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信じられないでしょうけど、俺は便利道具では断じてないんです!

「おはようございまーす」


担任教師が朝の挨拶をしながら教室に入ると、ガタガタ生徒達が席に座りだし次々と挨拶の言葉を返す。

この辺りは日本の学校と余り変わんないな。


「あれー。ユベルくんがなんでいるのー?」


一人の生徒が、担任生徒の後ろから教室に入った俺を指差しながらそう言った。

うん。俺も知らん。

何度かヘルプに入ってはいたが、朝のホームルームから呼び出しくらうのは初めてだ。

なんと答えるべきか悩んだ後、とりあえず微笑みながら手を振って置いた。


「コラ。いけませんよ。ユベルさんはれっきとした教師なのですから。くんなどという呼び方はおやめなさい」


ニコニコしていた生徒が先生に怒られたからかしゅんと俯いてしまった。


「まぁまぁ、そう怒らず」

「ですが」

「いいっすよ。俺だってまだ彼女達と同じ歳な訳ですし。別に調子に乗ってるわけでも侮ってるとかいうわけでもない。親しげにしてくれるなら俺は別に構いませんから。それに、役柄とかは置いといて、俺は俺より年上の方にもタメきいてますしね。俺も人のこと言えませんよ」


女性相手なら紳士的な話し方、つまり敬語が自然とできるが。

それでも昔と変わらず俺は敬語で他人と話すのが苦手なのだ。


「ユベルさんは実力があるからいいんですよ」

「そりゃどーも。先生も、俺のことさんなんてつけないでいいよ?」

「ユベルさんが私のことを先生ではなく、ルーターと呼んでくれたら考えましょう」

「いきなり名前とは……なかなかに大胆ですな」


彼女。ルーター・マルフィンは、名前はまったくそうではないが、極めて和風な方だ。

ミルクルさんも最初は転生人か何かだと疑った。

だが、歳やその他諸々でそうではないことを知ったのだった。

服装は着物のようなものであるし、武器も剣ではなく刀。

ちょくちょくこのような日本風の物が所々で見つかるらしい。

昔からあるということだから、昔こっちに来た人が広めたとかそんなところだろう。

製法とか知ってる人だったのかね。さぞ儲かったことだろう。


いや、でも待てよ。

昔って言ってもだぞ。

俺たちがプレイしていたVRMMORPG『Enemy Gold Online』。『EGO(エゴ)』は。

公式サービス開始が約五年前だ。

その時からゲームを始めていた俺がいうのだから間違いない。

その時にこっちに来たとしても、まだ五年しか経っていない。

いや、五年もあれば流通させることぐらいはできるか?

いやだが、昔からある技術なんだろう?

つまり、どういうことだ……


「――――ルさん。ユベルさん。ちょっと、聞いてますか?」

「うわっと、な、なに?」

「さっきから呼びかけてるのに全く反応がないから心配しましたよ。どうかしましたか?」

「い、いや。なんでもない」


ふむ。少し思考にふけりすぎたか。

もうホームルームも終わっているようだ。

結局俺が呼び出された理由わからなかったな。

聞きそびれてしまったようだ。

後でミルクルさんと話し合ってみよう。


「では皆さん。今日も頑張っていきましょう」


おぉ〜。声が上がったのでとりあえず俺も手を掲げておく。

元気だね。みんな。


「今日は前から言っていた通り、皆さんお待ちかね、テイマーとしての『実技講習』を行います!」


ルーターさんのその楽しげな声に、先ほどの何十倍とも言える声量が答えた。

余りの声量に驚き尻餅をついてしまう。


「な、なんだぁ」


テイマーの実技講習?

初めて聞く新用語だな。

なにかテイムしに行くのだろうか。

ならスライムをお勧めするよ。

初心者向けというか、取り敢えず誰でもテイムできるから。

まぁ私情がないかと問われればノーと答えるけどね。


「ユベルさんに来ていただいたのは他でもありません。その知識でテイムの方法や厳しさ、注意すべき点を教えてもらい、尚且つ、その強さで貴方達を危険から守ってくれます」


あー、そゆことね。

俺が呼ばれた理由はそれか!

俺に都合のいい教科書と肉壁になれと!

あと、パーカーの中に潜んでいるアオが。


《ますたーが守ってくれるのはアオとみどりちゃんだけなのに!? うぅぅ〜!》


と憤慨していた。

因みに昨日割とすぐに帰宅したアオ達が、校内で一体なにをしていたのか。

結局教えてはもらえなかった。


--- --- --- ---


「で? どこ行くの」


この辺りは代表的な『アンノーン』以外にも、いろいろなダンジョンがある。

それこそ、敵がゴブリンしか出ない低レベルダンジョンから。

ドロップするアイテムが全部宝石とかいう高レベルダンジョンまで。

俺の攻略した『迷い精霊の巣』別名暗記ゲーは、中の上といったところかな。


「『鋼の谷』なんてどうでしょうか?」

「決まってないんかい……鋼の谷って、あの生息するエネミーの名前に必ず『メタル』ってついてる、アレ?」

「流石。お詳しいですね。その通りです」

「レベル高くないか? あいつらレベル低いくせに硬くて案外しぶといぞ? まぁ動きがノロいから対処はしやすいけどさ」

「そうですね……」


ルーターさんは顎に手をやり考えるポーズを取ったあと、数秒。


「では『豚の種』なんてどうでしょう?」

「おいふざけんなよっ!」


真顔でそう俺に提案した。

俺はその提案を真顔で却下した。


「な、何故です!」

「女生徒もいるんだぞ! トラウマ刻み込む気か!」


『豚の種』

名前からしてお察しだ。

要するに、『オークの巣窟』である。


オークのゲーム設定は、まぁ、なんだ、大概の〜、あれだ。

ファンタジー系のオークそのままだな。

性別にメスがなく、非常に性に飢えており人間だろうが御構い無しの豚エネミー。

男は殺し、女は、その、襲いかかる。

でもまあそのまま設定に組み込んだらただのエロゲになっちゃうんでね。(キャラクターセレクトにエルフもいるし


あくまでそうゆう設定で、ゲーム内では、オークの股間とかは適当に作られてたし、女性プレイヤーを優先的に攻撃してくるくらいだったが。


この世界にいるのはエネミーの設定をそのまま形にしたようなもんだ。

それはもう、18禁な展開が繰り広げられること間違いなしだろう。

その前に俺が全滅してもいいけど。

いざという時に困るってもんじゃない。

それ以前の問題で、女生徒の心に大きな傷がつくわ!!


「オークはテイムしやすくて便利なんですけどね」

「餌付けしやすいからな! でもこれって実技講習なんだろ? 餌付けしてどうする」

「何を言いますか。餌付けだって立派なテイム方法ではありませんか!」

「それでテイマー名乗れたら苦労しねぇよ……」


餌付けって……できるエネミー片手で足りるぞ?


「なら何がいいと思いますか?」

「そうだな……うぅん……『鋼の谷』でいいよ」

「考えるのだるくなりました?」

「な、なんのことかな!?」


だるくなった?

はっはっは。おかしなことを言うもんだなぁ。

全く意味がわからないよはーっはっはっ。


--- --- --- ---


そして馬車で揺さぶられること数時間。

目的地に着いたあと。

馬車酔いだけ集まって休憩していた。


俺は酔った子供達の面倒だ。


気持ち悪そうにうんうん唸っている子供達を介護しながら、ふと思った。


(なぁミドリ)

《なぁに?》

(馬車は酔わないのか?)

《揺れが弱いからね〜。体が丈夫になったからか、これぐらいなら酔わないよ》


酔いに強くなったわけではなく、体が強くなったのか。


《でもマスターの揺れはボク正直信じられなかった。アレなら誰でも酔うよ。酔わないアオちゃんが異常だって》

《そうかなぁ〜、えっへへ》

《異常って言われて喜んでるよ。マスター、ちゃんと責任取ってあげなきゃダメだよ?》

(どこで覚えてくんのそうゆう言葉?)

《ボクも含めてね》

(ん? 悪い、声小さくてちょっと聞き取れなかったんだけど)


聞き返すもミドリは《いーの》とだけ答えて教えてはくれなかった。

なんか最近、二人とも俺に秘密が多い気がする。

俺寂しい。相談してくれてもいいのになぁ。

俺にも秘密なことがあるとは……なんだろ?


「大丈夫かぁ〜」


気になるが、とりあえず今は介護に集中しよう。

この人数に吐かれたら実技どころじゃねぇ。


「ユベルさん。ちょっと」

「はい?」


口元を押さえている生徒の背中をさすっていたら、ルーターさんに呼ばれたので生徒の背中を軽くぽんっと叩き移動する。


「なに?」

「酔いはしばらくたったら治ると思いますので、ユベルさんはこれからやる事の説明を聞いてください」

「はぁ。よろしく」

「では。ごほん。私たちはこれから『鋼の谷』第5層を目指します」


俺の思考が停止した。

停止してから、数分。

俺の口から出た言葉は、シンプルなものだった。



「………………はい?」



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