突然の報告
はい、そんなわけで曇り空の中外に出ました。出たというより引きずり出された。
さすがに足に異能持ってるお兄様には勝てませんって。お兄様自慢の脚力は伊達ではない。
「エリカも呼んでくるけど逃げないでね。逃げたらどうなるかわかってるよね?お兄ちゃんのいうこと聞けるよね?」
兄さん、俺もう18歳。5歳児に言うようなこと言わないでください。まあ確かに逃げようとしたけどな。
ちなみにエリカというのは俺達が居候させてもらっている家の子だ。俺達の両親は俺が2歳の時に不審死した。そんな時のこと覚えてるわけもないが、兄さん曰く酷い有様だったらしい。兄さんもうろ覚えだそうだが。まあつまり、俺たちは従姉妹に当たるエリカの親に引き取られたってわけ。
そんな中で自宅警備してるとかホントすみませんって感じなんだけどさ。
兄は能力を持ち始めてからは特殊部隊とかいうところに呼び出されて、そこで働き始めたようだ。4歳で発症後の5歳で部隊入りだから、今では古株だそうだ。
「や〜っと外に出たのね。一年ぶりくらいじゃないの?自称自宅警備のプロくん」
後ろから声をかけられて、エリカが来たことを知る。
エリカ・ガードナー、14歳。こいつ年下のくせにすごく生意気。ませてるって方があってるのか?話さなければ美少女なのにな…。
「一年じゃないし、352日ぶりだからな。そこ間違うなよ」
「うわ、そんなの知らないし。約一年じゃん」
くそー!こんなやつと何するんだよ!兄さん何させる気だ。空は曇ってるし雨降りそうだし、できることなんて洗濯物を入れるくらいだろう?まず洗濯物なんて干してないけどな。
「兄さん!何するんだよ。」
「そうだなあ、とりあえずネオンを更生させる一歩にしたいな」
にこにことそんないい笑顔で言われても困るんだが。
「賛成」
兄さんとは対照的に意地の悪い笑顔でエリカが手を挙げる。
「ま…待って、そんな急に言われてもさ、何させる気?」
「最近、魔獣の動きが活発になってるって上から言われてるんだよね。とりあえず倒しに行ってみない?もしかしたらネオンは魔獣駆逐の素質があるかもしれないし。そしたら一緒に部隊で闘えるよ!」
まった。何を言ってるんだ。俺は生粋のもやしっ子だぞ。
「何を狩りに行くの?」
いや、エリカ。何以前に俺を連れて行くべきではないと。エリカは魔力量圧倒的に多いから魔法で余裕だろうけど能力もない、魔力量も圧倒的な少なさを誇る俺が行ってもお荷物どころか格好の餌食だ。
「とりあえず、オークあたりじゃないかなあ。集団なら怖いけど2.3匹なら余裕でしょ。」
「兄さん、本当に俺を連れて行くの…?俺逃げるしかできないんだけど」
「ん〜?本気だよ。慣れって大事だよ?実践して慣れなきゃこの先大変だろ?」
いや、俺この先ずっと兄さんのすねかじって生きていこうと思ってたから大変とかないんですけど…。
「ちなみに今年いっぱいで僕、部隊で遠方に派遣されるから。当分会えないしネオンへの支援もできなくなるよ。ごめんね」
そう言って泣き真似をする兄さんを見ながら、俺は呆然としていた。ああ…だからこんなに急に俺をひとり立ちさせようとしてるのかと。
くそ、最悪な報告だ。