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信じられないでしょうけど、変態しかいなくて不安です!


「どうせ王都に来てるんだ。最前線とまでいかなくても、アンノーンの下級階層でレベル上げをすることぐらいやっておきたいからな」


ウィーアードに聞くなら的確だろう。

なにせこいつは


「ダンジョンの階層主ソロ後略者のあんたに、ぜひお聞きしたいね」


魔王を、テイムしているのだから。

そして、出身は知らんがこいつはこの国で育ち、今この歳で、あれほどの力を手に入れた。

こいつは俺と同じ、立派な『最前線プレイヤー』だったってわけだ。

しかも、その中でも珍しい『ソロプレイヤー』だ。


「何故私が、階層後略者だと?」

「お前の歳不相応な強さ。キャンディーちゃん、勘。これじゃ足りんか?」

「十分デス。ではついでにもう一つ。ソロというのは」

「現在解放されている階層は21階。それまでの階層の何処にも、スイーツ・ザ・デビルフェアリーという種類のボスは出現していなかった。つまりキャンディーちゃんは、ソロ攻略限定ボーナス。ソロという条件下の中でしか出現しないというシークレットボスだ」


しかも出現、ポップするのは完全な運ゲーだ。

さらにさらに、シークレットというだけあって、かなり確率は低い。

常にソロ活動をしていた俺ですら、ついぞ出会うことはできなかったからな。


「ユベルちゃん。詳しいね」

「まあな。俺も一時期それが目的になっていた時もあったし。その後頭から抜けてたけど」


ウィーアードはウィーアードで、ぽかんとした顔をしていた。

知らなかったのだろう。それもそうだ。

まぁ色々と手を加えて検証できたのも、全てはゲームだったからだ。

シークレットとか、確率とか言われても、わけわかめといったところだろう。


「まぁ、キャンディーちゃんは出会うのがすごく難しい特別なエネミーっことがわかればいいよ。それより、話戻していいか?」

「ユベル氏が無理のない階層に挑みたいというのなら別になんの問題もないと思いますし、別に許可証などの類もいりませんが……いかんせん、憲兵達がユベル氏達を素直に中に入れてくれるかどうか」


ウィーアードは一度俺を上から下へじっくり眺め、そして俺に撫でられてぷにゃふにゃになってるアオとこちらを眺めてるミドリを向かう。


そうか。アンノーンの前に受付みたいなのがあるわけね。

そこで中に入って大丈夫か確認しているわけだ。


んでもって、一度俺たちの見た目を確認しておこう。


駆け出し満載の下級装備を見にまとった歳見た目ともに六歳にしか見えない少年。

しようと思えば誰でもできる超最弱のスライムをテイムしている。

危険だからという理由でいれてくれそうにない。

はたから見れば強いか弱いかなどわからんし、どちらかと言えば弱い方に印象が行くだろう。


「そうゆう時のための対処法は?」

「基本的に無駄死にを防ぐため、たとえ憲兵に力を見せつけたとしても、ユベル氏では入れてもらえない可能性の方が大きいでしょう」

「そうか〜。そりゃ参ったな。無理やり忍び込むしかないかね」

「マ、そうなりますよね〜」


強さがわからないからいれさせない、そうだろ?

それはつまり、『入りたきゃ、勝手に入って力を示せ』ってことだろ?

無理やり入ることができるだけの力がありゃ、力不足とは言えまい。


「ウィーアードだってそうしたんだろ?」

「もっちのろ〜ん。その時はまだキャンディーちゃんすらテイムしてませんでしたし」

「お前それでよく生きて、生き残れたね」

「悪運は強い方でして。とは言え、キャンディーちゃんがいなかったら死んでたかもしれませんが」


なんとも素敵な人生歩んでるね。

エネミーなしで迷宮攻略とか自殺行為だ。

そりゃ憲兵さんも止めますわ。


「そうか。サンキューな。参考になったよ」

「いやいやなになに。ユベル氏がこれから教師として我が校で働くんデスからねー、その前金みたいなもんと思ってくれれば。これから末長くよろしくお願いしますよ〜」

「あぁ。末長くは無理だがな。あ、つまんねえシャレは今後言わなくていいぞ」

「ハッハッハッ。まったまた。ご冗談を」

「え?」

「エ?」


……ま、まぁ最前線のことは一旦保留にしてっと。

取り敢えず、教師ヅラして荒稼ぎと行きますか。


「それにしても二人はすごく仲が良さそうね。私は昨日の午後にここに来たばっかりだからよくわからないんだけど。何かあったの?」

「あぁ。てことは昨日のこと知らないのか。だろうな。知ってたら俺がいるってわかるだろうし」

「どゆこと?」

「俺この前までデキウスから少し離れた砂漠地帯にいたんだけどさ。そこでウィーアードとあってここまで連れてこられたんだ。昨日はこいつとガチンコPVPしたぞ」

「デキウスかぁ。私をほっといて一人楽しんでいたわけか。でも懐かしいねぇ。今度行きたいなぁ」

「あぁ懐かしいなぁ。ミルクルさんは俺から巻き上げまくったもんなぁ! そりゃ楽しかったでしょうよ! この前は俺チート無双できたけども! あんたとは、いや、ソロ仲間の奴らの誰とももうぜってー賭け事しねぇ!」

「なんでよぉ!」

「ズルいんだよ! いや、ずるいとかずるくないとかもう天元突破してわけわからん方法で取り敢えず人から金をむしり取り続ける奴らとやれと? ふざけんなよ!」


だいぶデキウスでは俺も調子乗ったけど。

言っちゃ悪いが俺、そんな強くないぞ?


「でも、ユベルちゃんとPVPって。ウィーアードさんってふざけたこと言ってるけど強いのね。ただの変態だと思ってたわ」

「変態は間違ってないぞ。………………ミルクルさんと同じだな(ぼそ」

「ああん? なんか言った?」

「何も言ってないです!」


若干上ずった声でブンブンと首を振る。

ミルクルさん……とても女性がしていい恫喝ではなかったということを自覚してくださいお願いだから。


そんなこんなで話に花を咲かしていると、時間の流れは早いものでそろそろ生徒たちが登校し終える時間になった。


「さて。俺はまず何をすればいい?」

「私の部屋でゆっくりおしゃべりでもしていましょう」

「いきなり楽なの来たな。でもお前とおしゃべりして時間潰すくらいならアンノーンに向かいたいんだが……」

「安心してユベルちゃん。すぐに私が仕事を作ってあげる。じゃ、私は言ってくるわね」


いってらっしゃいと手を振りながら

俺は心の中で静かに、「不安だ」と呟いた。


「取り敢えず。変なことはしないでくれよ」

「えー」

「変なことするつもりだったの!?」


--- --- --- ---


「そんで……」


俺はなぜかその後すぐにウィーアードの部屋から引っ張り出され。

ミルクルさんの転入? したクラスの教壇にたち、ピクピク痙攣するこめかみを抑えていた。


「さ、場も温めておいたし早速挨拶してちょうだい。ダーリン」


頭が痛い……

どこから突っ込めばいいのだろうか。


事の顛末は数分前のミルクルさんの挨拶にまで遡る。


担任に促されるまま教室に入った彼女は

黒板に名前を書き、威風堂々と自己紹介をしたのだ。

そう、名前を『ローマ字』で書いて。



『はじめまして! 皆さん。私の名前は《Mirukuru(ミルクル)》と言います。気軽にミルクちゃんと呼んでください。あ、ちなみにこの名前を書いた言語は私の故郷特有のもので、この前ピスケル校長先生と戦ったユベルちゃんとは同郷で同い歳です。そうそう、言い忘れないように言っておくと、私たち熱愛カップルだから! そのへんもよろしくぅ!』


ビッとピースサインを掲げながらのその宣言だったそうだ。

そして「ユベルちゃんはまぁーコレだからね〜。呼び出してあげるわよ」というミルクルさんの言葉に、生徒たちが食いついた。

そして今のこの現状である。


今尚


「先生! ユベルくんっていうんですね! よろしくお願いします!」

「俺! 尊敬します!」

「ピスケル校長先生って強いんですか! 戦ってみてどう思いました?」

「ミルクルちゃんと同い歳ってことは俺たちとも同い歳だよな。タメでいいだろ」

「せんせー。ミルクルちゃんとカップルってほんとうですか〜」

「俺に戦い方を教えてください!」

「授業聞いた友達に行きました! 僕にも是非テイマーとしてのご教授を!」

「よろしく!」

「ちっちゃあーい」

「先生とは思えんな」

「同じ歳だしね」

「てか強いの?」

「ヤバいらしいよ〜。噂じゃ迷宮攻略経験者だとか」

「うっそー!」


などなど

俺の周りでワイワイガヤガヤ。やかましいにもほどがある。

全くもっていい加減にしてほしい。

殺気をぶち当ててやろうか。

いや、今朝もそれをやって失敗したばかりだろう。

むやみに怖がらすのは得策ではな……


そして俺の目に、むっふーと満足そうにこちらを見るミルクルさんが映った。


「……」

「なに?」

「……ドンッ! (殺気を発動した音」


ミルクルさん単体に全力の殺気を叩き込んでみた。

ミルクルさんはビクッとし、そして涙目になりながらオロオロしはじめた。


「なによ? なになに? え? なに? どゆこと?」


ミルクルさんは非常に動転していた。


そしてミルクルさんから乱暴に視線を外し殺気を解除する。

ミルクルさんが地面にへたり込んだが誰も気づいていないようだし、無視を決め込む。


「あーあー。落ち着いてくれ。そんなにいっぺんに聞かれても答えられねえよ。一つずつ、一つずつな」

「ケッ! 同い歳のくせに調子乗ってんじゃ」


パキャンッ!


「いっ……!」


ぶん投げた脆いチョークが生意気な生徒のひたいに直撃し粉になる。

その音が意外と響き、場が静かになった。


「まずははっきり言っておくが、例え同い歳であろうと、俺は『教師』でお前らは『生徒』だ。調子乗って舐めた口きくクソガキには、それなりの制裁を加えさせてもらう。いいな」


アオに頼んで教室全体を薄い殺気を張り巡らせながら言った。


「ま、そんなに長くいることはないと思うが、仲良くしていきたいと思ってる。よろしくな。ご紹介にあった通り、俺の名前はユベル。愛称でもそのままでも、まぁ好きなように呼べ。なんか困ったことがあったら気軽に相談してこいよ。できるだけ対処するからさ。好きなエネミーはスライムだ」


スライム、の部分で若干微笑が漏れた。

チッ……とはいえ、相手は子供。無理やり体に叩き込んでやるのもさすがに酷だ。


少し経てば、いやでもわかってくことだ。

少し我慢せよ。俺。


「あと、ミルクルさんとは古い仲だが、恋愛的なものは一切ない。悪いな女子たち。面白い話じゃなくて」

「は、はい! ユベル様!」

「うん? おぉ、エレインじゃんか。このクラスだったのか。よろしくな」


エレインがいるとは思わなかった。

サクヤがいないが、授業中は別のところにいるのだろう。


「よ、宜しくお願い致します。そ、それより、ユベル様の言った通りなら、あくまでさっきのはミルクさんと悪ふざけ、ということですか!」

「あぁうん。そうだよ」

「あ、ああの。ついでに質問なんですけど、その、今お付き合いなさっているご相手はおいでですか?」

「いないな。悲しいことに」


そう答えると、所々で女子の黄色い声が上がった。

な、なんだよ?

この歳になってもまだ、女子の思考ってもんは理解できない。


「ま、自己紹介はこれぐらいでいいだろ。担任の先生も待ってるし、俺はそろそろ行くよ」


別の教室にも挨拶に行かなきゃならんかもしれんしな。

授業の邪魔をするのは俺の本意ではない。

未だなんか座り込んだままうろたえた目で俺を見て来るミルクルさんを見て。


俺は「フンッ」と鼻を鳴らしてそっぽを向き教室を出た。



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