信じられないでしょうけど、ぶっちゃけトークです!
やっぱ一番近いというわけでケーメルンに戻ってくるわけなんだけど。
そろそろここから移動したいもんだ。
俺はチュートリアルの街にずっと居座るプレイヤーじゃない。
ここらだと、ロキキが近いか? いや、あそこは別名『ぼった』。信用しちゃなんね。
俺の願望を言うと、金が稼げるところ…………
「現実問題で金欠だ。このチートパーカーがあるとはいえ、ゴブリン討伐の金だけじゃ到底やっていけないぞ?」
でも流石に野営もイヤになってきたし……
ゲーム内に何日も篭ったことはあるし、何日も外で野営をしたこともあるが。
それはあくまで、リアルに戻ればいくらでも布団の上で寝られるという余裕があったからだ。
「だけど今はそうじゃない。こっちで好きなことしながら自由に生きていけるって、こっちで生きて行くって決めた以上、現実問題リアルなことも考えなけりゃなんねぇ」
まずは、宿だッ!!
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「だけど宿代も惜しい!」
宿の前に立てかけられている看板に両手を叩きつけて叫ぶ。
ふざけているわけではない。
この街の宿が違法な代金を請求しているわけでもない。
『EGO』プレイヤーの業である。
お金はできるだけ持っていたいのだ。
この世界もゲームシステム以外はEGOと同一ならば、『金が全て』という根本は変わっていないはず。
やっぱ。移動するか。
「焼き魚や焼肉はそろそろ飽きたし……料理も学ばないとなぁ……。料理系列アビリティ取っとくんだったかなぁ」
戦闘に役に立たないからって丸っと無視してたのが悔やまれるぜ……交換しようにも、今のアビリティは必要なのばっかだし……
俺の現在の所持ゴールドは36500ゴールド。
「ダンジョンに潜るのが一番なんだけど、ここら辺のダンジョンは軽いのばっかだし、最前線はとてもじゃないが連れていけない。……まぁ行けないと思うけど」
レベルが足りなすぎる。イモータル・ルイン・ドラゴンでさえ、レベル1600代だったのだ。
そして肝心のアオは、何故だかレベリングを嫌がっている。というか戦うことを避けている気がする。
………………なにか、トラウマでもあるのだろうか…………
うぅーん…………さっぱりわからん。
「それにしても……街の活気がすげえなこりゃ。アオもそう思うだろ?」
《わっはぁ〜。うんうん〜》
田舎町もそれなりに賑わっているもんだ。
パーカーの中に潜んでいたアオがにゅるりと体を伸ばして外の景色を見ている。
装備とか買い揃えて起きたいのは山々だが、この街にはろくなのがないだろう。
買うのは中央のデカイ国とかにしておくとして。
取り敢えず、本を買いに行くか。
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「『賢者の残した財宝』『食べて強くなったやつの実話』『従者の心得100選』『今日から君も受け身マスター』『北の魔女のこだわり合成レシピ』。……ここにあるのだと、こんな感じか」
他にはこれといって良いものはなかった。
にしても、チュートリアルの街とは思えない品揃えだな。ビックリしたわ。
そもそもゲーム時代にこんな本屋なんかあったっけ? 『賢者の残した財宝』とか、結構なレアアイテムだぞ?
「これを頼む」
「少々お待ちください。えー、2500ゴールドに、400ゴールド、288ゴールド、3000ゴールド、1340ゴールドで、しめて7528ゴールドになります」
「え?」
店員さんの目が細められる。
あぁいやいや、払えないわけじゃないですよ。
や、安すぎないか?
「じゃ、じゃあ、支払いはこれで」
神盤にプレイヤーバンク(この世界の俺の初期装備の一つ)をセットして会計する。
おっととと。つい地が。ガキと舐められないようにかっこよくいかねば。
「毎度ありがとうございます」
ふふん。隠そうとしているのだろうが、俺の神盤をチラ見しているのがバレバレだぜ?
どうだ? 俺がオリジナルカスタムした自慢の神盤は。
「か、変わった神盤をお持ちですね」
「そうですね」
空中浮遊させるのに苦労したよ。
空中を自由に飛び回る神盤なんてこの世界の誰も持っていないだろうな。
「あの、もしよろしければ製作者のお名前を――――」
「すいません。後ろに並んでいるお客がいますけど」
「あぁぁ! す、すみません!」
「それじゃ、俺はこれで」
そういって店を出る。
あーー、こうゆう買い物の時とかどうやったらかっこよく話せるのかわかんねーー!
日本にいた時の癖でつい敬語になっちまう!!
「はぁ〜……もういいや、通常通りの話し方にしよう」
僕もうもう疲れたよ波斗落朱……。子供だからなんじゃい。
そうだよ俺はまだ六歳のガチンチョですよーだ!
「おっちゃん。コレとコレとコレとコレとコレちょうだい」
「おう。全部で5800ゴールドだよ」
「はいこれで支払い。あ、おばさん。コレとコレ、あ、あとコレも買います」
「ありがとね。1500ゴールドだよ」
「支払いはこれで。えーっと、次はぁ――――」
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ふぅ……
「アオ。このアイテム、胃袋に収めてくれ」
《はーい》
スライムの固有アビリティ『胃袋』は、アイテムを一定量保管することができるアビリティだ。
重さもなくなるし体積も増えないから、実に便利なアビリティである。
アイテムボックスがなくなった今、取らなきゃ絶対後悔してた。よくこのところまで頭が回ったよ俺! 素晴らしい! イイコイイコしてあげよう! ありがとう!!
「し、消化はするなよ?」
《ふ、ふぁ〜い、ふむぐ》
もごもごとアイテムの山をを食らっていくアオの姿を見ているとちょっと心配だ。
取り敢えず、可愛らしいアオの返事にすっかりハートをやられたのでなでなでしとく。
「………………変わってるもんだな……色々と」
《みゅう? ますたー、大丈夫?》
「え? なにが?」
《今すっごく、寂しそうな顔してた》
「そ、そうかな。うん、そうかも」
俺の知っている世界とは変わっちゃってて、色々と知っていたつもりだったから、それが役に立たないのは結構残念、かもしれない。
ま、まぁ、それは一割くらいで……
なにより…………馬鹿ばっかだったし、散々イヤな目にも合わされたし、変態多いし、常識嘘みたいに通用しないし、それでも、少なくとも、俺の大好きだった人たちと一緒にいた世界には、もういられないのかもしれないのかと思ってさ。
《ますたー、どっか痛いの?》
「うん……なんとなく」
《ますたー。アオが! アオがいるよ!》
「はい?」
内容口に出したか俺? 慰めの言葉が的確すぎるんですけど。
《アオが慰めるから! ますたー! アオに飛び込んでおいで!》
「お前なぁ! なんか違うだろ! そうじゃないだろ!」
なんだよ……悩んでるなら相談しろ的な流れな。
びっくりさせんなほんと。
《あれれ? 相手を慰める言葉として書いてあったよ? 本に?》
あーそういえばヒーロー物語でしたねあれ。
「そうゆうのは―――」
《ふぇ!》
言葉の途中でアオをすくい上げ、抱きかかえる。
「男が女性にしてやるもんだ。普通」
《ふぇぇぇ〜》
硬直してなんか意味不明瞭な声を脳内に飛ばしてくるアオ。
そんなアオに顔を近づけて、囁くように言葉を紡いだ。
「元気でた。ありがと」
《……う、うん》
大切なものなら、大好きなものなら、確かにここにある。
教えてもらうまで気づけないとは、異世界に来ようが俺は俺、というわけだ。
「買うもん買ったし。次の国に行きますか」
《次の国って、どんなところ?》
「金稼ぎってことで、遺跡の国『エンジン』にしようかなって。そこのダンジョンなら出てくるエネミーも強くないし、遺跡だからなのか出土品、お宝が普通のダンジョンの数倍はあるんだよ。でもそこには猿鬼って言う守り神がいて。またそいつが強いのなんので」
《別の国にしない?》
そう言うと思って。
「別の案も用意しておいたんだ。金稼ぎといえば外せない、探求の国『ルシア』なんてどうだろう。その国には、普通ではあり得ないビックスポット。なんと、一つの国にダンジョンが三つも―――」
《最初のでいい》
「え? でもこっちの方がたくさん……」
《最初のがいい》
「でもダンジョ――」
《最初のに、しよっか》
「はい」
ルシアも楽しいんだけどなぁ。
ま、それはまた今度行くとするか。
今回はエンジンでお金稼ぎするとしよう。
「なぁアオ」
《……変更は無しだよ?》
「戦うのは嫌か?」
単刀直入に聞かせてもらおう。
《…………うん。あんまり、好きじゃない》
「それはなんで?」
《怖い、から》
「どうして?」
《強くなりたいとは、思ってるんだけど……その、どうしても、大きい相手とかを見ると……足がすくんじゃって。どうしてかとかって言われると、なんていえばいいのかわかんないんだけど……》
怖い、か。
まだ一歳だ。自分よりでかい相手を見て、恐れる気持ちがあるのはおかしいことじゃない。
それが悪いことだとも思わない。
生きる上で、恐怖はとても重要なものだと思っているから。
「でもな、アオ。それだけじゃ、ダメなんだ」
説得するように、片膝をついてアオをじっと見つめながら言葉を選ぶ。
まだ一歳だ。だからこそだ。
まだ一歳。これから長い人生、楽しいことはいっぱいある。
ここは日本じゃない。ただ生きるだけじゃ、生きていけない世界。
レベルアップ。ひいてはステータスの強化が、安全に生きるためには必要なんだよ。
「怖いというお前の気持ちもわかる。でも、その怖さを乗り越えなくちゃいけない時は絶対に来る。例え目を背けても、例え歩みを遅めても。世界の流れは御構い無しに、拒む俺たちに絡んでくる。逃げることは悪くない。でも、逃げ続けちゃダメだ」
時には忘れて、逃げることも大切だ。でも、逃げ続けていたら、戻れなくなってしまうから。
背を向けて後ろに下がって下がって下がりすぎて、いつかふと気が付いた時、後ろを振り返ってももう遅くて、二度と戻れなくなってしまうから。
「でもどうしても、お前に戦ってほしいってわけじゃない。ランキングを競う相手もいなければ、お前という人格も尊重したいからな。でも、お前には死んでほしくない。お前がいなくなるなんて、想像するだけでも泣きそうだ。情けない主人でごめん。でも、安全マージンなんてろくに引けないんだよ。この世界は」
どこまでレベルを上げれば安全なのか、俺にはわからない。
「でも、安全な場所にこもって何もしないで生きるのは嫌なんだ!」
本当に救い難い自己中だ。
死んでほしくない? だったら、危険が少ない場所でずっと生きればいいだろ?
でも、それができないんだよ。
「この世界が好きな理由は、自由に、行こうと思えばどこまでだって行ける。自由が広がっている世界だからだ。俺はそんな世界を旅して回りたい。自分勝手だよな、こんなの」
《ううん。そんなこと、ないよ》
「いや、自分勝手なんだよ。俺は旅がしたいけど危険で、お前に死んでほしくないから、お前が嫌でも、強くなってほしい。そういうことなんだぞ?」
《アオ、頑張るよ。ますたー》
「あぁいや。ごめん。なんか勢いで色々言っちゃったけど、別に強制するつもりはなくて、だから」
アオが無理をする必要はない。
いつか。そう、いつかでいいのだ。
アオの怖いという言葉を聞いて、気が変わった。
次に目指す国は……
《アオ。今のますたーの言葉を思い出すだけで、頑張れる気がするの》
それには、不安も強がりも、怖さも含まれておらず、ただひたすら自信に満ち溢れていた。
「…………無理すんなよ?」
《辛くなったらますたー慰めてね》
「オーケー任せろ! つうか当たり前だろうが。頼まれなくてもするよ。むしろ頼むなよ」
アオがやけに明るい。
なんでだろう? 他の人にはわかるのだろうか?
ま、アオが嬉しそうだし、いっか。
「んじゃ行こうぜアオ。いざ、遺跡の国エンジンに、レッツゴーだ」
《レッツゴー》