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信じられないでしょうけど、子供達の戦いはこれからです!

「すまない。今日泊まったらここを出ようと思う。明日の朝には出るから、そうゆうことでよろしく」

「え? まだもう少し残っておりますが……」

「キャンセルでいいよ」


お風呂がなくなるのはちょっと痛いがな。

この辺りに効率のいいノーマルフィールドやダンジョンがないんだ。

基本あてのない旅をするのが俺の目的だし、一つに止まってないでどんどん世界を回らないと。


「そうですか。少し寂しいです」

「一介の旅人の、それもあまり関わりのなかった奴との別れにまで寂しがってくれるとは、カリナさんは優しいっすね」

「ユベルさんとのお話は、楽しいですから」

「それはよかった」


毎回、風呂を頼む時にたわいもない話をしてカリナさんを笑わしていたのだが。

それが意外と好評だったらしい。嬉しいことである。


「また来る時には、面白い旅のお土産話でも持ってきます」

「はい。楽しみにして待ってますね」


そう、またくれば良いのだ、

カリナさんに会いに来るもよし。お風呂だってまたくれば良いのだし。それに風呂なら、もう少しで再現できそうだからな。

宿じゃ危険で練習できなかったが、外なら『火』アビリティと『水』アビリティ獲得の練習ができる。


「あ、ミドリ用の洗面器もう一個貰える?」


その日は最後のお風呂を三人でしっかりと堪能したのだった。

もちろん三人目はカリナさんじゃないよ? 新しい俺たちの仲間、ミドリだ。

最初こそ緊張していたものの、今ではぱちゃぱちゃと洗面器で湯の中を泳いでいる。


ミドリもお風呂のことを気に入ってくれたようで何よりだ。


--- --- --- ---


「特にカリナさんには世話になった。ありがとう」

「またいらしてくださいね」

「あぁ。必ず」


再び貴方の前に姿を現わしますとも。

今度は婚約指輪でも持参してててててててててっ!

アオちゃんアオちゃん! 耳! 耳ちぎれちゃう!


引っ張んないであーちょ! わかった! 分かったからもう少し別れの挨拶をォォォ!


あ、こら! ミドリも一緒になってハムハムしない!


「そ、それじゃ!」


アオに耳をぐいぐいされながら、それだけを伝えて宿を出た。

宿を出たら解放してくれた。

どっかの某アニメ毒ガエルモンスターを思い出すな。正拳突き食らわされて毒るよりはマシだけど。


一度伸びをして、かっちりと思考を切り替える。


「んー! はぁ。さて、次はどこに行こうかね」

《もう少し遊べる国がいいなぁ》

「はは。アオほとんどパーカーの中にいたもんな。そりゃつまんなかっただろ」

《そうでもないよ?》


まぁ国の中じゃそんなに楽しめないと思うよ。

やっぱり旅は、目的地もいいけどその過程も楽しむもんだから。


取り敢えず、行くあてないわけだし暫く流れてみますか?


適当にぶらぶら歩いて、ダンジョン回ったりして。

お風呂作ってのんびりして。

そんでどっかの国についたら、そこで食べ歩きとか。


うわお。最高だな。


今の目的をまとめると。

《Immortal ruin Dragon》の『エネミー化』

ミドリの反逆化とレベリング

『火』・『水』アビリティの獲得

ゴールド稼ぎ

安全で楽しい旅


エネミー化・火・水の獲得は本を読んで学んで獲得するか、行動で獲得するか、だな。


「ミドリのレベルも早くあげたいし、それなりに簡単で数の多いノーマルフィールドに行きながらだな。さて、どこに行こうか……」


因みに、ミドリのステータスはこんな感じだ。



種族名:《Common Slime》

個体名:ミドリ

性別:♀

年齢:2

LV:4

職業:無し

称号:無し


HP:50/50

ATK:5

DEF:3

AGI:2

INT:10


アビリティ

『言語理解』

固有(ユニーク)アビリティ

『万能薬』


金ゴールドアビリティ

1ゴールド【 スケスケ 】



まだ『雑魚ノ反逆者』と『限界破壊者』の称号はない。


『雑魚ノ反逆』は、金色のスライム・ゴールドが前EGO時代に獲得してくれたものだ。

俺が弱いスライムをあらゆる手を使い強くしようとしていた時、このアビリティを獲得した。


『弱ければ弱いほど』、『己が弱者だと自覚していれはしているほど』

効果を発揮する。この効果は、まさしくスライムのためにあるようなものだ。


このアビリティを獲得した時が俺の、いや【 最弱な最強達(スライマー) 】の始まりだった。


「んじゃまとにかく、出発しますかね」


ミドリはアオのように無茶なレベリングは出来ないだろうからな。

『死の恐怖』を味わっていないから。


「ぶっちゃけもうあんなことはしたくない。今後のためとはいえな」


そう呟いて国の門を出た。


「ゆっくりやって行きゃいいさ。アオの時は右も左もわからなくて焦ってたけど、今なら少しは心に余裕が持てる。少しずつ、順調にな」


--- --- --- ---


「おいお前! 金よこせよ!」


国を出て数分でなんだこれ。

今俺たちは国から少し離れた丘にいるのだが、追いかけてきたのか、俺と同い年のような子供達が木の剣やら石などのお粗末な武器で脅してきていた。

ただし武器を持っているのは五人ぐらいで、他の子供達は後ろで怯えるように待機している。


「オークションから出てきたの知ってるぞ!」

「金もってんだろ!」

「持ってんだったらよこせ!」

「金持ちのくせに!」


皆んな、一様にボロボロの薄着一枚で、体も薄汚れガリガリに痩せている。

親がいないのか? この数の子供達全員家もなければ金もない生活をしているのか?

マジかよ…………


「金持ちだからなんだ。わけわからん逆ギレはよせ。なんの行いもなく報酬がもらえるなんて甘ったれた考えしてんじゃねぇよクソガキ共」


俺の反応が予想外だったのか皆呆然としている。

だいたいその武器はなんだ? 人を殺す覚悟があるとは到底思えないんだが? 俺にはそんなのないしね。


「金持ちだったら少しぐらいくれたっていいだろ!」

「ふざけんな。俺がどんな思いで金を貯めたと思ってやがる。死ぬ思いをして、もう生きているのも嫌になるほどの地獄を、それでも幸せを掴み取るために奥歯を噛み締め耐えに耐え、死に物狂いでようやく手に入れたものなんだ。それをお前たちは少しでも考慮したのか? お前らとなんら変わらないような子供が、お前たちなんて足元にも及ばない金持ちであることに、なんの疑問も抱かなかったのか?」


まぁ大嘘ですけども。

強さを得たのは死に物狂いであったと言えるから、まるっきり嘘ではないが。

死に物狂いというか、何百回と死にましたし。


「あ、う……」

「他人を傷つけて奪ってしまおうと思ったことは何度もある。他人の幸せに狂おしいほどの嫉妬の感情を抱いたこともな。だが、それでも俺は最後の最後まで諦めずに、自分に何ができるのかを考え抜いた。他人から騙し・殺し、奪っても、それは本当の意味で自分のものではないのだから。自分のものになってはくれないのだから。考えることをやめ、現実から目をそらし、真っ当な道から足を踏み外してそれになんの罪悪感も抱かないというのなら、お前らもう、『終わってる』よ」


俺の冷たい視線には、軽蔑な呆れが混じっていることだろう。

ガクガクと震えながら、しまいには泣き出す子供達も出てくる。

それでも俺は視線での攻撃をやめない。


「だって、どうしようも、ないじゃ、ないか……だって……だって」

「だってとはそんなに便利な言葉だったんだな。初めて知った。お前が言うどうしようもないとは、誰が決めた」

「じゃあ、僕たちに何ができるって、何をすればいいっていうんだ!」

「知るか。そんな事、自分で考えろ」


ごめんな。本当はこんな事、言いたくないんだ。

なんだよ。知るかって。

自分で散々引っ掻き回した挙句、最後は突き放す。

なんて残酷なやつなのだと自分でも思う。


でも


「だが、俺は最底辺から、何をすればいいのかを考え抜いて答えを見いだし、頂を見たぞ」


その場を離れる際に、全員に向けてその言葉を残す。


この子達に、もう、こんなことをして欲しくないから。

続けて欲しくないから。

俺のこの件で、やめにして欲しいから。


俺にできる精一杯の説得だ。


本当は答えも教えてやりたいが、それはできない。

『何をすればいいのか』。それだけ(・・・・)は、自分自身で見出すしかないからだ。


誰かに言われたことをやるんじゃ、真に心は動かない。

自分で『決めたこと』に意義がある。

『決めたこと』でしか、人間の体と心は一致しないのだから。

体は無理矢理にでも動かせばいい、でも、心はどうしようもないからな。


「でもここであったのも何かの縁。俺がオークションに全部注ぎ込まないでそれなりにまだ金を持っていたというお前らの運。それに感謝しな。今後辛いことがあるかもしれないけど、お節介かもしれないが、自分で自分のやるべきこと、できることを見つけるための手助けぐらいはしてやるよ」


ただ一人、ブルブル震えながらも最後まで膝を突かずに、皆んなをかばうように立つ。

俺に最初に声をかけてきた少年に、それなりの額が入ったバンクを投げ渡す。

あの武器は、俺を脅す・殺すためというより他の子供達を守るためのものだったらしい。



「誤解がないように言っておくが、境遇が似てるお前たちに同情したわけでもなんでもない。ただの気まぐれという感覚が近いが、打算があってのことだ。きっとお前たちなら変われる。そう思った俺の直感に俺はかける。これは『貸し』だ、いつでもいい、いつか、返しに来い」


情けも、同情も。

人間の感情は時に相手を酷く傷つける。

現実世界で俺はそれを知っている。

だから、これでいいのだ。別に返しに来なくてもいいさ。

ただ、なにか目標があれば、人って頑張れたりするもんだから。


歩く足は止めずに、子供達に背を向けながら言葉を放った。


我ながらクサイねぇ。

日本だったら厨二乙って叫びながら全身に鳥肌が立つレベルだよ。

異世界でよかった。

ここにソロ仲間の誰かがいたら、『厨二あ〜んど、ツンデレおぉつぅ!』と謎のパクリ名ポーズを決めながら言われそうだ。


「せいぜい頑張りたまえ。若人たちよ」


そう言いながら、アオにお願いし『底無大胃袋』からそれなりに食料を落とす俺って、甘いのだろうか。


一瞬、食料が入った袋を見つけられるかどうか不安になったが、見つけられなかったらそれはそれだ。


調理はされていないがそこまでやってやる義理はない。てかできない。


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