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信じられないでしょうけど、偽りと立ち上がる意思です!

ぶっ倒れたままウィーアードはぴくぴくとしか動かなかった。

このままでは確かに馬車が動かないので、仕方なく俺が合成して作ったポーションをふりかけてやった。


「ユベル君。ちょっと今までの記憶が曖昧なんですけど、なんかありましたっけ?」

「いやなんもないよ。ホントホント」


起きた時、少し記憶がピチュンしてたけど、些細な事だよね。


「なんかあった気がするんですがね〜。どーしたんですかねー」


サー、ドーシタンダロネー。

あー、キャンディーちゃん、そんな責めるような目はやめて。


「は、はい。こんな粗末なもので申し訳ないが。キャンディーちゃんに貰った力だし。キャンディーちゃんにも。……だから、これで」


隠れて、こそこそとそれなりに質のいい飴を作りキャンディーちゃんに渡し、渡す際に口元に人差し指を置く。


パァァァアと破顔したキャンディーちゃんは、飴を抱きかかえて俺の頭の上をぐるぐる飛び回っている。


《ますたー! 遂に他の人のエネミーであるキャンディーちゃんまで! 節操がなさすぎるよ! だめ! 許さないからね!》

「まぁまぁ落ち着けって。ほら、アオにも飴あげるから」

《ほんと! やったー》


やれやれ。


じとぉ……


「な、なぁミドリ。キャンディーちゃんの視線が痛いんだが……」

《モテる男は辛いね〜》


あのねぇ!


--- --- --- ---


「なにしてるんです? さっきから」

「なにって言われてもな。キャンディーちゃんにアビリティを見せて貰ってるだけだけど?」


試しにキャンディーちゃんに見せてくれと頼んでみたらあっさりと承諾してくれた。


「あぁ、いや。固有(ユニーク)まではいいよ。ありがとねキャンディーちゃん。助かったよ…………『アビリティセンス』解除」


ふぅ……中々いいアビリティを『見させて』貰った。

マスターの『見聞』も掘り出し物だったが、もう『お試し』から消えてるしな。


『偽装』か。ステータスが覗かれないように妨害してるのもありだけど、それだと俺みたいな検索できる人に怪しまれるからな。

『鍵設定』も気になるけど、取り敢えず今回は『偽装』をお試しに設定しておこう。

お試しが終わったら、交換に送られてるだろうになんかいらないのと交換しよう。

これでステータスについてはほぼ解決だな。


そして、ウィーアード。あんたやっぱり抜け目ない、というか底知れないやつだわ。


『偽装』があったことであることに思考が追いつき、急いでウィーアードに『看破』をかけた。

もちろん、『限界破壊』を発動することを忘れない。


すると、こんなステータスが出た。




名:ピスケル・ウィーアード

性別:男

年齢:32

LV:(看破不能)

職業:(テイム・マスター)

学生スカウトアルバイト

(学園長)

称号:【 嫌われ者 】

【 道化 】

【 楽観主義者 】

(【 選別者 】)

(【 百面相 】)

(【 数多の偽りを持つ者 】)

(【 教員 】)

(【 学園長 】)

所持金額:(看破不能)

テイムエネミー数:一体


HP:(35246/52400)

ATK:(6800)

DEF:(4236)

AGI:(10256)

INT:(5000)


アビリティ

『テイム』『話術』『気配遮断』『交渉』『楽観転換』(『風』)(『火』)(『属性適性』)(『ピエロ』)(『察知』)(『感情汚染』)(『返還』)(『追跡』)

固有(ユニーク)アビリティ

『感情動揺』『傷』(『制限時間(タイムリミット)』)(『看破不能』)(『看破不能』)(『看破不能』)

特別(スペシャル)アビリティ)

(『看破不能』)




くっそ、限界破壊すら通さないのかよ。

十中八九、隠匿系・フィルター系の特別(スペシャル)アビリティ。

ステータスはそこまで高くないはずなのに、HPだけ突出して多い。

看破不能の固有(ユニーク)の効果だろうか?


油断してたな……多分、犯罪には手を染めていないとは思うんだけど。

ここまで来るのに並みのことはしていないだろう。

年齢は偽りなく32歳。それでここまで来るとなると、どれだけの努力を。


それにしてもここの世界だと、特別(スペシャル)持ってるやつは少ないないのか?

だとしたらちょっと自信なくす……

成る程、流石テイム・マスターを目指す学校の学園長様だ。


中々どうして、『気に入った』。


それぐらい(・・・・・)やってくれるような奴がいてくれないと困るんだよ。


自分と同じくらい、強くなろうと努力してる人がいる。


俺は一人ぼっちで、誰もいない一本道を走り続けているんじゃない。

隣に、前に、遥か前に、誰かがいる。

俺はたった一人で走っているんじゃない。俺は一人ぼっちじゃない。


誰とも違う世界で、誰にも理解されない世界など、現実世界(リアル)だけで十分だ。


(ま、怪しい奴ってことは今でも変わらないし、友達とかそんな気持ち悪い関係性を要求するつもりはさらさらないが)


隠匿しているものがあり、それが判明していないのだから信用なんざくそ食らえだ。


だが、バカみたいな思考はもう慣れている。

こういう奴とは何度もあった事があるし、そんな風に思う。


(必ず、こいつの自信の塊のような偽りを全て暴いてやる)


今は無理だろう。

だが、いつか必ず。目標はいくつあってもいいもんな。


--- --- --- ---


「おいウィーアード」


ユベル氏が私に話しかけてくれている!

ああなんて素晴らしいのでしょう!

なんと返しましょうかね〜。


うーん。あ、ご飯の催促ですかね?

私のぶんは作ってくれませんでしたし、ぐぬぬぬ。ユベル氏無情。

ですが私も大人。


「お腹が空きました〜? ではご飯を作ってくださいユベル氏! 私のぶんも! あ、お米は大盛りで」


大人の対応とは?

これが私! おひょひょひょひょひょひょ!


「それともこう言った方がいいか? ピスケル学園長」

「ブフォ!」


--- --- --- ---


「いきなり吹き出すなよきったねぇな……」

「げほっ……な、何を言って……ピ、ピスケル?」


え? とぼけるとこそこ?


「そことぼけるんだったらそこも隠蔽しとけよ……看破したよ」

「そ、そうでしたか……検索と看破を持っていたのですか。な、な、ななるほどどどど」


ハンカチで口元を拭って壊れた機械のように喋るウィーアード。

だいぶ混乱しているご様子。


「ち、因みに、看破のレベルの程は……」

「バカなのか? 人を堂々と騙していたような奴に正直に話すとでも思ってんのかよ」

「で、ですよねー……」


おっと、なんか怒ってる雰囲気になったぞ?

最初から知っていた事だからそこまで怒りはなかったんだが。


「これじゃ、どこまでが本当かわかったもんじゃねぇ。もしかして、『学園長』とかいう肩書きも詐称か? あーあー、どこに連れてかれるかわかったんもんじゃねーなこりゃ」

「ユ、ユベル氏! そ、そんなことは、ないデスとも! 私を信じてくれて構いませんよ!」

「どの口が言いやがる……」


砂漠はとうに過ぎている。

緑こそ少ないものの、荒野が広がっているという感じでもない。

おそらく王都に向かっていることはわかるし、もう少しであることもわかる。


「私のステータスを見たと思いますが……」


言葉の途中でウィーアードの顔面の前に拳を寸止めする。

遅れて風が辺りを吹き荒れ馬が嘶いた。


「ちゃんと間違いじゃなく見破れたぞ? 多重に隠してあったもんな。そう思うのもわかるけど、今の俺の拳なら、ギリギリで避けきれただろ? あんま舐めんじゃねぇ……」


拳を置いたまま、ウィーアードに言う。


「ほ、本当に、君は子供なのですかね〜。色々と、おかしいですよ?」

「30歳やそこらでその領域にいるあんたはとても人のこと言えねえよ」


あんたから見たら確かに俺の方が異常かもな。


「本当の目的はなんだ。わざわざアルバイトなんて偽ってまで、学園長のあんたが自ら生徒を探していた理由を言え」


なんの理由もなしに、そんなことをするわけがない。

一体何をやらせようって言うんだ。


脳内でいくつかの憶測が飛び交ったが、次にウィーアードが発した言葉は、予想の斜め上を行くものだった。


「趣味です」


は?


わ、ワンモア。


「趣味です」

「バカじゃねぇの!」


ドヤ顔で『趣味!』と断言するおっさんについ本音が出てしまう。

だって、趣味って、おま、旅行じゃねぇんだから。


「バカは酷いですよー」

「あんた曲がりなりにも学園長だろ! 自覚持てや! 仕事しろ仕事!」


俺は、強いからってそれを振り回して自由にすることが正しいことだなんて思わない。


「大丈夫ですよ。仕事は全部任してきてますから……」


そのウィーアードのあまりにも無責任な言葉に、ついに堪忍袋の尾が切れた。


「役職についてんだろうが!任せられた仕事があんだろうが!それほっぽり出して遊び呆けてるとかバカなんじゃないのか? 責任ある地位にいるんだろうが。その責任を果たせよ! それができないんだったら今すぐやめろ! 俺はそうした! 強いからって調子に乗んなよ! 確かにこの世界は金が全てだ! 力があれば金が手に入る。力があれば何もかもできるかもしれない! だけど!」


最低限の、社会に生きる人間として通すべきものはあるだろう!


「任してもらえてるんじゃないか、頼ってもらえてるんじゃないか、それをないがしろにするなよ……。あんたのその役職に就きたくても、あんたに負けて就けなかった人がいるはずなのに、なのに、あんたは……なにしてんだよ」


あー、途中から冷静になったが、俺なに言ってんだろうか。

こんな物、あくまで俺の考えであって、ウィーアードの考えでもないし、強制していいものでもない。

考え方は人それぞれだ。


俺はこう考えてても、そう考えてない人だっている。

俺はこれを正しいと思っていても、それを正しいとは思えない、間違っていると思う人だっている。


ウィーアードは、そう言う男なのだろう。


だが、止まらない。

一度言い始めてしまったら、止まりたくなかった。


「あんただってわかるだろう、できない、うまくいかない、その気持ちが。なのに、できるようになったら忘れちまう。当たり前になってしまう。勝ったんだからなんでもいい? 違うね。勝ったからこそ、勝った者としての誇りを持って、悔し涙に溺れていった敗者達の上に立ち続けなければいけない」


まず、世界が違うのだ。

世界が違えば、文化が違い。

文化が違えば、考え方も違う。


「…………悪かったな、お前の話を聞かないで、勝手なこと言ってさ。なんか訳ありかもしれないし、理由あってのことかもしれないのに」

「いえ…………確かに理由はあれど、ユベル君の言っていることは正しいと思いますから。確かに、忘れていたかもしれない……」


そうか。あんたは、正しいと思うのか。


「忘れたなら、思い出して、今後忘れないようにすりゃあいいだけだ。何度転んだってすぐに起き上がれるのがこの世界だ。転ぶことはなんらおかしいことじゃない。誰だってあることだ。大事なことは」

「その後に、立ち上がること。デスね」


誰かの手を借りてもいい、時間をかけてもいい。

『自分の意思』で、立ち上がることができれば。


間違えたなら、何度だってやり直していい。

それができる、それが許された世界なのだから。


ステータスは適当です。

今後変更になる可能性がありますのでご了承を。


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