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信じられないでしょうけど、反逆の時です!


(おもて)では知られない、とある国の路地裏の裏の奥、とある薄汚れ、黒単色で趣味の悪いボロ屋のような建物がある。

一歩一歩、スタスタと歩みの速度は軽く、ウィンドウを操作しながら建物へと近づいていく。

更新されていくマッピング情報の保存、一部キープしリーク。専用のアイテムをボックスから取り出し、一言二言キーワードをつぶやくことでパリンといい音を立てて砕けた。それを数回繰り返す。

一個でちょっとしたプレイヤーハウスが買えるレアアイテムを使い捨てにしながら、さらにウインドウを操作。

発生したイベントの更新や依頼の告知メールなどを流し見し、自分の求める依頼を探し、片っ端から依頼を申し込んでいく。


視界の左端からピロンピロンピロンと忙しなく鳴り続けるフレンドメッセージの届く報告音を次々とドラッグし、ログ状にブロックをかける。

みんなには悪いけど、今はそれどころではない。

建物に近づくにすれ、騒がしい声やら音やらが聞こえてくる。


ウインドウを閉じようとして、自分がもう建物の扉のすぐ目の前に来ていたことに気がついた。


ピロンッ……俺の目の前のウインドウの上に上書きするように一つの報告メッセが現れた。


『ギルドハウス『共喰らい』』


その建物の名前を確認していると、時間となりメッセージはブゥンと消滅した。


そして建物の扉を開け、中へと入った。

扉は酒場のように押して入るような形をしており、ギギギィと木の軋む音が鮮明に聞こえ。

次いで、ガヤガヤとした喧騒がより強くなった。


そして、しばらくほぼ全員が扉の方へと注目し。

自分のたちのギルドとは関わりのないプレイヤーがそこにいることを訝しみ、静かになった。


「……発動。……発動」


そんなことを待ってやる必要もないので、俺は着々と準備を進めた。


「オイオイ。どこの誰ですかぁ! ここに来た理由によっちゃあとんでもない目にあうから慎重に答えた方が身のためだぜ? 入団希望か?」


思考の楔から立ち直った数名のうちの一人が、歩み寄って来た。


「まさか。ここに来た理由ぐらいわかるだろう?」

「そうかい。もう少し賢ければまだ生きられたものを。おい、てめえら手を出すなよ、ここは俺が……」

「まずは一人」


頭をとんがったモヒカンのようにしているオトコが俺に近くで余所見をしたので、容赦なくナイフで首を飛ばす。

俺はSTRをビタイチ育てていないから、これが一番早くて一番確率が高い。


男の首はいともたやすく地面に落ち、HPゲージが0で点滅したと思うと『DIED』の文字を残しフッと消える。

そして俺のアイテムボックスの中にドロップアイテムが補充されていく。

しかし俺のプレイヤーカーソルの色は変化しない。プレイヤーを殺しても、この状態のみ免除となるアイテムを使ったからな。


中々にレベルの高いギルドだ。

見知らぬ奴に土足で踏みにじられ、仲間をキルされたとあっては、もう穏やかではいられない。

その場で酒やら魚やらと叫んでいたプレイヤーたちは揃って目を細め、こちらを警戒しながら椅子から立つ。


「嫌だなぁ。椅子から立つくらい待つというのに」


軽口を叩きながら一歩振り込む。

隠匿、あるいは隠密系のアビリティで身を隠した奴らが合計三人ほど各々の武器のエネミーで攻撃してくる。


それら全てを受け切り、何事をないことを確認してスライムちゃんたちをけしかけた。

今度は飛んできたエフェクトの赤い結晶が俺の顔に付着する。

三秒経たずに、三人がいた場所に『DIED』の赤い文字が浮かび上がった。


そこまできて、ようやく気がついたのだろう。

この状態は、自分たちに不利だという意味で、かなり危険であるということを。


しかし、一人たりとも逃しはしない。


仕掛けてきたのはそちらが先だ。俺はもう、俺を抑えることができない。


「『スーパーアーマー』『防御力還元』『状態異常耐性』『リカバリー』『不屈の心』『回復』発動。スタート、battle the エネミー。俺を殺る気があるなら受けろ。賭け金レイズ、ベット5000万ゴールド」


その俺の挑発行為に、皆が皆各自の神盤を抜き宣告を終えエネミーを出してくる。


「俺はお前らを許さない。……絶対に後悔させてやる。全員でかかってこい、俺の全力でお前らをぶっ潰す」


システムコールでエネミーたちを呼び寄せて、いつでも自分の全力が出せるように準備する。

俺の右肩に薄くすんだ桃色のスライム『ピンク』。俺の右手にひっついてるのは風を思わせる黄緑色の『グリーン』。そして頭の上に宝物を連想させる金色のスライム『ゴールド』が乗っかってくる。

これがこいつらの定位置だ。

でも俺の心はより深みへ落ちて行く。

いつもはあるはずの『左肩』の重さが、今はない。


左肩を撫で、服にシワがよるほど力強く握りこぶしを作り、体の奥底からぐんぐん湧き上がってくる暗い衝動に、あっさりと身を委ねる。


「無限キルが怖くない奴からかかってこいよ。あと、少しでも生きていたい奴は今すぐ俺の目の前に『ジャック』を連れてこい」


許さない。許さない。許さない。

絶対に、ブッ殺してやる。

俺の顔に付着した赤色のエフェクトが瞼から落ち、頰を伝い、地面へと当たり弾け消滅する。


そして俺とPKギルド『共喰らい』との決戦の火蓋が切って落とされた。

どちらの雄叫びか、はたまた叫び声か、阿鼻叫喚が巻き起こる中、飛び掛かってくる数十人を一回一回まとめて相手をして奥へと進んで行く。

やるべきことは全てやった。激レアの回数限定強化アイテムも全てつぎ込んだ。

本来なら特殊なジョブ『テイム・アベンジャー』のみ獲得できるPKK専用アビリティを、「反逆者」の俺はレベルアップボーナスを使用することで獲得できる。


「『因果応報』! 『復讐之鎧』! 発動!」


因果応報アビリティ。今まで自分の利益のために罪のないプレイヤーをキルした分だけ、ステータス数値を減少させるアビリティ。

これだけで複数のギルド員は戦闘不能にできる。トドメを刺すだけだ。

復讐之鎧アビリティ。アベンジャーとなったプレイヤーの、当時一番高いステータス数値に沿った強化装備アビリティ。ヘイトを常に集め犯罪者プレイヤーの攻撃を普段の三倍の倍率で受ける代わりに、自分のテイムエネミーが犯罪者プレイヤーから受けるダメージを普段の百分の一にする。

まさしく、俺のためにあるようなアビリティだ。ヘイト管理ができスライムちゃんたちを守れて、受けたダメージはそのまま三倍の衝撃となり、『反射』が短いクールタイムで発動できるということ。


俺の体を暗い闇色の禍々しい鎧が包み込む。

形状は格好いいを通り越して、少々気味が悪い。

やはり人間の復讐心とは、こうまでドロドロとしたものなのだろう。


鎧から発せられる黒いオーラは相手のエネミーのヘイトを一身に集め、マスターの命令に背き俺に攻撃が殺到する。

俺はそれを受け止めて、全てを止め切ったら、冷静にコール。


「賭け金レイズ、ベット1000万ゴールド、『火炎放射』」


俺と敵エネミーが一緒に丸くなっているところに、桃色のスライム『ピンク』が火力高めの『火炎放射で全てをチリに変える。

俺ごと燃えるが、問題ない。回復するし、この衝撃も溜められるからな。


「賭け金レイズ、ベット4000万ゴールド、『カゼノオロチ』」


グリーンが俺から飛びおり、空中でアビリティを発動。

グリーンがすーっと息を吸い一瞬ぷっくりと膨らむと、次の瞬間口から吹き荒れた風の暴風が複数の蛇の形となって数十人単位で固まっていたところをまとめて吹き飛ばす。


「ふざけんなぁ!」

「ブッ殺してヤラァ!」

「待てぇ! やめろぉ! ジャックさんが来るまでで手ェだすんじゃねぇ! 逃げろ! そいつは、そいつはぁ!」


数人の奴らは止めようとしているが、少数派では多数派の、しかも血気盛んな奴らが集まったこんなギルドでは、勢いは止められないだろう。

何人かの呪術系ジョブの奴らが俺に呪いのアビリティを重複してかけてくる。

妨害系のアビリティも使われている。

今俺は毒に侵され、体の一部が麻痺し、アバターが睡魔でグラグラとした視界を作り、地面から伸びる鎖が身動きを封じ、パキパキと音を立てて足が少しずつ石化していく。


「やったッ!」

「今だ! 全員でかかれ!」


最大のチャンスに色めき出し、我先にと飛び出してくるギルド員たち。


「舐めんな。『ディスオーダー・アベンジ』」


アベンジャー専用アビリティ『ディスオーダー・アベンジ』、自分が受けた状態異常を全て相手に跳ね返す。いわゆる衝撃を跳ね返す『反射』とは違い、アビリティを跳ね返すアビリティといったところか。

そして巻き起こる阿鼻叫喚。

なにしろ、俺を中心とした一定範囲内にいた全員が、全く俺と同じ状態異常を食らったのだから。

まさしく気分は、やられたらやり返す。倍返しだ!


「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ! ふざけんな? こっちの台詞だッ! 全員皆殺しだあ!」

「クッソ……ログアウト……ってなんでだよ! なんで出来ないんだ!」


ログアウトして逃げようとした奴ができなくて喚いているため解説をしてやることにする。


「は? お前だったらプレイヤーキラーならわかるだろ? プレイヤーキラーキラーの粛清時間、アベンジャーの復讐時間中はここは危険区となる。危険区でログアウトはできない。初心者でも最初に習う常識だ」


システムが逃がすわけないだろ? 当たり前だ。


そんなこんなで暴れまわっていた時だ。


「…………クヒヒヒヒ。なんだよお前、この前のこと根に持ってんの? 悪かったって言ったろ? ……ありゃ事故だったんだよ事故……なぁ、お前ももう好きなだけ暴れただろうし……無限リスキルされたくなかったらとっとと」


奥から聞こえてきた声に反応し全力で飛びかかる。

『逃亡』を発動させて先手必勝。このギルマスは確かに強い。

だからこそ、なにもさせない。

【 人切包丁 】はメイン武器『妖刀・人切』を抜く暇もなくその顔面に俺の拳を受けた。


「『反射』」


人切りジャックは死んだ。


そしてリスポーンしたところで問答無用でキルする。


それを何度も何度も繰り返す。

精々エネミーも、ゴールドも、装備も、アイテムも、なにもかも、全部を失って絶望するんだな。


「お前たちが先に俺にしたことだ」


人にやるなら、当然殺られる覚悟はできてるんだろうな。


「や、やめ……」

「やめろとでも? そうだな、今から俺が言うことを実践できるならやめてやってもいい」


【 人切包丁 】の頭を掴み上げて、冷ややかに告げる。


「『レッド』を返せッ!? このクソ野郎がッ!?」

「な、あ、あんなスライム一匹どうってこと……」


今度こそ頭の奥底でまだかろうじて繋がっていたものがブッツリと切れた。


俺はそれ以降の記憶がない。


だが、馬鹿みたいに暴れまわったのはぼんやりと覚えている。


気がついたのは、ソロ仲間のみんなが、まるでダンジョンボスを相手にするかのような装備や陣形を持って俺を取り押さえてくれた後だった。

その時に俺は、何人もの友達を問答無用でキルしていたのだから、敵エネミーと何ら変わらないと思うが。


そうして俺は、殺人ギルド『共喰らい』をソロで壊滅させた。

ジャックは途中で分身に入れ替わっており、逃亡されたが、他のギルド員はほぼ全員、捕獲イベントで教会に連れ込まれ、揃ってステータス、レベルダウンをくらい、俺たちに大きな経験値が入った。


そのあと俺は、ソロ仲間のみんなにお礼参りに行ったり、キルしてしまった人に謝りに行きたかられたり、色々と戦後処理をしたあと、専用の場所に一つ墓を作った。


このゲームでプレイヤーになにを言われようとも変わらない、大原則。


一度死んだエネミーは、蘇らない。


話が一気に暗くなったなぁ……


まぁこんな設定でした。

最初の方になんかそれっぽいこと言ってたのを回収ですね。

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