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信じられないでしょうけど、再開される旅の出発です!

焼け焦げた木々が重みに耐えきれず破損しなぎ倒され、バキバキドサドサという効果音とともに不完全燃焼の証である黒く濁った煙が扉の隙間から小屋の中に侵入してくる。


「あ……あはははっ」


よくわからないけど、ごまかし笑いのようなものが自然に出てきた。

引きつっている、笑えてないとは理解している。


ミルクルさんとアオとミドリの三人は、ベットの上で寄り添いながら、ぽかーんとした顔を向けてくるだけで、フリーズして固まっている。


「はは……はぁ」


溜息を吐き、一応外を警戒しながら小屋の扉を開ける。

外側が焦げて変形でもしたのか、扉からガギャギャギャという嫌な音が生まれ開け切った瞬間バキリと外れた。


うぇ……


焦げ焦げであられもない姿となった哀れな扉くんに手を合わせ放り投げ、改めて外を見渡す。


少し離れた場所に一つのクレーターができており、そのクレーターの周りの木々が軒並み焦げ落ち、未だ所々で黒い煙が上がっている。


「爆発は、思った以上に強かったな……ま、山火事にならないだけマシか」


一番DEF数値の高い俺が扉の前で扉を抑えるが、やはりと言うか、それほどの威力はなくそこまで力を入れなくとも耐えきることができた。

そこまで遠くに投げなくても、この家が吹き飛ばなかったのがいい証拠だ。

しかし、思った以上に威力が高かったのも事実。

クレーターが深いせいでそこに散らばっているであろうアイテムが認識できない。


「……ふぅ」


もしかしたらと少し身構えたが、そんなことはなかったようでホッとする。

ベットの方へと振り返り、ミルクルさんに向けて親指と人差し指で丸を作る。

同時にベッドの方でもミルクルさんが息を吐いていた。


まさかここにきて、あの伝説のアイテムを目にすることになるとは。


アイテム名《storage suicide》。自爆する保存機。通称『最強の爆発物』


爆発型アイテムストレージ。

この、なぜアイテムストレージが爆発せにゃならんのだと誰もが思う頭の悪いアイテムは。

『爆発はロマン』とほざく運営(ばかもの)が作り出した負の遺産だ。


なぜ負の遺産とまで言われているのかというと。

このアイテムストレージ、とにかく使えない。

納められるアイテム数は少なく、ちょっとした衝撃ですぐに爆発する。

爆発の威力は小さいが、近くで食らえば大ダメージは必須。


アイテムを奪われるくらいなら死なば諸共! などという感じに一時期話題になったアイテムだが。

爆発したあと、中身が全て外に放り出されるから結局手元に戻ってこなくて大損をするというプレイヤーが続出し、やがて使いどころがなく色々な意味で『自爆』することから『最強の爆発物』と呼ばれるようになった。


そして使う奴はいなくなり、前EGO時代ではどこのショップも取り扱っておらず、伝説とまで呼ばれるようになったアイテムだ。

こっちにはまだあるんだね。


ちなみに、俺は無理だが、アビリティで作り出せるプレイヤーは何人かいた。


「はぁ……若干キャンディーちゃん、怒ってたんかなぁ……いや、それかウィーアードの嫌がらせか」


どっちもありうる。

全く、あの二人組めッ!

見送りまでマジで(よけい)なことを!


寿命が縮んだわ!


まぁあの爆発程度なら机の角に小指をぶつけたぐらいの痛みなんだけどね。


《にゃ、にゃにゃ、にゃんで爆発!》

「そうゆうアイテムです」

《そ、そうじゃなくて》

「ロマンです」

《そうでもなくてぇ!》


可愛い。


アオのテンパってる姿はいつ見ても天使さんだなぁ。

み、ミルクルさん。痛い。首と右肩の関節が痛い。

このままだと俺の首が、常にセルフで歩いてきた過去の軌跡を振り返れるようになっちゃう。

後ろ向きの男になっちゃう!


「ぐ……ぉぉぉ……」


ミルクルさんは容赦なく俺の首を締め上げてくる。

ふと、ウィーアードが首を一回転させていた姿を思い出した。

ゾッとした。コレは一種の未来視か。リアルウィーアードは嫌だ。


全力で抵抗していると、少しずつミルクルさんの力が弱まってきている。


あ、危ねぇ。


「どんなアイテムが、入って、るんだろうね!」

「ど、どうだろうな……なんか役に立つものだと嬉しいんだけど」

「ユベルちゃんの好きなものが入ってるかもよ?」

「俺の好きなもの?」


ミルクルさんの力が完全に緩んだので、余裕を持てた分を思考に回す。

顎に手をやり、真剣に考えてみる。


俺の好きな物……ふむ……俺の好きな物か……


「女の子かッ!」



ゴキッ!!


--- --- --- ---


「き……気を取り直して」


首を抑えながら三人に笑いかけるが、三人ともギロリと俺をにらんだ後、それぞれのタイミングでそっぽをむいた。


あー、首いって。

場を和ませようという他愛もないジョークじゃないか……


もしコレがアニメだったら、先ほどはレントゲンのような映像が流れたことだろう。

それぐらいシュールにしないと、受け止めきれないほど生々しかったとも付け加えておこう。


あと、首をゴキゴキならした後のようなささやかな爽快感があるのがちょっと癪だ。


「というわけで、クレーターの中に散らばってるはずだから、アオ回収してきてくれ」

「アオちゃんだけ? ユベルちゃんも行きなさいよ」

「アオだけで十分だろ? 既に前EGOデータの俺のストレージの許容量を遥かに超えた力持ってるんだし」

「納得」


そんなことを言ってる間にアオがコロコロと転がって小屋に戻ってきた。


う……可愛いけど、そんなやる気のない動きをしてちゃダメだぞ。

ストレージ云々より、運動の意味もあって言ってるんだからな。


……可愛いけど!


タダでさえアオは職業上沢山食べるんだから。

ちゃんと運動しないと太っちゃ――――


――――――殺気かっ!


《マスター元気だね》

「ん? お、おぉミドリか。なんか殺気を感じたような……まあいいか。で、元気? うーん。そうだな、スライム成分を補充したからかはわからんが、なんか気分いいんだよなぁ」

《ふぅん…………入れすぎたかな》

「ちょっと待って。今なんて言った?」

《はいますたー。持ってきたよ〜》


なんかアオがぽむぽむと俺の膝の上で飛び続ける。

なんだ? 新しい体操か?


別になんら支障はないから構わないけどさ。


「って、入ってたのコレだけかよ」


アオから渡されたものは、マジックアイテムの思われる手紙一通のみだ。

俺の疑問にアオは頷くことで肯定を示した。


「手紙にしては、割と金属質だな……」


薄く硬めの紙を広げると、カチリと一定の間隔開いた後音がなり、形が固定された、


「なんだただのゲーム○ーイか」

「3D○でしょ」

《なに言ってるかわかんないけど違うってことだけはわかるよ》


横側面についている電源をつけると、ブゥンと電子音が鳴り、真っ白の手紙からホログラムで小さなウィーアードとキャンディーちゃんが飛び出してきた。


チッ…………どっちかってーと3D○よりか……


そこでふと、ミドリの視線がちょっと無視できないレベルになってきたのでふざけるのをやめた。

オーケーオーケー。少し真剣になろう。


そう決意すると、ホログラムのウィーアードは無表情のまま話し出した。


『ユベル氏へ。まず、この手紙はいずれ急にどこかへ旅立つ貴方へ、からか、げふんっ、応援の意味をもって事前に用意しておいたビデオレターデス。通信機ではなく、私の声を録音しているだけなので会話はできないのであしからず。では本題に入ろう。まず言わせてもらうと、この手紙を読んでいる時、おそらく私はこの世にいないだろう。なぜなら、もし生きていたら、手紙の内容は手紙ではなく直接伝えるはずだからだ』

「「なッ!」」


ど、どうゆうことだ! 栞は確かに水色で……


『と、言うのは一度言って見たかっただけで当然冗談デース』

「コレぶっ壊していいかな」

「手伝うよ」

《気持ちはわかるけど!》


本気で握りつぶしそうになったが俺をアオが、ミルクルさんをミドリが抑えることでなんとかなった。

しかし、元凶であるウィーアードはこちらのことなど御構い無しにベラベラと喋り始める。


『この手紙を見れていると言うことは、キャンディーちゃんの『鍵設定』で設定された条件をクリアする状況であるということデスね。いやー、かなり大変なことになってますね〜』


なんだろう。過去の録音したやつだってことはわかってるんだけど。

なんかムカつく。


『まぁ、どんな状況なのか把握することはできませんが。ユベル氏とアオ氏とミドリ氏なら大丈夫でしょう。あ、ミルクル氏もいますかね? みんなで力を合わせればきっとなんとかなりますよ! ファイトファイト! もっと熱くなれヨォ! おっと、ソーリーソーリー滑るソォ〜オ〜リィ〜イ〜ィ〜イ。これ以上やると壊されそうなのでやめておきます。マ、頑張れということデスね』


よしオーケーその喧嘩買った。

壊して欲しいってそう言ってるんだなそうなんだな?

アオ、離すんだ! こいつ壊せない!


『後はまぁ、ユベル氏に作ってもらったカードを入れておくので、これで私の体調でも時々調べてください。先に言っときますが基本的に私は大丈夫ですので。なんかあってもノープロブレムデスので。伊達にこの歳まで生きてませんからね。とはいえユベル氏はおバカ様デスから、こうでもしないと探しそうですし』


一言余計だな。


『なんかあったとしても、自分でなんとかできますので。私からいうことは一つ。ご自分の旅をせいぜい心ゆくまでお楽しみなさい。一度きりの人生、やりたいことをやるのが一番でしょう。おっと、こっちのユベル氏が来たのでこの辺で。また会える時を楽しみにしておきますよ。あ、P.S.、私、基本的に王都にいないと思うので、王都に来ても会えない可能性の方が高いデス! それでは』

「あ、きれた」


そこで録音が終わってるのか、プツンとテレビの電源が落ちたような音がしたと思ったらホログラムも消滅した。


あいつ……本当は録音じゃなくリアルタイムで通話してたんじゃないだろうな……


「だそうだけど、どうするの? ユベルちゃん」

「心配するに決まってんのによぉ。たくっ、あのバカは」


変なところで、俺が楽しく旅できるように気を使いやがって。

似合ってねぇっつーの。


「とはいえ、無事だってことはわかってんだ。それに本人もこう言ってるし、王都に行くのはやめとこう」

《どうするの?》

「旅を続けるよ。勿論、楽しむだけじゃなくて、目的も追加だけど」


色々な目的があるけれど、そこに『他の転生者を探す』・『転生について調べる』を追加する。

転生について調べるのに一番効率的なのが、おそらく他の転生者と会うことだろう。


ジャックの件で身にしみたが、やはり俺たちがこの世界に転生させられたのはなんらかの理由があるのだ。

ジャックの変貌や力もそうだが、知らなければならないことは山積みだ。


「とは言っても、あくまで旅の目的の大前提は『遊んで暮らしたい』『楽しみたい』だからな。ま、そんなに焦ることでもないさ」

「そんなんでいいのかなぁ」

「無理したっていいことはないからな。肩の力抜いて行こうってことだよ。のんびり旅だって、悪かないだろ?」

「まぁ、そうだけどさ」


ミルクルさんの言いたいことはわかる。

しかしやり過ぎて知らず知らずのうちに無理してましたじゃ、いい結果になるもんもならん。

適度適度。お楽しみ以外はそれで十分だ。


しかしまぁ、気楽にやり過ぎていざって時に何もできませんじゃ、それこそ話にならんけどな。


「まずは『ガイア』に行こうか。情報や武器なんか、特に魔剣は必見だ。アオ、服を出してくれ」

《もう少し休んだ方がいいんじゃ……》

「いや、十分休んだよ。三ヶ月も寝てたんだ、そろそろ運動しないと体が動かなくなっちまうよ」

アオが取り出してくれたパーカーを受け取り、全身の軽めの服を整えてからパーカーを羽織る。

体が少々汗でベットリしているから、風呂にでも入りたいところだな。

『ガイア』で探すか、それか『火』アビリティーだな。


ちゃっちゃと身支度を終え、ミルクルさんを置いて外に出た。

アオとミドリはともかく、今のミルクルさんは18くらいの大きさだからな(胸は誇張されている)。

準備に立ち会うわけにも行くまい。


……さて


「レベリングが必要だな……ダンジョンに行って、新しく追加された称号も気にしとかないと……あとは……」


のんびり旅もいいが、たまにはハードな旅も悪くない。


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