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信じられないでしょうけど、世界に一つだけの飴です!

妖精ノ福音(フェアリー・ギフト)?」


ギフト系のアビリティは幾つか見たことがあるが、『飴職人』は初見だ。

ギフトというのは、簡単に言ってしまえばアビリティを与えるようなものであり。

とても見ず知らずの人間に与えていいものではない。


「なんで……」


誰しも福音(ギフト)を受け取れるわけでもない。

そのギフトに適性がないと受け取れないうえに、数あるギフトの中で、プレイヤー個人に数個しかない適性が当てはまるのはごく稀だ。


「俺の適性に合ったのが『飴職人』なわけだ」

「なんのことです? なんのことです?」


状況を飲み込めていないウィーアードが、ステータススクロールに目を落とす俺と、どこか自慢気に胸を張る妖精を交互に見る。


「キャンディーちゃん、でよかったよな。なんで俺にギフトを?」


問いかけてはみたが返答は帰って来ず。

こてんと首を曲げてうつ伏せになった。

な、なんの意思表示だ……これ。


「言葉は喋らないですよー。ユーのスライムちゃん達とは違いますからね」

「やりようによっちゃあできないこともないけどな」


INTを上げて、言語理解と念話を覚えさせるだけだ。

小さいとはいえ人型取なのだから、『発声』『翻訳』とかでもいいかも。


「スイーツ・フェアリーは、敵に不幸を、同士に力を与えるという逸話がある精霊の進化形態ですからねー。多分、料理がうまくいかないユーのためにプレゼントでは?」


料理と飴職人はちょっと違う気もするが。

キャンディーちゃんなりのエールなのだろうか。


「そか。ありがとなキャンディーちゃん」


アビリティが増えたことに異論はない。

しかもこれ、固有(ユニーク)扱いの、緊急イベ限定アビリティだと思うし。

妖精からアビリティを貰うとか、昔のイベントであったなぁ、そういえば。


人差し指でよしよしと頭を撫でると、赤くなってもじもじしていた。

あ、飛んで行って箱の中に閉じこもってしまった。


「【悲報】他人の妖精にセクハラをして逃げられた哀れユベル氏」

「お前露骨に煽るようになってきたね」

「イヤイヤイヤー。後ろ後ろ」

「あ? 後ろ?」


後ろを振り向くと、アオとミドリがむくれていた。


「あ、あれ?」

《なでなで》

《キス》

「お、おいおい。あれはどっちかって言うと社交的なものであって、別に……」


小さく音がしたのでそちらに目を向けると、少しドアを開けてちょこっと悲しそうな顔を出して俺を見ているキャンディーちゃん。

まるで、「そうなの?」と訴えているような……

うぐっ、おぉぉ……


「【悲報】三股の浮気がバレ絶体絶命のユベr」

「うん。ちょっと眠ってようか」


ふぅ。邪魔者は排除した。

だがどうするよこの空気。

えーーーとぉ…………


--- --- --- ---


「いたたた……アオ〜、ご飯とフライパン頼む〜」


特に何かいい案が思いつくはずもなく、適当に誤魔化そうとしてうちの子に色々とやられました。

ふっ、愛が痛いぜ……


炊けているご飯をアオの胃袋から出してもらい、火を起こしてフライパンを熱し、そこに卵を投入。

焼く間にご飯を人数分の茶碗によそって、後キャンディーちゃん用に小さな木の茶碗を合成で作って少しよそった。


「うーん、は! 私は誰? ワオ! ブレックファーストのタイムですねボーイ! ってあれ? 私の茶碗は?」


あ! やばい忘れてた!

目玉焼きの下にはベーコン敷かなきゃ!

うーん。どうしようかなあ……

目玉焼きを焼きながら別途でベーコン焼いて、盛り付ける時に合体させるとするか。

うん。それがいい。


となると、もう一個火つけないと。


「アオ。ここの隣に薪置いてくんねー? あと、フライパンもう一つと、ハムかベーコンも」

《りょうかーい》


軽く石で枠を作り、その中に置かれた薪に合成で作ったチャッカマンで火をつける。


「よいしょっと。ととと、難しいな。左手も使えるようになりたいもんだ」


合成が色々な用途があるようで何よりだ。

ゲーム時代でもよく使ったけど、こっちだと色々な面で重宝しそうだ。


「塩、胡椒……焦げないように、頻繁に動かす……焼き加減はどうやってみればいいんだっけ……」

《肉のほう変な煙が立ってるよますたー》

「うお! マジだありがとう!」


あとは焼けるまで待つべし……


--- --- --- ---


「では、いただきます」

《《いただきます》》


みんなでいただきますをしてから食事に入る。

キャンディーちゃんは意味がわからないなりに俺たちの真似をしていた。


ふむ。


「もぐ…………あー。今まで俺が作った中で一番うまいわ」


俺は醤油やソースより、塩派だからな。

でも味が少し変な気がする……焼く時に塩胡椒振りかけたのがまずかったか?

なんか日本で食ったのと味が違うが……少ししか振りかけなかったのが幸いしたか。

今度はかけないで焼いてみよう。


メモメモ。


《美味しいよますたー》

「そりゃよかった。おかわりが欲しかったらまた焼くから、遠慮無く言ってくれ」


ベーコンも塩味が効いてて美味い。ご飯が進むな。

このままだもいくらでも食えそうだが、おかわりは二杯までにしとくか、食いすぎは良くない。

うむ。腹八分目は大事だ。


「キャンディーちゃんはどうだ? うまい?」


声をかけると、夢中で自分の体と同じくらいある目玉焼きを頬張っていたキャンディーちゃんの動きが止まり。

フヨフヨと飛んできて俺の頰に軽いキスをした。


「ん? ギフト?」


頰をさすりながらきいてみるが、キャンディーちゃんはなんの反応もせずに自分の目玉焼きの元へ戻っていった。

美味いっていう、意思表示かね。


《おかわり!》

「はいよ」


--- --- --- ---


《ぷふぇ〜……ご馳走様》

「お粗末様っと。まさかこの言葉を俺が使うことになるとはな」


夢にも思っていなかったよ。


「さて、腹も膨れたことだし。さっきから気になってたアビリティ、実験してみるとするか」


手のひらを上に向けて、アビリティ『飴職人』を発動させる。

ポゥ……と手のひらから小さな光が生まれ、その光が弾けチュッパチャ○スのような形状をした飴が出現した。


落下してくる飴をぱしっと確保して、包装紙を剥ぎ取り口の中に放り込む。


「…………味がしないな……」


まさかの失敗だこれ。

なんの味もしない……水を飴にしたような感じといえば良いだろうか。

なんの味もしないまま、ただ口の中で溶けていくだけ。


これが本当の、『水飴』っと、なんちゃって。


「飴とか種類が多い奴を生成するアビリティだと、やっぱり指定系か。よし、もう一丁」


検索しちゃってもいいんだけど。

検索のアビリティ表記だけだといまいちよくわからないのもあるしな。

最初は適当に使ってみるのがいいんだよ。

アビリティって使用制限とか特にないし。


「念じてもいいかもだけど、イメージしやすいように……『味』・いちご。そうだな、めちゃくちゃ美味い。高級品でもまったく届かないような舌触りと上質な味わい。世界の国宝級レベル。世界でたった一つの飴」


色々とやばいセリフが……

調子に乗ってバカみたいなこと指定しちまったよはははっ。

ま、こんなのが実際にできるわけ――――


ガクッ


(あ、あれ? ちょ、これはヤバイな。なんだこれ、体に、力が入らん……)


カックーンと体を地面に叩きつけてしまう。

ボワッと光の玉が俺の手のひらから出現し、一本の飴が出現する。


うおー……この何もできない無気力感懐かしー。

身体中の体力という体力が全部搾り取られたような感じがする。


「け、……け……」


ダメだ、声が出ねぇ。

検索!


ステータススクロールを俺の目の前に出現させ、アビリティを拡大し『飴職人』の記述を読む。


『飴職人』:体力を消費し自分のイメージした飴を作り出す。作る飴によって、それに見合う体力の量は変わってくるので注意。


先に言って欲しかった……


いや、見ないでバカやったのは俺だ……


確かにアビリティ制限はない。だがそれには例外がある。


例えば俺の『限界破壊』のような。


こういえばわかるだろう。

代償が必要なアビリティは、発動できるけど発動したくない。

代償となるものがなければ、アビリティは発動できても、効果は発動しないからな。


「あ、あーあー。マイテスーマイテスー。あ〜、なんとか喋れるようになった。ごめんなー心配かけて。ただめちゃくちゃ疲れてるってだけで特に異常はないから。体は動かせないけど」


さっきから泣きそうな声で俺を呼んでくるスライムちゃん達に声をかける。

流石は回復さん。いい仕事するぜ!

贅沢を言わせてもらうなら、回復さんはよ!


「アオは……さっきキャンディーちゃんからお菓子貰う話ついたし、ミドリになにもないのは可哀想だから、この飴あげるよ」


多分だけど……めっちゃ美味しい自信あるから……


首が動かせないので確認できないが、ゴソゴソと俺の手に触れ、俺の顔の前に飴を持ったミドリが現れた。


食べるのを待っているのだが、こちらを伺うだけで一向に食べようとしない。

どうしたのだろうか?


「ミドリにあげたんだから、食べていいんだぞ?」

《ボクよりますたーのほうが疲れてそうだし……》


うん。知らないかもしれないけど、人間の体力はそう簡単に回復しないんだ。

俺も異常なほうだけど。

美味しいものを食べて体力が回復するのはキミ達だけなんだよ。

多分、それに体力回復系のバフもかかってないと思うぞ。


その旨を伝えて、ようやくミドリが飴をパクリと口に頬張った。

あ……包装紙……


《あれ? なんだかこの紙甘いね》

「マジで? とゆうか剥がすのが面倒だからって溶かそうってゆう発想はどうかと思うぞ?」

《んん!!》


ど、どうした! 急に叫んだりして!


《す、すっごく! なにこれ! すごく美味しい! えぇ! ぇええ!》


ミドリの剣幕が凄い……


《ねぇ! ますたー! もう一個! もう一個!》


怖い怖い怖い!

え! なにこれ! 怖すぎる!

どうしよう……


「ちょ、ちょっと待って……俺まだ体力が……」


もしかして、これから毎回この体力消費状態に?

嫌だなぁ……


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