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信じられないでしょうけど、これはエネミーを戦わせるゲームです!


「うわぁお。テンプレぇ」


エンジンに向かう道中、山道がある。

その山を越えると、少しひらけた場所に出て、そこから少し行けばはれてエンジン到着だ。


今現在俺たちは、山の出口で木に登り身を潜め。


襲われている馬車を眺めていた。


--- --- --- ---


「ふむ。ありゃ山賊かね」


人気のないひらけた場所で、一つの馬車が数人の山賊に囲まれていた。


「なかなかな異世界テンプレイベントだ。…………助けろってか?」


おいおい冗談だろ? なんでわざわざ危険な目にあってまで、見ず知らずの他人を助けなきゃならんのだ。

そんなのはそこらへんの勇者か聖女に頼め。


《ますたー。……いじめられてる……可哀想》

「だよね! 俺もそう思ってた! 大丈夫アオのためだよぅし助けるぞぅ!」


俺はアオちゃんのためなら勇者にだってなってやるさ!

待っていろ俺の勇者ロード! そして、俺の勇者道に立ち塞がる最初の犠牲者よ!


「『ジャンプ』発動!」


パァンッ! 破裂音に似た音が木から放たれ、一瞬ぶれた俺の体は木の上から消失する。

跳躍力激強化アビリティ『ジャンプ』。レベルは9。


一回の跳躍で、馬車のある位置の遥か上空に辿り着いた。

あんまり好きじゃないんだけどねこのアビリティ。

え? 何故かって?

このアビリティはただ跳躍力が上がるだけで、コレ自体に衝撃緩和的な効果は一切ない。


ここまで言えばわかるだろ? クッソ痛いんだよコレ!!


着地ミスったらと思うと、背筋がゾッと――


《ますたー。すごーい》

「あ、心臓が」


ビクンッと一回の躍動を残して停止してしまった。


《ちょ、ま、ますたー? ますたー?》


ヒュゥゥゥゥゥウ――――





「オラオラオラ! さっさと出てこ―――」


――――――ズダァンッッ!!!


「うぎゃぁあ! いってぇぇぇぇええええ!!!」

《良かった。ますたー生きてた》


頭がぁぁぁぁぁぁ……

後頭部から行ったぞ? これ大丈夫かな。記憶喪失とかになってないよね。


此処は何処? 私は誰……って、あれ? いつの間に気を失ってたんだ?

高所恐怖症じゃないんだけどな俺。なんかあったっけ?

おっとっと。そんなことしている場合じゃねえなこりゃ。

あたり騒然としちゃってるよコレ。


「いってて。あー、馬車の方。あんたら大変だな? そこのぉ、護衛騎士様? 良かったらお助けするけど?」


頭をさすりながら、めんどくさいけど仕方なく助力を申し出る。


「馬鹿者! 子供が首を突っ込む問題ではない! 早く逃げろ!」


馬鹿者はどっちよ……。今俺落ちてきたの見たよねあんた。混乱しすぎて状況理解難しいですか?


「あー、逃げようとしても多分もう遅いっすね。なんかこのおっさん達、大人気なくも数人でエネミーけしかけて、今にも攻撃してきそうなんですもん」


俺が一人一人指差して軽く煽ってみると、扱いやすいというかなんというか、山賊達が口々に喚き始めた。


「ふ、ふざけんな! ガキが舐めやがって」

「これは、社会の厳しさってやつを体に教え込まないといけねえみたいだな」

「あーあー可哀想に。教育された時にはもう、死んじまってるなんてなぁ」

「おい。おいおい見ろよ! スライムだぜ? 坊や。スライムテイムしてテイマー気取りかい? いや、テイマーごっこかな?」

「ぎゃはははははは」


…………んだと?


「はぁ……」

「お、どうした? ビビっちま―――」

「一度だけ忠告してやる。よく聞け」


ゆっくりと息を吸って、辺りによく通る声で宣言する。




「今すぐ、三秒以内だ。三秒以内に有り金全部吐き出して、装備全部外して全裸で泣いて命乞いしながら、三回回ってワンと吠えるってんなら逃がしてやるけど。どする?」




しーん。うわ、無視かよ。

確かに社会の厳しさを体に教え込まれた気がする。やるな。


「はーい、いーち、にー……」

「な、舐めやがって! ぶっ殺してやる! てめえら!」


あれあれ。すっかり戦闘モードだよ。なんでだ?

俺がここまで情けをかけてやったというのに。やれやれ、バカな奴らよ。


「……レッサー・スコルピオン。ミニ・ウルフル。スパーク・フロッグ。それと、ロウディ・ボアか」


ロウディ・ボア以外はランクの低いエネミーばっかだ。

リーダーのエネミーかもな。


《ま、ますたー……アオ》

「いや、今回は見てろ。相手の目的は俺だし、最初は見て覚えた方が効率がいいし、俺にも都合がいい」


主に、アオにかっこいいところを見せたいという都合がな。


あと、こいつらを。


アオをバカにした罪で、地獄すら生緩い絶望のどん底に叩きおとしてやらなければならないからな。


「おいおい。はっはっはっ。こりゃ傑作だ。一人でやるみたいだぜ?」

「バカが! さっさと死ねぇ! 掛け金レイズ! ベット、5000ゴールド! 【 ランページ・クラッシュ 】!」


こりゃまたちゃちいアビリティを……


ただ一直線に軌道修正すらできず突っ込むだけのクソアビリティじゃねぇか。

しかも5000もかかるとは。


ま、それなりにSTRとAGIに補正がかかるけどな。


「避けりゃ一発だけど。そんなことしても意味ないし……」


スッと右手を前に出して。


ズガァア!!


牛の顔面を鷲掴みにした。


「ブッ、ブボッ! ブボッ!」

「あ、こら、暴れるなって、あー、ちょっと!」


簡単に振りほどかれ距離を取られた。

あんれま。腕力値はSTRに依存するからな。しょうがないか。


「う、受け止め……片手…………て、てめえら何ぼさっとしてやがる! 全員だ! 全員で攻撃しろ! HPを削りとっちまえ!」


リーダーの叫び声に、ようやく再起動した山賊エトセトラ達が掛け金を吊り上げ始める。

……いいねぇ。


「【 ファイア・ファング 】!」

「【 ポイゾン・ポイゾン 】!」

「【 ピリピリ・タン 】!」


火をまとった爪が、毒の塊が、伸ばされた舌が

三方向から俺に向かい。直撃した。


「あぁ……!」

「そこの女騎士さーん。別に心配する必要ねぇよ〜。あんま痛くね〜」


派手に巻き起こっている煙を払ってひらひらと手を振る。


「な!」


女騎士さんの驚愕の声いただきました。


「ひ、怯むなぁ! 強がっているだけだ! なにか、なにか小細工しているに違いねぇ! 休む暇を与えるなぁ!」


リーダーの怒声が響き渡り、次々と俺に攻撃が殺到する。

一回の攻撃で、12くらいか。思ったより減らないもんだな。HP。


そして数分後。


「はぁ……はぁ……」

「あ、ありえねぇ……」

「嘘、だろ……」


おお。山賊達はようやっと俺のこと怖がってくれたみたいね。

でも、足りない。

俺が欲しいのは、お前達の絶望だ。

恐怖を、絶望に染めてやる。


「『逃亡』発動」


シュッ……ザァァア!!


「やぁ」


AGI増強アビリティ『逃亡』。レベルは15。

元の数値に15000が追加された素早さで、瞬間的に山賊の前にダッシュして急ブレーキ。

明るく挨拶を交わし、少しバックステップを踏む。


山賊達の前に待機していたエネミー達に流れるように触れて、一言。



「反射」



爆音が吹き上がり、その場にいたエネミー全てが吹き飛んだ。


俺が食らった衝撃を全部足し算して、全員まとめて反射してやった。

『反射』。俺が食らった衝撃を一度放出するまで貯め続け、そっくりそのまま相手に跳ね返すアビリティ。

もちろんアオには当ててない。対象は決めることができるのだ。


これが俺の戦闘スタイル。

俺の偏りすぎて硬すぎる防御力によりダメージは抑えられ、しかし衝撃はそれに関係なく溜め込まれ、少し減ったHPも、俺の固有(ユニーク)アビリティ『回復』の効果によりすぐに元に戻り、溜めに溜め込まれた衝撃は相手を容赦なく消し飛ばす。


つけられた名は『人間要塞』


「回復のアビリティレベルは25。一秒間に2500回復する計算だな」


ん? 意味がわからないか?

つまりお前らじゃ。俺のHPを削り切るなんて無理ってことだよ。


俺のHP削り切りたいんなら、【 絶対なる1(ナンバーワン) 】さんか【 反則の大泥棒(ジョーカー) 】さんぐらいの奴を連れてこないと無理だぜ?

そんでこの後に【 最弱な最強達(スライマー) 】と続けば、プレイヤーランキングトップスリー勢揃いだ。


ジョーカーさんはともかく、ナンバーワンさんには勝てる気がまったくしないから。ありゃ変態だ。

なんせ一人で俺のメインスライム達最大で二体まで相手どったからな。

エネミーなしの、本当のPVPじゃ、絶対に勝てない自信がある。実際勝てなかったし。


トップスリーの三人だけが出場できる限定イベント、楽しかったなぁ。


「あ、ちょっと思い出にふけっちまったな失敬失敬。それでは最後に。言い残すことはあるか?」


ぽきぽきと指を鳴らし、にっこりと笑った。


山賊達が揃って顔を青くさせる。

なんだって? ん?


「もう一度、言ってみ?」

「……は、はい?」

「スライムが、なんだって?」

「あ、いや」

「ん?」


スライムをテイムしているから、なんだって言うんだ?


「……えっと、ですね……その、……スライムは、えー、 ょゎぃから……」

「聞こえないなぁ?」


よ? わ? い?

はっはっは。最近の日本語は難しいなぁ。

意味が、全く、理解できないよ。

はっはっはっはっはっ。


《ますたー、かっこいい》

「だろう! でもこんな弱い奴ら、アオにだって倒せるぞ? やってみるか?」

《弱いものいじめ、メッ》

「聞いたか貴様らぁ! アオの慈悲深きお言葉が! 俺の気は済んじゃいないが、アオが言うからもう一度だけチャンスをやる! さっさと消えるんだな! 俺の気が変わらないうちに……」


うーん、とは言ってもなぁ。


「なぁアオ。確かに優しい気持ちは大切だけど。何でもかんでも、弱いものいじめと決めつけちゃあダメだぞ?」

《なんで?》

「相手は少なからずこちらを殺すつもりで来ているからな。こいつらはどうか知らないが、そうゆう奴は大概執念深くて、最後の最後でも、気を抜いたらその隙を狙われる。自分が命を狙われている以上、こちらだってそれなりの対応をしなくちゃならない。わかったか?」

《うん。わかった》

「よし。いい子だ」


ちょっと力が入っていたらしく、撫で方が少し乱暴になってしまった。

なんか毎回説教臭くなっちまってんな。

でも俺の人生談(ゲーム)から得た知識は、アオのためにたるならなんだって教える。


「ま、今回だけはアオを立ててやろう。おい、お前ら。最後に、アオに謝るぐらいしてどっか行け。それと、あんまりこうゆうことすんな。それなりにいいテイマーなんだから。『アレス』って国の闘技場で人を募集しているはずだ」

「「「「は、はい」」」」


一人一人謝罪の言葉を述べさせて逃げるようにどっか行った。

実際逃げて行ったのかも。主に俺に対する謝罪が多かったのは何故だろう。解せぬ。


うむうむ。満足。




あ、やべ。


馬車の人たち忘れてた。



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