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信じられないでしょうけど、乱入初授業です!

「教員?」

「えぇ」


期間限定、短期雇用みたいなもんか?

アルバイトじゃねぇんだから。


「常識的に考えてなに言ってんのかわかんねぇ。なに言ってんのお前」

「いずれこの国を出るという事デーしたから? その期間中に少しだけ、教員というものを味わってみては、ト、そーゆうことデスねー。教員をやってみたいと前言ってましたし、ドデスー?」

「ふむ」


確かに思っていた。

でも、少しの間とはいえそんなことをやって、何か問題でも起こしたら嫌だしなぁ。


「あ、ちゃんと給料は出ますのでそれも考慮の一つにしていただけると」


金はもらえるわけだ。

それは中々美味しい条件だな。それを飲めば、無償で寝床も確保できるし。

うむ。悪くない。


「だけど無理だな。さっきも言ったけど、どんなことを教えるのかさっぱりわからんし、教員免許だって持ってない。そんな奴が教員やってたらこの学校の評判悪くなるぞ」

「『(ゴールド)』と『力』があれば、その人は教員できますよ。金は正義デース!」

「そんなゲスみたいな理論はやめろ! 金が正義だろうがなんだろうが、それがどう教師に結びつくんだよ」


よくわかんねぇんだけど。


「ここはテイマーの学校デスからねー。筆記の他にも、実技やその他もろもろにも力を入れてまして。それでちょちょいと、ユベル氏のご指導をお願いしたいなー、と」


指導て、なんだ? 俺のイタクサイセリフ集使って子供達に喝を入れろ的な?

いや、指導ってことは戦い方とかを教えるのかな?


「それこそ無理だ。俺みたいな戦い方をできる子なんてまずいないし。しようとしたら死ぬぞ」

「ユベル氏みたいにしてくれー、とは誰も言ってませーんとも。子供たちの戦い方を見て、そのつど、ユベル氏が思ったことを伝えてあげるだけでいいんです。どです? 簡単でしょ?」


言うほど簡単じゃねぇよ。

思ったことが間違っていることだってあるし、俺が言うと理屈が欲しくて長ったらしくなるし、子供にとって苦痛な気もする。


「強くなりたいと言う気持ちは、どの学校にも負けておりませんともー。その程度で折れるのなら元々やる気のなかったということです。教員の資格は免許なんぞより、ユベル氏ならできると思った私の勘の方が全然頼りになりますよ〜」


ふうむ。そこまで言われると、少しだけやって見たくはなるな。

お前の勘が頼りになるかどうかはわからんが、取り敢えず話はのませてもらうか。

そんで、ダメだったらヒノデさんとかが止めてくれるだろう。


「その条件。のんだ」

「ふっふっふっ。ありがとうございます。デハ、書類を作ってもらってくるのでー。夜にまたこの部屋に来てくださーい。それまではこの学校を探検し、少しでも多く知ってもらえたらなと思いますね」


おぉ。それは嬉しい。

ゲーム時代にはなかったのか、王都にこんな大きな学校があったなんて知らなかったからなぁ。

つまり、未だ開拓されず謎に包まれたマップというわけだな?


「よし。アオ、ミドリ。行くぞ」

《ま、ますたー、燃えてるね》

《おぉー。ますたーやる気だー》


まだ誰も知らない物を、俺が解明して行く。

俺はまたしても、時代の先導者となるのか。


おっと。忘れてた。


ルンルン気分で教室を出ようとしたところで、一度振り返り聞かなければならないことを聞いておく。


「お前さ。昔ドラゴンのエネミーをテイムしていたテイマーを知らないか? えっと、特徴的には背が高くて、エンジン国の『迷い精霊の巣』というダンジョンで、テイムしていたドラゴンと別れたっていう。そんな人を探してるんだが」

「さあ〜? 私の記憶の中にはありませんねー」

「そうか。なにか情報が手に入ったら教えてくれ。それじゃ」


まぁそうだろうな。

だがこの国は世界の中心。

情報だってそれなりに集まってくるはず。それに期待するか。


俺は教室を出た。


--- --- --- ---


カツーン、カツーンと、俺が廊下を歩く音のみが響いている。

あれほど騒がしかったというのに、静かなもんだ。


「……授業中かね」


邪魔はしないようにしないと。


(アオ。『暗殺』発動しといて。ミドリは、俺のパーカーの中に入ってな)

《はーい》

《うん》


よし。アオの気配が面白いぐらいに感じとれなくなった。

肩に乗っているということをうっかり忘れてしまうほどだ。

レベルの力って偉大だなぁ。


「さて……『隠蔽』・『隠密』並列発動(マルチアクティベート)


よし。俺の存在が隠蔽され(透明化に近い)、隠密の効果で気配を消したので誰にも俺がいることはわからないはずだ。

と言っても、今俺に触れている存在にはバレているけどな。

そういうアビリティだし。


「んじゃ、校内巡りスタートだ」

《おー》

《ボク、ちょっと見づらいよぉ。パーカーのチャック下ろして〜》

《ミドリちゃんミドリちゃん。あんまり外に出ると、ますたーが今見えなくなってるから。ミドリちゃんだけ浮いてるように見えちゃうよ?》

《あ、そっか……》

「大丈夫大丈夫。俺の体に触れている者は全て隠蔽状態にかかるから、実際アオとミドリは俺のことが見えるだろ? これは隠蔽状態だと、隠蔽状態になっているやつも見ることができるっていう裏設定に基づいているのだよ」


『隠密』や『暗殺』に比べて『隠蔽』は詰めが甘いけどな。

ただ見えなくなるだけだから『探知』使えば青い点が出るし(隠密だと、レベルが近ければ探知されないことがある)。

足跡も足音も消えないし、気配もある。

気配があるせいで『看破』とか使われちゃうから。


「ミドリも見えなくなってるからパーカーから飛び出しても平気だよ。その代わり俺には触れててね。ミドリの気配までは消せてないし隠蔽状態が剥がれるから」

《ますたー。喋っちゃったらバレちゃうよ?》

(おっとそうだな。通信で話すとしようか)

《ますたー。あそこ子供がいっぱいいるよ〜》


教室だな。さて、ちょっと授業内容でも見させてもらうとするか。

どんな内容を教えてるんかね。


(『交換』発動)


俺の手のひらに水球のようなものが出現し、そこから巻物のような大量のアビリティの名が書かれたものが飛び出してくる。

そこに書かれている『聞耳』アビリティをタップし、次いで出てきた俺のステータススクロールに書かれている『イカサマ』をタップする。


『『イカサマ』アビリティを削除し、『聞耳』アビリティを取得しますか? 必要金額1万ゴールド』


という表示が出るので、下に出現したはいを押す。

いいえの表示が消えて、はいの表示が点滅し強調され

俺の『イカサマ』の文字がじわじわと歪み、『聞耳』に書き換えられた。

これで交換完了。プレイヤーバンクの数値が減ったが些細なことだ。


これが『交換』の代償。

獲得しているアビリティの『消滅』と、その交換に見合ったゴールドを請求される。

消滅したアビリティは交換の中には行かず、文字通り消えてしまう。

二度と獲得できなくなるわけではないから、もし欲しかったらまたイカサマしまくればいい。


(さて、ウィーアード戦で上がった、レベル10の聞耳アビリティでいざ。授業内容を聞かせてもらおうか)


そっと壁に耳を当てて、中の内容を聞き取る。


『では、これから《Cluster Wyvern》について勉強していきましょう。教科書20ページを開いてください』


あら? 勉強ってそっち? テイマーとしての勉強ってことか。

あー、あー、成る程ね。テイマーになりたければ、まずはエネミーのことを知らなければならない。

かと言ってこの世界にはネットやらウィキやら、公式情報やらがないからこうして勉強しなければならないわけだ。


『このエネミーは集団で行動します。主に空を飛んでいますが、食事を取る時は決まって地面に降りてきます。その時を狙って、戦いましょう。ですが、このエネミーは『連結』というアビリティを持っており、集団を相手にするのは危険です。なぜなら、お互いに行動を教えあいながら、攻撃を仕掛けてくることができるんです。その理由は『連結』の効果、『脳内を連結し、意思を送る』というものです』


ん?


『そしてこのエネミー。手強い上に『竜種』でテイムしづらいのですが、集団で戦うエネミーのため個々では弱いです。テイムにはお勧めできません。効率が悪すぎます。『竜種』をテイムしたというブランドが欲しい貴族たちがよく護衛を引き連れて』

「ちょいと失礼」


色々と我慢ならなくなったので、『隠蔽』と『隠密』を解除して教室に乗り込んだ。


「どうしました? 今は授業中ですよ?」

「違う。ちょっと貸してみろ」

「は?」


おかっぱ頭の女性教諭から黒板を指し示すあの伸びる棒を奪い取る。


「ちょ、ちょっと」

「あんたの教えは間違ってる。もっと大事なことを教えてやらないでどうするんだ。命がかかっていることなんだぞ」


なんだあの上っ面だけの授業は。見てられん。

呆然とする生徒達を眺めてから、強引に授業を開始する。


「いいか? まず、クラスター・ワイバーンの固有(ユニーク)、『連結』についての話だが、このアビリティの最も怖いところは、複数で同時に送受信を送ることでも、遠方からでも届けられる通信なんかでもない。そんなの、クラスター化していればいくらでも送受信できるんだ。確かに、集団でお互いの意思疎通を行う巧妙な奴らの狩りは脅威だが、本当に恐ろしいのは『合体効果』だ。奴らが複数でいるのには意味があり、強敵を目の前にすると、自分自らを強化パーツとし、その群のリーダーと『連結』、要するに合体しとんでもない力を発揮する」


クラスター・ワイバーンの絵をペシペシ叩きながら次付きと言葉を発していく。

一度言葉を切り辺りを見回すと、皆急いでノートを取り始めた。


「ま、待ちなさい。そんな正しいかもわからないことを言わないで。そんなの教科書には……」

「教科書をただ朗読するだけなら教師なんていらないんだよ。教えることはなんだ? それを考えてから言葉を発しろ。とにかく、あんたは黙ってな」


ちょっと教科書を借りるといって、ワイバーンについて書いてあるページをパラパラとめくった。


「そろそろノートを写したか? では続きを。合体の際には自らのステータスを一部譲渡する効果を持ったパーツに変化することができ、強敵を狩ることが出来るのだが。もちろんそれにはデメリットがある。パーツ化した仲間は元に戻るのに数週間はかかり、合体効果には制限時間があるため、ただ重いパーツを全身につけただけのワイバーンとなる。動きが鈍くなった上に、強化が終わった後なら尚更、変化に体が追いつかず簡単に討伐できる。ここがポイントだ。目的がテイムであるのなら、強化パーツをつけたままテイムすることをお勧めする。なぜなら、強化パーツごとテイムができるからだ。そしてテイムが成立すると、今後自分の意思で『合体』の力を使うことができる。非常に優秀なエネミーだ」


単体では弱い? 複数テイムするのはほぼ不可能? だからテイムはお勧めしない?

はぁ、全く話にならん。

この世界では、エネミーに関してはゲーム時代となんの変化も見られない。

さっきも言った通り、テイマーになりたければ、エネミーを知らなければならない。


ガチ勢のEGOプレイヤーなら、暗記してるぞ? 普通。


「し、質問いいですか」

「名前がわからないが……どうぞ」

「合体している時は強くなっているんだよね……効果が切れるまでにやられちゃったらどうすればいいの?」

「いい質問だ。そう、問題はそこ。強くなってしまっているため、効果が切れるまで耐えきらなければいけない。ならばどうするのか。最も簡単な方法として、『エイブラー』という機械を腐食させる薬をぶちまけてやればいい。奴らはその匂いが大の苦手でな。鼻を押さえてもんどり打って戦闘どころじゃなくなる上、逃げることすらできなくなるから、それだけでも弱っているのだが、テイムはそこまでやりやすくならないので、ちゃん攻撃は加えること。近寄りすぎないほうがいいな。リミッタ解除してゴロゴロ暴れてるから。で、それで時間を稼いだら、アビリティ効果が切れる。切れたらテイムのチャレンジだ。ワイバーンはこの教科書に書いてある通り『竜種』。テイムはしづらいが、テイムできればとても頼りになる。そこは君たちの頑張りどころだ」


実際、クラスター・ワイバーンの進化形態をメインにしているプレイヤーで、ランキング上位の人はいたからな。

何事も頑張りようだよ。


皆、必死でノートを取っている。

俺に座らされた女性教諭もノートを取っていた。


「……」


まぁいいけどさ。


「せ、先生。あの、質問なんですか」

「あいよ。なに?」


俺の授業はまだまだ続く。



主人公めっちゃ頭いいです。

なぜなら彼はEGOプレイヤーで、ここはゲームとは違うとはいえEGOの世界なのだから。

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