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信じられないでしょうけど、頑張って戦ったのに怒られるんです!


ミルクルさんと、仲直りをすることができた。

まぁ、別に喧嘩していたわけじゃないんだけど。

お互いに、少しだけ、分かり合えた気がする。


少々遅ればせながら、この抱き合った構図に気恥ずかしさを感じる。

ぐすぐすと涙を流すミルクルさんは気づいていないのか、気にした様子はない。

どうしようか……

とは言え、俺も年頃の日本男児。この状況が美味しいという気持ちも確かにある。

だが、だがしかしだ。

こんな状況で、今この瞬間に俺がそんなことを考えていることがミルクルさんに気づかれてみろ、ゴミを見る目で睨まれて半殺しにされかねない。


そう思うと少し浮いた熱が冷めていくのを感じるが、久方ぶりの人の温かみはその程度では冷え切らなかった。


(にしても、他人と抱き合うなんて久しぶりだな)


ちっちぇ頃は、お袋に抱っこもされていたもんだが、それも小一で卒業してたし。

それ以降といえばスライムちゃんと抱き合っていた記憶しかない。

いや! スライムちゃん気持ちいいんだぞ! 柔らかくてプニプニしてて程よい弾力があってひんやりしてて!

……とはいえ、どことなくその気持ち良さとは違う、温かみがあり、少し熱が増す。

あぁ……少し落ち着くな……もう少し


そう思い腕の力を少し強めぐっと首を前に出そうとした瞬間


「ぶふおおっ!」


誰かの吹き出した声に、ハッと熱に浮かされ曇っていた目が完全に覚醒する。

うおおおおお! 俺今なにしようとしてた!

許されねぇぞオイィィィィ!

熱から冷めれば残っているものはさっきまでの浮いた記憶と罪悪感だ。

マジでなにしようとしてんの俺……完全に理性失っとりましたやん……

な、なんにせよ助かった。

救世主には感謝しても仕切れな――――


「……」


マ ジ か


俺は絶句し、我が悲運を全力で呪いたい気持ちで一杯だった。


だってその先には


ぷるぷるの自慢のボディーをガッチガチに固めたアオさんとミドリさん(ついさん付けしたくなるほどのプレッシャー)と、なにやら不穏な気配を漂わせるキャンディーちゃん(もちろん『魔王モード』)と、さっきの吹き出した声の張本人であろう、俺を指差し腹を抱えてまるで『プッギャー!』とでも言いたげな顔で大爆笑してるウィーアード(こいつは比較的どうでもいい。後でキンタマ蹴り潰すけど)がいた。


俺とミルクルさんはでっかいクレーターのど真ん中にいるからな。

結界外の壊れていない地面から俺たちを見下ろしているわけなんだけど

その、なんとゆうか、気のせい、ですかね?


なんか、全部が全部俺に集中しているように見えるんですけども?

あれ? ミルクルさんは?

え? 俺が悪いの?


アオとミドリが不意に体を変形させ、腕の形を一本作る。

そしてキャンディーちゃんも加わり、みんなで一斉に『おいで おいで』と手招きを始めた。

ふむ。『こっち来いや』という意思表示だろうか。

でも言っちゃあ悪いんだけど、そのゆっくりとしたリズムがすげえ不気味。

ぶっちゃけ行きたくないんだけど。


「……ユベルちゃん」

「ミ、ミルクルさん?」


いつの間に、泣き止んだんですかね。

まぁそんな些細なことはいい。

大事なのは、なんかミルクルさんの表情がすげーいい笑顔なのことである。

俺の表情筋が盛大にひきつる。

お、おお、オイ。勘弁してくださいマジで。

ここは穏便にだなぁ。

だ、ダメだって! その笑顔は絶対なんかやろうとしてるに決まって――――


「このまま、二人で逃げない? どこまでも、誰にも邪魔されないところまで」



オイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッッッ!!!!


なんなんだよ! あんた俺になんの恨みがあるんだよ! 完全に誤解させる言葉を選んで使ってんだろ!

この距離でもアオ(ともしかしたらキャンディーちゃんも)には聞こえるんだぞ!


「勿論、私を置いていくなんてしないでしょ?」


お願いです! もう勘弁してください! 死んでしまいます!

背中からひしひしと伝わってきたプレッシャーが今、殺気になった気がする。


「ま、まて、確かにさっきはそう言ったけど、って、ああ! 違う! そうじゃなくてぇ!」


もうダメだ! 俺がなにを言おうと全部言い訳みたいになる気がする!


「ま、しょうがない。ここはユベルちゃんに免じてあげますか」


ミルクルさん? さっきまでのあの可憐さとかはどこへ旅立ってしまったの?

ま、まぁいいだろう。

まずはこの首をギロチンの真下に固定され放置されている様な状況から抜け出すが最優先。

ここは味方を得たということで水に流してやろう。


「ほら、みんなも呼んでるし行きましょ」


おう…………

う、うん?


「あのですね、ミルクルさんや」

「なんですか。ユベルさんや」

「抱きついたままですと、動けないのですが?」


とゆうか、俺たちずっとこのままなんだよね。

ミルクルさんよ……早く離すのだ! 手遅れになる前に!

もう手遅れな気配もするが、早く!


「でも〜、ほら〜。私今秘剣の反動で動けないし〜。でもみんなが呼んでるから早くしかないといけないのよね〜」

「……? み、ミルクルさん?」

「しょうがないから、ユベルちゃん連れてって。勿論『お姫様抱っこ』で!」


語尾にハートがつきそうな言葉でそう言い放ちやがった。

俺には、初めから味方などいなかったのだ。

あんたはどんだけ俺をいじめれば気がすむんダァ!


もうなんでもいいやと自暴自棄になりながら、涙目でミルクルさんに怒鳴ろうとした。

その時、背中から常に感じていた殺気が、少しずつではあるが、近づいてきている感覚がして俺の動きが固まる。

気のせいだよね。気のせいだと思いたい。


「あらら。向こうの方から来ちゃったかぁ。ここまで(、、、、)かなぁ」


今俺の脳内では、トラックの積荷に乗せられた牛さんが出荷されて行く光景が広がっていた。

切ないような、悲しいような、そんな感情を伺える表情をしたまま、牛さんは少しずつ、少しずつ遠ざかっていく。


ぽん。


《まーすーたー》


そして俺は逃避していた現実へと引き戻される。

頭の上に乗ったアオを、目線だけでチラッと伺う。

そこに、先程までの殺気は感じられなかった。

だが俺は安心することはなかった。

その異常性に心の底から恐怖を抱いたからだ。


だって、急に、なんの前触れもなく、あの殺気が消えたんだぞ?

逆に怖いわ!


《ミルクちゃんとお楽しみでしたね》

「決闘! 死闘を繰り広げておりました! そう! ほら! これ見て! ボロッボロ! 服ボロッボロ! 俺、傷だらけ!」

《ふーん》

「嘘じゃない! 本当だ!」

《じゃあさっき抱きついてたのは?》


抱きついていたんじゃない! 抱き合ってたの!


という俺の言い訳を瞬時に飲み込んだ。

言い訳しようとどっちにしろ変わらない、むしろ悪い方向へと変化すると察したからである。


「……ぅ……ぐっ……いや! 証拠! 『限界破壊』に聞けばわかる!」

《むぅ〜。どうなの? 『限界破壊』ちゃん》

『マスターの当時の心理状況をサーチ。……体温上昇・思考回路低下・理性の崩壊。その他の男性特有の生理現象を多数発見致しました。総合的に、マスターは自らが犯した大罪を認め、素直に謝罪をした後、その罪に見合った罰を早急かつ迅速に受け入れるべきだと進言致します』


『限界破壊』! お前もか!


《ん〜……どうゆうこと?》

《簡単にまとめると、マスター、発情してた。マスター、ギルティ。今すぐボク達に謝って、ボク達にお仕置きされなさい。って『限界破壊』さんは言いたいみたいだね》


は、ははは、発情なんてしてませんしぃ!

男のコとしてしょうがないことなんだよ!

色々と変な癖を持っている俺だが、女の子と抱き合って平静を保てるようなプレイボーイじゃないんだ!


「ふ、ふ、不潔ですぅ!」

「キャンディーちゃん!」


一体今までどこへ……と思って周りを見たら少し遠くでウィーアードに事情を説明しているミルクルさんが。

キャンディーちゃん仕事早いよ!

そこまで急いで帰ってこなくとも、もう少し向こうでゆっくりなさっていてもよろしかったのですよ?


「は、発情だなんて! そんな、まだ6歳なのに……」


キャンディーちゃんは顔を真っ赤にさせて、両手で頬を抑えいやんいやんと首を振る。

なんだかほんわかした。


《ますたー!》

「ヒェ!」


我ながら情けない声が出た。

うぅ……仕方ないだろ……めっちゃ怖いんだから……


《ますたーがね、もうそういう人だってことはわかってるんだけど。それでもとりあえず言い訳は聞いてあげる。なにかある?》

「あ、ええっとだな。まず、ミルクルさんとああいう状況になったのは止むに止まれぬ事情がありまして。決して下心があってしていた行為ではないんですよ。あと『限界破壊』の証言は悪意にまみれていると僕は思います。明らかに俺を貶めようと」

《正座》

「はい」


これ幸いにとぺらぺら誤解を解こうと頑張ったのだが。

その結果は声を低くしたアオの宣告だった。

どうやら俺は何かを間違えたらしい。

ギャルゲーやってる時はこんな無粋なもんはいらん! なんて生意気なこと言ってすんませんっした。

だから、選択肢さんかもん!


《マスターは、ミルクちゃんが好きなの?》

「ぶっ!?」


思わず吹き出しちゃったよ。


「けほっ、ミドリさん? なんでそんな質問を」

《え? 気になったから。ね、アオちゃん》

《な、なんでアオに聞くの! ……確かに知りたかったけどごにょごにょ》

《あー、めんどくさ。で、マスターどなの?》


今めんどくさって、めんどくさって言わなかった?

本当に俺に似てきたの、かな?


「どうなのって聞かれてもな。好きって意味合いが沢山あるからなぁ。ミドリがなんの好きを聞いてるのか知らんが友愛ならあると思うぞ。それ以外の好きは……多分ないかな」


恋愛的な意味が真っ先に頭に浮かんだが、それは速攻で切り捨てた。

あの人を彼女になんて考えただけで寒気がする。

でもまぁ、大切な友達くらいには思ってるよ。


《ふーーーん》

「な、なんだよ」

《ほんとに?》

「嘘なんてつかねえって」

《…………ま、確かにマスターが僕たちに嘘ついたのは、ほんの少ししかないしね。信じてあげる。だって、アオちゃん》

《だからなんでアオに聞くのかな! それにますたーの言葉は信用できない!》

《だってマスター》


うーん。薄々感づいてたけど、アオやミドリの信頼が薄いなぁー俺ってば。

あー、どうしよ、目から汗が出てきた。

くっそ、なかなか止まらないなこの汗。

しょっぱいぜ、こんちくしょう!


《わわわ! マスター泣かないでよ! ご、ごめんちょっと言いすぎたかも》

「ミドリ。違うぞ」

《な、なにが?》

「これは男の心が流す、汗だ」

《なにがっ!?》


ミドリが冷静さを書いてアワアワしだした。

なんか珍しいな。

可愛い。


「まぁなんだ。お前らが怒るのもなんとなくわかるよ」


俺がそう言ったら、アオとミドリとキャンディーちゃんが固まって、その直後


《ちょ、ち、ちが》

《ぼ、ボクは、その、別にそんなんじゃなくて》

「うぅぅ……」


みんなが一様に狼狽出して、途切れ途切れになりながら焦って言い募ろうとする。


「大丈夫。わかってるって」


なんか赤くなりながら必死に「その先は言わないで!」というような雰囲気を出してくる。

いや、そういうわけにもいかないさ。ちゃんと皆んなが怒っている理由をわかってるってことと、俺の無実を知ってもらいたいからな。


「自分のマスター。キャンディーちゃんから見たら友達のマスターが、女癖の悪い男なんて嫌だもんな。わかってる。でもな、今回のはそんなんじゃなくて、って、どしたの、皆んな」

《……》

《……》

「……」


三人共、スッと顔から表情が消え、そして体をぷるぷると震わせながら、俯ていく。


(あ、やな予感)


俺は引きつったにこやかな表情のまま、逃げる姿勢を作る――――

――――作ろうとした瞬間、俺の正座している地面のあたりが急にぐにゃりと柔らかいものに変化し、体制が崩れそうになるのをなんとか耐えて正座をキープする。

正座キープはできたが、そのかわり逃げ出す準備ができなかった。


《ま、ますたーのぉ》

《マスターの》

「ユベルくんのぉ」


あ、なんかデジャブ。

え? 嘘!

ちょ、ま


《《「ばかぁああああああああああああああああああ!!!」》》



スライムtueeeee作品だったような気が……

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