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信じられないでしょうけど、身に覚えないです!


《《《《あのがき、ゆべるは、きょうじゅうにまっさつするっ、てー》》》》


やけに通るその声が脳内に流れ込み、俺は鈍器で頭を殴られたかのような衝撃を受け、頭を抱え膝をついた。


「お、おい。大丈夫かよ」

「大丈夫〜?」

「せ、先生! ユベルに何したんだよ!」


周りが騒がしくなり始めるが、俺は、喉が震えうめき声とも取れない声を出すことしかできない。


「うっ…………うっ……」

「ユベルさん!」

「しっかりして!」


歯をくいしばるが、喉の震えのせいか、うまく言葉を無くすことができない。

ブルーベイビーズたちも、オタオタオロオロし、走り去って行く。


《わー! ますたーがー》

《たいへんだー!》

《たすけてー!》

《ままー》


ブルブルと体が震える。

まさか、こんな、こんな日が来るなんて。


信じられなかった。

いや、信じたくなかった。


「嘘だ……そんな」


周りが心配そうに俺のことを見る。

ざわざわと少しずつ音や声が大きくなってきているが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

四つん這いになり、俺はこぼれ落ちないよう、目元を抑え込み上げる激情を抑えるように言葉を吐く。



「あ、あのがき……まっさつ……そんな、アオから、ベイビーズからそんな言葉が……これが、反抗期」


そして堪えきれず、一粒の雫が静かに地面を打ち、虚しく弾けた。


嗚咽が漏れるが、なぜかさっきまでの騒ぎが嘘のように静寂が訪れている。

少し不審に思ったが、そんなことはどうでもいいと勝手に判断した思考が、再び反抗期へと訪れたアオのことを思い慟哭を駆り立てる。




((((((もうダメだこいつ))))))


その時、その場にいたユベルを心配していた全生徒の心が一つになっていたのだが。

そんなことはユベルには知るよしも無い。


--- --- ---


その後、パーカー内から飛び出してきたアオとミドリが二人掛かりで慰めてくれて元に戻った。


「さて、お前ら」

「はい」

「悪いけど自習!」

「へ?」


自習を言い渡し教室内に生徒たちを待機させ。


「スゥ……フゥ……『隠蔽』・『隠密』・『対象認識阻害』・『探知』・『看破』・『逃亡』。多重同時並列発動(マルチアクティベート)


担任教師を引きずりなるべく人目につかないようにウィーアードのいる多目的室へとダッシュした。


「どーにかしてくれ」

「トーゼンですねー。この学園で起こったことの責任はすべての私の責任。全霊をもって取り組ませていただきます……が」

「が?」


ウィーアードはニヤァとへんな笑みを作り出す。

おっと、右手がなにやら勝手にじゃんけんを始めようとしてるぞ。最初はやっぱりグーだよね。


「タイムタイム。落ち着いってくだサーイ」

「最初は……」

《マスター。先に進まないよー》

「うぐ……わかったよ」


ミドリが頭の上でポスポスと俺をたしなめるので、取り敢えず拳をしまう。


「尻に敷かれてますな」

「ほっとけ。つーか話が本当に進まん。言いたいことがあるならさっさと言え」

「では率直に……誰かに殺したいと思われるほどの何かをしでかした覚え、ありマス?」


それは俺も考えたんだがなぁ。

こっちの世界に来てからは、そんなに暴れてないと思うぞ。

そのためはっきりと答える。


「全く無いな」


ウィーアードじゃ無いんだから。


「まったまた〜」


おい、そりゃどういう意味だ。

確かに、山賊をぶっ飛ばしたり、ダンジョンをソロ攻略したり、貴族に喧嘩売ったり、オークションで大金ばら撒いたりしたけど。

誰かに殺したいと思われるようなことはしていない!


「ユベル氏……」

「な、なんだ。なんでそんな同類を見るような目で俺を見る。やめろ、俺を見るな!」

「まったく……なんで早く言わないですか……ほら」

「ほらとか言って手を差し出すな! なに? 握手? 握らないからな!」


断じて俺はウィーアードと同類では無い!


「な、なぁ。ミドリもそう思うだろ?」


アオは全てを知ってるし、そう思ってくれているだろうことはわかっているので、あえてミドリに問うてみた。


《ますたー……そういえば、一兆ゴールド……》


そう呟いてプイッと目をそらされた。


何故だ!


「ごっほん。ま、まぁつまりだ。俺は誰かに怨みを買うようなことはしていない……はずだ」

「ウーム。考えてみれば、わざわざ危険な土地を渡り別の国まで追いかけてくるような怨みではないですかねー」

「イヤイヤ。貴族の怨みをあまりに軽く考えすぎですよお二人とも」


メガネをかけた女性、ヒノデさんが呆れたように俺とウィーアードの話の間に入り、お茶を置いてくれる。


「あ、すんません」

「いえ。ただ、ウィーアードさんはともかく、ユベルさんまで、貴族の怖さはわかっているでしょう?」


うぐ……そんなこと言われても。

日本から来た俺には、そこんところのイロハは学んだことがなかったし、家で読んだラノベとかやってたゲームでの設定レベルでしか知識はない。

それにぶっちゃけ


「この世界は金が全てだ。金があるものが正義。金を持つものが絶対勝者。襲ってくるならくりゃあいい。返り討ちにするだけだ」


極論こうである。


「はぁ」


ヒノデさんは頭いたそうに眉間を揉みほぐし。


「ハッハッハー」


ウィーアードは笑った。


「そのような結論が出ているのデス。なのに何故、私にどうにかしてくれと?」

「今日をもって俺は教員を辞める。ちょうどその時にこんなことが起きるんだ。相手だって当然それがわかっているだろ? だったらだ、もしそいつがどんな奴であれ、使える手段は使える時に使ってしまえと考えているであろうことがわかる。俺が今教員であることで、使える手段があるとすれば、それは?」

「…………生徒を利用する、デスね」

「俺はそう考える。今までのことで、少なくとも俺が自分の保身のために生徒を見捨てるようなことをする奴では無いことは分かり切ってるだろうからな。それが善意とかではなく、やって当たり前のことだ、という考えに基づいているだけだけど」


そうなってくると、あとはウィーアードの出番だ。

今、担任教師は縛り上げられ猿轡を噛ませられ、身動き一つできない状態にしてある。

めんどくさいからここは、暗殺者Aとでも名義しとこう。

暗殺者Aはそんなことも知らず、逆にこちらは自由に動き回れるというわけだ。

当然教室で待機している生徒たちには固ーい口止めをしてある。(その場にブルーベイビーズを設置してあるので、万が一も無い)


「さて、そんじゃ早速。アオ〜。おいで」


アオを呼んで頭の上に乗っける。

そして縛り上げられている担任教師に近づき、猿轡を外した。


「はあ! だ、誰か助け……!?」


『殺気』『恐怖威圧』。

アオのアビリティダブルパンチをくらい担任教師が口をパクパクさせながら固まった。


「なぁ」

「――――――ッ!!」

「あぁ、心配しなくていい。手荒な真似はしない。場合によっては、な?」


担任教師の肩に手を置き、脅すようにそっと耳元でつぶやく。


「全部を吐いて欲しいんだけど、取り敢えず、あんたと話していたおじさんとやらについて聞こうか」


誰だ? と聞いてみたが、だらだらと汗を流してパクパクするだけで、答えようとはしない。

おかしいな。アオの威圧も弱めてあるし、声は出せるはずなんだけど。

これは、抵抗とみていいのかな?


「なぁ、ちーっと、考え直した方がいいんで無い?」


にこりと笑顔を作り、パチンと、軽く指パッチンを一つ。

それだけで、担任教師の寄りかかっている壁の一部が馬鹿でかい音を立てて破損した。


「はは。アオもなかなか演出家だなぁ。さってぇ……」


真っ青を通り越して顔面蒼白になって壁を見つめる担任教師の肩を叩き、俺の方を向き直させる。

そんでもって一言。


話す(スピーク)(オア)(デッド)。二つに一つだ。どする?」


担任教師さんには、もとより選択肢などない。



更新が大変遅くなり申し訳ありません!

年末あたりに一話出したかったのですが、申し訳ありません、出来ませんでした。


そして新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


ここから新章スタートです。

『シャドー編』。しばらく続くと思いますが、こちらもよろしくお願いいたします。


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