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信じられないでしょうけど、断じて変態ではないんです!

「失礼しま〜す、っともういたのかウィーアード。悪い、待たせたか?」

「いえいえ〜。そ・れ・よ・り〜、聞きましたよー! まさか、早速授業をしてくれるとは。ヤハリ、私の目に狂いはなかった! ユベル氏ならできると! あ、コチラ資料です」

「よく言うよ。筆記はやんなくていいから実技でって言ってたあの口はどこ行った」


授業を終わらしたあと、休み時間に大量の子供達に囲まれ、やれ校長と戦ったのかだの、やれ勝っただの負けただの質問責めにされ。

解放されたかと思ったらおかっぱ教諭に噂を広められ、是非ウチでも授業を、と引っ張りだこに会っていた。


ようやく今日の授業が終わって、夕方になったから多目的室に戻ってきたのだから。

多目的室では既にウィーアードが待機しており、開口一番そんな寝ぼけたことをぬかしやがった。


「もう校内中のウワサですよ〜。凄いですね〜。あー、私も聞きたかったなぁー。ユベル氏の授業! そりゃもう凄い評判いいみたいじゃないですかー」

「俺は至極当たり前のことを詳しく教えているだけだ。一度戦えばわかることばかりだよ」

それ(・・)がどれだけ大切なことなのか、ユベル氏なら知っているでしょーに。一度戦えばわかる。でーすが、その一度の戦いで、知らなかった情報のせいで万が一命を落としたとしたら? そんなことが日常的になりかけている、それがテイマーの学校です。一度戦えばわかることを、『戦う前』に知ることができるからこそ意味ある」

「そうだな。全くだ」


よくわかってるじゃないの。

お前、前世俺と同じ世界で生きてたら、いいEGOプレイヤーになってると思うよ。


「だからこそ、学校(ここ)があるんだろ」

「テイマーでは、子供の死亡率が圧倒的に多いんですからね。テイマーの憧れが強ければ強いほど、危険度は増すばーっかり。安全性はち〜っとも上がりません。だからこそ、安全性を上げるためにここで授業を受けてるんですよー」


うんざりしたかのように過剰すぎるほどソファでのけぞるウィーアード。

こいつのことは本当によくわからん。そもそも人間なのか?

俺の個人的な見解で申し訳ないが、お前を生物学上人間にしたくない。

こいつと同じ種族とか、俺まで変態みたいに聞こえて嫌だから。


「まぁ、授業はそれなりに新しい体験で楽しかったよ。ほい、これで全部か? 書き終わったけど」

「早いですね。ナニナニ〜、親、知らない。出身国、不明。年齢、六歳。その他もろもろ……マァいいでしよー」


えっ? いいの?

果てしなく空欄だらけだけど。

かけないんだからしょうがないけどさ。こんな細かい質問にまで設定を考えてない。

絶対に何処かにほころびがあるからだ。


「あ、それでいいなら今日の授業料とか貰えるのか?」

「あぁ、給料は日給制じゃないんですよ」

「短期雇用なんだから、いつまでいるかわからないんだけど」

「今月の終わりまではいますよね」

「えーっと、ちょうど一週間後か。そうだな、じゃあその日に頼むよ。明細書もちゃんと渡せよな」


ふあぁぁ……さて、飯食い行ったあとは寝床の確保か。

教室を出るところで、また思い出したことがあるので振り返る。

少しデジャブを感じながら聞いてみた。


「そういや、俺の寝床ってもう決めてくれた?」

「あぁまだですね。夜になれば警備ゴーレム以外いなくなりますし、変な場所でなければどこでも構いませんよ」

「……念のため聞いておくけど、変な場所って例えば?」

「女子更衣室とか?」

「いっぺん死んでこい」


教室のドアを叩きつけるように閉めた。

がごっ! と音がなり外れたが、無視しておく。


「よーし。王都到着記念アーンド今日一日お疲れ様でしたパーティを開催するぞ! 飯だー!」

《《おー!》》

「よっ」


気分が良かったので、三階だが構わず窓から飛び降りて地面に着地した瞬間走り出す。

校門は微妙な開き方をしており、開けるのも面倒なのでひょいっと超軽く『ジャンプ』を発動し飛び跳ね通過する。


《ま、まままますたー! スピード! スピードおと、落としてぇ! うぷっ……酔った……》

「わー落ち着けミドリ! わかった! スピード落とす! 落とすから!」

《ねーますたーお腹すいたー》


なんだミドリって乗り物弱かったのか。


「前はそんなことなかったよな」

《レベルが上がったせいで、感覚がより敏感に……うっぷ……なったせいだと思う……》


あぁそんなこともあるんだ。アオがないから知らなかった。

酔いやすいのか。ミドリが悪いことしたらお仕置きに使えそうだな。

できればお仕置きなんてしたくないんだけど、ダメなことをしたらちゃんと叱って上げるのが、本当の愛情ってもんだ。


とはいえ今はお仕置きではない。

このまま続けるのはただの嫌がらせなので、急ブレーキを踏んで近くにあった公園に飛び込み、ミドリを取り出してしばらく撫でていた。


--- --- --- ---


ミドリがおさまるまで撫でて、完全に落ち着いたところでベンチから腰をあげる。


「んじゃ、引き続きどこで飯食うか考えるか」

《もうすっかり夜だね。お店やってるのかなぁ》

「心配しなくていいよ。店によってはこれから始まりってとこもある」


でも流石は王都だな。

今7時くらいだが、東京の夜みたいにキラキラギラギラしていて、活気は未だ衰えを見せない。

だが食いしん坊なのはわかるが、アオよ。ミドリのことも心配してやってくれ。

ほら、ミドリが泣きそうな目で睨んでるじゃないか。


「しょうがないな。ほら、よしよしよしよしよし。これで機嫌直せ」

《あぁー! ミドリちゃんばっかりー! ずるいー! 差別反対!》


失礼な。何が差別か。

俺が差別なぞするわけがなかろうぞ。みな平等。

ラブアンドピース万歳。


「んじゃアオ隊員。ニオイサーチャー発動。美味そうな匂いを探せ!」

《らじゃ》


ミドリを頭に乗っけてアオを抱え、適当につくったサーチャーを発動し、匂いを探らせる。

アオの鼻はめちゃくちゃ発達してるからな。俺がアオをかかえて歩きながら、アオはすんすんと鼻を鳴らし続ける。


そして、大通りを歩くこと20分。


《ますたー》


アオのサーチャーに反応する匂いが探知された。


「どうしたアオ隊員」

《見つけたよ〜。あそこのお店すごく美味しい気がするの〜》

「おぉ、どれどれ」


アオが指し示したお店は、言ってしまえば『焼肉食べ放題』だった。

と言っても肉は異世界産だし、所々で代償なれど違いはあるが。


「焼肉か。うん、いいんじゃないか?」


アオもミドリも肉好きだし。良いと思う。


「食べ放題とは、潰れたなこの店……」


すまんな。名も知らなきこの店の店主よ。

今君の城を丸ごと喰らい尽くす天敵(ほしょくしゃ)を連れて行くよ。


「うん?」


店に入って「イラッシャイマセ。オセキヘゴアンナイイタシマス」と片言で喋る機械に接客してもらっている時。それは目に入った。


『大食いチャレンジ! 超ビックりオーガーステーキ。時間制限内に食べ切れたらタダ! 賞金10万ゴールドが贈呈されます。食べられなかった場合はお代をいただきます。チャレンジャー求む!』


という張り紙を。

でかしたアオ。

確かに、すごく美味しそうだ。

こんな美味しい話があったとは、ふははっ、メシウマだぜ。

席に座ったところですぐに注文をしようとベルを鳴らした。


《ますたー。早いね》

「この店で一番うまい肉をアオ用に頼もうと思うんだけど、嫌かな?」


キラキラと星すら出しながら、にっこりと優しい笑みをアオに送った。


《嫌じゃないです! なんでも食べます! ますたーがくれるものなら石でも岩でも地面でも美味しいです!》

「いや、地面食べるのはエンジン国のダンジョンだけにしといてくれ。とゆうか地面は食わないで」


俺だって地面よりは美味しいもの作れる気がするよ。

とゆうか地面なんか勧めないって。


「ゴチュウモンヲドウゾ」


どうせなら俺らのも一緒に注文しちゃおう。メニューをパラパラと読む。


「グレヌミート、ガザアリの肉、サダマネミート、カタマミートを一皿ずつ。飲み物はタートルコーラを三つ。あと、大食いチャレンジの超ビックりオーガーステーキを一つ。あ、チャレンジするのはこのスライムの子ね」

「カシコマリタ。ショウショウオマチクダサイマセ」


うむうむ。


「あ、勝手に頼んだけど、これは食べ放題だから。このメニュー表に書いてあるやつならなんでも注文して良いぞ」

《食べ放題ってなに?》

「そうだな。簡単に言うと、たくさん食べてもお金は一定でいいと言うか。うーん。説明しづらいぞ」


どう言えばいいんだろうか。

いい言葉が思いつかない。


「そうだ。例えば、アオが肉を50皿食べたとするだろ?」

《うん》

「で、ミドリが肉を10皿食べたとする」

《うんうん》

「でも、支払う料金は二人とも同じだ」

《《えぇー!》》


おぉ、俺も食べ放題に初めて来た時はこんな反応をしたっけ。

無理に食べようとしてトイレに駆け込んだって言う黒歴史があるけど。今では思い出だ。


「つまり、たくさん食べたほうがお得ってわけだな」

《いっぱい注文する!》

「よっしゃ! そのいきだ!」


そのいきで、軽くチャレンジ肉を全部平らげて欲しい。


「お待たせいたしました〜」

「あれ。機械じゃないんだな」

「チャレンジを受ける方の接客は人がすることになってるんです。今回のチャレンジはお坊ちゃんですか?

「お坊ちゃんって……いや、こっちのスライム」

「そうでしたか。では、エネミー用のこっちの大きいほういいですね?」


あぁなんだ。人間用とエネミー用で別々なのな。

確かに言われてみればそうだ。大きさも胃袋も違うわけだからな。

エネミーのみ、大きさに制限があるのはそのためだな。極端な話、ベヒモスとかにこられたらたまったもんじゃないだろう。


今チャレンジを受けようとしているのは、それ以上の化け物だが。


チャレンジ肉と一緒にトレイで持ってこられたら肉たちを適当に網の中にぶっ込む。


「これが何百個も食べられれば、大金持ちっすねー」

「はははっ。できたらですけどね」

「はっはっはっ」

「準備はよろしいですね。では、大食いチャレンジ! スタートです!」


ウエイトレスのお姉さんがタイムウォッチをカチリと押した瞬間、礼儀正しく大人しく、テーブルの上に座っていたアオが捕食者となった。

グパァ! と開けられた大口はでかい塊肉を一気に頬張り、皿の上からまるで手品のように消してしまった。


アオはガリ、ボリッと骨ごとゆっくり咀嚼して、ごっくんと飲み込んだ。


《美味しい〜》

「ほいクリア。で、いいんだよな?」


固まって動かなくなったウエイトレスさんに声をかけて強制起動させる。


「は、はい。タイム……16秒。最高記録、おめでとうございます…………」

「はいはいありがとう。ん? なにボーってしてるんです? 注文」

「は、はい。ご注文をどうぞ」

「お代わりだ。じゃんじゃんチャレンジもってこい」


ウエイトレスさんは顔を真っ青にさせながら「カシコマリタ」と機械のように言い残して戻っていった。


ミドリがきゅうと可愛らしいお腹を空かせた音をならせたので、いい感じに焼けた肉を網から取り出しタレをつけて食べさせてやった。

アオがまたごねたので、アオにも食べさせてやる。


アオは幸せそうだし、まだまだ祭りは終わらせないぜ。


--- --- --- ---


《はぁー。美味しかったぁ〜。幸せ〜》

《うぷっ……ボクはちょっと気持ち悪い……》

「食べ過ぎだ。まぁ幸せだったけど、100パー出禁だろうなー」


ふはははははっ! がっぽがっぽ稼がせてもらったぜ!

テンションがバカになりかけている。食後の運動として『逃亡』を発動させながらダッシュする。


「よっ! ほっと! あらよ!」


建物を障害物に見立て、飛んだり回ったり跳ねたり。

ちょっとしたアスレチック気分で気分がいい。


あっという間に学校に戻ってきた。

校門を飛び越え、ピタッと着地。

決まった。


《ま、ますたー……ひどい……ひどいよぉ……》

「え? どうし…………あ! ご、ごめんミドリ! 大丈夫か」

《うぅ……ひっく……うぐ……えろろろろろろろろろ》

「あああああああああああああああああああああああ!」


絶叫を上げながら、内心後悔する。

ほんとにごめんよミドリ。わざとじゃなかったとはいえ、腹一杯ですでに気持ち悪い時に。

完全に俺のせいだ。泣かせてしまって本当にごめん!


--- --- --- ---


《うぅぅ……ひっく……ぐすっ……うぇぇぇん……》

「ごめん」


泣きじゃくるミドリに校庭のど真ん中で土下座をする。


《ますたー……》

「本当にごめんなさい! 乙女の心を傷つけてしまって、この罪はいかなる行為でも受け止め償う所存でございます!どうかなんなりと!」

《ますたーがそうゆうこと言ったちゃダメでしょ。ミドリちゃんは私が慰めておくから。はい、替えの服。ますたーがいつまでもそのままじゃ、ミドリちゃんだって泣き止みたくても泣き止めないでしょ》


確かに、自分のピーッまみれの人間を見たらショック受けるわな。


「わ、悪い。すぐに戻ってくるから」


急いで構内に入り、さっきウィーアードに教えてもらった男子更衣室に向かう。


パーカーは自動洗浄があるからいいけど、いい機会だしこの初期装備は処分するか。

売れる気もしないし、処分でいいだろう。


王都で装備を買い揃えるか。


「おっと。更衣室ここだな。さっさと着替えないと」


驚いたことにそんなに臭わないけど、とりあえず後で風呂に入っとこう。

服を抱え更衣室の扉を開けた。


「え?」

「え?」


そこには、先客がいた。


それは別にいい。俺はよくわからないが、この時間にもいる人はいるのだろう。


だが、その人が問題だった。

たおやかに実った、二つの双丘。きゅっとひきしまったボディ。すらっとしたお尻。腰まで伸びる紫色の長髪。

服をめくり上げた状態で固まっているその人は、なんと女性だったのだ。


「あ、え、ちょ」


ダラダラと汗が流れ出す。

いやいやいやいやいやいやちょっと待て。覗きじゃないぞ、だって。


「ここ、男子更衣室ですけど?」


とりあえず忠告してあげた。

すると女性がようやく動きを見せた。


「ここは女子更衣室だよ!」


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