信じられないでしょうけど、多目的室で説教です!
多目的室みたいな場所をまで先導され、柔らかいソファに座らせてもらいお茶まで出してもらった。
なんか、至れり尽くせりだな。
「まぁゆっくりしてください。少し聞きたいことがあるのですがいいですか? あぁ、もちろん言いたく無いのなら言わなくても結構です」
「ここまで来たら別に隠すこともないよ。じゃんじゃん聞いてくださいな」
彼女の俺を見る目が超めんどくさいがな。
なんだろう、今まで向けられたことがない目で、よくわからないんだが。
別にウィーアード関連の話だろうし、その辺りなら言ってもいいとは思ってるけどさ
何かされそうでめっちゃ怖いんだけど。
お茶を鑑定してみたけど、怪しい薬は検出されなかったので安心して飲ませてもらう。
お茶請けに出されたお菓子はアオとミドリに渡した。
あーだこーだ言い合いを始めてしまった。やれやれ、仲良く食べなさい。
どうでもいいけど、これキャンディーちゃんが作ったお菓子だよね?
「では単刀直入に聞かせていただきます。この人と、あの場所で、戦っていましたね?」
「あぁ」
「本当に?」
「あぁ」
聞いといて、本当に? って返すのはどうかと思うな。
とはいえ、この人はウィーアードの力のことを全部じゃないとはいえそれなりに知っている人なのだろう。
気持ちはわかる。あの実力ですからね。
少なくともこの歳の子供が相手になるレベルなんかではない。成人数十人相手でも余裕って感じだもんな。
「そ、そうなんですか。では、勝敗の方は……」
「さね? そこの、あんたの隣にいる男にでも聞いてくれ」
どっかりと、意外と礼儀正しくソファに座って、話を振られたウィーアードはこちらを向いて
「私のユベル氏との勝敗の結果とかけまして、だらしがないとときます」
いきなり謎かけ始めたぞこいつ。
そして読めた。もし俺の予想どうおりだったらとりあえず一回しばこう。
「その心は?」
「どちらも、ルーズでしょう」
「しばくぞ」
くっだらねー。
よくそこまでくだらない事が思いつくね。
ある意味尊敬するわ。
ちょっとまた今度教えてくれよ。
「どういう意味ですか?」
「あれ? わからなかったりませんでした? 今のは、負けたって意味のloseと、時間にルーズって意味のルーズをかけてたんですよ」
「あそうだったんですか。いやー、わからなかったってえぇ! 負けたんですか!」
「えぇ〜。全力で戦って結果物の見事に返り討ちにあいましたともー。そりゃボロッボロ。兵隊どころか、その原点であるお菓子の実ごと全部食べられて、返り討ちにされましたからねー。見事だけにぃ! だぁっはっはっはっはっはっはっはっ!」
変な笑い方やめろ。だっはっはじゃねぇわ。
ほら〜、メガネさんの目見ろよ。これはゴミクズを見る目だぞおい。
てゆうか、メガネさんとかあれだな。うん。
「今更で悪いけど。軽く自己紹介させて貰うよ。俺はユベル。ウィーアードとは、ちょっとした旅仲間で、今じゃ友達だ。よろしく」
「あぁ! ごめんなさい私まで大変失礼なことを! 私はヒノデと申します。こちらこそよろしく」
俺の差し出した手を力強く握ってくれる。
1月1日に拝まれそうな名前ですね。
にしても、自己紹介とか、何かに違和感があるんだよな。なんだろう。まぁいいか。
「あの、自分見た目通りまだガキなんで、敬語とかやめてもらっていっすか? 俺は大人の女性相手にタメきいてんのに、相手が敬語じゃおかしいでしょ」
「そ、そうですね。でもこれはクセですから……」
逆に俺が敬語使えって話だけどな。
どうしてもなぁ。心の中でならどうとでもなるんだが。
「では。話を戻します。ユベル君は、この人に、勝ったんですね?」
「えぇ。勝ちました」
「そうですか……では、監視カメラを潰したのは……」
ヒノデさんはそう言ってウィーアードをぎろりと睨んで、睨まれた当人はびくついてブンブン首を振っていた。
「マァマァ、落ち着いてくださいよー。クールダウン。クールダウン。私真っ先に疑うとは、そんなに私のことばかり考えているのですかー? 私のこと好きなんですかー? イヤー、テレルナー」
「まってヒノデさん! ムカつくのはわかるからその手は下ろそうか! ダメダメ!」
冗談抜きでヤっちゃダメです!
時々俺もやろうとするけどダメです!
それをやるのは俺の役目ですから!
「落ち着いて落ち着いて。監視用の機械を破壊したのは俺だよ。俺の戦いを不特定多数に見られたくなかったんでね」
「え……」
信じられないと言った表情を隠そうともしないヒノデさん。
声までは届いていなかったのだろうか。
いや、あの機械の性能なら声ぐらいちゃんと拾えそうなものだし、監視していたなら俺が破壊したこともわかると思うんだけど。
あるいは、信じたくないのか。
「不特定多数って、私しか見ませんが……」
「映像を撮ってただろう。今後何かの拍子で教材にでも使われたらたまったもんじゃない」
「うぐっ」
「それとも、破壊した機械の賠償金でも請求するか? 勝手に許可なく人の戦いを観戦しようとしといて、なんともデカイ態度だな」
なんであれ、アレを破壊したことでとやかく言われる筋合いはない。
俺の目から完全に逃れ切って見ていたなら、見つけられなかった俺が悪い。脱帽する。
しかし、あんなにわかりやすく隠れる気ゼロで、さも当たり前のようにウロウロされたらそりゃぶっ壊すだろう。
「あの監視は、ユベル君のためのものであり……」
「でも俺は勝った。なら、そんなものは元々必要なかった。そうだろう」
「そ、そんなもの……そうですけど……」
「けど、なんだ?」
心中複雑だろうな。
悪いけど俺の言っていることは正しいと思う。
でも、認められないんだろう。それを認めてしまうと。
あの一目で手間暇かけたであろうことがわかるおそらく彼女の自信作を、いともたやすく、なんでもないかのように破壊された。
つまり、その機械は言ってしまえば、六歳くらいの子供に簡単に壊されてしまうほどの『ショボい』出来であると、自分で認めることになるのだから。
しかも、『そんなもの』扱い。
案外軽い言葉のように聞こえて、機械いじりなど知っている人たちにはわかると思う。
自分の全身誠意を注いだ自信作が、一瞬で『ショボい』と認定された時のあのショックを。
それを知っておきながら、なんだと問いかける。
「だから、その……」
はぁ……
「あんた教員なんだよな。あんたがそんなに言い訳まみれで、一体生徒に何を教えてるんだ? 負けず嫌いだかなんだか知らんけど、まずは認めることからだろう。認めたくなくて、烙印を押されたくなくて、受け止めたくなくて、頭を抱えて嫌々と首を振って、まるで子供だな」
「……ッ!」
俺の言い草に、遂にガマンの糸が切れたのか。
目尻に涙を浮かばせながら、手を振り上げ俺に振り下ろす。
パシンッ!
乾いた音が部屋に響く。
俺の頰に痛みはない。
ウィーアードが、横から彼女の振り上げた手をつかみ停止させたからだ。
「おやめなさーい」
「離してください! その、その一言だけは! 撤回させます! それだけは、それだけは!」
いきなりヒステリックを起こし始めたヒノデさんに、心中やっちまったかと軽く後悔する。
俺はそこまで考えずに言ったことが、彼女にとってひどく嫌な言葉だったらしい。
それに関しては悪いと思う。
「別に、俺はヒノデさんをイジメたくてこんなことを言っているわけじゃない。むしろ逆だ」
「ふーっ、ふーっ」
追い打ちをかけるみたいでごめんな。
あとで、ビンタくらいいくらでもやらせてやるよ。
でも、一度俺が言ったなら、最後まで言わせてもらう。
そういう主義で、それは責任のようなものな気がするから。
「認めろ。認めたくないことでも、目をそらしたいことでも、逃げたいことでも、認めて受け止めることがヒノデさんの成長につながることだから。ヒノデさんのために言っていることなんだ。負けず嫌いだって悪いことじゃないさ。負けたって落ち込んでても仕方がない、次は勝とうと、すぐに失敗と向き合えて、次のステージに行ける。それに、ただ次のステージに行くだけじゃなんの意味もない。何がダメだったのか、何が良かったのか、ならばどこを直せば良いのか、伸ばせば良いのか。全部、『自分がダメだった』と認めてからがスタートだ。自分の今の実力に満足でもしているのか? ヒノデさんは、スタート地点にすら立っていない。いや、立とうとすらしていない」
そんことはないと思うだろうか。
だが、反省よりも言い訳が先に来ている時点で、そうなのだ。
「言い訳だって悪くない。何も全部自分が悪かっただなんて思う必要なんてどこにもないだろう。相手が悪かった点もあり、自分が良かった点もある。そこを全部踏まえて、どうやっていけばいいのか考えればいい。一度もうすでにあったことを、ぶちぶち繰り返して一体なんになる。相手はわかっていない。相手にわかってほしい。そんなものよりまず、自分にわかってもらえ」
っと、論点ずれたかな。
ま言いたいことはつまり、認めてしっかり反省を踏まえれば、次はいいものであれ悪いものであれ、変化は生まれる。次のステージに行けってことだ。
次のステージに足を踏み入れる。それを人は、成長という。
退化というべき時もあるけど、その時はまた反省点を踏まえて変わろうとするの繰り返しだ。
「………………ぐぅの音も、でないわね」
「え? えっと、よく聞こえなかったんすけど……」
「あなたって凄いのね。今何歳なのかしら」
話し方ががらりと変化したぞ。
そっちが素か?
「うーん。生物学上、六歳だろうな」
「六歳はそんな風に言わないわよ」
「それは普通の場合だろ。どうも異常な六歳です」
「へぇ……」
やばいな……性格変わっちゃうほどショックを与えてしまったのだろうか。
確かに言い方きつかった気がする。
やべえどうしよう! は! こんな時は別の大人を頼りに…………
ウィーアードの方を見ると、和やかにヒノデさんを見ていた。
あるぇ! いいの! どゆことだ!
ヒノデさんはヒノデさんで、ずっと下向いたままプルプルしていて、表情が読めないし。
「ありがとう、ユベル君」
「は? って、ちょっと!」
なにがありがとう?
ヒノデさんは謎の言葉を残して、バビュンと教室から出て行ってしまった。
「な、なにがなんなんだ……」
もう聞き取りはいいのかね。
「彼女も色々とありましてね。ユベル氏は彼女と近しいところがあるのかもしれませんよー?」
「近しいねぇ……」
彼女と俺の共通点とか、想像できないな。
ウィーアードだって俺のことはそんなに知らないのだし、想像で言っているのだろう。
「んー……はぁ。ようやく、ゆっくりできそうだよ」
「ユベル氏」
「あ?」
「生徒として入学は無理となりましたし〜。もういっそ、教師なんてやってみませんかー?」
「ふざけろ」
ソファに身を投げ出し寝転がる。
ちょっとどうかと思うが、疲れてるし、この学校の取締役がいるし、いいかな。
「教員向いてると思いますよー?」
「俺の頭がどれくらいいいかもわからないのにか?」
「体育とか」
「おい」
「特別措置もありますよ。有給一月二週間」
「超真っ白だな。ホワイトすぎて逆になにも見えねぇ! 霧がかりすぎだろ。むしろ怪しいわ!」
まぁ、教員ってのも面白そうではあるけどさ。
この国に止まる気は無いんだよ。
王都だし、一週間か二週間はいるつもりだけど、ずっとここに住むわけじゃない。
「あ、ウィーアード。この学校、空いてる教室とかあるか?」
「エーット、あったと思いますが、それがなにか?」
「宿に泊まる金が勿体無いから、そこに寝泊まりさせてくれよ」
「えー、私が怒られるんですけど」
「お前、校長だよね……」
あ、いやでも校長だからってなんでも許されるわけじゃないか。
まそりゃそーだよな。
「いや、やっぱいい。忘れてくれ」
そりゃそーだな。普通に考えればわかることだ。
ちょっとお高いけど、お風呂もあるわけだしちょっと奮発してこの国の宿に長期滞在するとしよう。
「いや、いーですよ。ベツに」
「マジで!」
タダで泊めてくれるっていうならそれに越したことはない。
「タダーシ、条件がありまーす」
「なんだ」
入学とか、それ関係だったら、自分から振っといて悪いけど断らせてもらおう。
そう思っていた俺に、ウィーアードはこんなことを言った。
「期間限定で、教員やってみません?」




