただいま、昨日の魚でもいいと思ったんだけどビッグマウスを見かけたからそいつにした」


ドンっと俺くらいある大きなネズミをチコが下に下ろした。でけえ…。この辺でかい生き物しかいないのか?まさか…Gまででかいとかないよな…。




「何作ろうかなぁ。チコは何が食べたい?」


「うーん、エリカさんにおまかせします!」


あれ、昨日より随分仲が良くなったようだ。昨日は主にエリカがつんつんしてたのに。


「じゃあ、とりあえず火にかけようかな」


そう言って上級よりも上の超級魔法の呪文を唱え出した。え?まじで。ちょ…こげる…まっ



「「まったーーー!!!!!」」


俺と兄さんの息のあった掛け声とともにエリカの最後の詠唱が終わり目の前の肉の塊はただの炭へ変わったのであった…。











**********************



「ごめん…」


しゅん、と銀色のサイドテールが揺れる。


「いや!すごい魔法でしたよ!僕びっくりしました!」


金髪の少女があわててフォロー。ぴょこんと立っているアホ毛が忙しそうに揺れている。


「こんなことだろうと思って兄さんが朝ごはん作っておいてくれたよ。早く食べよう」


「誰にでも失敗はあるから!エリカもこれからだって」


兄さんが励まして、スープを渡していく。



うむ、うまい。さすが。男部隊だと自分で料理をしなければいけないらしいため、兄さんの腕はなかなかのものだ。



「やっぱりアルには敵わないなあ。料理うますぎー」


「こんなの誰でも作れるけどね。今度エリカにも教えてあげるね」


にこにこ機嫌のいい兄さんだったが、程なくして顔つきが変わった。


「兄さんどうしたの?」





「今回のオーク狩り…楽じゃないかも…」



うん、ですね、とエリカとチコもそれぞれ納得していた。どういうこと??意味わからんぞ。



「ネオン、分からないの?さっきから森の方からの殺気がすごいの。オーク数匹で出せるような殺気じゃないわ。たぶん…オークじゃない何かがいるのかもしれない…」



「僕もこんなの初めて感じるよ。今まで森の近くに住んでたけど、こんな殺気初めて。お兄さんは?」


「僕もこの辺りでこんなものを感じたのは初めてだ。上級魔獣どころじゃないよ…。ここは引き返した方がいいかも…。王都に連絡してすぐに調査部隊を派遣してもらおう」




らっきー!戦わなくてすむ!正直殺気とかいまいち分からなかったけど、天は俺に味方した!早く帰ってごろごろし…






『ギャァァアァァァアアゥ…』


何かが空に向かって吠えた。まるで近くに稲妻が落ちたような衝撃とともに。











ああ…ラッキーでもなんでもなかったわ…。むしろ超不運…。こんな奴から逃げられる?見逃してくれるのだろうか…?


そこには




真っ黒い鱗で覆われた大きな影、昼間だというのに黄色の瞳をらんらんと輝かせて、舌なめずりをしている…、




いわゆるドラゴンという奴だった。








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