信じられないでしょうけど、お菓子のゴーレムと魔王の心です!
さっきまで頭を、思考をフル回転させて、ついに一つにまとまった。
今まで全く注目していなかったから思い出すのに苦労したが、もしかしたらいけるかもしれない。
「まずは手始めに。賭け金レイズ、ベット、1000万ゴールド。『毒無効』・『超食事』・『超消化』・『超吸収』・『底無大胃袋』・『捕食転換』・『好食回復』・『食事戦闘』並列発動。ここにあるお菓子、ぜーんぶまとめるぞ。お残しは許しまへんで?」
《いただきまーす!》
メルヘンチックなお菓子の世界は、今、一人の食いしん坊の手により壊滅の危機にあった。
「ちょちょちょちょ! それはないでショー! 兵隊まで食べちゃうなんて、そんな非常識な……」
悪いね。このダンジョンを見た時から、まずは何よりこれがしたかった。
このダンジョンは相性がいい。じっくりと、アオの経験値稼ぎに利用させてもらうよ。
『毒無効』の効果により、状態異常『中毒』を無効化し
『超食事』で大概なんでも食べれるようになり
『超消化』で次々と消化し
消化したものを『超吸収』で吸収し経験値に変え
消化のスピードが間に合わない分は、一時『底無大胃袋』にしまい、後でゆっくり消化させてもらう。
そして、『捕食転換』により、食べたものを次々ステータス上昇値に加え
『好食回復』の効果により、HPは常に回復状態。アビリティ多量同時並列発動による精神的負荷をできるだけ軽減させ。
『食事戦闘』の効果により、食べた物からアビリティを奪い取る。まぁ、アビリティを持ってたらなんだけど。
どんどん生産されるお菓子達だが、それには明らかな限界がある。
それまでたっぷり食べさせてもらうとするよ。
中毒状態の時は半暴走気味で、アビリティ発動の指示なんて聞かなかったからな。
だが今は違う、着々と経験値とアビリティが入っていくよ。
「このダンジョンは、もうお前らのテリトリーじゃない」
フラフラと苦々しい表情のキャンディーちゃんと、薄ら寒い笑みをへばりつけるウィーアードに、確信を持って宣告する。
「捕食者の支配下だ」
出現したら食われる。食われても食われても終わらない、食の地獄の完成だ。
「大人しく降参することを進めるが?」
「それは聞けませんねえ。なんといっても私は、まだ負けてませんからねぇ。賭け金レイズ、ベット9999万ゴールド。【 クリエイト・スイーツ・ゴーレム 】」
金アビリティの宣言がされ、ダンジョン化した地面がぐらぐらと揺らいだかと思えば、巨大なゴーレムが姿を現した。
検索
種族名:《Suites Golem》
個体名:なし
性別:――
年齢:――
LV:9999
職業:守護者
称号:【 ダンジョンの守護者 】
HP:99999/99999
ATK:99999
DEF:99999
AGI:99999
INT:――
アビリティ
『剛拳』『打撃無効』『中毒性』『指定』『従順』
固有アビリティ
『ダンジョンブロッカー』
う〜っわ!
無限に湧き出る兵隊達に、どっかのカンスト系ラストボスまでいるとか。
マジで鬼畜かよお菓子の魔王様。
とゆうか、どうでもいいけど、こっちだと8000万ゴールド以上の金アビリティあるんだね。
あぁいや違うな。多分今のは『?ゴールドアビリティ』の種類だ。
入れたぶんのゴールドによって強さが変わる奴。
多分あれが最大の限界値だろう。
強い。うん。普通にめっちゃ強いよ。
惜しみのない拍手を送れるとも。
たけど、相手が悪かった。
確かにこの強さなら、そうそう負けないでしょうな。
そんな魔王様にも、いっちょ敗北を教えてやろう。
お菓子を無限作るのと、無限に食べ物を食べる能力。
はてさて、勝つのはどっちかな?
「無駄だよ。どんなに強いのを作っても、所詮はお菓子だろう? 食う側と食われる側は未だ変わりはしない」
いつの間に振りかぶったのか、思いっきり振り下ろしてくるゴーレムの拳を、本気で受け止める。
「ぬ、ぐ、おおおお」
いててててててててててて!
でかいでかいでかい! 足が地面から離れそう!
くっそー! 中々止まらねぇなこいつ! あぁー、痛い痛い痛い!
「こん、ちくしょうがぁ!」
止まってなくてもいいや! だって痛いんだもん。
『反射』を発動させる。
『人間要塞』に搭載されている唯一の攻撃方法は、今まで戦ってきた兵隊達の攻撃の威力も加えてゴーレムに襲いかかる。
もともと自分の攻撃が弱まった上で、それ以上の攻撃を食らったのだ。
平気でいられるはずがない。
「ほい。アオ、いってらっしゃい」
《ありがと〜ますたー。でも大丈夫?》
「大丈夫だよ。ろくにHP減ってねえし。さ、アオは気にせず好きなだけ食べちゃってください。めっちゃ美味しいと思うよ?」
《うん!》
元気があって非常によろしい。
あー、可愛いなぁ。
可愛らしい俺のスライムちゃんは、腕が半壊してぶっ倒れているゴーレムに近寄っていき
バツン!
そのでかい首を肩ごと咀嚼した。
おぉ、超食事のレベル上がったみたいだな。
一度に食べれる量めっちゃ増えたじゃん。
(あー。アオー。そいつ生きもんじゃないから、首だけとったんじゃ死なないぞー)
《あ、そうなの?》
多分な。ゴーレムだしね。
ほら、首が再生し始めた。
本とかで見たゴーレムの話だと『emet』と刻まれている文字の、eを消すことで『met』という意味になり死亡するという話を聞いたことがあるけど。
この巨体で果たして『emet』の文字が見つかるかという話だし。
供給源がキャンディーちゃんである以上、そんなに長くは続かないだろう。
(ま、ゆっくり食べたまえ。誰も邪魔しないし、邪魔させない!)
言葉の途中で襲いかかるのやめろよな。
完全に青の意識から逸れたところで、変な服装に変わったウィーアードがアオに突っ込んできたのでその場に回り込みガードした。
「今ので何年……おや? 減ってない?」
「お前は俺が止めさせてもらうよ。魔王ちゃんはアオに任せるとして。お前の相手は俺だ」
攻撃のダメージ量により、寿命が減る。
なら、ダメージを食らわない相手なら?
例えば、俺とか。
「お前のその格好がよくわからんが、ピエロ? アビリティで持ってたな。ステータス強化系って感じ? それでも俺にはダメージは通らないよ。だってさっきのゴーレムの攻撃のダメージもろくに効いてないから」
もう治っちゃったしね。
「なら、攻撃するだけ無駄というわけデスかね」
「ま、そうなるな」
「でもそうなると。ユーも私を捉えられません。決着がつかないのでは?」
「捉えられないと誰が決めたよ。こっからは、俺のターンだ」
それにしても、さっきの俺のガードはすりむけられなかったんだな。
もしかして、攻撃中は逃げられないの?
まぁ、矛盾してるけど、マジか……
--- --- --- ---
あ! マスターが!
多分逃げ切るんだろうけど、もういっぱいいっぱいのはず。
あれだけ攻撃しないでって言ったのに。
どうして攻撃強化アビリティまで使ってしまうの?
そのぶん寿命が減ってしまうのに。
私の『王菓子』で寿命は延ばせるけど、作れるのは本当に些細な量だけ。
マスターの貯蓄があるとは言っても、もうとっくに切れてるはず。
あ! アオちゃんが避けてくれれば……
ご、ごーくんの味に夢中で全く気づいてない……
嬉しいよ? 確かにすごく嬉しい!
精一杯作ったお菓子をあんなに美味しそうに食べてくれる人そういないもの。
だけど、今はちょっとタイミングが悪いというか。
ダメ〜! あー、もうー、どうしてマスターはこう足だけは早いのかしら。
もう少し慎重になってくれてもいいと思うの。
あー、せめてアオちゃんのダメージが大きくありませんように!
「あ……」
あれ? ちょっと目を閉じただけなのに、気がついたらマスターは地面に引っ張られていた。
ユベル君は本当に凄いなぁ……
攻撃するときだけは逃神の能力が使えないことにもう気づいたんだ。
さっきのごーくんの攻撃も跳ね返してたし。
ちょっと誉め殺しが恥ずかしいけど、全然嫌じゃないし。
はぁ……凄いなぁ。
《キャンディーちゃーん》
「うわぁ!」
《キャンディーちゃん喋れたの!》
あ、アオちゃん?
さっと声が聞こえた方に視線を戻すと、ブンブン腕を振り回すごーちゃんを綺麗に避けてはパクパク食べているアオちゃんがいた。
「こ、この状態の時だけ……」
《そうなんだー。さっきはますたーがごめんね〜》
「う、ううん。ちょっと恥ずかしかったけど、その、嬉しかったし……」
は、恥ずかしい……
《あー! ダメだよ! ますたーはあげないからね》
必死なアオちゃんを見て、いつも通りであることにクスリと笑ってしまった。
こんな時でも、こんな状況でも。
私が『魔王』でも、彼女はいつも通り『友達』として接してくれる。
その事に、ふいに涙がぽろぽろと溢れた。
《わ、わわわ! ご、ごめんね。そ、その……そ、そんなに? えぇぇ……ど、どうしよう。な、泣かないで》
「ち、違うよ! そういうんじゃなくて、その、嬉しかっというか……ごにょごにょ」
《え! 聞こえなかったよぉ〜。何が違うの! もしかして照れてる?》
「違うってばぁ!」
そんなふうに会話していると、ごーちゃんが食べられ続けててボロボロになってた。
うわわわ。急いで直さなきゃ。
最初はマスターに指示されたからで、本当はアオちゃんを攻撃とかしたくなかったんだけど。
今は
「ねぇアオちゃん」
《なぁに?》
「私のお菓子、美味しい?」
《うん!》
元気いっぱいの即答に、心の底から喜びが溢れて止まらなくなる。
この姿は久しぶりで、まだもう少し力が残ってるから。
「次はもっと美味しく作るからね。アオちゃん」
《わぁ〜い》
その力を全部、ごーちゃんの美味しさに。
私に初めてできた『友達』に、もっと美味しいを感じて欲しいから。
もっと美味しいと言って欲しいから。




