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信じられないでしょうけど、ダンジョンでの出会いです!

とは言っても、憲兵に見つかってしまい、アンノーンの中には入れなかったんですがね。


すぐに家に連れ戻されました。

そして待っていたのは。


「なんでお前が生き残っているんだ!」

「ドール家は終わりだあ! あれだけ投資したのに、なんとゆうことだ!」

「スパルード殿への恩返しが……貴様のせいだ……貴様のような呪われたガキなんか! 生まれなければよかったんだ!?」

「死ね! 死んで詫びろ!」

「私のエルを返してぇ! 返してよぉ!」

「ふざけるな! 隊長を殺した殺人者が!? この手で、この手で! 離せぇ! この手で絶対に殺してやる!」

「どうして殺したの? 恨んでいたの? そんなに殺したいほど憎んでいたの? なんて醜い悪魔。お前は、人間じゃない」

「死ね!死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネ! うわあぁあああああ!」


私に対する糾弾でした。


そこに私を守るものはいませんでした。


当然です。


私には、その義務があったのだから。


そのときの私には、そこまで響く言葉ではありませんでした。

家族の死の方が、圧倒的に、そんな言葉なんかよりも重く、痛かった。

とは言え、最後のトドメとなったのも事実ですね。


取り乱し、それでも、傷つくという人間の心を保って(、、、、、、、、)いた私は。

その時、精神だけではなく、私という存在が、完全に崩壊しました。


私の才能。

その才能の、最低最悪の使用法。


感情から。


傷つく、悲しさという恐怖から『逃げた』のです。


「…………ハァ…………ハァ…………なるホド…………」

「なにを他人ごとのような顔をしているんだ! 貴様が殺したんだぞ!」

「……ハァ」

「その意味をわかっているのか!」

「……そうデスね」

「返して! かえしなさいよぉぉぉぉ!」

「……そうデスね」

「その……その剣は、隊長の! 貴様、その魔剣が目当てだったか」

「……さぁ?」


その後は冷静になりましたね。


ただ感情を感じなくなっただけですけど。


そして冷静に、私が一人であることを判断して、認知しました。


そして、その家にいる意味がないと考えました。


感情論が一切ないので、行動も迅速でした。


怖い、苦しい、逃げたい。

そんな感情もなく。


自分の身に危険があるからという考えに基づいての行動でした。


なにも持たない私の、唯一行ける場所。

たとえ冷静になろうとも、『答えがない問題』には答えを出すことができなかったんでしょう。

しばらくの間、行くあてもなく、フラフラと彷徨い。

なにを思ったのか、『アンノーン』へ篭ることを決めたのです。


そうと決まれば後は素早いものです。

あっという間にアンノーンの当時の『最前線』まで突っ走りました。

ハハ……なんでそんなことしたんですかね……よくわかっておりません。


「……っ!」


まぁ、当然のことなのですが、体力がなくなれば体は動かなくなりますよね。

体力がなくなるにつれ、そのサインが必ず体には届けられるのが普通ですが。

そのときの私はそれを感じることができない状況でした。

そのため、体力がないにもかかわらず、頭で考えた通りの動きを体に強いろうとし。

それについていけず、『転びました』。


そう、軽く躓いて、身体を打っただけです。


それだけで、しかし、それが決定的でした。

自分の心を無意識に守っていた、『逃亡(あんじ)』が、痛みで消えてしまいました。


「……え……あ、違う。違う違う違う違う違う違う違う。私のせいじゃない……違う違う違う。私が殺したんじゃ、ない……デス……本当です……信じて……信じて、くだ、サイ……」


そして我に帰った私に、今まで無視してきた代償だとでもいうように、その数時間の間に私が感じるはずであった感情が濁流のように全て流れ込み。

発生する激痛や壮絶な嫌悪感から、頭を抑えたり吐き戻したりしながらブンブンと頭を振り続けました。

いくら言葉で否定しても。

一度、感情論を抜きにして考えてみた自分が、すでに認めてしまったという事実。

他でもない自分自身に突きつけられたそれは、どう足掻こうとも誤魔化すことはできません。


「あぁ……あぁぁあ……嫌だ、いやだ……こんなのは、イヤ、ダ。コワイ。ワタクシハ、タダ、タダ……アァァアァァ」


うつ伏せになったまま、頭を抱え、ガンガンと痛みを感じながら、ブツブツとうわごとを繰り返し、そして。



「アイサレテ、イキタカッタダケナノニ」



ぷつりと、再び『限界』に達し、『逃亡』が始まりました。


「……っ!」


すぐ近くに寄ってきていたエネミーの攻撃を、意識する前に『アビリティ』が発動し避けました。

何かに引っ張られるかのような感覚を覚え、気がつけば壁沿いのところまで移動しており、先ほど私がいたところにはエネミーの牙が突き立っておりました。

しかし、それにも何の感情も感じません。

何事もないかのように、その場から立ち去りました。


その時、恐怖や、震えといった、外的要因により本領を発揮できなかった私の才能が、邪魔なものすべてを捨て去り。


『逃神ノ闇』は完全に覚醒しました。


--- --- --- ---


「…………」

「フム……どでしたユベル氏。ご感想は?」

「その後……どうなったんだよ」

「オヤ? 聞きたいですか?」

「ここまで聞かされてな。そんなところで終わりっつーのは、ちょっとな」


ユベル氏は感情を隠すのがうまくはないデスがね。

それでも、流石に下手すぎます。

声を震わせながらおちゃらけた風に言っても、丸わかりデスとも。


「そう、デスね。では少し飛ばしましょうか。その後、数ヶ月をアンノーンの中で過ごしておりました」

「はあっ!?」

「若気の至りというものですよ。まぁ、帰る場所もなかったのですが」

「飯とかは……」

「現地調達デスね。幸い私には、兄が残してくれた『グラム』がおりましたのでネー」


まぁ、逃げることしかできず戦えない私が、生きるために必要な要素をダンジョンの中で手に入れることは難しいというのは明白。


「エネミーの肉は、流石に食べられませんよ……」

「まぁ、アンノーンの12階に、『カウ系』『トン系』『チキン系』はいないしな」

「ダンジョン内の宝箱や、隠しアイテムなどを漁り、食料が出てくるまでそれを繰り返し、出てきたらそれを食す。あまりエネミーの気配がないところで穴蔵を作り、息を潜めて休憩をとったりしました。まぁ、『気配遮断』を得てからは楽になりましたが。そんなことを繰り返し、私はアンノーンの深部へと潜り続けました」


なにを思って、当時の私がそんなことをしていたのか『よく』わかりません。

感情が一番ぐちゃぐちゃになっていた時ですからね。

そこならば一人であることを忘れられるから?

違います。感情を感じない私が、そんなことを気にするとは思えません。

なにもなかった私の中に残っていた『強くなりたい』というかすかな欲求を満たそうとした?

違います。こちらは少しはわかる気がしますが、何故最深部なのかはわかりません。一層でも戦えないのにです。


多分(、、)と言ったら、当時の私は否定するでしょうが、死に場所を探していたんです。


「まぁそんなことは置いておき、12階層のボス部屋までたどり着きました」


--- --- --- ---


とにかく12階層は広かったですね。

数ヶ月間探索をし続けてようやく見つけられるくらいには広かったです。


「ボス部屋…………デスか……ここなら、私ハ、死ねますかね……」


私は、死に場所を探してました。

数ヶ月の間、何度も我に帰る、何度も限界に達し感情から逃げる。

逃げた代償を我に帰ったときに味わう、そして限界に達しまた逃げる。

そんなことの繰り返しをして、『元』の私と『感情を感じない』私が、不完全に短期間で一つの体を奪い合った結果、ある時から、『感情から逃げていないはずなのに冷静を保て、かつ人間としての感情を持ち合わせ、しかし感情をほぼ感じないようにしようとすればできる』と言った、私と私を混ぜ合わせたような、新しい私が生まれました。


そしてそんな私が出した答えが。


みんなの元へ行きたいというものでした。


私を望まない世界、私を恨む世界、私を拒む世界、私を捨てた世界。


そんな世界に、いたくないと考えていました。

しかし同時に、冷静な部分が死んでもなにも報われないと、今は生きると私に投げかけてもいました。

そんなことを無視しようとも、エネミーとのバトルになれば否応無しに『逃神ノ闇』は発動し、相手の攻撃は私には当たらない。

『逃神ノ闇』のリスクである、『攻撃中は避けられない』を行おうとしても、冷静な部分がそれを制ししてしまう。

イタチごっこでした。


「しかし、これで最後デスね」


私はボス部屋の扉を開けました。


そして私は


「ここは」


もはや信じていなかった。


「一体…………」


運命に


『あなたは、だれ?』


出会ったのです。


「え……えー、私ハ、ドー…………ピスケル・ウィーアードと申しマス。そう言う貴女ハ、ダンジョンボスで、あらせられマスか?」

『さあ?』


その返答に私はずっこけました。


「ココは、ボス部屋デス、よね?」

『さあ?』


そこで私は、ココは何かの勘違いで、ボス部屋ではないのだと思いました。

12階とは思えない、メルヘンチックなお菓子の部屋であったとしても。


私は部屋の扉押そうとして……


「アレ?」

『あかないよ?』

「え?」

『うちがわからだと、あかないの』


中に入るときはあんなに軽かった扉が、出ようとするときはどんなに力を込めてもびくともしません。


「本当に…………ボス部屋なんデスか……」

『?』


ダンジョンのボス部屋は、一度挑戦すれば中のダンジョンボスがいなくなるまで開けることはできないと言うことを、知っていました。

だからこそ、この場を死に場所に選んだと言うのに。

目の前の、ぽー……とした女の子に、私を殺すことなどできるわけがないと、仮にもダンジョンボスを相手に失礼な評価をし、肩を落としました。


「……なんデスか?」


そんな私を、興味なさそうなとろんとした目で、じーっと少女は眺めていました。

そして、ちょいちょいと少女は私を手招きしました。


特に敵意なども感じられませんでしたし、別にどうなっても良かったので、それに従いました。

近くによると、私にのしかかるように私のことを観察し始めました。

少女は数センチも離れない距離で私の顔を凝視し、そこで初めて、少女が私の『目』を見ているとわかりました。


そしてポツリと


『あなたも、ひとりなの?』


そう呟きました。


『わたしも、ひとりなの。おなじだね』


誰もいないダンジョンの奥地で、絶対的な孤独。彼女も一人でした。

同じでした。


『だれもいないの、おなじだね』


頼れる相手も、家族もいない。

同じでした。


『すごくさみしくて、かなしくて、おなじだね』


もともと何もなくて、あったものを失って

寂しくて、悲しくて……


「いえ、同じではないデスね」


寂しくも、悲しくもない。

もうそんなものは感じたくもない。


『おなじだよ』

「違います」


きっぱりとした否定。

その答えに、少女は納得がいかなかったのか、再び私の目を見始めました。


『うん。ちがうね』

「そうでしょう」

『うん。わたしはじぶんにうそがつけないから。おなじじゃないね』

「――――ッ!」


その、棒読みの、感情を感じさせない話し方が、その言葉が

感情を感じないはずの私に、怒りを植えつけました。


「お前に何がわかるッ! 何も知らないくせにッ! 自分に嘘をつかなきゃ、やっていけない苦しみがわからないくせにッ! 私だって、逃げないで、嘘をつかないで、それで生きていけたなら、そうしたかったデスよッ! でも、もう嫌なんデスよ! もう、楽になりたい……」


勢い余って少女を押し倒し、喚き、心の声を叫び、そして最後には、消え入るような声で、とにかく感情をぶちまけました。


しかし少女は、無表情のまま、静かに私の頬に手を添え、呟きました。


『らくに、なりたいの?』

「ええ!」

『しにたいの?』

「ええ!」

『どうして?』

「こんな世界で生きたくないから――――」

『どうして、じぶんにうそをつくの(、、、、、、、、、、)?』


少女の呟きに、息が詰まりました。

まるで少女の目が、何もかもを見通しているようで。

私のことを、わかってくれているようで。


即座に、そんな甘い考えは捨てました。

何も知らないこんな少女が、私のことをわかってくれるなんてことは、ありえない。

期待してはいけないと。

その後、自分がどう思うかなんて、もう、十分すぎるほどわかっていると。

自分にそう言い聞かせて。


「嘘なんて、吐いてませんよ」

『しにたいの?』


先ほどと同じ問いかけ。

私は即座に答えを返します。


「ええ」

『しにたいの?』


繰り返される問いかけ。

私はすぐに答えを返します。


「ええ」

『しにたいの?』


また、繰り返される問いかけ。

私は、すぐに……返せず、焦って答えを返します。


「……ええ」

『しにたいの?』


それでも繰り返される問いかけ。

私は、もう答えを返せず、苛立ちのまま叫びました。


「しつこいデスね! 何度もそうだって言ってるじゃないデスかッ!」


そんな叫びに、少女はすぐに


『ほんとうに?』


そう返してきました。

もう、何も言えませんでした。

ただ、泣きそうになりながら、少女を見ることしかできませんでした。


『ほんとうに、しにたいの?』


少女のそれは、確信に満ちた問いかけでした。


『ちがう、よね?』


今度は少し自信なさげな問いかけでした。


『わか、らない。わたしには、あなたのことは、わからない』

「ッ!」


当然のことです。

わかっていたことです。

それでも、期待してしまった分、悲しかった。

やはり、期待なんて、するだけ無駄なのだと、思いました。


『でも、あなたが、じぶんにうそをついているのは、わかる』

「……自分に嘘をつくなんて、みんなやってることデスよ。別に、いいじゃないですか」


その言葉は、自分に対して言い聞かせた言い訳の言葉。

少女の言葉は


『でも、あなたのうそは、かなしすぎるよ』


私のことを守ろうと、思いすぎる言葉でした。


私の作った、私を覆う、薄っぺらな何かに、パキリとヒビが入りました。


『あなたは、じぶんをせめてる。じぶんのいしで、じぶんはくるしまなきゃいけない、じぶんはかなしまなきゃいけないって、おいこんでる』


そのヒビは、どんどん進み、ヒビとは言えない大きさにまでなりました。


『でもね。あなたのこころは、あなたのほんしんは、そんなこと、おもってないよ?』


私を覆っていた何かは、音を立てて砕け散りました。

そして、父の言葉が、兄達の言葉が、母の表情が、脳裏に走りました。


「私は……私……は」

『うん』


少女はゆっくりと促してくれました。


「死に、たかった……死んで、楽になりたかった」


その、久しぶりの、もう決して受けることがないとおもっていた

『優しさ』に込み上げるものが瞳からこぼれそうになりました。


「でも、それ以上に……死んで、楽になるより、それよりも……」


私は絞り出すように言葉を続けました。


「救われたかった……」


ただただ、自分の本気の気持ちを吐露する私を、少女は黙って聞き続けました。


「誰かに……助けて欲しかった」


目元を抑え、俯き、喉の奥を震わせながら



「一人は、゛い゛や゛た゛っ゛たッ!」



『うん。やっぱり、わたしとおんなじだね』


私は、涙で歪む目で、少女を見ました。


少女は初めて、感情を表した顔で

花の咲き乱れるような、無邪気な笑みを浮かべました。



ブックマーク件数200に行きました!

ありがとうございます!

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