信じられないでしょうけど、俺のハーレム計画はまだまだこれからです!
「あぁ、そういやウィーアード」
「なんでしょう〜うかっ」
「聞いとかなきゃいけんことがあると思い出してな」
そろそろ生徒も登校してくる時間だろう。
集会とかで挨拶とかするべきなのだろうか?
でもどっかのクラスの担任になるわけでもないし。非常勤講師といったところだからな。
「俺はともかく。ミルクルさんはどうしてこの学園にいるんだ。まさか、俺の友達だと知っていて起こした行動ってわけじゃないんだろう?」
「勿論ですとも。同時期にこの学園に来た異質な二人がまさか友であったとは、偶然というより奇跡に近いでしょう。同じ地で修行した仲、といった関係ですかね?」
ミルクルさんが来たのは偶然か。なら、誰かがスカウトしたのかな?
俺の時のように、強そうな生徒を集めているらしいし。
「ま、同じ地で修行してたってのは、当たらずとも遠からずってところだな」
「ユベルちゃんは私より強いけどね」
「……俺はミルクルさんに勝てないんだが……」
「偏ったステータスのせいですね。いつもは人に説教するくせに、そういう面にも自分は頼ってるんだから、相手のことも少しは大目に見てあげるべきだと思うよ。私とか。主に私のこととか」
いってることはもっともなので、最後の私コールさえなければ感心したのに。
「で? ミルクルさんには誰がスカウトが?」
「スカウト? ううん。普通に自分で来たよ。たのもーって」
は?
俺は唖然とした表情のまま、ウィーアードの方へと振り向く。
「えぇ。彼女は自らの手で我が学園の門を叩きました。今回の転入生のダークホースですね」
「ミルクルさん……いい歳こいて」
「う、うるさいなぁ! 転生して子供になったら、チートでヒャッホウした後のハーレム学園編は不可避なのよ!」
「…………まぁ、わからんでもない」
テンプレ。お約束というやつだ。
ファンタジー系のラノベやアニメでは、学園で化け物ような強さと大人の優しさを併せ持つチート系主人公がハーレムを築き上げるのはもはや避けては通れぬ道である。
「だかなぁ。ミルクルさん、ここはテイマーの学校だぞ? 対人訓練とかで俺tueeeeeが実現できたとして、テイムの実技訓練とかどうするつもりだよ」
「この機会に覚えようかと! まさしく一石二鳥!」
「悪くない考えだから水を差すのは悪いんだけど。この学校の基準、俺たちのいた場所よりも圧倒的に低いから、もしかしたら不適切なことも教えられかねないぞ」
「うそ!」
この前授業に乱入したが、うわべだけ並べ立てた教科書をただ音読するだけなどと、酷い授業だった。
授業がそれだけで済むなら家でその教科書を自分で音読すればいい。教師なんかいらないだろう。
もっと深く教えてやってほしいものだ。あと、自分の感じていることが必ずしも正しいというわけじゃないのだから、勝手に自分の主観で話をするのもどうかと思う。
やはり、情報はたくさんの人と交換しあい、少しづつただしいほうこうへとむいているものだろう。
「じゃあユベルちゃんはどうなのよ! どうして学校に来たの! 意味ないじゃん!」
確かにな。ま、俺教える側なんで。
涙目になりながら喚いてくるミルクルさんに、意味ありげに笑ってみせる。
「本当に、意味ないと思うか?」
「え? う、うん……ま、まさか」
「そうさ。転生して若返ったチート主人公が俺tueeeeeでハーレム。うんうん。実に素晴らしい。なぁ、ミルクルさんもそう思うだろ?」
「う、うぐぐぐぐ」
先ほどまでそれが目的! と言い放っていた彼女のことだ。
一概に否定することもできまい。
「ぶぅ……白い明日が待ってるぜ」
「ぐわーー! 不純な動機だー! 不潔ー! 変態ー! 生徒たちの貞操は私が守ってみせる!」
「ほほーん。あんたがそれをいうわけだ。さっきまでといってることが違うなぁー。チートはどうした? ハーレムはどうした? ええ?」
「私はあくまで健全な楽しい学校生活を送るのよ! ユベルちゃんとは違う!」
「ちょっと待って! 俺が健全な学園生活を送らないって決めつけられてる件について!」
俺だって、ハーレム作るならちょっとくらいキャラを作るさ。
いつも物静かでひょろっちい体でなんか他の男子より話しやすい、という位置を獲得し。
いざという時に颯爽と女の子たちを守り、「大丈夫?」とか手を差し伸べたりして、フラグ建設。
しかも、この強さには理由があって、昔色々あったんだよね……みたいなちょっと悲しげなところを見せてあげて女性の母性本能を刺激!
守ってもらいたいような強さの中に、守ってあげたくなる弱さも兼ね備えた優しい男の子。
ふふふっ。惚れるなって方が無茶な話だ。
まさしく女子の理想そのものだろう。
「ふむ。ウィーアード。俺は生徒になるぞ。今すぐ手続きに入ってくれ」
「え? そ、それは困りますね〜。教師の中では有名になってしまったので……」
「あ? 俺のハーレム道に立ちふさがるというの? お前俺の敵なの? 敵認定しちゃっていいの? ねぇ、いいの?」
「え? ユベルちゃん生徒として入学して来たんじゃないの?」
だらだらと冷や汗を流すウィーアードを壁側に追い詰めて脅迫していると、ミルクルさんの疑問が投げかけられる。
「ん? あぁそだよ。俺は教師サイドだ。よろしくな」
「は、はぁ! まぁ、見た目はともかくユベルちゃんなら、テイマーの学校なら校長ぐらいなれそうだし、知識もすごいし、そんなのなんの苦労もなくさらさらやり遂げちゃうだろうけど……えぇぇ……」
ミルクルさんは何やらがっくりと肩を落とし、そして三角座りで地面に座り込みものすごく落ち込んでしまった。
お、俺、なんか変なこと言ったか?
「……せっかく、ユベルちゃんと同級生として同じ学校生活が送れるって……思ったのに」
俺と学校生活? まぁ、確かに知り合いがいてくれれば学校でも楽しくやっていけるってのもわかるけどさ。孤立したくないだろうし。
「でもミルクルさんの目的ってハーレム作ることなんだろ? 俺と一緒にいたらそれこそ不可能だぞ? 変な噂が立つかもしれん」
「別にいいじゃん。そんな噂立ちまくったって」
よくないだろ。1人と仲良かったらちょっと他の男子は一部を除いて牽制しあうぞ?
しない一部の連中はKYばっかだ。
そして、相手が俺となると、俺も他の女の子たちでハーレムを築き上げることが難しくなる。
お互いに不利益しかないのだ。
「ほ、他の女の子をま、まま、守るためには、わ、わわわ、私が仮に、ユベルちゃんの恋、恋、恋人! になればいい! ユベルちゃんのハーレム計画は私がなんとしてでも頓挫させてみせる!」
なにが彼女をそこまで駆り立てるのだろう。
俺には少し理解できない。
「でもダメだなぁ。ミルクルさん。俺は『教師』で、君は『生徒』なんだ。わかるよね?」
「教師との禁断の恋! なにそれ興奮するんだけど!」
「あぁーダメだ。この人変態だった」
どうせリアルでもそうゆうエロゲやったことあるんだろうな。
なんてことだ、よりによってこの変態が、エロゲの舞台にもなるファンタジー世界に転生するとは。
こうゆう奴らには大抵、常識が通じない。
非常に面倒くさい上に、ほっといたらなにをしでかすかわからない時限爆弾のようなものなので目も離せない。
他の生徒のみんながかわいそうだからな。
「いいじゃん。どうせユベルちゃん、教師でも年齢は同じだから、他の女の子に嫌でも追いかけ回されると思うし。そうゆうの迷惑でしょ? 迷惑よね? おとなしく迷惑って言っときなさい。さあ。私の目が黒いうちに、さぁ」
「女の子たちに追いかけ回される?」
俺の脳内で、俺の二次元嫁達と一緒に海辺で追いかけっこをしている風景が展開された。
「まぁってぇ〜〜〜」「あははは〜、こっこまでおいで〜〜〜」
「なにそれ天国か!?」
「死になさい!」
「うわ危ね!」
ミルクルさんがスキルを発動し殴りかかって来たので紙一重で避ける。
「私は、ユベルちゃんの性格が変わるまで、殴るのを、やめない!」
「なにそれ怖い! 顔の形が変わるまでじゃなくて性格が変わるまでって。脳みそに甚大な被害が出てるよそれ!」
「問答無用! てゆか、なんで避ける!」
「そりゃ避けるよ!」
怖えもん。殴られたら痛いし。
やれやれ、飛んでくる岩石を顔面キャッチして痛くも痒くも無いってのに、一人の細い少女の拳を痛いから怖いからと言って避け続けなければならないとは。
てゆうか、この人の『特別』チートだよね。使用制限ねぇんだもん!
「くっそぉ〜〜、当たらない!」
「てか皆さん! なんで見てるだけなの! 誰か助けて!」
マウントポジションを取られて体が動かせないのだ。
首だけで避けるにも限界がある。
助けと欲しく、少し遠くで戯れていたキャンディーちゃん、アオ、ミドリに視線を向けたが。
「ユベルさんが悪いです!」
《そうだそうだー》
《ボコボコにされたらちょっと改心するかな? マスター頑張って。ファイトだよ》
キャンディーちゃんは肩頬を膨らませぷいっとそっぽを向き、それにアオが便乗し。
ミドリは、なんか不穏なこと言ってる。
「なっ!? ま、まさか、俺に助けは来ないというのか」
「そうよ。このままユベルちゃんを改心させた後、ゆっくりと私なしではいられない体にし・て・あ・げ・る」
「ぎゃーーーーー! 趣旨変わってるよーー! 変態の魔の手にかかるーーー! 見た目六歳のロリッコにいたずらされるーー!」
「み、ミルクルさん! そ、そうゆうのは不健全です! フケツです!」
おぉ、なんかよくわからんがキャンディーちゃんが動いてくれた。
さっきまでやられちまえと言っていたのに。
何故急に助けようという気になったのか……
まあ、その前の『し・て・あ・げ・る』と『ぎゃーーー!」の間にアオがすげえ速度で俺を救出してくれていたのだが。
「た、助かった……」
「ちょっと、アオちゃん!」
《ミルクちゃんにますたーはあげないもん!》
そして今度はアオちゃんは俺の体にのしかかってくる。
何度俺地面に押し倒されれば気がすむんだろう。
《ま、ま、ま、ますたーは! そにょ……あにょ…………アオの……………………ますたーだもん》
や、やばい。なんか知らんがアオちゃんのスイッチが入ってる。
捕食者モードに近い何かを感じる。
なんか、少しずつアオちゃんが俺の体を覆って来ている。
スライムの着ぐるみを着た男の子の図が出来上がりそうだが、なんだろう、なんか危険信号が頭の中で鳴り続けている。
逃げなければ……だが、どうする……
ええい! ままよ!
「『逃亡』・『超逃亡』並列発動!」
AGI最大強化。
最近強くなってきているアオだが、まだ俺の速度にはついて来れまい。
と、思ってた時期が俺にもありました。
全身全霊のスピードで抜け出そうとした瞬間、ギリギリのタイミングで右足の足首を掴まれてしまった。
なんという反応速度。アオちゃんの成長、マスターとしてすごく嬉しい。
なのに何故だろう。素直に喜べない自分がいる。
《逃げないでよ〜ますたー……ますたーは、アオのこと……嫌い……?》
うぐぅ!
悲しそうなアオの声が俺の心の臓をぶち破る。
「そ、そんなことないぞ! 大好きだ!」
《ほんと! よかったぁ〜〜》
そして、再びずももももと俺の体が取り込まれて行く。
先ほどよりも圧倒的に速度が早いのだが……
「ま、まぁまぁ落ち着け」
なんとなく、直感でそうするべきではないかと思い。
俺を取り込もうとする足元のアオを、なでなで撫でた。
《ほにゃ》
反応は劇的だった。
ふにゃふにゃになったアオはズルリと俺から離れ、いつもの形状に戻ったかと思うと。
俺の手にスリスリと自分からすり寄ってくる。
何これめっちゃ可愛いんですけど。
ぱっ。と手を離す
《あぅ》
そして再び撫でる。
《ほにゃあ〜》
前にもこんなことあったな。
ずっとこうしてるのもいいが、そろそろ生徒たちがマジで登校して来ちまう。
その前に聞いておかなきゃならんことがもう一つあるんだ。
かと言ってアオのなでなでをやめると悲しがるので撫でるのはやめない。
それに、今か今かと様子を伺っているミルクルさんを、アオは本能的に牽制してくれている。
素晴らしい。これで話が進められるよ。
「さてウィーアード。もう一つ聞きたいことがある」
「なんですか? リア充爆ぜろとでも言えばいいのですか?」
「ぶっ殺すぞ。ちゃんと話し聞け」
此の期に及んでふざけられるってすげえよ。
「ハイハイ〜。で、どうしましたー?」
「ここの教師でも、最前線に行っていいか?」
ぶっ! とウィーアードが飲んでいた紅茶を吹き出した。
いや、ゲーム時代だと最前線に行くのにランク制限があったし。
こっちでもなんか許可証みたいのがないとダメなのかな〜っと思ってさ。




