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信じられないでしょうけど、再開のなでなでとドロップキックです!

「限界破壊ちゃん。今回も助かった。大好き。愛してるよ」

『私もですよマスター』

「おい! いきなりそうゆうこと言うなよびっくりするわ!」

『冗談です。スリープモードに移行します』


こっちに来てから、融通が少し聞くようになったぶん変な進化を遂げてないか?

もはやちゃんとした思考能力を持ち合わせているよね。

まぁ、お世話になってるわけだから、全然構わないんだけどさ。


「で!」


今はそれよりも言いたいことがある。

なんで動けないお前を俺がおぶらないといけないんだよ!


ウィアードはポーションを飲んだにもかかわらず、キャンディーちゃんを保護しまいったと宣言した瞬間、地面にぶっ倒れぴくりとも動かなくなったのだ。


「仕方がないじゃないですか、『逃神ノ闇』を発動した後は、しばらく体が動かせないんですから……」

「色々と言いたいことがあるんだが。取り敢えずめんどくさい。置いていっていい?」

《もー。ますたー》


うぐ。わかってるよ。

別にいいけどさ。おぶるくらいね。なんてことはないさ。でもさ。


「俺勝ったんだよね? なのになんで勝った奴が労働してんの? おかしくない? 釈然としないんだけど」

「いいじゃないデスか……自分の全霊をとして戦って、それで負けてしまったのデス。見た目がどうでも、それなりにショックは受けますとも……おぶるくらい……」

「だからなんだ。お前がショック受けようがどうでもいいわ」

「ユーはブレませんねー。ハーハッハッハッハッハッハッ!」


そうだな。俺はブレない。

お前に対する態度を、ブレさせる気は無い。


「だから、お前も俺に対する態度を変えるんじゃねぇ」

「はい?」

「最初から、旅の間まで見せていたお前が、本当のお前なんだろうが。俺に対してふざけてバカみたいなことやって人のことおちょくるのがお前なんだろうが。勝手に気使って、変わろうとすんじゃねぇ。そうゆうの、一番嫌いだ」


お前がそんなだと、俺の調子が狂うんだよ。

だから、お前は変わるな。


「バカでも、嫌われ者でも、嘘つきでも。俺は絶対にかわらねぇから。お前も自分にだけは嘘つくな。自分を見失っちまうぞ」

「うわおクサイですね〜。ユベル氏かぁっこいい〜」

「うおおお。果てしなく殴りてえー!」


そうそう。こんな調子だよ。


「あ、ユー。私と友達になってくれませんか?」

「さらっと言う奴だな。小学生みたいな……」


アオとミドリがじーっと見つめてくるので、無駄な言葉を省いて結論だけを言った。


「俺みたいな得体の知れないガキでいいならな」


そう言うと、アオとミドリに運ばれていたキャンディーちゃんが不意に飛び上がり俺に抱きついた。


「おっと。起きたのか? おはよう。魔王モードはいつ頃切れそうだ?」

「明日になれば、多分戻っているはずよ」

「そっか。こうしてキャンディーちゃんと話するのは初めてだな」

「うん。この状態じゃないと話せなくて」


魔王化すると身体機能が活発化するから、そのおかげというのもあるのだろう。

言葉が理解できているのなら、あとは発声だけだ。

でもあの小さな体じゃ、仮に発生できるようになったとしても声帯が小さすぎて声も小さいと思う。

喋れても聞こえないんじゃ意味がない。


「今度、『念話』の覚え方を教えるよ。色々と覚えられるかどうか試してる最中のものばかりで悪いけど」

「いいの?」

「あぁ」

《ますたー……》


に、睨まないで……アオさん。


「ふふん。羨ましいんだ? アオちゃん」

《羨ましいよ! 変わってよ!》


見せつけるようにギュッと俺に抱きつく力を強めてアオに問うと、アオはぷんすこぷんすこと起こるように念話を飛ばした。


「ふっふーん。えい」

《あー!》


不意打ちに、キャンディーちゃんの唇が俺の頰に触れた。

すぐに離れてしまったが、未だ頰に残るキスの感覚が熱く、片手でその場所をさする。


「今度は私の勝ちかな?」

《うぅぅ……もう私、怒ったからね》

「え?」

《謝ってももう遅いからね!》

「あ、こ、声が本気だ。ご、ごめ」

《もう遅ーい!》


大口を開けたアオがキャンディーちゃんを丸々ぱっくりと口に頬張った。

俺の体に全く当たらずキャンディーちゃんだけを回収するとは、アオも成長したなぁ。


アオはキャンディーちゃんを胃袋に収納せず、口に含んだままペロペロと舐め回しくすぐり始めた。


「あは、あははは。あはは、ご、ごめんなさ、あははは、ひー、苦し、ごめんってば、あはははは。ごめんなさ〜い」


おっと、アオの中にミドリも乱入。

二倍になったくすぐり攻撃にぴくぴくと痙攣し始めるキャンディーちゃん。

いじられキャラだな。うん。


アオもミドリも楽しそうで何よりだ。


「ほら、そろそろ行くぞ」

《《ふぁーい》》


キャンディーちゃんがはぁはぁ言ってる。

服も所々アレなことになってて、ちょっとエロいな……


「あぁごめんなさいごめんなさい! 何も思ってませんともえぇ! さぁさぁさぁ早く外に出ようかね!」


ささっとパーカーをキャンディーちゃんにかけてあげて、逃げるように扉へとダッシュする。

おっと、パスワードとキーが必要なのか。


「ウィーアード。キー貸してくれ。あとパスワードも教えろ」

「ああいいですよ。あ、でもパスワードは教えてはならない決まりで、特別な教員になら教えても構わないんですがねぇ〜。あー、ユーが教員だったらなぁ〜。チラッ、チラチラッ」


自分でチラチラ言うんじゃねぇ。イラっとくるわ。


「茶番はやめてさっさとしろ。パスワードなら後でいくらでも変えればいいだろうが。ほら、キー」

「NUMBER00と入力してくれればいーデスよー。あ、キーはキャンディーちゃんが持ってますのでわたしゃー持っておりません! 私のあの動きのせいで、キーを持っていると、無くさない確率が限りなく0に近いデスからね。カギだけに。あひひひひひひ!」

「気持ち悪!」

「この言い草ですよ! キーはキャンディーちゃんが右ポケットに入れたはずですが」


右ポケットね。あいよ。


(アオ。キャンディーちゃんのワンピースの右ポケットに鍵が入っているらしいから取ってくれ。その鍵がないとこの部屋開けられないんだ)

《はーい》


しばしキャンディーちゃんの体をゴソゴソしたアオは、何かを見つけたのかミドリと一緒にキャンディーちゃんを背負って扉まで走って来た。

平べったい金色の鍵を差し出してくれるので、受け取って頭を撫でておく。

こちらを、さりげなくチラッと見て来たので、ミドリもちゃんと撫でておいた。


《はいますたー》

「ありがと」

《後よくわかんないけどこれも入ってた。これなに?》

「元あった場所に戻してあげなさい……」


アオの手には二つのパッドが。

ウィーアードはそれを見て大爆笑していた。

なんてマスターだ。


気絶させられた上に、パッドまで取られ挙げ句の果てには宣伝させると言うね。

哀れキャンディーちゃん。イタズラは不幸を呼ぶ。

俺も気をつけよう。


元のサイズのどこにあれが入っていたのだろう。


それとキャンディーちゃん、パッドだったんだね。


「えっと、『NU……MBE、R00』っと。なになに、認証キーを挿してください、ね。あいよっと」


横長の鍵穴に鍵を入れ、縦に動かす。

ガコンという音がなり、訓練場の扉が開いた。


「にしてもボロボロにしちまったもんだな」

「たかがこれくらいで大げさな。訓練場なんてこうなるためにあるんデスよ」


まぁそうかもしれんけどね。

開いた扉をくぐって、光を全身に受ける。


「んー! 太陽の光ウエル……カ……ム?」

「おおおお! 出て来たぞ!」

「ピスケル校長先生だぁ〜」

「先生おぶってるの、僕たちと同じくらいの子供なんですけど!」

「もしかしてあの子と戦ってたの!」

「校長先生が!」


うああああ! なんだなんだなんなんだぁ!


「おいてめぇウィーアード。なんのつもりだこれは」


びっくりして心臓止まるかと思ったじゃねぇか。

何だよ。扉開けた先に大量の子供達って。

しかも次から次へと飛んでくるマシンガントーク。

一瞬気が遠くなったわ。


「しりゃあせん。しりゃあせんから。ゆら、ゆらすの、やめ、や、やめて、ゆらさないでー」

「嘘つけ! 絶対お前の仕業だろ!」

「危な〜い!」

「え? うぎゃあ!」


声がした方向を向いた俺の視界に入ったのは、靴の裏面だった。

そこまで見れば大体予想がつく。

叫び声をあげながら急いでその場から離れる。


案の定飛んで来ていたドロップキックはウィーアードの顔面に直撃し、ウィーアードの頭が半分ほど地面に埋まった。

蹴りを放って来た女性は一度俺にグッとサインを送ってから、無理矢理にウィーアードの胸倉を掴みメンチを切り始めた。


「ナイス反応です! さて、ウィーアードさん? 私に仕事全部押し付けてよくもまあのうのうと帰ってこれたわね。覚悟はよろしいですか? あ、ごめんなさい。君には迷惑をかけたでしょう、このゴミが。ちょっと待っててくださいね、すぐに始末するので」

「は、はぁ」


怖い怖い怖い! なにこのギャップの差!

嫌われすぎだろウィーアード。一体なにしたの。

あれ? というか、仕事全部押し付けて?


「あ〜、察し。なら俺にこれ以上得ることはないな。んじゃま、取り敢えず頑張れ!」


救助求む、とキメ顔されたがガン無視だ。

自業自得すぎるからな。

アディオス。

さらばだウィーアード。強く生きろ。


「ゆ、ユベル様!?」

「はい?」


いま、誰か俺の名前を呼んだだろうか?


「ユベル様! 私です! エレインです〜!」

「エレイン!?」


何度も声が聞こえてくれば特定もできる。

確かに手を振りながら声を張り上げているのは、エンジンの手前で山賊襲われていたお嬢様だった。

結構久々だな。


「ユベル! お久しぶりだ!」

「サクヤまで。なんだ。お前らが向かってたのって王都だったんだ」


人垣を飛び越えて、エレインとサクヤの前に着地する。


「よ。久しぶり」

「お、お久しぶりです。ゆ、ゆゆ、ユベル様!」

「様なんて他人行儀な。呼び捨てでいいってば俺なんぞ」

「そ、そんなわけにはいきません!」

「ま、なんにせよそんなに硬くなるなよ」


緊張しているのか、言動がコチコチのエレインの頭をなでなでして、はたときづく。

やべ、ついアオたちにやる容量でエレインにまで。

ちょうど撫でやすい位置に頭があるから、ついな。

そろそろと手を離してみると、ゆでダコのように顔を真っ赤に蒸気させ、ほおを両手で抑えブツブツと独り言を言い始めてしまった。


「ちょ、エレイン? もしもーし」


ダメだ。聞こえてねぇ。


「改めてお久しぶりだな。ユベル殿」

「サクヤも。俺が呼び捨てで言わせてもらってんのに、サクヤが殿なんてよしてくれ。呼び捨てでいいよ」

「そうか。そっちの方が呼びやすかったのでな。それは助かる」

「そうそう。そんな感じでいいんだよ」


おっと、周りの視線が痛いなこりゃ。


「あんまり落ち着ける雰囲気じゃないな」

「そうだな。おや。肩に乗っているのは……」

「あぁ。青色なのが、この前サクヤも見たことのあるアオだ。んで、こっちの子が、新しく俺の家族になったミドリ」

《ボクはミドリ。よろしくね、おねーさん》

「よ、よろしく」


あ、普通に会話しちゃったよ。

周りに聞こえていないから、変な目で見られてるけど、いいのかね。


「スライムが喋っ」

「周りに聞こえるだろ!」


いきなり言ってはいけないことを口走ろうとしたサクヤの口を急いで塞ぐ。

なに言おうとしてんの! やめろよな!


「す、すまない」

「いや」


それより、早くこの場所から移動したいんだけど。


「もし。そこの少年」


ほらぁ! もう嫌だよ! この声ってアレだよね。もうウィーアードの処理は終わったのかな?


「お、俺ですか?」

「そうです。君には迷惑をかけて申し訳ないのですが。少し話を聞いてもいいですか? まぁ立ち話もなんですから、少し移動してもよろしいですか? そこでお茶でも飲みながら」

「ええ。いいですよ……」


ぐったりと力なく彼女の手にぶら下がっているウィーアードから視線そらす。

彼女のメガネがぎらりと光った気がした。


あー……めんどくせぇ……



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