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信じられないでしょうけど、スライムは家族です!


「あ、アオ。食べる?」

《……い、いらない》


はぁ……なかなか懐いてくれないなぁ。

でも、ゲーム時代とは違って、エネミーにも本能っていうれっきとした個があって。


それなりに知能(・・)がついたら、こうなってもおかしくはないわな。


「…………流石に喋るようになるとは思わなかったけど」


いい感じに焼けた魚を探り出して齧った。


--- --- --- ---


テイムしたスライム。アオと名付けたそいつが、ゴブリンの巣を崩壊させてから数日が経っていた。

ゴブリンをどう倒したかのネタバラシはあとでするとして、数日の間の、俺の悩みを聞いてほしい。


アオがなかなか、懐いてくれないんです……


喋るようになった時は……




「う、うぅ〜ん。はぁ。そろそろ飯にするか?」


腹が減ってきたのでそう呼びかけた。

もう一日くらいはずっとステータスを弄っていた気がする。

本から目を離してこちらを向いたアオは、いつも通りコクリと……


《ご、ごは、ん? ま、ますたー》



………………………………あれ?


--- --- ---


「ん、んぅー? あ、あっれ〜? アオちゃん。わ、ワンモワ」


かくりと首をかしげるような仕草をするアオ。


「できるできる! 諦めるな! もっと熱くなれよぉ! アイキャンドウイット! アイスキャンディドーナツいとおかし!」

《ま、ますたー? わか、る?》

「喋った! 喋った! わかる! 俺にはわかるよアオ!」

《よ、よか、た》


青い体をほんのり赤く染め上げて、もじもじしながら上目遣いで続けたのだった。

これが! これが我が子が初めて喋った時の感動かっ!!

あーうるせぇな俺。

あーかわいいなーアオ。


《これ、で。ますたー、と、いっ、ぱい、お話、できる、ね》


そして赤くなりながら照れを隠すようにころころし始めた。

実に幸せそうに転がるものである。


かく言う俺も、撃滅の一撃が心の臓を抉り取り、「ぐほあ!」胸を押さえ吐血しながらカックーンと膝から崩れ落ちた。

四つん這いになり呼吸が荒くなる。ちっ、鼻血が……

フォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


俺のスライムが、喋れるようになりましたまる


なんて感じで終わらせるわけにもいかず、取り敢えず調べよう。

昼飯? なにそれおいしいの?

え? おいしい? 知るか

アオちゃんスマイルプライスレス! メシウマメシウマァァア!


閉じたばかりのステータススクロールを召喚!




種族名:《Inexplicable Slime》

個体名:アオ

性別:♀

年齢:1

LV:65

職業:無職

称号:【 主人の初めてのテイムエネミー? 】

【 スライマーの初めてのスライム? 】

【 ゴブリン殺し(スレイヤー)

【 限界を破壊する者 】

【 雑魚ノ反逆者 】


HP:19830/19830

ATK:3655

DEF:10929

AGI:7200

INT:3500


アビリティ

『言語理解』『通信』『恐怖耐性』『物理反射』『防御』『探知』『暗殺』『念話』

固有(ユニーク)アビリティ

『食事』『消化』『吸収』『胃袋』『スライムボディ』『硬質化』『変身』


(ゴールド)アビリティ

1ゴールド【 スケスケ 】

1500ゴールド【 ブルスタ・メタアタ 】



ステータス上昇値やアビリティを振り分けている間に勝手にアビリティ取得しちまうんだもん。

ビビったよ。


んで、今獲得したアビリティは『念話』と、固有(ユニーク)で『変身』、か。


「な、なぁ。どうして『変身』と『念話』ってスキルを覚えたんだ?」

《ほ、本に、文字がか、書かれてる、から。覚えられたら、ますたーと、お話、できるかな、って……だめ、だった?》

「ダメなんかじゃないさ!」


むしろそれで出来るようになるのだから。アオちゃん、恐ろしい子ッ!?

『変身』はおそらく、昨日俺が娯楽を求めて町で買ってきた本に、書かれている内容を理解して獲得したのだろう。

内容は、某日曜朝七時放送のヒーロー物語・モデル異世界version


『念話』は、文字や言語の理解と、通信機とかの描写が混ざったのかもしれない。

先に取得させた『言語理解』が功を奏したみたいだな。

『通信』はあくまで相手との通信を繋ぐだけのアビリティだから、それで危険を伝えることができればいいかな〜、ぐらいの感覚だったが。『念話』があれば会話も成立するだろう。

まず声帯が無さそうだし、むしろこれで良かったのかもしれないな。




なんて健気な事言ってくれてたのに。


なんか態度が冷たいんです。

なんつうか〜、警戒っ、じゃない、えっと〜、なんか、避けられてる?


「はぁ……」


なんか、未婚の子持ちになった気分だよ。

難しいなぁ。子育てってこんな感じなのかな。


…………ん? あ、あぁ。そうか。そうなのか。

……うん。そうだよ。


「あ、あのな。アオ」

《なに?》

「お、俺」


俺は。


「お前のことをなにも知らない。お前も、俺のこと知らないよな。そりゃ、知らない俺のことを無条件で信用なんて、できないだろ。そうだよな。ごめんなんだけど、俺今気がついて。そんなこと、考えたことなかったし。だ、だからさ」


恥ずかしながら、こんなことした経験ないしな。

ここがゲームじゃなくて、お前に理解できる知能があるから、初めて意味があることだから。


「自己紹介、聞いてくれよ。アオ」


当たり前だよ。ここはゲームじゃないし、こいつはもう一人の知的生命体なんだ。

最初こそ、『自分を守ってくれるご主人様』くらいに思っていたとしても、もうこいつは自分の考えを持っているんだ。

俺を知ってもらう。それ以外に、まず仲良くなる最初の手法を俺は知らない。


--- --- --- ---


「俺の名前は、ユベル。年齢は、その、ろ、6歳で日本人。取り敢えず、お前の主人で、アオって名前を勝手につけさせて貰った。おっと、これに意見があったとしても、これだけは聞き入れられないぞ。俺この名前気に入ったから」


前もってアオには釘を刺しておく。

アオは聞いてるのかよくわからないような、ぽけーっとした雰囲気を出している。


「あと、俺は元々この世界の人間じゃなくて。別の世界からここに来たんだ。そこでは、他のスライムも沢山テイムしていた」


こんなことを言っても、アオには理解ができないかもしれない。

でも、仲良くなりたいなら。わかりあいたいと思っているのなら、黙っていたり嘘偽りは嫌なんだ。

むこうがこっちが近付いたぶんだけ離れるなら、俺はその三倍・四倍の速さで、むこうが離れる前にズンズン進んで、歩み寄ってやる!


「でも、この世界ではお前が初めてで。こんなに話ができたのは、何よりも、お前が初めてで。俺、嬉しくて。もっとお前と話がしたくて、もっとお前と、仲良く、なりたい…………えっと、お前が嫌じゃなかったら、俺と仲良くなっては、くれません、か?」


エネミーにこんな事を言っている俺はきっと、変人である。

でも変人だからなんなのだろう。

周りがなにを言おうと、俺は俺で。俺には俺の道がある。


《あ、あの。ますたー……》


アオが、俺の差し出した手の上に乗っかって、声を投げかけてくれた。

頭の中に直接、女の子の、不安でたまらない! と代弁しているような弱々しい声で。


「なに? アオ」

《アオ、ますたーに、どう接しればいいのか、わからなくて。主人とか、その、よくわからないし……ますたーは優しくて、いっぱい、アオに優しくしてくれて。アオは凄く嬉しい。でも、アオは従魔で。主人を立てなくちゃいけなくて、求められたら、応えなくちゃいけないのか……それとも、ダメなのか。わからなくて、頭の中、ぐちゃぐちゃ……アオ…………アオは……》

「………アオ」


お前。


「ばっかだなぁ」

《ば、ばかじゃないもん!》

「いや、ばかだ。勿論、俺も大馬鹿だ」

《ますたー、ばかなの?》

「あぁ、ばかだ。スゲーばか」


アオは考えて考えて、悩んでいたんだ。

最初こそ無邪気に考えなくてもよかったことに、頭が良くなるにつれ、その急激な変化から、理解が追いつかなくなっていた。

ばかだよ。ほんと。お前は、まだ一歳なんだぜ?


「素直に嬉しがっとけよ。それでいいだろうが。お前が従魔だ主人だって気にする必要はない。だって俺はお前を従魔だなんて思ってないから」


アオをできるだけ優しくを心がけながら抱きしめる。

ふんわりと、負担を感じないように、それでいて、あったかさが伝わるように。


《ますたー?》


そして俺はそれ以上の救い難い大馬鹿野郎だ。

こんな小さな子に、こんなややこしい事を考えさせて、悩ませて、仲良くなりたいとかそんなことばっかに目がいって、しっかりと見えてなくて。

なにが懐いてくれないなだ。このバカ! 気づかないだけじゃなく、自分がうまくいかない原因を相手になすりつけて、自分を弁護して。


「…………ごめん。本当、ごめん」

《……それより》

「うん?」

《アオは、ますたーの、従魔じゃなくて、なんなの?》


不安そうな声だった。

あ、あ、そうだよな。そんなこと言われたら、そりゃ不安にもなるわな。


「いやいや誤解だ。あの、な。えー、俺の希望、ぶっちゃけちゃって恥ずかしいんだけど」


目線を逸らそうとしてしまうのを必死でこらえて、頭を固定するのも兼ねて頭の裏に手を回して。

「俺の、家族になってくれ」


皆んな。皆んな家族だ。

ゲーム時代でも、仲間ってより、そっちよりの感情の方が強かったと思う。


《か、ぞく》

「うん」

《……ぷっ、ふふふ》

「ちょっ! 笑うなよっ! 恥ずかしいんだから!」


実際、この場に一人でもプレイヤーがいたらとても言えなかった。

こいつと。アオと二人っきりだったから、言えたのだ。


《はい。アオは、ますたーの、家族です》

「お前、敬語下手くそ」

《えぇ〜、そんなことない〜》


ほら、すぐに元に戻るんだから。無理すんな。

でも、アオの言葉に、少なからず嬉しさの感情が篭っていることは十分伝わった。

それでお腹いっぱいだよ。


《ところで、ますたー》

「どしたん?」

《アオは家族構成的にどの立ち位置?》

「んー。……娘?」

《なんで!?》

「だって、子供っぽいし、小さいし?」


実際子供だしな。一歳だし。


《うー……いずれ大きくなるもん! 大人っぽくなれるもん! 敬語頑張るもん!》

「おー」

《ますたー。本!》

「偉そうだなおい! 敬語にするならその時点から気をつけろよ!」


アオが久しぶりに俺の肩の上に乗ってきた。

なにやら右肩がお気に入りのご様子。


アオと少し仲良くなれた。いい一日だったな。


「んじゃ本買いに行くか。あ、買い物ついでにレベリングしてく?」

《イヤ!》

「なぜに!」


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