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信じられないでしょうけど、チェックメイト、です!

EGO内でも一つの楽しみ方という名目で当然、プレイヤーキラー、世に言うPKプレイヤーは少なくない数存在した。

まぁ職業柄、それが正しいとはいえなかなかに悪どいことや胸糞の悪いことをする輩もいる。


別にそれがプレイヤーキラーだけだとは言わない。

普通にプレイしている奴の中でも、マナーがなってない奴はごまんといるからな。

ただまぁ、そんなプレイをしているのだから、嫌われるのも当然だわな。


そして俺は、そんなことは百も承知、わかった上で。


PKが大っ嫌いだ。


これは個人的な考えであり、私的な恨みだが。

俺の『大切』を奪った奴を、嫌いにならない筈がない。


しかも今俺の目の前にいるのはその張本人。

長々と言わせてもらったが、つまり簡単に言うと。


俺は『ジャック』が大嫌いなのだ。


--- --- --- ---


「今まで逃げまくっていたお前が、俺の目の前にノコノコと姿を現したんだ……覚悟はできてんだろうな」

(ミドリ、G座標になんでもいいからできるだけ小さく穴を開けてくれ)

「……クヒ……覚悟ぉ? ……調子にのるなよユベル……あの時、あんなことができたのは……僕が油断して、お前の不意打ちが成功したからだ…………今回はその逆……お前が油断し、僕が不意をついた。……そしてここは僕の世界……コンテニューできるかどうか怪しいところだ……お前は圧倒的不利な状況ってやつなんだよ」


ジャックがペラペラと話してくれている通り、あの時俺がこいつを圧倒できたのはそれが理由だ。

単純にプレイヤー同士の技量やステータスを比較するのなら、ほぼ互角と言えるだろう。

動けないながらもまじまじと俺の『光る』視線をジャックへと送り出し観察をする。

俺たち同様、縮んでおり見たことのない少年になってはいるが、やはり前EGO時代の面影がある。


あの光を吸い取って闇にして出すかのような、底が見えない薄気味悪いぎょろぎょろとした目に、目の近くであればあるほど、目の周りが黒く変色している。

ガリガリとかじる指の爪はボロボロで、コントロールを誤ったのか肉をえぐりぶしゃっと血が噴き出すが、一度指をビッと地面に降ってびゃしゃしゃと地面に叩きつけて、まるで何事もなかったかのように笑い始める。


その異常性は、EGOで俺が見た時と同じ、いやそれ以上であり。

短い間でまぁ、よくここまで変われたもんだ。


「それに……クヒヒ。知ってるんだ……あの時のお前は確かに強かったけど、それが……ドーピングされた強さだったってことをさ。……そして、あの時のような強さをお前は持っていないってことをなぁ!」


ジャックは右手を掲げ、『影ナル泉』アビリティを発動。

ジャックの影が先ほどのジャックの血を吸い上げ、そのまま縦に伸び、掲げられた右手にまとわりつく。

そしてその影が変質し、かつて愛用していた『妖刀・人切』を沸騰させる影の刀を作り出し、それを乱雑に振り回すかのように突っ込んで来る。


「ヒャアッハァッ!」

「悪いがその黒い刀には早速ご退場願おう」


身動きは取れないが、そろそろ進展はある。あともう少し粘れれば少なくとも今の状況からは抜け出せる。

しかしこのどこから来るのかわからないこの独特な切り掛かりは、もしこの影で再現された刀に妖刀・人切の力が宿っているのなら、バカにはできないものがある。


ジャックの持つ『殺し屋の流儀』というアビリティと『妖刀・人切』のアビリティは相性が良い。

妖刀・人切のアビリティ。それは

ランダム確率で、かすっただけでもそのまま相手をキルできる、即死効果アビリティ。


冗談のように聞こえるが、これがマジである。

人切という名前から分かるように、この効果は人間、つまりプレイヤーのしかも限られた種族アバターを選択している者にしか効果がなく、妖刀の名の通り使用者をいくつか制限で縛る呪いを付与して来る呪い付きの刀だ。


しかし俺はあいにく人間で、『殺し屋の流儀』アビリティの効果で遮蔽物となる障害物を全て無視した攻撃をされるので防ぐのが難しい。

細かく言うと訳が分からなくなるが、剣で刀を受けようとすると、刀がグンニャリと曲がり自動で剣を避けて相手に攻撃をぶち当てたりしてくるのだ。原理は不明。


「ただし、こちらも欠点あり」


遮蔽物となる障害物でさえなければ、無効化されることはない。


《アオちゃん、今!》

《『食卓ノ法律(テーブルマナー)』解放『超食事』!》


ミドリが『実験室(ラボラトリ)』を常時展開し、その中にジャックが足を踏み入れた、その瞬間。

アオが発動していた『食卓ノ法律(テーブルマナー)』を解放し、ミドリの領域ギリギリ全てを捕食の力が襲った。


「……チィッ!」


『殺し屋の流儀』の弱点は全体攻撃。

そしてアオはスライムのため、万が一にも人切の即死効果は受けない。

無効化できないのなら、そのまま突っ込んだら待っているのは当然死だ。


アオに食われないためにも、その場を退避するしかない。


「スクロールを何個使った? 復讐者専用のアビリティを何個使った? 今、お前のアビリティは何個残っている? 復讐者専用アビリティの欠点で……それを使用し復讐が終わると、クヒヒ、まるで悪魔との契約のようにアビリティだけではなく力を奪われる……人を呪わば穴二つとは、クヒヒヒヒ。……言ったもんだよなぁ」


ジャックが今まで何をしていたのかはわからない。

だが、一つこいつは勘違いをしている。

確かに、今のこの状況はジャックが有利に見えるだろう。

しかしそれは、俺とジャックが一対一であった場合だ。


見たところ、ジャックはまだこっちの世界でエネミーをテイムしていない。

十中八九、ミルクルさんと同じ理由でテイムできていないのだろうが、それが大きなマイナスポイントだ。

俺には、強く、逞しく、一緒に戦ってくれるスライムちゃんがいる。


「あぁ、そうかよ。確かにその通りだよ」

(ミドリ。一番右端の魔法陣、玉を壊してくれ)

「あの時よりも俺は弱くなったと思うよ。ステータス数値は下がったし、アビリティだって『限界破壊』に食わせただけじゃなく少なからず没収された。弱くなったと言えるだろうよ。ただし、ステータス上の話はだ」

(サンキュー。あとは、この電気の回路と、この回路の結び目を変えてやれば……)

「……なにが言いたい」

「つまりは、だ」


そこで一旦言葉を切り、グッと体に力を込める。

するとあっけなくバキィィィイイン! と金属が割れる音がして、俺の体に巻き付いていた忌まわしい電磁重力のようなものが消える。


「なぁ!」

「戦ってんのは俺一人じゃない。仲間を作ることもまた強さだ。それに俺はあくまでタンク、『サポート役』だ」


最後に俺が自分にまとわりついているものに逆に干渉し破壊したことで、意味をなさなくなったのか魔法陣の光りが次々と消えてゆく。

そして自由になったので早速ミドリからいただいた毒をべっとり付着させたナイフを複数投擲する。


「グッ……チッ……があああああ! なぜだ!」


ナイフはかろうじて避けたみたいだが。その後追撃したアオの攻撃は避けきれず、右腕が妖刀・人切(影)ごと肩口までアオに咀嚼された。


「ありえないありえないありえない! この世界は僕を中心に回ってるんだ! がああああ! 僕が主役なんだ! こんな世界ありえない! 主役が苦しむことが美徳だとでも思っているのか! ふざけるな! あぁ、痛い痛い痛い痛い! なぜ!」


なんか魔法陣を俺が抜け出せた訳を聞いているのか、何を言っているのかよくわからんが、まぁ説明しておくと『アビリティセンス』を使ったのだ。

アビリティ関連の力であることがわかったので、『鑑定』とかは妨害系等で弾かれたが特別(スペシャル)である『アビリティセンス』は弾かれず、その構造を見通すことができた。


あとは目に示された通り、念話でミドリに『実験室(ラボラトリ)』を最大限利用してもらい魔法陣を破壊した。


因みに一つや二つ魔法陣を破壊しても効果が持続された理由は、数十個ある中の複数個にアビリティを成り立たせる『核』となる魔法陣があり、その核を破壊しない限り機能が続くからである。

しかもその核、解除のためには破壊する順番があり、順番通りに破壊しないと核が別の魔法陣に移動して面倒臭いことになるらしい。


こんなことをぱっぱと頭の中に情報として流してくれるのだから、『アビリティセンス』はやっぱり有能だ。


「ガアァァアアア!」


ジャックの手から勢いよく噴き出す血液を見て、急いで輸血しなければ最悪出血多量で死ぬ気がする。

そこで俺は揺れた。

切り捨てるべきか、助けるべきか。

ここは切り捨てるべきだ、自分を殺そうとした相手に慈悲をかけるなんて、それは優しさじゃない、愚かな者の偽善行為だ、と主張する俺と。

殺さなくてもいいのではないか。まずは話し合いをすべきではないかと主張する俺がいる。


本来ならここは切り捨てるべきだ。これは今後のためでもある。ここで見逃せば、俺だけではなく、関係のない人、俺の大切な人、にまで被害が及ぶ可能性がある。

悪い芽は、今のうちに積んでおくに限るのだ。


だが……俺は人を殺すことを恐れている。

言い訳を探している。

命を重さを何よりも知っているだとか。ここでは生き返れないかもしれないとか。

そんな状況ではないと分かりながらも、思考はまとまらない。


一体何が正しくて、何をすればいいのか。


わからないまま、不用意に、覚悟もないまま一歩を踏み込んだ。

何かをしないと始まらないと考え、踏み込んだその一歩。

その一歩が、失敗だった。


「クヒッ『投影』」


ゴプッと、何かがこみ上げ吹き出した。


は?


先ほどまで苦痛に歪んでいた顔をニヤァと笑顔に変えたジャックが、短くアビリティを発動した。

ジャックが足元に浮かび上がらせた人の影の絵の、腹の部分に丸を書きその上にバツを入れた。

その行為の意味を理解して、自分の体を確認し、ようやく今の俺の状態を理解した。


俺の腹に、どでかい風穴が空いた。


「ガフッ!」

《マスター!》


俺の口から信じられない量の血液が吐き出される。

腹が痛みを通り越し強烈な熱を感じさせる。

傷口がとにかく熱い。腹と口から遠慮なく飛び出そうとする血液が俺の意識を刈り取ろうとしているようだ。


「……クヒッ、クヒヒヒ、クヒヒヒヒヒヒヒヒッ! ……やったと思った? やったと思っちゃったぁ? ざぁんねぇん、無傷でしたぁ〜」


ジャックは心底楽しそうに無いはずの右手を振ると、飛び出していた血は全てゆらりと黒くゆらめく影に変化し、その影が一度大きく膨れ上がり、地面に戻る。

するとそこにはなんの傷もない、そこにあって当たり前かのように右手が元に戻ったジャックがいた。


「馬鹿なのか? ……お前を殺すために張った罠が、まさかその重力結界だけなわけないだろ? ……少し考えれば分かることだろうに、頭に血が上ってわかんなかったか……普段のお前ならこんな罠にはかからなかったはずだが、やっぱりお前…………弱くなったよ」


立っていられずに、地面に膝をつく。

今にも、意識がなくなりそうだ。


だというのに、なぜかジャックの嬉しそうな言葉は鮮明に俺の頭の中に響いた。


あぁ……そうか。

俺は調子に乗ってたのか。

あそこで悩んだ時点で、俺は自分が勝ったと思い込んだ。


そんな根拠もない考えが生み出す隙が、命取りになるなんて、わかっていたはずなのに。


最初の頃はまだ、警戒心等色々と、まだ持っていたのに。

しかしこっちの世界に来て、生きることに慣れて、いつからかなんでも思った通りになると思い込んで、口ばかり俺は弱いとか言っておいて自分の力に過信して、なんでもできると思い込んでいたのか。

今も、ろくな考えずに行動をして。


その結果がこれだ。

くそっ……だが、こんなミスをやらかした俺には、当然の末路かもしれない。


アァ……俺は死ぬのか……


嫌だ。


まだ死にたくない。


もっと、皆んなと一緒にいたい。


まだなんとかできるのではないかと思考を回転させようとするが、頭の中に砂嵐のようなものが吹き荒れて、ろくな考えが思いつかない。


頭にあるのは、死にたくないという気持ちと、これは死んだという謎の確信。


もう、無理だ。


諦めたくない。


でもこれは、諦めではない気がする。


どうしようもないことを、なんとかしようとしても無理であることを本能が察してしまった。


心が折れたのだ。


諦めではなく、心が受け入れてしまっている。


回復があるから、この怪我だけならまだなんとかなるかもしれない。


だが、こんな隙をジャックが待ってくれるはずがない。


チェックメイトだ。


薄ぼんやりと、アオの苦しむ声が聞こえる。


ズキリと、胸が痛んだ。


アオが苦しんでいるのに、俺は何もできない。


ミドリに幸せをあげると言ったのに、もう、俺からは何もあげられない。


なにも、できないんだ。


もはやうっすらとしか開けていられない目から、涙が溢れた。


俺は一体なにをやっているんだ。


無力な自分が、今ほど恨めしいと思ったことはない。


バカをやった……もし次があるなら、二度とこうはならないように……


後悔だらけだ……今更になってこんなことを言い出すのは滑稽だ。


だが、俺は人間だ。ギリギリの窮地に立たされ追い込まれれば、考えだって変わる。


…………願わくば……俺が死んだ後、アオとミドリだけは生きて、逃げてほしい。


ミルクルさんと一緒に、旅に出てもいい……本当は嫌だけど、心の底から嫉妬してしまうけれど、もしお前たちを預けなきゃいけないなら、ミルクルさんを選ぶ。


どうか…………幸せになってくれ。




アオ、ミドリ…………ごめ……ん



「ユ―――んッ!!」

「……『―――――』…………―――氏……生き――い―。……――――――、許し――んよ」



ふと消えかかっている俺の意識が誰かの言葉をを拾い、直後に灰色の何かが視界を塗りつぶす。


そして俺の意識は途絶えるのだった。



主人公……まさか、ここで……

まさかの、よくあるパターン、視点交代ですか?

さてなんだろう(棒


そしてふと思ったことを、馬鹿正直かつ素直に読者さまに媚びてみます!


貴方の感想が欲しいですッ!?


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